『モンスターハンターワイルズ:アセンダンス』では“『ワイルズ』の反省点”を徹底的に見直し、「もっと面白くなるところ」を伸ばす。全武器種ぶんブーストブレイサー実装の苦労など、開発陣に訊いた

『モンスターハンターワイルズ』をもとに、どのように『アセンダンス』の開発が進められたのか訊いた。

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モンスターハンターワイルズ:アセンダンス』(以下、アセンダンス)は『モンスターハンターワイルズ』(以下、ワイルズ)の超大型追加コンテンツだ。発売日は2027年を予定している。マスターランクを始めとする、さまざまな新要素が追加されるコンテンツである。

今回弊誌はプロデューサーの辻本良三氏、ディレクターの平岡拓朗氏、エグゼクティブディレクター兼アートディレクターの藤岡要氏の3名にインタビューを実施。『ワイルズ』をもとに、どのように『アセンダンス』の開発が進められたのか訊いた。

左から藤岡要氏、平岡拓朗氏、辻本良三氏

――『アセンダンス』の開発において意識した、『ワイルズ』本編から伸ばしたかった長所と、特に反省した部分はそれぞれどんなところでしょうか?

平岡氏:
『アセンダンス』のプロジェクトを開始するタイミングで、「『ワイルズ』の正当進化をしたい」というコンセプトを掲げました。具体的に言えば、1つは、良いところをしっかり伸ばすということです。ユーザーの皆さんが楽しんでくれたところ、僕たちが作っていて手応えがあり、実際にいい形で響いたと感じられたところは、しっかり伸ばしていこうという方針です。もう1つは、「もう少し改善できたのではないか」という自己認識や、ユーザーの皆さんから受けたフィードバックを気づきとして捉え、「ここからもっとできることがあるのではないか」という部分については、徹底的に見直し、改善していくべきだという方針です。

伸ばすべきところは伸ばし、改善すべき点は改善する。両方をやっていくことで、『ワイルズ』の正当進化は成しうるのではないかと考えています。そこに新しいストーリーやアクションなどが組み合わさって、『アセンダンス』になっていくのではないかと思っています。

僕自身は『ワイルズ』のアクション自体はとても面白いと思っています。傷システムや集中モードといった要素をベースに、そこからさらに面白いアクションができるのではないか、ということで、「ブーストブレイサー」という形につながっていきました。

フィードバックについては、本当にさまざまな声がありました。それをひとつひとつ確認させていただき、気づきとして「変えるべきところ」と「どうしても変えられないところ」をきちんと吟味した上で対応しています。それが、以前のカプコンスポットライトなどで紹介させてもらった、UIまわりの改善といったリファイン対応に表れています。

――新要素として「ブーストブレイサー」が追加されます。既に『ワイルズ』には傷システムや集中モードなど、独自の要素がありますが、今回『アセンダンス』にて「ブーストブレイサー」を追加した狙いをお聞かせください。

平岡氏:
ブーストブレイサーを作ろうと思ったきっかけ、考え方の出発点は、先ほど話した『ワイルズ』のアクションベースの部分にもありますが、「モンスターハンターとしてのアクションの遊びとは何だろうか」と考えたときに、モンスターとハンターがいて、モンスターの隙や攻撃チャンスと言われるものに対して、ハンターがそこに攻撃を差し込んでいく。これが繰り返されていくことではないかと思っています。

では「モンスターの隙や攻撃チャンス」とは何か。攻撃時に生まれる隙もありますが、ハンター側が罠を使ったり、閃光玉を使ったり、環境を利用してダウンを取ったりすることでもチャンスを作ることができます。また、モンスターの状態、たとえば怒り状態のときは隙が少なくなります。そのため、ハンターは防御を重視して立ち回る。逆に疲労状態のときは隙が出やすいので攻撃チャンスだ、というように、状況要因も「モンスターの隙や攻撃チャンス」に関係してきます。こうしたさまざまな要素が組み合わさって、『モンスターハンター』の戦闘は成り立っていると考えています。

そこに、プレイヤー側から別の手段でそうしたチャンスを作り出せる瞬間を用意できたら面白くなるかもしれない、という発想がブーストブレイサーの最初のきっかけです。そこからいろいろな実験を重ねて、今回初プレイアブル出展という形でお見せしているブーストブレイサーになりました。

