“荒れてる”と聞いたオンラインゲームでは「荒らしじゃないのに荒らしに見えやすくなる」可能性。勘違いが生む新たな荒らし、悪循環を探る研究

ある行為が荒らしであると判断されるかどうかは、環境要因によって大きく変化する可能性が研究によって示唆されている。

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オンラインゲームでは、チーム対戦型のゲームにおける利敵行為や、ボイスチャット・テキストチャットにおける不適切な発言など、いわゆる荒らし行為が根強い問題となっている。そうした行為が荒らしであると判断されるかどうかは、環境要因によって大きく変化する可能性が研究によって示唆されている。

米国・インディアナ大学ブルーミントン校のJohn A. Velez氏を筆頭著者とする研究チームは、論文「Trolling is in the Eye of the Beholder: An Attributional Approach to Predicting Perceptions of Trolling and Vigilantism in Online Games」を発表した。同論文は学術誌「Communication Research」にて2025年4月にオンラインで公開され、今年8月発行の同誌第53巻第6号に掲載された。海外メディアPsyPostは、Velez氏へのインタビューを交えて研究の内容を紹介している。

荒らしの意図を感じやすいケース

ゲームにおける荒らし行為については、ある行為が別の荒らし行為を誘発するといったように連鎖的に広がる可能性も指摘されてきた。そしてVelez氏は、荒らしの意図があるか明確でない特定の行動であっても、誰かが荒らし行為であると一方的に受け取ることで、荒らし行為を誘発させてしまう可能性があることに着目。プレイヤーが荒らしと判断する手がかりが何であるか、そして報復の連鎖がどのように生じるのかを解き明かすために、同氏らは調査をおこなうことにした。

研究では、日常的にゲームをプレイする米国在住の成人290人を対象に調査を実施。参加者に事前に録画された『オーバーウォッチ』のプレイ映像を視聴させた。映像では、プレイヤーが操作するラインハルトが倒れたキャラクターの上でダンスのエモートをおこなう。その後参加者に、プレイヤーの行動に荒らしの意図を感じたかを7段階で評価させた。

研究チームは、影響しうる3つの手がかりを設定し、その組み合わせによって8つのグループに無作為に分類することで、結果を比較した。一つ目は、その行為がポイントを与えるかだ。一部の参加者には、プレイヤーがエモートをおこなったことで、10ポイントを獲得したと表示される映像を提示した。また二つ目は、倒れてエモートの対象となるキャラクターが、味方なのか対戦相手なのかという違い。そして三つ目は、コミュニティについての背景情報だ。参加者に事前に提示する架空の内部報告書に変化を加え、コミュニティで荒らし行為が常態化していると伝える場合と、荒らし行為がめったに見られないと伝える場合で結果を比較した。

曖昧な基準

すると、まずエモートでポイントが与えられたとの表示がおこなわれた場合には、参加者が「荒らしの意図を感じた」と評価する平均スコアは4.03となり、そうした表示がない場合の4.69から大きく下がる結果となった。ポイントが与えられる場合には、エモートがゲーム内の報酬を得るために必要な行為であったと、正当な理由であると捉えられやすかったと考えられる。

また、味方の上でエモートをおこなった場合は4.60となり、対戦相手の上でエモートをおこなった場合の4.12よりも高い平均スコアに。味方に対するエモートのほうが、より強い荒らしの意図があると認識されたというわけだ。

さらに、荒らしが常態化したコミュニティであることが伝えられた場合には4.63となり、礼儀正しいコミュニティだと伝えられた場合の4.08よりも高くなった。事前に与えられたコミュニティに関する情報も、荒らし行為への判断基準に大きな影響をおよぼすことがわかる。なお、これらの3つの要因は相互作用するのではなく、加算的に作用したとのこと。複数の要因が積み重なることで、スコアは大きく上下したそうだ。

ちなみに研究では、他人の荒らし行為を認識したプレイヤーが、自ら取り締まろうとする「自警行為」への欲求についても分析された。その結果、前述のスコアが高い、すなわち荒らしの意図を強く感じた参加者ほど、相手への誹謗中傷やゲームプレイの妨害など、報復したいという欲求を強く示す傾向がみられたという。

そして研究では、統計モデルを用いて、荒らし行為への報復欲求が生じる流れについても分析されている。その結果、報復したいという衝動は、環境的な手がかりが直接報復の衝動を誘発するのではなく、そこに荒らしの意図を認識することを介して生まれていることが分かったそうだ。

こうした結果から研究チームは、人々が荒らし行為を曖昧な基準で判断しており、たった一つの誤解が荒らし行為の連鎖を引き起こしうると説明している。なかには、荒らしの自警団が誤って他の自警団を荒らしている可能性すらあるとのこと。荒らしの意図がなくとも、他のプレイヤーがそれを荒らし行為として受け取れば、さらなる荒らし行為を呼ぶといった状況にもなりえるわけだ。

荒らしの線引きは難しい

研究チームは、実験によって得られた情報を活用することで、荒らし行為の連鎖を断ち切ることができるかもしれないと述べている。たとえば、無害ではあるものの荒らしと捉えられるリスクがある軽微な行為には、ゲーム内で小さな報酬を与えたりすることで、悪意のある行為であると認識されにくくなる可能性があるという。また、報復行為を引き起こしやすい具体的な手がかりを認識しやすくなるようにモデレーターを訓練するといった活用方法も提示されている。Velez氏は長期的な目標として、荒らし行為の蔓延を防ぐための実践的な対策を講じることを挙げている。

ところで、過去には『エーペックスレジェンズ』の非公式大会において、味方のデスボックスの上で屈伸をおこなった選手に対し、主催者が失格と言い渡し、チームが大会から永久追放と伝えたことで騒動に発展した事例も話題となった(関連記事)。たとえ当事者間ではチームメイト間の“じゃれ合い”でも、外部から見れば不適切と判断されうるケースもあることが見てとれる。今回のVelez氏らの研究結果を踏まえると、味方への煽り行為では特に、当事者と周囲とで認識のズレが生じやすいのかもしれない。各ゲームタイトルでは、さまざまな背景を持ったプレイヤーが集まり、複数のコミュニティが形成される場合も多い。それぞれのコミュニティで常識やマナーとされる行為も異なる可能性はあり、すり合わせることの難しさも存在するのだろう。

『エーペックスレジェンズ』

なお『フォートナイト』においては、一部の「挑発的なエモート」を非表示とする設定項目がアップデートで実装されており、荒らし行為と見なされやすいエモートを見せないことで、衝突を未然に防ぐ取り組みもおこなわれてきた(関連記事)。コミュニティにおいて一定の共通認識が存在するタイトルにおいては、連鎖の発端となりやすい行為を特定できれば、こうした対策なども可能となるはずだ。

なお、荒らし行為の連鎖を抑えるうえでは、荒らしが起きたあとの対処に関する研究も進められている。オランダ・トゥウェンテ大学のJiska Jonas-van Dijk氏らによる研究では、BANなどの懲罰的な措置を補完するものとして、当事者間での対話などを通じて、関係の修復を図るアプローチとなりうる可能性も示唆された(関連記事)。ゲーム内での荒らし行為を巡っては、防止策に限らず今後もさまざまなアプローチが模索されていきそうだ。

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Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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