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SRPGで楽しい瞬間と言われると、何を思い浮かべるだろうか。思い通りの戦略が決まった瞬間や難関ステージを突破した瞬間などいろいろあるだろうが、筆者にとって最大の楽しみはレベルアップである。SRPGでは単に戦闘していればレベルが上がっていくわけではない場合も多い。そうした作品では、誰でとどめを刺すか、そのために危険を冒すか、といった風にレベルアップにも戦略的な深みが加わっている。そして『幻世録 リメイク』は、そんなSRPGならではのレベルアップの楽しみが強烈になっている作品だ。

『幻世録 リメイク』はUSERJOY Technologyが手がけるシミュレーションRPGだ。『幻世録』はもともと1998年に中国語圏向けに発売されたPCゲームで、現地では高評価を得た作品。約30年ぶりにリメイクされて現代によみがえり、Steam向けに登場することになった。当時人気を博した魅力のコアはそのまま、現代的に刷新されているという。

原作は日本向けに発売されなかったこともあり、国内ではあまり知られていない作品だろう。筆者も原作は未プレイである。しかし体験版を遊んだところ、のめりこみつつ楽しむことができた。興味深い“戦略上のジレンマ”に陥りつつ、何度も繰り返しプレイしている。本稿ではそんな体験版の印象を中心に、『幻世録 リメイク』がどのような作品か紹介する。


王道ファンタジー世界の、癖のあるキャラたち

まず『幻世録 リメイク』の世界観と冒頭の物語を紹介しておこう。本作の舞台となる世界はかつて3体の魔神に支配されていた。エルフ・人類・オーク・翼人・両生族の五大種族は力を合わせて戦いを挑み、魔神を封印することに成功。世界は平和を取り戻した。

しかし魔神が去った後、人々は互いに争うようになる。それでもエルフ王が支配する「ファルシオン大陸」は平和を保ち、人々はエルフ王を盟主と仰いで、それぞれの国を築いて暮らしていた。ところがある日、人類の国「ラルス帝国」がついにエルフへ宣戦布告する。ラルス帝国は結局敗れ、滅ぼされたものの、一度壊れた平穏は元には戻らなかった。千年にわたって平和だったファルシオン大陸にもついに戦乱の波が押し寄せ、本作の物語が始まっていく。

主人公のレオナルドは、そんなファルシオン大陸の傭兵である。もともとエルフの国に仕える騎士団長だったが、ラルス帝国との戦いのなかで捨て駒として扱われたことに反発し、出奔。現在は獣人の弓兵コハクとコンビを組み、傭兵として日銭を稼ぎながら暮らしている。そんなある日、逃亡を続けるラルス帝国の王女ティナと出会ったことで、レオナルドの運命は大きく動き出す。

設定としては王道ファンタジーといったところだが、キャラクターたちはそれぞれ一癖ある性格となっている。主人公のレオナルドは傭兵らしいリアリストで、好戦的かつ打算的。山賊に悩まされているという村があっても報酬なしでは動こうとはしない。そして相棒のコハクも冷静な凄腕の傭兵で、ふたりあわせて「双頭の死神」という物騒な異名をもっている。いわゆるヒーローとは違うタイプだ。

一方、本作のヒロインにあたるティナは亡国の王女だ。王家育ちらしい高潔な性格で、温和ながらラルス帝国の復活を目指す意志の強い人物である。父である皇帝の死を悲しみ、仇を討ちたいと話す健気なティナだが、実は皇帝を討ったのは騎士団長時代のレオナルド本人だ。そんなレオナルドが、なぜ自らの過去を隠しつつティナの護衛を申し出たのかは、相棒のコハクにすら理解できない判断とされている。コハクに決断の背景を怪しまれつつ、一行は冒険を進めていく。

こうした人間関係をめぐる描写も本作の見どころとなっている。なお本作はマルチエンディングとなっており、キャラとの絆や物語上の選択によってストーリーは大きく変化するという。


