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大人気MOBA風ローグライト『Shape of Dreams』は「バグ由来のぶっ壊れビルド」すら、仕様にしちゃう。開発者が貫く、“壊して楽しい”ゲーム作り
『Shape of Dreams』の開発者にインタビューを実施し、本作が生まれた経緯や、サプライズ発売されたコンソール版の移植の裏側をうかがった。

NEOWIZは9月17日、Lizard Smoothieが手がける『Shape of Dreams』のPS5/XBOX Series X|S/XBOX CLOUD/XBOX on PC/Nintendo Switch 2版をリリースした。PC/XBOX Game Pass向けにも提供されている。あわせて大型アップデートも実施されており、発売から1周年を迎えた本作に大きな新展開が到来している。本稿ではそんな本作の開発者にインタビューを実施し、本作が生まれた経緯や、こだわり、移植における開発秘話などをうかがった。
『Shape of Dreams』はアクションローグライト要素とMOBA要素が融合した作品だ。最大4人の協力プレイに対応している。舞台となるのは、夢と現実の中間にあるという「急流」と呼ばれる世界。プレイヤーは特徴の異なる8人のキャラクターから一人を選び、8つの世界を巡ってモンスターを倒していく。2024年5月にデモ版が配信され、数多くのアップデートを経て2025年9月にリリースされた本作は、売上150万本を誇る大ヒットを記録している。
今回はそんな本作の開発元Lizard Smoothieの共同創設者兼CEOのSim Eunseop氏と、共同創設者兼ディレクターのKang Kipyo氏にインタビューを実施。コンソール展開を果たした本作の魅力や、開発秘話などを伺った。

ストレスをできるだけ減らした“ぶっ壊せる”ゲーム
――自己紹介と、開発チームの紹介をお願いします。
開発チーム:
私たちLizard Smoothieは、トカゲとゲームと甘いものを愛するインディーゲームデベロッパーチームです。2023年1月、当時大学生だったSim EunseopとKang Kipyoの2人によって設立されました。開始当時は2人体制でしたが、現在は全5名のチームになっています。SimとKangは現役大学生で、今は卒業を目指しています(笑)
――どんな経緯で本作を開発されてきたのでしょうか。
開発チーム:
『Heroes of the Storm』というゲームの開発中止が発表されたことが開発のきっかけになっています。そのゲームが開発中止となったことにとてもがっかりして、そこから『League of Legends』(以下、LoL)を遊び始めました。しかし『LoL』はあまり初心者向けとは言えませんでしたし、『Risk of Rain 2』のようなアクションローグライクに出会ったこともあり、このふたつのゲームの面白さを組み合わせて1本にしたら面白そうだと思いました。そこで、就職活動のポートフォリオにするつもりで開発し始めたのが『Shape Of Dreams』の原型です。
結果として本作は公募展での受賞も果たすことができ、メンターの補助を受けつつビジネスとしてゲーム開発に挑んでみたいという気持ちになり、現在の『Shape Of Dreams』の形となりました。
――対人戦のストレスなくMOBAの楽しみを味わえるという珍しいコンセプトの本作ですが、どんなところに気を付けたのでしょうか。
開発チーム:
対人要素のあるゲームにももちろん良いところはありますが、チームメンバー次第ではストレスを感じる部分がどうしてもあると思います。そこで私たちは、対人戦で感じるようなストレスはできるだけ減らす工夫をしてきました。みんなで一緒にプレイすることが胸躍るような体験となったり、みんなで同じ目標に向かって協力することの魅力が前面に出るように心がけました。
