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「SCP財団」の映画化発表も、SCP公式Wikiが「一切相談も連絡もない」と怒りの声明。“映画にしても権利は独占できない”ライセンス巡り懸念
映画スタジオのA24が「SCP財団」を題材とする映画を共同製作することが明らかとなった矢先に、SCP財団の公式Wikiにて「映画化に一切相談や連絡を受けていない」といった懸念が表明され波紋を広げている。

映画スタジオのA24が、「SCP財団」を題材とする映画を共同製作することが9月11日、報じられた。ホラーアンソロジー「V/H/S」シリーズの最新作として製作される見込みだ。一方でSCP財団の公式Wikiは、本作について「一切相談を受けていない」とする声明を発表。映画化にはさまざまな権利上の問題が生じるだろうと指摘し、映画会社の誠実な対応を求めている。
「SCP財団」は超常的な存在や物体を題材にした作品群だ。超常の存在“SCPオブジェクト”を管理する秘密組織SCP(Secure, Contain, Protect)財団を中心に、それらにまつわる奇妙な出来事や記録が報告書というかたちで綴られる。世界観はシェアワールドとして構築されており、コミュニティに参加するユーザーがそれぞれ物語を執筆している。SCP財団に関連する作品は、公式Wikiのもとでクリエイティブ・コモンズ・ライセンス下で公開されており、条件を満たせば誰でもその設定を利用して派生作品を制作できる。これまでにも小説だけでなく、ゲームや短編映像など、さまざまな分野でユーザー主導の作品が公開されてきた。

一方、A24は2012年に設立されたインディペンデント系の映画スタジオで、映画の製作や配給などを手がけている。新興の映画会社ながら、独自性の高い作風で支持を集めており、これまでに「ミッドサマー」や「ムーンライト」、「シビル・ウォー アメリカ最後の日」など話題作を相次いで世に送り出してきた。現在は、インターネット発の都市伝説を題材とした映画「バックルームズ」も公開されており、全世界興行収入は3億9400万ドル(約605億円)を超えるなど、大きなヒットを記録している。
そんなA24が、「SCP財団」を題材とする映画「V/H/S: SCP」に共同製作・配給として参加することが、米メディアDeadlineの報道によって明らかになった。同作は今年7月に発表され、当時はSpooky PicturesとImage Nation Studiosのタッグで製作予定と伝えられていた(Variety)。ファウンドフッテージ形式の短編を集めたアンソロジー型ホラー映画「V/H/S」シリーズの最新作であり、そこで「SCP財団」の世界観が描かれる予定だという。公開は2027年を予定している。製作総指揮としては、これまで同シリーズで長年プロデューサーを担当してきたBrad Miska氏のほか、Image Nation StudiosのBen Ross氏と、Spooky PicturesのRami Yasin氏とJakob Pollack氏が携わる。先述したとおり共同製作にはA24も加わっており、「バックルームズ」によってインターネット発の都市伝説を映画化する試みで実績を残した同社が、今度は「SCP財団」を題材とする映画に携わるかたちだ。

一方で、この“映画化報道”に対して、他ならぬSCP財団Wikiのスタッフおよび執筆者が声明で懸念を表明し、波紋を呼んでいる。SCP財団の公式Wikiに掲載された声明によると、Wikiの運営スタッフや執筆者は、この映画について映画スタジオ側から事前の相談や連絡を一切受けていないという。さらに、運営側から映画製作者への連絡も試みているものの、現時点では接触できていないとのこと。そのため、SCP財団側は今回報じられた映画について、現状では一切関与していない立場であることを説明している。
またSCP財団側は、同団体のコンテンツに関して、A24・Spooky Picturesはいかなる独占的権利も有しておらず、今後そうした権利を取得することもできないと説明。その根拠としてSCP財団側は、関連作品がこれまでクリエイティブ・コモンズの「CC BY-SA」ライセンスのもとで公開されてきた点を挙げている。同ライセンスでは、原作をもとに派生作品を自由に制作できる一方、その派生作品についても同じライセンス条件で公開することが求められる。そのため、映画がSCP財団のコンテンツをもとに制作された場合、製作会社はその作品を独占的に管理することはできず、第三者による複製やアップロード、販売などを禁じることもできないとの見解を示している。
つまり、同ライセンスに則るならば、商用利用自体は可能ながらもたとえば第三者が映画のコピーをYouTube上にアップロードできたり、各種ストリーミングサービスが映画の権利者にライセンス料を支払うことなく配信できたりするわけだ。SCP財団側は、こうしたライセンス上の仕組みから、「V/H/S: SCP」が完成しても公開日には「YouTubeで視聴できる」状態になっているだろうと言及。またこうしたライセンス条件に従わない場合には、コンテンツの配布権利そのものを失う可能性があると警告している。同団体によれば、世の中のSCPへの高い関心に反して、これまでハリウッドで関連映画が制作されなかったのは、こうしたライセンスの事情が背景にあるそうだ。

SCP財団側は、これらのリスクを指摘したうえで、A24とSpooky Picturesに対し、CC BY-SAライセンスに準拠しながら映画を公開する方法について話し合いたいと協議の意向を伝えている。クリエイティブ・コモンズは、ファンの人々が自ら物語を創作し、脚色していくための重要なルールだとし、映画製作者側にもライセンスに基づく法的義務を尊重するよう求めている。
こうした懸念を受けて、9月13日にA24の広報担当者が米メディアKotakuの取材に回答した。同社の担当者によると、A24が今回取得したという「全世界における権利」はあくまで「V/H/S」シリーズの次回作(「V/H/S: SCP」)を対象とするものであり、SCP財団の世界観や設定について独占権を主張するものではないという。また、他者がSCP関連作品を製作することを妨げる意図もないと説明。そして同プロジェクトは現在進行中で、この世界を創造したコミュニティへの“トリビュート”を意識した作品であると語った。
一部コミュニティで懸念されていた「映画作品によって旧来のファンアートが著作権侵害として削除されてしまうのではないか」という疑問に対して、A24が一定の回答を示したかたちではあるが、一方でCC BY-SAライセンスをどのように扱うのかについては明確な説明がなく、「V/H/S: SCP」が同ライセンスに適切に準拠して製作・配給されるのか、依然として疑問は残る。A24がどのようなかたちで「SCP」を映画に登場させるのかは不明ながら、いずれにせよコミュニティと認識のズレを抱えたまま映画化が進めば、さらなる軋轢につながりかねない。今後SCP財団Wikiのスタッフや執筆者との対話を通じて、CC BY-SAライセンスに適切に準拠されるかたちで映画化されることを期待したいところだ。
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