――全武器種にブーストブレイサーを追加するのはかなり大変な作業だったと思いますが、いかがでしたか。また、バランス調整の方向性についても教えてください。

平岡氏:
(追加作業は)めちゃくちゃ大変でした(笑)バランス調整については、バランスそのものを考えて作るというよりかは、まず14種類ある武器種1つ1つに元々あるコンセプトや、その武器ならではの攻撃を再度ひとつひとつ見直しました。『アセンダンス』は『ワイルズ』をベースにしているので、「ワイルズではこうだったが、こういう改良を入れたら、こういうモードを入れたらより際立つのではないか」「取り回しの面で改善できるところはないか」といったことを1つ1つ吟味しながら作っていきました。

「ブーストブレイサー」に関しては、ひとつひとつの武器の特徴や強みを伸ばすことをコンセプトに、「こういうことができる」というアイデアを考えて作っています。それを並べてみたときに「これは少し強すぎるのではないか」という部分については、今もまだ開発途中なので随時調整をしているところです。

ただ、バランス調整という意味では非常に難しいところがあると感じています。触るプレイヤーの腕前によって使いこなし方も変わってきますし、ゲームの理解度によっても変わってきます。ただ、ブーストブレイサーにおいて一番大事にしているのは、ブーストアクションを使った瞬間に何かしら気持ちいい瞬間、チャンスメイクができたという感覚をプレイヤーが得られるようにする、ということです。

――平岡さんは作風の異なる『モンスターハンター』シリーズ作品のなかで、部作品では開発の中核を担ってこられました。そうしたご経験は、今回の『アセンダンス』でどのように活かされていますか。

平岡氏:

僕自身は『モンスターハンター』というタイトルに『ポータブル3rd』の頃から開発に携わり、そこから『クロス』『ダブルクロス』『ワールド:アイスボーン』と携わり続けています。中でも『ダブルクロス』『アイスボーン』ではリードゲームデザイナーを担当しました。

ただ、この2つのタイトルからこう強く得たものがある、というよりは、これまで『モンスターハンター』シリーズの開発で培ってきたものに加えて、プライベートでも自分自身がゲームをプレイする中で得たものなど、いろいろな経験を通じて、「モンハンってここが大事だよな」という感覚を自分の中で持っています。『ワイルズ』もプライベートで遊びました。

その上で、藤岡さんや徳田さんとも「ここはこういうふうに考えている」といったことを相談しながら進めています。特定のタイトルから強い何かを持ってきたというよりは、“人生”というと大袈裟ですけど、培ってきたものを反映させている、というところです。

――チーム間の連携はスムーズなのでしょうか。たとえば、『ダブルクロス』のノウハウは『アセンダンス』に持ってこられる環境なのでしょうか。

平岡氏:

チーム同士の連携というよりは、『モンハン』チームとしての経験の蓄積という観点で考えています。資料を残す、ノウハウを残すといった取り組みはチームとしてやっているので、タイトルごとに連携がしづらい、ということは特にありません。

藤岡氏:
たとえば、プレイヤー担当者がいろいろなタイトルを跨いでいたり、モンスター担当者が、あるタイトルでは手が空いてきたので他のタイトルに移ることもあります。経験を蓄積しながら人が流れていく。そこに新たに合流した人がまた新しい経験を積んでいく、という形で常に人が流れていきます。2つのチームがまったく別々のラインでずっと走っているわけではなく、人がその中で行き来している形ですね。

――ブーストブレイサーは「ここぞ」という限られたタイミングで使うものかと思っていましたが、ゲージは時間経過や被弾でも溜まっていくため、気づいたら溜まりきって使い切れていない感覚もありました。チャンスメイクとしてどんどん使ってほしいという意図があるのでしょうか。

平岡氏:
まさに設計思想はそこにあります。チャンスだと感じたタイミング、「ここで行ける」と思ったタイミングで使ってほしいというのが本来の狙いです。ただ、これが必ずしも最適解というわけではないと思っています。人によって習熟度が違いますし、今回のイベントではユーザーさんに情報が何もない状態で触ってもらっているので、観察してみると、ゲージが溜まった状態のまま維持して、ダウンを取ったタイミングで一気にゲージを使い切る、という使い方をしてるユーザーさんもいます。そういった遊び方も正しいものとして肯定しています。

