『マインクラフト』で「約3時間だけ配信された激レアバージョン」が発掘される。奇跡の考古学的発見

 

全世界のファンから愛され続ける『マインクラフト』は、パブリックアルファ版リリース後、約12年にわたる歴史のなかで膨大な数のアップデートが重ねられてきた。過去の同作リリースバージョンには、数時間だけ配信された極めて稀少なものも存在している。今回、そうした“激レア”バージョンのファイルを、ある女性が保存しており、海外コミュニティの話題を呼んでいる。

発端は、10年前の女性のあるTwitter投稿だった。ユーザーのLuna氏が2010年に投稿したのは、「『マインクラフト』のアップデートだ!」という素朴なコメントだった。このツイートは、やがて『マインクラフト』の旧バージョン保存を目的とするコミュニティOmniarchiveの目に留まることとなった。その理由は、“投稿されたタイミング”だ。


上記投稿は、現地時間2010年9月18日におこなわれている。このタイミングが奇跡的だったのだ。というのも、ツイートがなされた当時、パブリックアルファ版『マインクラフト』のアップデートは、頻繁かつ突然おこなわれる場合が多かった。そのなかに「Seecret Updates(なーいしょのアップデート)」と呼ばれる一連のアップデートがあった。一連のアップデートの最後となるバージョン1.1.1については、約3時間25分のあいだのみ配信されたという。その、“幻の”バージョン1.1.1が配信されたのが、2010年9月18日だったのだ。

『マインクラフト』保存コミュニティは、バージョン1.1.1の配信と同時期にアップデートに言及した上記ツイートに着目した。そしてLuna氏は6月26日、数か月前にあるユーザーからバージョン1.1.1に関する問い合わせのDMを受け取ったことを明かした。しかし、たまたまタイミングが悪く、その連絡をLuna氏はスルーしてしまったという。やがて、ユーザーによる2度目のコンタクトがLuna氏のもとに届いた。幸いタイミングが良かったため、Luna氏は昔使っていたデータのバックアップの発掘に乗り出した。

Luna氏は、しまい込んでいたUSBハードドライブを持ち出して、間に合わせのスクリプトを組み、『マインクラフト』構成ファイルを捜査。やがてLuna氏が発見したのは、「2010年9月18日21時53分」という更新時間を持つ『マインクラフト』ファイル群だった。これはまさに、バージョン1.1.1がリリースされたわずかな期間と合致するものだ。ファイルを発見したLuna氏も「心の準備ができていなかった」と驚きを伝えている。


次にLuna氏がおこなったのは、発見した『マインクラフト』のバージョンが1.1.1であるか確証を得ることだった。『マインクラフト』Java版を構成する「.jar」ファイルは、実質的には「.zip」形式で動作に必要なファイルを圧縮したものだ。同氏はこれを解凍し、中身のファイルを調査。すると現れたのは、「Minecraft Alpha v1.1.1」の文字。まさしく、『マインクラフト』保存コミュニティが追い求めた、バージョン1.1.1のファイルだったのだ。

同氏が『マインクラフト』保存コミュニティOmniarchiveのDiscordサーバーにてこの発見を伝えると、コミュニティメンバーは騒然としたそうだ。バージョン1.1.1はその希少性ゆえに、構成ファイルがアーカイブされていないバージョンの一つ。コミュニティは長年の探索をおこなっていたものの成果はなく、その発見もなかば絶望視されていた。すなわち、同コミュニティにとってバージョン1.1.1の発掘は奇跡ともいえる大事件だったのだ。


Luna氏が発見したファイルは、コミュニティのモデレーターにより追試の対象となった。Luna氏いわく、やがてファイルが“本物”だと認められると、OmniarchiveのDiscordサーバーは「爆発」したそうだ。長年追い求めた幻のバージョンが発見された驚きと興奮は、コミュニティメンバーにとって甚大なものだっただろう。

その後も、Luna氏はハードドライブを調査して幾つかの稀少バージョンを発掘し、Omniarchiveに提供しているようだ。Luna氏は一連のツイートのなかで、コミュニティを支えられたことへの喜びを示すと共に、「今回の教訓:ファイルは絶対消さない」とコメント。古いファイルをアーカイブする活動をするコミュニティへのサポートを呼びかけた。

今回の発見は、ある種、考古学的とも言えるものではないだろうか。ゲームにまつわる過去の遺産を保存、保護することは、ゲームの歴史を紐解くことに繋がっていくだろう。Luna氏の発見に賛辞を送るとともに、今後もゲーム保存コミュニティが興味深い発見を重ねていくことを祈りたい。