最大で獲得経験値5倍の“コンボキル”システム

ゲームシステムとしては、基本はオーソドックスなターン制のSRPGとなっている。正方形のタイルが敷き詰められたマップでユニットを移動させ、戦闘をおこないつつマップごとに設定されたクリア条件の達成を目指す。難易度設定はノーマルのほか、気軽に物語を楽しめるストーリーモードと、歯ごたえのある挑戦が楽しめるハードモードが用意されている。

そして『幻世録 リメイク』の特徴的なシステムとして、「コンボキル」というものが存在する。同じ味方キャラが毎ターン連続で敵を倒していると獲得経験値に補正がかかり、どんどん増えていくというものだ。最大でなんと経験値が5倍になる。うまくボーナスを貯めてから高レベルのボスを倒すと一度に複数レベルアップすることも珍しくない。狙うのは当然とすら言えるし、うまく決まると非常に爽快だ。しかし一見プレイヤーに有利なこのシステムが、本作の戦略にジレンマをもたらしている。

コンボキルを狙うか、安全を取るか

コンボキルを最大限活かそうとすると、特定のキャラに毎ターン一体ずつ敵を倒させる必要がある。実戦上は、敵の群れを満遍なく削っていつでも倒せるようにしながら、しかし一気には倒さず、順番に倒していくことが肝要。しかも、ボスなどの強敵は経験値も高く、倍率が高まってから倒したいのでなるべく後回しにする、という流れになる。当然、その準備をしているあいだも敵は待ってくれない。コンボキルを仕込んでいるあいだは攻撃され放題だ。

つまり「やっかいな敵から集中攻撃してさっさと片付けろ」という常識が、経験値ボーナスという仕組みによりひっくり返されている。安全を考えれば間違いなく強敵は先に始末すべきだが、最大5倍の経験値は無視するにはあまりに魅力的。『幻世録 リメイク』ではいつもリスクとリターンが天秤にかけられているのだ。

欲望に忠実な筆者はついコンボキルを狙いすぎ、味方を死なせてしまうことがしばしばだった。回復薬を使いたいが、回復でターンを使うとコンボキルが途切れるから、無理して攻撃させるなんてことは当たり前。村人が目の前に迫る山賊に殺されてしまいそう、という場面ですら「いや、でもこのキャラで倒すとコンボキルにならないしな…」などと考え、二の足を踏んでしまう。打算的な主人公のレオナルドに親近感を覚える瞬間であった。旨味のない人助けなんてしないしない。

幸い『幻世録 リメイク』では毎ターン自由にセーブ&ロードができ、さらにターン巻き戻し機能まで用意されているため、試行錯誤は簡単だ。そうして筆者はノーマルモードでプレイしたにもかかわらず、「これは死にゲーか?」と自問自答したくなるレベルでロードを繰り返してしまった。もはや敵ではなく、強大な自分の“経験値欲”との戦いだ。試行錯誤の末にうまくコンボキルをつなぎ、最後のシメとして範囲攻撃で敵をなぎ倒して、一気に3つレベルが上がったときの達成感はものすごい。

そして本作のステージにはクリア目標だけでなく、規定ターン以内にクリアする、などの特別なチャレンジ条件も設定されている。これもまた本作のジレンマを加速させる。クリアだけを目指すなら比較的簡単だとしても、欲張ると一気に難易度が上がるという設計は、これまでプレイしてきた傑作SRPGに通じるものがあると感じている。試行錯誤が楽しいゲームで、だからこそよりよい結果を求めて何度も挑戦したくなるのだ。

ちなみに体験版のセーブデータは製品版に持ち越せるそうなので、今のうちに試行錯誤しておくと本番の冒険が楽になるかもしれない。筆者は体験版をクリアした時点で主人公のレベルを12まで上げたので、ぜひこのレベル以上に到達できるかどうか挑戦してみてほしい。

*日本語字幕をオンにできる

幻世録 リメイク』はPC(Steam)向けに、9月10日にリリース予定だ。ゲーム内は日本語表示に対応する。現在無料体験版が配信中だ。

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