ブーストブレイサーは専用ゲージを消費して、ブースト状態のあいだハンターのアクション性能が上がるという仕組みなので、「ブースト発動アクション」を連打して一気にゲージを使い切るのではなく、その時間をフルに使い切ってから次のブーストに入る方が強い状態を維持しやすくなります。ただ、それをやらないと損だ、というふうにはしたくありません。それができる人はすごい、使いこなせる上級者だ、という程度でよいと思っています。

出展初日あたりからいろいろな方が情報を発信してくれています。情報が広まるたびに習熟度があがっていく。そうやって多様な使い方が生まれていく過程を、僕たちとしても肯定的に見ています。

――映像でブーストブレイサーが発動する瞬間、SNS上でも「ドーパミンが出るタイプの演出」と話題になる空気があったと思います。

平岡氏:
ネットミームを意識して作ったわけではありません(笑)。各長所を伸ばした時にどういう性能があると面白いか、という観点で作った結果ですね。演出の派手さという点ではどちらかというと藤岡さんの領分になってくるかもしれませんが、気持ちよさは出してくれていると思います。

藤岡氏:
武器に一気に距離を詰められる性能を持たせるとなったときに、たとえば大剣に関して、今まで重量感のある動きをしていたのに、急にスピードアップするのは「理屈がないと違和感がある」という話になり、では「ブーストする」というアクションをどう表現するのがよいかを考えました。その結果、「ブーストブレイサー」という新しいギミックを装備させ、推進力を使って瞬発力を上げたり、ガードのノックバックを軽減したりするといった、ハンターを一時的に強化するという表現にたどり着きました。ゆっくり動く武器種でも瞬間的に速く動けるのではないか、というところから始めて、気づいたらハンマーが推進力で飛ぶようになっていました(笑)

――『アセンダンス』に登場するモンスターは、ブーストブレイサーを使いこなせないと倒せないデザインになっているのでしょうか。

平岡氏:
まず、そこは否定しておきます。そういうことはありません。

僕がやりたかったアクションはあくまで『ワイルズ』ベースの戦闘の中に、ブーストブレイサーを使うことでチャンスメイクの瞬間が生まれる、言い換えると、ゲージが溜まったときに「プレイヤーの思考内容が瞬間的に変わる」「取れる選択肢が広がる」といったことです。内容を確認していただけると分かると思いますが、ずっとブーストの状態のまま狩猟をしているわけではありません。『ワイルズ』のアクションにとってのいいアクセントとして置いているものなので、これを使いこなさないとマスターランクのモンスターが全部きつい、というような内容には絶対にしてはいけないと考えています。

SNSなどを見ていると「モンスター(の攻略難易度)が大変なことになるのでは」という声もありましたが、そういうことはまったくありません。あくまで『ワイルズ』のアクションベースの延長として捉えてもらえればと思っています。

もう一点付け加えると、マスターランクに上がるとモンスターのパラメータが強くなるのは当然として、新しいアクションが追加されたり、変更が加わったりしています。これまでのシリーズで言うところの「マスターランク」のような形になっているので、新しい気持ちで既存モンスターとのハンティングアクションを楽しんでもらえるのではないかと思っています。

――ブーストブレイサーに関連する防具のスキルなどは出る予定がありますか。

平岡氏:
それは何も言えません(笑)

辻本氏:
ちなみに、今回TGS2026へ出展しているデモ版は、新要素を活用していただく狙いもあって、イベント用・体験用の設定にしています。

藤岡氏:
まだ『アセンダンス』は開発途中にあります。今回遊んでいただいた方の意見や、どのように遊ばれているかをこちらでも見させてもらって、その上で自分たちのコンセプトに合った形に調整していくつもりです。スキルの有無については、今後のお楽しみということでお願いします。

――今回プレイした際、モンスターとの戦闘で手一杯な感覚がありましたが、フィールド面では「雲居の遺跡群」に関して、気流など新要素もあったと思います。今までも地形やギミックを活かせるポイントがありましたが、今回の新フィールドならではのポイントはあるのでしょうか。

平岡氏:
新しいフィールドを作るにあたって、エリア毎の遊び、地形に対する意味合いを持たせることは、プランナー、デザイナーが常々考えて取り組んでいます。遺跡群らしいギミックも用意する予定です。

