Googleでお気に入り登録

ゲームの難易度についての考え方はいろいろとあるだろうが、ゲーム中つねに一定の難しさが続くのはあまり面白くない、という意見は賛同してくれる人が多いだろう。難しくなったり簡単になったりしながら、自分が強くなったことを実感できる作品は遊んでいて気持ちいい。

幻世録 リメイク』はまさにそんな一本だ。経験値を稼ぎ、クラスチェンジを重ねることでキャラクターはどんどん強くなっていく。しかし「もっと強くなりたい」という欲望が、かえってゲームを難しくすることもある。強烈なご褒美に翻弄され、気づけば筆者は自ら険しい道に足を踏み入れていた。

USERJOY Technologyは9月10日、シミュレーションRPG『幻世録 リメイク』をリリースした。対応プラットフォームはPC(Steam)で、ゲーム内は日本語表示に対応している。

『幻世録』はもともと1998年に中国語圏向けに発売されたPCゲームだ。日本向けにはリリースされなかったこともあり、国内でプレイしたことのある人は少ないと思われるが、現地では高評価を得た作品である。今回、その人気作が約30年ぶりによみがえり、Steamでグローバル展開されることになった。当時人気を博したゲームのコアはそのまま、ターン巻き戻しなどの便利機能の導入など、各所が現代的に刷新されているという。

弊誌は先日、そんな本作の冒頭を遊べる体験版のプレイレポートを掲載した。最大で獲得経験値が5倍になる「コンボキル」という独自システムに思いのほか夢中になった筆者だったが、今回発売前に製品版をプレイする機会に恵まれたので、あらためて『幻世録 リメイク』がどのような作品か紹介しよう。なおプレイしたのはリリース前のバージョンであるため、製品版とは一部仕様が異なっている可能性があることをご留意いただきたい。

陰謀うずまく王道ファンタジー世界

まず『幻世録 リメイク』の世界観を紹介しておこう。本作の舞台となるのは剣と魔法のファンタジー世界「ファルシオン大陸」だ。大陸には獣人やエルフなどさまざまな種族が住んでおり、それぞれの国で平和に暮らしていた。しかし人間の帝国「ラルス帝国」が突如エルフの国に侵攻したことで、大陸の平和がついに壊れる。ラルス帝国は多種族の連合軍の前に敗れたものの、この戦乱を好機と見た国々は、各々の陰謀を巡らせ始めていた。

主人公のレオナルドは、そんなファルシオン大陸の傭兵である。もともとエルフの国に仕える騎士団長だったが、エルフ王に捨て駒として扱われたことに反発して出奔。現在は獣人の弓兵コハクとコンビを組み、傭兵としてその日暮らしを送っている。しかしある日、レオナルドは亡国の王女ティナと出会う。普段は打算的なレオナルドは険しい道と知りつつもなぜか、国の再興を志すティナに手を貸すことに。こうしてレオナルド率いる傭兵団は大陸を揺るがす戦乱に巻き込まれていくことになる。

やみつきの“獲得経験値5倍”システム


ゲームシステムとしては、基本はオーソドックスなターン制のSRPGだ。正方形のタイルが敷き詰められたマップでユニットを操作し、ステージごとに設定されたクリア条件の達成を目指す。難易度設定はノーマルのほか、気軽に物語を楽しめるストーリーモードと、歯ごたえのある挑戦が楽しめるというチャレンジモード、さらにその上を行く高難度のナイトメアモードの計4つが用意されている。

そして『幻世録 リメイク』の特徴的なシステムとして、「コンボキル」というものが存在する。同じ味方キャラが毎ターン連続で敵を倒していると獲得経験値に補正がかかり、どんどん増えていくというものだ。最大でなんと経験値が5倍になる。

