Global Sites
『アークナイツ:エンドフィールド』の「工場稼働音」、実は独自の工夫がたっぷり。節約の肝は“音源合成”、独自技術も使ったリソース管理
工場設備なども多い『アークナイツ:エンドフィールド』にて、音の管理における工夫などが開発者より明かされている。

HypergryphおよびGRYPHLINEが手がける『アークナイツ:エンドフィールド』は、アイテムなどの生産ラインを作ることが可能な「集成工業システム」が特徴だ。その大規模な工場の音を管理する秘訣について、HypergryphのオーディオプログラマーがAudiokineticのブログにて解説している。
『アークナイツ:エンドフィールド』は、『アークナイツ』を手がけるHypergryphの新作ゲームである。『アークナイツ』が2Dタワーディフェンスゲームであったの対し、本作は3Dリアルタイム戦略RPGとなっており、ゲームとしてはがらりと姿を変えた。舞台となるのは巨大ガス惑星タロスの衛星「タロII」。プレイヤーは高い技術力を持つエンドフィールド工業の伝説的存在「管理人」として、この星を巡るさまざまな脅威や陰謀に立ち向かうことになる。

8月6日、オーディオミドルウェアの開発会社Audiokineticのブログにて、HypergryphのオーディオプログラマーGuanyu Li氏による記事が公開された。本作におけるオーディオの管理について、その工夫などが明かされている。
本作では「集成工業システム」としていくつもの設備がゲームプレイを通じて稼働する。そのうえ、設備は数百、場合によっては数千に到達する可能性もあり、これら設備の音を管理しないままでは、音質およびパフォーマンスの面において、到底許容できない状態になってしまうという。加えてプレイヤーの没入感を高めるという狙いもあった模様。今回はWwiseを活用することにより、各種課題の解決を図ったようだ。

手動から自動へ
まずオーディオアセットの管理としてモバイルプラットフォームの問題があったようだ。本作はiOS/Android、つまりモバイル向けにも展開されており、本作ではモバイルプラットフォームにおいてオーディオメモリは50MBに抑える必要があったという。この制限の中、15万を超えるサウンドオブジェクトを管理するため、自動定義サウンドバンク(Auto-Defined SoundBanks)を導入したという。
サウンドバンクはゲームのオーディオデータを格納するファイルのことで、ここには複数のイベントと、そのイベントの再生に必要なオブジェクトやオーディオデータを格納できる。Li氏によれば、従来は手動でのバンク分割を実施しており、サウンドデザイナーの時間を浪費するうえ、エラーも発生しやすかったようだ。さらにせっかくバンクに分けたとしても、再生頻度の違いによって、滅多に使われないアセットも頻繁に呼び出されてしまい、メモリを浪費するといった問題もあったという。
Wwiseでは、2022年に自動定義サウンドバンクが導入された。同機能は、ユーザが定義したサウンドバンクに含まれていないものを対象に、イベントをトリガーとしてサウンドバンクを生成する。そのため手動で分割する手間が省け、さらにイベント単位での分割となることで、余計なデータを読み込まずに済み、大幅なメモリ節約を実現できたという。Androidスマートフォンで20分間稼働させた際のメモリ使用量のグラフを確認しても、メモリが逼迫せず、かつ安定した横ばいの線を描いている様子がうかがえる。

独自技術も導入し、“音の発生源”をまとめる
さらに、『アークナイツ:エンドフィールド』の開発サイクル全体にわたって、パフォーマンスが重視されてきたとLi氏は述べている。ここでいうパフォーマンスについては、オブジェクトの描画などとは異なり、オーディオにおけるパフォーマンスを指す。オーディオ面では、Wwise Profiler上のCPU使用率が100%を超えると、ゲームは正常に動いていても、効果音などが途切れてしまうわけだ。そうした事態を避けるべく、モバイルプラットフォームの限られたリソース内でスムーズなオーディオを実現するために、独自のアルゴリズムを導入したとのこと。
特にそうしたアルゴリズムの効果が発揮された部分として、動的侵蝕が挙げられている。本作における象徴的な存在でもある動的侵蝕は、それそのものから音がしているものの、形状は一定ではなく、大きくフィールドを覆っていたりすることもある。開発チームとしては、そうした動的侵蝕の音に独特の広がりを持たせたかったとのこと。

当初は一つのオブジェクトに複数のポジションを設定し、1つのサウンドで複数のソースをシミュレーションするMultiPosition方式を採用していたという。しかしそれでは、リアルタイムで消失したり形が変わったりする動的侵蝕において、急激に音が変化してしまう懸念があったという。そのため、動的侵蝕とプレイヤーの距離に応じた、動的侵蝕の“代表”エミッター(放出源)を設定し、対応したという。「Cluster Emitter」と呼ばれるこの音源により、処理の手間を減らしたようだ。

さらには本作では無数のレーザーが発射されている区域も存在。そこでも動的侵蝕の手法と同様に、ひとつひとつのエミッターを結合し、“代表”エミッターとしてまとめているのだという。数多くのオブジェクトが多く並ぶ本作ならではの対応策と言えるだろう。
一方で集成工業システムにおいては、また異なったアプローチも取られている。「Swarm Emitter」と名付けられた手法では、まずプレイヤーの周囲のエリアを複数の扇形のセクターに分割。システムが各セクターにある稼働中の設備を数え、距離に基づき、重み付けしつつ位置を平均。そしてセクターを“代表する”音源のポイントを設定するのだという。
このように決められたポイントからは、ループするサウンドインスタンスを再生。音量や各サンプルの音量バランスなどといった個別のパラメータは、Wwiseの機能であるリアルタイムパラメータコントロールを活用したという。またパラメータの変更には、機械の数なども関連しているとのこと。近くの設備の音はそのまま、遠い設備の音については「Swarm Emitter」にて音を合成し、エミッターの数を減らすことで、大幅に負荷を軽減しているようだ。

今回、開発者より直接『アークナイツ:エンドフィールド』のオーディオについてのさまざまな工夫が明らかにされたかたち。特に工業要素として多くのオブジェクトが稼働し、モバイル向けにも展開される本作ならではの、オーディオ面での独自な“節約術”も垣間見えた格好だ。なお記事では本稿で紹介した内容以外にも、ゲーム内におけるオーディオ面での構築にあたっての実践および考察が展開されている。興味のある方は元記事(英語)を読んで、改めて本作のオーディオに耳を傾けてみるのもいいだろう。
『アークナイツ:エンドフィールド』はPC(公式サイト/Epic Gamesストア)/PS5/iOS/Android向けに基本プレイ無料で配信中だ。
この記事にはアフィリエイトリンクが含まれる場合があります。


