『アークナイツ:エンドフィールド』開発者、“きびきび美麗グラフィック”の秘訣を明かす。がっつり魔改造Unityによる、汎用基盤と独自技術の「いいとこどり」

『アークナイツ:エンドフィールド』の設計や最適化に関する秘訣が、シニアテックディレクターによって語られた。

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Hypergryphにてシニアテックディレクターを務めるHonghui Fei氏は7月21日、韓国・ソウルでおこなわれたUnityの開発者カンファレンス「Unite Seoul 2026」にて登壇。『アークナイツ:エンドフィールド』の設計や最適化に関する秘訣が語られた。海外メディアInvenなどが伝えている。

『アークナイツ:エンドフィールド』は、『アークナイツ』を手がけるHypergryphの新作ゲームである。『アークナイツ』が2Dタワーディフェンスゲームであったのに対し、本作は3Dリアルタイム戦略RPGとなっている。舞台となるのは巨大ガス惑星タロスの衛星「タロII」。プレイヤーは高い技術力を持つエンドフィールド工業の伝説的存在「管理人」として、この星を巡るさまざまな脅威や陰謀に立ち向かうことになる。RPGとしての戦闘や探索はもちろん、各種アイテムを量産できる工場自動化シムのような要素「集成工業システム」も特徴だ。

本作はUnityを用いて開発されているタイトルでありながら、良い意味でUnityらしからぬリアルなグラフィックがたびたび話題となってきた。そうした映像美を保ちつつも、通常の設定の範囲内では処理落ちなどは見られず、各マップの行き来もスピーディだ。そのため本作の設計方針や最適化手法などの技術的側面には、かねてより熱い注目が寄せられてきたわけだ。Fei氏の講演では、Unityを独自にカスタマイズしながら活用する、本作の開発の舞台裏が語られている。

まず本作では「ECS(Entity Component System)」、すなわちゲーム内のオブジェクトなどを表す「エンティティ」と、エンティティを構成するデータである「コンポーネント」、そしてそれらを処理する「システム」を分離して管理するアプローチを採用。Fei氏によれば、汎用的なECSを使用するのではなく、独自に構築したECSを用いているという。

たとえば、コンポーネントの構成を128ビットのマスクで管理することで、目的のコンポーネントの格納位置を示すオフセットを、わずか約3CPUサイクルで特定できるようになっているそうだ。またメモリ配置については、同じコンポーネント構成のエンティティを同じチャンクにまとめた上で、同じ種類のコンポーネントデータを連続して配置するSoA(Structure of Arrays)方式を採用。CPUが効率よくデータにアクセスできるようにすることで、大量のエンティティを高速に処理する仕組みを実現している。

そして、描画処理においても独自の工夫が施されているようだ。Fei氏いわく、本作ではレンダリングパイプラインとして、Unityが提供するURPやHDRPなどのスクリプタブルレンダーパイプライン(SRP)ではなく、C++の独自レンダリングパイプラインを採用しているとのこと。というのも、UnityのSRPではC#スクリプトを用いてレンダリング処理の制御をおこなうため、コアレンダーループ内で毎フレーム数千回以上の処理が発生する本作では、C++のネイティブコードとの間を跨ぐ際のオーバーヘッドが問題となってしまうという。そのため、C++で書かれたレンダーパイプラインを独自に実装したそうだ。

さらに、それぞれのレンダーパスがどのリソースを読み書きするのかを宣言時に明示することで、リソース間の依存関係をあらかじめ把握できるようにしたという。これにより不要なGPU同期は減り、使用期間が重ならない一時リソースに同じVRAM領域を割り当てることで、VRAMのピーク使用量も抑えられているとのこと。またグラフィックスAPI「Vulkan」にインスピレーションを受け、プラットフォーム別のグラフィックスAPIとエンジンをつなぐ抽象化レイヤーを低レベルに設計。レンダーパスなどの低レベルな要素を開発者が直接扱えるようになり、レンダリングパイプラインで最適化されたデータをGPUバックエンドへと効率よく受け渡せるようになったという。

ほかにも、本作ではカメラに映らないオブジェクトの描画を省くカリングのほか、ソート、バッチングといった描画処理の最適化が施されている。カリング処理では、Snapdragon 8 Gen 1搭載端末で、約50万個あった描画候補を約4万個にまで削減。PCでも約60万個から約6万個にまで絞り込めたそうだ。

本作の発売前におこなわれたメディア向けカンファレンスなどでも、Unityの基幹部分に独自の改造を施した上で開発されていることが明かされていた(関連記事弊誌インタビュー記事)。今回の講演では、その詳細が開発者の口から語られたかたち。Unityの高い生産性を享受しつつ、ECSやカリング、レンダリングパイプライン、デバイス抽象化などに独自の工夫を導入。一定の評価を獲得している本作のグラフィックでは、そうした汎用エンジンと独自技術の“いいとこどり”とも言える設計による最適化が功を奏したのだろう。

昨今のゲーム開発においては、採用するゲームエンジンやその活用方法がメーカーによってさまざまだ。自社開発の内製エンジンを用いるだけでなく、Unityをはじめとする汎用エンジンを独自にカスタマイズする例もよくみられる。たとえばKURO GAMESが手がける『鳴潮』では、Unreal Engine 4に独自の改造を施して利用しているようで、技術者の視点からその“変態度合い”が分析されていた(関連記事)。汎用エンジンの基盤を活用することには、サポートやエコシステムの手厚さに加えて、参加する開発者が使い慣れているなどメリットも多いとみられる。今後もこうした開発方針が広く採用されていく可能性はあるだろう。

ちなみに『アークナイツ:エンドフィールド』では、7月16日に配信された新バージョン「向淵行」にて、ひっそりとタイツ表現が進化していることが発見されていた(関連記事)。コンテンツの実装にあわせて進化を続ける本作の技術面にも注目してみてはいかがだろうか。

『アークナイツ:エンドフィールド』はPC(公式サイト/Epic Gamesストア)/PS5/iOS/Android向けに基本プレイ無料で配信中だ。

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Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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