具体的には異なる役割をいろいろ作って、ひとりは戦闘を、また別のひとりはヒールをするというような役割分担のデザインをしました。プレイヤーが役割を強要されていると感じるとそれがストレスに繋がることも知っているので、柔軟な役割分担を可能にし、プレイヤーが役割を積極的に受け入れやすいようにデザインしました。
――本作は非常に高い評価を得ており、セールス面でも大成功を収めています。開発者目線で、どういった点が楽しまれて人気を博していると思いますか。
開発チーム:
ひとつは、プレイヤーが自分の好きな方法でキャラクターを成長させられる点です。もうひとつは本作の大きな特徴ともいえますが、最終的にゲームバランスを崩壊させるレベルまで強くできる部分です。それによって「自分がゲームを破壊した」や「超越した」と思える感覚を得られることが人気の要因になっているのだと思います。
ゲームの開始時点では、ほかのローグライクゲームと同様に落ち着いていて緊張感のある戦闘からスタートとなりますが、この時点でもMOBA特有の操作感とバトルの体験が溶け合っていて面白いです。しかしより重要なことは、最終的にプレイヤー自身が望むとおりに記憶とエッセンスを組み合わせて、奇想天外なシナジーを発見しながら独自のビルドを完成させていくことにあると思います。そこからはハクスラのように多くの敵をなぎ倒す爽快感が得られるので、これが多くのユーザーに刺さったのではないかと分析してします。
――やり込めばぶっ壊れビルドでインチキじみた強さを発揮できる本作ですが、皆さんが予想もしなかったビルドで大暴れするプレイヤーはいましたか。デモ版配信時や発売後にユーザー反応を見ていてびっくりしたことを教えてください。
開発チーム:
今でも印象的なのはミストの無限パリィビルドです。これはデモ版運営中に中国のプレイヤーコミュニティにおいて偶然発見されたビルドです。本作には自らへのダメージ、いわゆる自傷ダメージを与える「過負荷のエッセンス」があるのですが、これをミストのパリィで弾き返すことができます。ただボタンを押すだけで、永遠に無敵状態のまま繰り返しダメージを与え続けられるチート級ビルドなんです。
しかし、これはバグによる挙動でした。ゲームルールの一貫性を保つためにバグ修正をしたところ、この無限ダメージビルドは使えなくなってしまったんですね。そのときにコミュニティでは予想以上に強い反発の意見が噴出し、再び使えるようにしてほしいという書き込みが多数寄せられました。そこで大急ぎで該当の修正パッチをロールバックして、自傷ダメージのパリィだけはできるよう例外処理をおこなった記憶があります。
このときの経験は、チーム内におけるバランス調整の方針に変化をもたらしました。ルールの一貫性やゲームバランスの完璧さを重視するよりも、プレイヤーの創意工夫によって作り出された面白さは可能な限り尊重するという方針へと転換したのです。そのビルドを構築すること自体がそこそこに難しく、そのうえで十分に面白いのであればOKというスタンスに変化したわけです。
――そのなかでも開発スタッフの好きなビルドは何でしたか。
開発チーム:
今ふと思い出したのは、意図していないビルドのひとつです。侍風のキャラクター「空殻」の固有パッシブスキル(アイデンティティ記憶)である「攻撃速度ボーナスを攻撃力に変換する」という効果を使ったビルドがあります。本作では、パッシブスキル自体の入れ替えというのは不可能なんです。固有の仕様を適用して、毎回新しいプレイ体験をもたらすことを意図してそうなっています。
一方で、本作には「破滅の顎」という“記憶”を強化できるオブジェクトがあり、ここでは固有パッシブスキルも強化できます。ただし、繰り返して利用するたびに強化の失敗確率が上がっていくんです。ここでわざとスキル強化に失敗することで、意図して狙ったスキルを消去することができてしまうんですよね。その仕様を活かして、本来固有パッシブスキルで変換されていたはずの攻撃速度ボーナスを復活させ、高速攻撃をおこなうビルドが作られました。一方で確率強化を偶然にも10回連続で成功して、とんでもないプレイが可能になったケースも見かけたことがあって面白かったのを覚えています。

大ヒットの影響は?