本作の体験版をプレイした際、筆者はこのコンボキルの快感にとり憑かれた(関連記事)。最大の5倍まで高めたうえで敵を倒し、レベルが一気に上がると最高に気持ちいいのだ。体験版のセーブデータを製品版に引き継ぐことができた筆者は、コンボキルにこだわったおかげでかなり育った自信のあるキャラクターたちを率いて、楽に続きをプレイできると考えていた。しかし筆者の考えは甘かったようで、製品版でも引き続き戦略上のジレンマに直面することになる。

範囲攻撃で一掃すれば楽なのは分かってる、が…

体験版はほんの小手調べだったと言わんばかりに、ステージでは敵が大量に出てくるようになってきた。悠長に一体ずつ倒していては袋叩きにあうことは必至だ。こういった場合、SRPGの定石のひとつは防御力が高いユニットで壁を作り、少しずつ敵の数を減らしていくことだろう。筆者もそうして一度に接敵する数を制限しながら、コンボキルを狙っていきたかった。

しかし、本作の序盤の部隊は、剣士・弓兵・僧侶・盗賊の4人という構成である。前衛向きなのが主人公の剣士ひとりしかおらず、あとは全員防御力が低い後衛キャラだ。いくらなんでも一人では壁を作れない。狭い通路があればいいが、そんな都合のいい地形はそうそう存在していない。積極的に範囲攻撃で打開していかないと命がいくつあっても足りはしなかった。欲張りは長生きできないことを悟った筆者はコンボキルを無理に繋ぐことを諦めて、さっさと敵を一掃したいと思うようになる。

ところがコンボキルを諦めたとしてもなお、本作には範囲攻撃を打つのをためらわせる理由が存在している。敵の中にときどき強力な装備を持ったやつがまぎれていて、なんとか生かしたまま盗賊を隣接させれば、盗めるチャンスがあるのだ。「消費MP半減」など凄いことが書いてあるアクセサリーを見かけると、どうしても欲しくなるのが人情というもの。範囲攻撃で一掃すれば楽にクリアできるのはわかっているが、それだとアクセサリーも戦場の露と消えてしまう。欲望からの卒業に失敗した筆者は、ふたたび戦略に頭を悩ませることになる。

ただでさえ緊張感のある戦いなのに、なんとかお目当ての装備を持った敵だけ倒さないように戦うとなると、うまくいかないことも増える。しかし本作はステージ中も自由にセーブができる親切設計で、さらにターンの巻き戻し機能まで付いている。便利機能のおかげで試行錯誤が苦にならず、膨れ上がった自らの欲望と戦いながら進めていくことができた。

クラスチェンジが強い、本当に強い

こうしてプレイを続けていた筆者だったが、初めてキャラをクラスチェンジさせると、世界が一変した。本作には転職システムがあり、キャラクターの能力値が一定値を超えると上級職にクラスチェンジできる。クラスチェンジすれば強くなるというのはSRPGお馴染みの要素ではあり、レベルアップのモチベーションのひとつにもなっていたが、その強化具合は想像をはるかに超えていた。

まず能力値ボーナスの量がもの凄かった。本作はレベルアップすると、自由にステータスに割り振れるポイントが5ポイント手に入る仕様だ。1レベルの価値は5ポイントで固定されていると言える。一方、弓兵の上級職「ゴッドアーチャー」の能力値ボーナスの合計は67ポイント。単純計算で、レベルが13も上がったのと同じだ。

いち早くクラスチェンジ可能になったコハクを転職させると、HPは85から165へとほぼ倍増し、攻撃力や防御力も大幅強化。弓兵のコハクが、まだクラスチェンジしてない剣士の主人公より固くなってしまった。クラス名だけ見たときは「“ゴッドアーチャー”はちょっと大げさすぎるのでは…」などと考えていたが、なるほどこの強さはゴッドの名にふさわしい。こんなに強くなっていいのかと戸惑うほどだ。

さらに、クラスチェンジすると各職で特殊スキルがアンロックされるが、この特殊スキルがまたとんでもなく強かった。弓兵のコハクがクラスチェンジすると、援護射撃というスキルがアンロックされる。これは使用すると隣接した味方ユニットが敵から攻撃を受けた際に、コハクが先制して射撃するようになる。