――今回の試遊版にはありますか。

平岡氏:
投げてぶつけることができるモンスターや、ヒバナバチといった環境生物がいますが、ダイナミックなものは用意していません。続報をお待ちください。

――ラオシャンロンについて、過去作では戦闘がやや単調といった声も聞かれましたが、今回どのように復活・進化してくるのか気になっています。

平岡氏:
ラオシャンロンが最後に登場したのは『ダブルクロス』でした。当時とはゲームのベース部分が大きく異なります。またシリーズは『ワールド』のあたりで大きな進化があり、そこからさらに『ワイルズ』へと進化してきています。先ほどのブーストブレイサーの話にもつながりますが、『ワイルズ』をベースに今回のアクションを展開していく上で、「ラオシャンロンをそのまま持ってくるのは良くない」ということになりました。遊びのベースを変える必要がありますし、表現できる技術的な部分も大きく進化しています。ラオシャンロンの特徴である「歩いているだけで災害級」という点をどのように表現するのかも踏まえて、『アセンダンス』に出すならこういう風に変えた方がいい、こういう要素を足せばいいのではないか、と考えながら作っています。体験として進化していると思っていただいて構いません。

PVでも一瞬ラオシャンロンが映っていたと思いますが、「ここが大きく変わっているのでは」と想像を膨らませてもらえたら嬉しいです。

――今回発表があったテオ・テスカトルは直近のタイトルにも登場してきたモンスターですが、『アセンダンス』に出す上での注目ポイント、変化した部分について教えてください。

平岡氏:
テオ・テスカトルはこれまでのシリーズでもさまざまな形で登場してきたモンスターです。いろいろなテオがいる中で、『ワイルズ』をベースとしたアクションとしたテオをどう作っていくべきかを考えました。直近のタイトルからそのまま移植して出す、というだけではゲームが異なるので成立しません。『ワイルズ』のアクションやテンポ感、『アセンダンス』の存在を踏まえた上で、どういった軸でテオを作っていくかをまず検討しています。既存の攻撃やアクションを移植する形で持ってくるものもありますが、加えて「こういう行動を入れると新しい立ち回りが生まれるのではないか」という観点で新しいアクションを追加しています。そうして『アセンダンス』らしい、『ワイルズ』らしいテオのアクションを作っています。

今回話題になっているスーパーノヴァの2連続発動については、アイコニックな部分に一つアクセントを加えることで、シリーズファンに驚いてもらえたり、話題になったりするのではないかという考えから追加した要素です。実際に初見のプレイヤーがやられてしまいながらも嬉しそうにしている反応を見ることができ、作り手としては狙い通りなったな、と感じています。

――試遊をしていたらコスモライト鉱石が久しぶりに登場していたのが印象的でした。『ワイルズ』では過去作とのつながりを感じましたが、『アセンダンス』にも過去作との関連性について何かありますか。

平岡氏:

過去とのつながりを意図してそのまま置いているというよりは、マスターランクの鉱石アイテムを新たに用意する際に、名前や構成をいろいろと考えていく中で出てきたものです。「このあたりの名前がいいのでは」「これを見た人が喜んでくれるのではないか」といったことを考えながら名前を選んでいます。設定として実際につながっているかどうかまでは言及しませんが、感覚的なつながりとして、ファンの方がと喜んでくれるのであれば、それは嬉しいことだと思っています。そのあたりのつながりを楽しんでもらえればと思います。

――古龍が物語のキーワードになっているのでしょうか。

藤岡氏:
ストーリーの売りとしては、今回は「古龍が現れ出した」という話が一つのキーになる展開になっています。今回、真っ先にオフィシャルで発表させていただいたのも、そういった背景があります。

――ストーリーについて質問します。『ワールド:アイスボーン』でも古龍の話が中心でした。今回はどのような形で古龍の話が展開されていくのでしょうか。『ワールド:アイスボーン』とはまったく異なる形になるのでしょうか。

藤岡氏:
はい、まったく異なる形になります。「古龍という存在が何を引き起こすのか」という部分がストーリーの核になってくるのは間違いありません。そこに加えて、禁足地になっている竜都、それらを含む東の地域自体のバックボーン、なぜこういう背景になっているのかという部分も物語の中で語っていく予定です。そこにきちんと古龍を絡めていきますので、その辺りを楽しみにしていただければと思います。

──ありがとうございました。

モンスターハンターワイルズ』はPC(Steam)/PS5/XBOX Series X|S向けに発売中。Nintendo Switch 2版が12月4日に発売される。そして大型DLC『アセンダンス』は2027年に発売予定だ。

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