――本作は売上が150万本を突破していますが、本作の成功を受けて開発チームの皆様の生活面にも変化はありましたか。
開発チーム:
Lizard Smoothieというチームにとっては大きな変化がありました。インディーゲーム開発チームにはいつ消えてしまうかもわからない不安があり、成長できるのかどうかも心配だったのですが、今は作りたいものを作るための時間と体力がついたように感じられます。
チームメンバーそれぞれの個人としての生活には大きな変化はありません。従来どおり、作りたいゲームや面白いことをただ考えていますね。それでも生活のちょっとした変化としては、会社でフードデリバリーなどを注文するときに料金について以前より気にかけなくてよくなったりということはあります。たとえば、スーパーで何かを選ぶ時にコスパを一番に考えていましたが、今は「美味しそうだな」と思ったものを気兼ねなく買えるようになりましたね(笑)
――ちなみに最近遊ばれて面白かったゲームはありましたか。
Kang氏:
ローグライクジャンルを除いてお話しますと、『ARK: Survival Ascended』が面白かったですね。
Sim氏:
私は『LoL』と『Heroes of the Storm』が好きで、『Heroes of the Storm』には新キャラが追加されたということで復帰を考えました。今一番面白いと思って遊んでいるのは『スーパーバニーマン』です(笑)
──ジャンルの振れ幅が凄い……(笑)
“初っ端から日本語対応”だった理由
――本作はもともと1年以上ライブサービスの「デモ版」が配信され、何十回ものアップデートを実施しながら磨き上げられていました。ある程度完成したタイミングで早期アクセスとして配信する開発者も多いですが、あえてデモ版として開発を進めた狙いはあるのでしょうか。
開発チーム:
デモ版として運営した期間が一定の長さに達していたので、その段階から早期アクセスに移行してさらにユーザーの皆さんを待たせたくはないという思いがありました。厳密には本作のデモ版は一般的な意味での体験版よりは、すでに早期アクセス版に近かったと思います。私たちがデモ版の時点で多くのコンテンツを盛り込んだ大きな理由は、当時の私たちはまだゲーム開発初心者の大学生に過ぎなかったからです。企画力や実力が伴っていなかったため、ゲームが実際に面白いかどうかを知るにはフィードバックに頼るしかありませんでした。そのため多くのコンテンツを体験版内に配信しました。
実際に遊ぶプレイヤーからの客観的な評価やフィードバックを元に、WASDキーでの操作性やマップ機能などを改善し、今の本作のシステムを整えることが出来て良かったです。
――本作はデモ版の時点から日本語に対応していましたが、なぜいきなりローカライズが大変な日本語にも対応させようと思ったのでしょうか。
開発チーム:
本作はグローバルなプレイヤー層をターゲットにしているため、できるだけ多くの言語に対応しようと考えていました。特にMOBAが好きな国は重視していたため、そういう意味でも日本語は必ず対応しようと思いました。
また、それとは別に日本語ローカライズは絶対にしたいという思いもありましたね。というのも、本作がコンテスト受賞を果たしたときに、その公募展のプログラムの一環として東京ゲームショウに行く機会を得たんです。それが人生で初めてゲームショウを見に行く経験となったのですが、そこでは新鮮であったり刺激的であったりするさまざまなゲームに触れ、クリエイターたちと出会い、視野や世界が広がる体験ができました。その思い出が心に残っていたので、いつか自分たちもこのようなゲームショウに出展できるようになりたいと思っていたのも理由のひとつです。2024年には『Shape of Dreams』で東京ゲームショウに出展することができました。
――マーケティングだけでなく、チームの夢も理由になっていたんですね。日本人プレイヤーはどの程度いるのでしょうか。製品版の人気は日本でも話題になりましたが、日本人プレイヤーはデモ版と比べて何倍くらいに増えましたか。
開発チーム:
日本人ユーザーは韓国語ユーザーと同じく、全体から見て3~4位くらいになるユーザー数ですが、その数はデモ版から比較すると製品版では2倍に増えました。ほかの国では、正式版が出た時にデモ版と比較して「少し増えた」くらいだったことを考慮すると、日本は正式リリース後の反響は大きかったと言えるのではないかと思います。

今から遊ぶ『Shape of Dreams』
――今回はコンソール向けにも発売されるということで、MOBAローグライトというと、国内のカジュアルゲーマーは少しハードルを感じる人もいるかもしれません。初心者向けに本作のおすすめの遊び方を教えてくださいますでしょうか。
開発チーム:
まず本作はMOBAにある良さを持つ作品として開発されたものではありますが、ゲームジャンルはMOBAではないと考えています。なのでMOBAの経験はなくても、ローグライクアクションの経験がある方なら簡単に楽しめると思います。またローグライクアクションを遊んだことのあるプレイヤーにとって馴染みやすいだけでなく、本作独自のシステムがあることで新鮮さも感じられるのではないでしょうか。
初心者ユーザー向けのTIPSをお伝えすると、完璧なビルドを目指そうとしないで、ゲーム内で提供しているヒントを読んでさまざまな組み合わせを試すことを楽しんでほしいです。ハードコアユーザー向けにデザインされた部分ももちろんありますが、そうでないユーザーも楽しめるよう難易度や成長度を調整できるオプションがあります。失敗を恐れないで、いろいろなことを試してもらえたら嬉しいです。さきほどお話にあがったような、ゲームバランス崩壊レベルのチート級ぶっ壊れビルドもありますので、そのへんも探して楽しんでいただければと思います。
――本作にはアンロック可能なものも含めていろいろなキャラクターがいますが、初心者向けのキャラクターと、腕に自信のある人が試してみるキャラクターとしておすすめのキャラはいますでしょうか。
開発チーム:
キャラクターアンロック時にキャラクター説明が表示されますので、その説明を読んで「これだ!」と思ったならその気持ちにしたがって遊んでもらうのが一番良いと思います。たとえば近距離が得意だったり攻撃が得意だったり、身体が大きかったり、いろいろな特色を持っています。
それでも初心者向けにひとり選ぶとすれば、ラセルタという銃を使うトカゲのハンターをおすすめします。このキャラクターは簡単すぎず難しすぎず安定感があって、性能面もトップティアと言って差し支えありません。
熟練のゲームプレイヤー向けには空殻という侍の木製人形のキャラクターをおすすめします。開発者としてこのキャラクターを作れたことをとても誇りに思っていますし、とても良い手応えのあるキャラクターになっていますので。
この2キャラクターは対極に位置している2者になっています。空殻は扱いが難しいキャラクターでもありますからね。しかし、本作はどの方にも必ずお気に入りのキャラクターを見つけてもらえるゲームになっているので、自分の好みを探しながらいろいろなキャラクターを触ってみてほしいです。
――マルチプラットフォーム化するということですが、コンソール向け移植で苦労したポイントはありますか?