本作では反撃は確率で発動するシステムとなっており、全体的に能力値が低い序盤に反撃が発生することはめったにない。なので、確定で反撃できるだけでも相当強いスキルである。さらにクラスチェンジして火力も大幅に上がっているコハクは敵を一撃で倒せることも多く、攻撃を受けたはずが先制で敵を倒してノーダメージで済むこともしばしば。しかも援護射撃には発動回数の制限もない。もはや敵が何人いようが関係なく、押し寄せる敵はすべてコハクの矢に撃ち抜かれていく。

そして何より素晴らしいところとして、援護射撃で倒した敵の経験値はコハクではなく、最初に狙われた味方ユニットに入る。至れり尽くせりの仕様だ。コハクにだけ経験値が集中することはなく、満遍なくユニットを育てることができる。

レベル上げが楽しすぎる

クラスチェンジがここまで強烈だと分かると、ほかのキャラクターもレベルを上げて能力値を強化し、どんどんクラスチェンジさせたくなってくる。レベルアップの嬉しさも以前とは次元が変わっていた。コンボキルを狙う手にかつてないほど力が入り、倍率を積み上げて大量に経験値を獲得するたびにドーパミンが出るのを感じる。相変わらず敵はたくさん出てくるし、どんどん敵も強くなってはいるが、それ以上にクラスチェンジが強い。コハクの引率のもとで続々とキャラをクラスチェンジさせると、敵を圧倒できるようになってきた。かつて苦戦していた敵の群れを蹂躙する快感は格別である。

そうしてステージを攻略していくと、ついに「獲得経験値2倍」というアクセサリーを拾ってしまった。コンボキルの最大倍率とあわせると、最大獲得経験値はなんと通常時の10倍に。範囲攻撃で5体いっせいに倒せば、経験値は一瞬で50体倒したのと同じだ。増え続ける経験値とクラスチェンジに向けてどんどん上がっていくレベルに笑いが止まらない。

クラスチェンジではキャラの立ち絵も刷新され、攻撃アニメーションなども新しいものに変わるため、見た目の満足感も強い。これほど凄いクラスチェンジだが、本作では各キャラに最上級職が用意されており、もう一段階クラスチェンジできるらしい。これ以上強くなると、いったいどうなってしまうのか。もう一度クラスチェンジの快感を味わいたい筆者は、次々とステージの攻略を進めていったのだった。

なおリメイク前の原作は結構な高難度で知られる作品だったという。原作未プレイの筆者は本作をノーマルモードでプレイしたが、それでも確かに本作は歯ごたえがある。特に軌道に乗る前の序盤は、苦戦中に結構な回数ロードを繰り返した。しかし全体的な感触としては、本作はただの高難度作品ではなく、アクセサリーや経験値などの“ご褒美”でプレイヤーを釣り、自分から険しい道に足を踏み入れるのを誘う印象のゲームだ。エサがあまりに魅力的なため“罠”だと知りつつも進みたくなるが、首尾よく手に入りさえすればご褒美はしっかり強烈。後のステージで思う存分、強くなったキャラを堪能することができる。

ステージデザインなどは原作のものを概ね踏襲しているようで、現地で高く評価されたという原作の評判にも納得できる。セーブ機能などが充実した本リメイク版は「遊びやすくなった名作」という表現がぴったりで、“アメとムチ”でドーパミンを出させてくるタイプの、巧みな設計の作品だと感じた。製品版にセーブデータを引き継げる体験版も配信されているため、まずはそちらをプレイしてみるのもいいだろう。

幻世録 リメイク』はPC(Steam)向けに配信中だ。ゲーム内は日本語表示に対応している。9月24日まではリリース記念セールとして、通常価格の10%オフとなる税込2682円で販売中。

この記事にはアフィリエイトリンクが含まれる場合があります。

Googleでお気に入り登録
Akihiro Sakuraiのアバター