Steamの「ディスカバリーキュー」に載る鍵は“ウィッシュリスト登録数の瞬間最大風速”か。あるパブリッシャーによる、赤裸々自社データ分析

Kirill Akimkin氏の分析によると、Steamのディスカバリーキューに取り上げられるためには、一日当たりのウィッシュリスト登録件数が重要だという。

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Polden Publishing の共同創設者であるKirill Akimkin氏は8月7日、Steamのディスカバリーキューに取り上げられやすい作品の分析について投稿した。同氏によると、インディーゲームがディスカバリーキューに取り上げられるにはウィッシュリスト登録を集める必要があり、総数よりも一日当たりの登録件数が重要になるという。

Polden Publishingはセルビアに拠点を置くゲーム会社だ。2024年に創設され、大手顧客も含めてPCゲームのマーケティングエージェントを務めつつ、インディーゲームのパブリッシング事業もおこなっている。まだ設立されてさほど経っていないパブリッシャーながら、すでに『Static Dread: The Lighthouse』や『Restaurats』『Final Sentence』など多くの人気作を打ち出している。

『Static Dread: The Lighthouse』

同社の共同創設者であるKirill Akimkin氏は8月7日、LinkedInにて記事を投稿。Polden Publishingとして手がけている16本のゲームのデータを踏まえつつ、Steamのディスカバリーキューに対して考察をおこなった。同氏によるとキューからの訪問数は突然一気に増える傾向があるそうで、“スイッチ”のオンとオフが切り替わるような挙動をすると報告している。

なお、Steamのディスカバリーキューは、ユーザーがまだもっていないオススメのゲームを提示してくれるSteamの機能だ。キューに出てくる作品はユーザーごとに異なり、人気作や新作、すでにライブラリにあるゲームに似ている作品やフレンドが持っている作品などの中から、ピックアップして提示する。しかし具体的にどのような作品がピックアップされるかは明かされておらず、アルゴリズムがなんらかの基準で選定していると考えられている。

Akimkin氏によるとPolden Publishingが今後リリース予定の16作品では、ディスカバリーキュー経由のストアページ流入数が二極化している。多い方のグループとなる10作品では、30日間で少なくとも1万5797回のアクセスがあり、一番多いもので28万3110回もの流入があった。しかし少ない方のグループとなる6作品では、30日間で最高でも473回。両グループには大きな差があり、注目度に応じて段階的に露出が増えるのではなく、なんらかの条件でディスカバリーキューに取り上げられるかどうかが決まるようだとした。

そしてそのスイッチがオンになる理由を検証するため、Akimkin氏はデータを分析した。これらの作品はいずれもまだ未発売のため、ユーザーレビュー評価や売上などの数字は存在していない。そのためウィッシュリスト登録数に着目して調査をおこなったようだ。

Image Credit: Kirill Akimkin on LinkedIn

全10作品のうち、5作品ではウィッシュリスト登録数が初めて5000件を超えた日に、ディスカバリーキューからの訪問数も100件を突破。さらに4作品では翌日、残る1作品では2日後に100件を超えたという。10作品の事例すべてにおいて、ウィッシュリスト登録が急増してから数日以内にディスカバリーキューからの流入も急増したことから、Akimkin氏はウィッシュリスト登録数がスイッチになっている可能性があると考えているそうだ。

そしてさらにデータを観察したところ、ウィッシュリスト登録数の累計よりも、一日当たりの登録件数が重要のように見えたという。ディスカバリーキューの“スイッチ”がオンになった作品では、最少でも一日あたり6980件のウィッシュリスト登録を記録していた。一方、じわじわとウィッシュリスト登録を増やしていった作品でも、一日当たりの最高記録が3179件の場合だと、“スイッチ”はオフのままだったという。

Image Credit: Kirill Akimkin on LinkedIn

このことから同氏は、一日当たりに5000件から7000件のウィッシュリスト登録があると、ディスカバリーキューにオススメ作品として登場する条件を満たすのではないかと推測しているとのこと。分析対象となった作品数が16本と少ないこともあり、あくまで目安の数字にすぎないとしつつ、一日当たり6000件ほどの登録を2~3日維持できれば、ピックアップされるようになるのではないかとの基準を伝えている。

なお、ウィッシュリスト登録が多い日は大抵の場合、ストアページ閲覧数など他の数字も好調だ。そのため必ずしもウィッシュリスト登録数が直接的な因子になっているとは限らないという。ただ同氏が見るところでは、少なくとも閲覧数あたりのウィッシュリストコンバージョン率などは関係ないように思えるとのこと。これまでPolden Publishingが扱ってきた作品ではひとまず上記の仮説で説明できるため、今後は目安として一日当たりのウィッシュリスト登録数を指標にしつつ、仮説の検証を続けていきたいと伝えている。

Steamはディスカバリーキューや「人気の新作」といったコーナーへの選出基準を明確にはしておらず、パブリッシャー/デベロッパーにとって、閾値やそれらしい基準が把握できれば、具体的なマーケティング戦略も立てやすくなるかもしれない。そうした観点では、今回の分析が示すのはウィッシュリストの総数だけでなく、「どれだけの勢いで増えているか」に注目する価値があるということだろう。

Akimkin氏は、限られたマーケティング予算も特定の日に集中させて施策をおこなうことで、こうした勢いを意図的に作り出せる可能性を指摘している。Steamのディスカバリーキューが実際にこうした仕組みで動いているかは分からないものの、新進気鋭のパブリッシャーが実際の数字を交えつつ自身の戦略を語った、興味深い分析である。

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Akihiro Sakurai
Akihiro Sakurai

気になったゲームは色々遊びますが、放っておくと延々とストラテジーゲームをやっています。でも一番好きなのはテンポの速い3Dアクションです

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