開発チーム:
コンソール向け開発が初めてだったのでいろいろな事件や困難がありました。移植作業がとても大変なことだとわかり勉強になりました。自分たちが希望している日にリリースできなかったりもしましたし。各コンソール向けの最適化は特に難しかったのですが、パブリッシャーや外部のスタジオと共同で最適化作業を進めたことで、スムーズに移植をおこなえたとは思います。
――ビルド次第ではエフェクトが派手になったりして負荷が高まるということがあると思います。このへんも最適化で課題になったりしましたか。
開発チーム:
技術的な話を抜きにして説明するのはちょっと難しいですね(笑)それでも特に印象深いのはビスマスというキャラクターで、1秒間に20回もスキルを発動するケースがあったりするんです。この描画を最適化するのが難しく大変な思いをしました。その解決のためにはさまざまな方法を試しました。表示量が本来100になるところを70に圧縮して表示させるなどの工夫が要りました。もうひとつ、圧縮をかけてもフリーズしたりスムーズさが損なわれる場合には、投射物が飛んでいく過程を表示せず、瞬時に敵の位置で再表示し結果だけを見せることで解決するなどしましたね。
――本作ではアップデートも継続されていますが、チームの今後の展望を教えてください。
開発チーム:
ユーザーの皆さんからの応援がある限り、アップデートを続けていきたいと考えています。チームにはほかにも作りたいゲームやジャンルがほかにもたくさんあるので、次のチャレンジについても考えているところです。今のところは具体的に決まっていてお知らせできるものというのはありませんが、アイデアレベルの話では我々チームはサバイバルのゲームが好きなのでそういったジャンルもやりたいという漠然としたイメージを持っている段階ですね。Lizard Smoothieはこれからも面白いゲームを作り続け、いつかは韓国の“スーパージャイアントゲームズ”になる日を目指して全力を尽くします。
――最後に日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。
開発チーム:
日本はLizard Smoothieにとってとても特別な大切な国です。人生初のゲームショウ参加として東京ゲームショウに行った際、たくさんのゲームとクリエイターに出会って視野が広がりましたし、新しい世界を見たような感覚でした。普段からもよく日本を旅行して、多くの文化やコンテンツを楽しんでいますが、そこで受けたたくさんのインスピレーションと影響は、私たちチームの未来を描き、ゲーム制作にも多大な助けになっていると感じています。
本作は全世界のどなたでもその好きになれそうな、“ドーパミン”が溢れるようなゲームですし、日本の方もぜひ好きになってくれるって思っています。ローグライク、MOBA、ハクスラなどのジャンルがお好きな方にもおすすめですし、ディーラーや魔法使いなど、あらゆるその好みに合うキャラクターがきっと見つかるゲームになっていますので、よろしくお願いします。
── ありがとうございました。
『Shape of Dreams』はPC(Steam/XBOX on PC)/PS5/XBOX Series X|S/XBOX CLOUD/Nintendo Switch 2向けに配信中だ。PC/XBOX Game Pass向けにも提供されている。
[執筆:Kei Aiuchi]
[聞き手・編集:Hideaki Fujiwara]
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