「プロジェクトマネージャーは一体どれだけ大事なのか」、『BLUE PROTOCOL』PM陣に訊いて驚く“プロジェクトの背骨”っぷり

正式リリースを迎えた『BLUE PROTOCOL』のチームが、現在プロジェクトマネージャー職を募集中だ。『BLUE PROTOCOL』チームで全体管理を担当している松井 圭太氏、プロセス管理セクションで活躍されている薄葉 唯氏の両名に、プロジェクトマネージャーとはなんたるか、どのような働きをしているのか、話をうかがった。

バンダイナムコオンラインとバンダイナムコスタジオが共同開発する国産オンラインRPG。
開発はバンダイナムコスタジオが担当し、6月14日に正式リリースを迎えた『BLUE PROTOCOL』のチームが、現在プロジェクトマネージャー職を募集中だ。ゲーム開発において、ディレクターやプロデューサーはフロントマン、デザイナーやプログラマーは職人、といったイメージが多い中で、プロジェクトマネージャー(以下PM)は“裏方”という印象を抱いている人も少なくないだろう。

だがバンダイナムコスタジオでは、PMは開発を支える三つの柱のひとつととらえ、会社としても重要視しているという。今回は、実際に『BLUE PROTOCOL』チームで全体管理を担当している松井 圭太氏、プロセス管理セクションで活躍されている薄葉 唯氏の両名に話をうかがった。
応募は以下より:

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──自己紹介をお願いいたします。

松井 圭太(以下、松井)氏:
現在は『BLUE PROTOCOL』のプロジェクトマネージャー(以下、PM)をしています。ナムコのデバッガーとしてゲーム業界のキャリアをスタートさせました。デバッグとして最初に携わったのはPS版『テイルズ オブ エターニア』で、それに魅了されて数多くの『テイルズ オブ』シリーズにデバッガーとして関わってきました。


『テイルズ オブ』シリーズが大好きなタイトルになりましたので、後に立ち上がった株式会社ナムコ・テイルズスタジオに入社しました。そこから9年ぐらいは『テイルズ オブ』シリーズ関連の渉外窓口や、進捗管理、進行管理を担当させていただきました。2012年ぐらいから、違うジャンルのゲームにも携わりたいと思ったので、ニンテンドー3DSとWii U向けの大規模対戦ゲームにPMとして参加させていただき、そこを終えてから自分の希望により、現在の『BLUE PROTOCOL』プロジェクトに異動してきたのが私の経歴になります。

薄葉 唯(以下、薄葉)氏:
キャリアの最初は別の会社に新卒で入社してスタートしました。その会社はゲームに限らずアニメや映像も含めて受託している会社でした。そこで進行管理担当として入社し、最初のうちは進行管理業務だけをしていましたが、会社の方針で進行管理担当も営業を兼任しなければいけなくなって(笑)なので、自分で案件を頂戴しに行きながら、進行案件も管理して、納品して、をずっと繰り返していました。


前の会社ではゲーム以外のものも担当していたため、ゲーム開発にもっと関わりたいと思い、バンダイナムコスタジオに転職し、『BLUE PROTOCOL』にPMとして参加しています。

松井氏:
まず最初に、この記事を読む方にお伝えしておきたいのは、『BLUE PROTOCOL』はプロセス管理やPM手法について、目新しいことを取り入れたプロジェクトではないということです。アジャイル開発、PMBOKやCCPM等、PMとして取り入れていく手法はいくつかあると思います。それらは我々も長期開発していく過程で試行錯誤して取り入れようとはしてきました。ただ結果として、本制作に入ったときにこれはウォーターフォールでやっていくのが良いのではないかと開発のひとつの指針として出たので、であればそれをベースにどうやって管理していくかを模索していこうとなりました。そもそもプロジェクトとして一番やりやすいやり方で管理したい、PMとしてプロジェクトに無理なやり方を押し付けたいわけじゃないというのが、私や薄葉の考え方でもあります。

本制作に入ってから『BLUE PROTOCOL』のPM役割において、決してかっこいいことをやってきたわけじゃないし、当たり前の話も多く含まれるので、そういう意味では、最近のトレンドを取り入れたやり方ではないプロジェクトであることは誤解がないように先に伝えておきたいです。ただ、この記事を見て、興味を持って一緒にPMとして開発と運営に関わってみたいと思う方がいらしたら大変嬉しいです。

──ありがとうございます。今回PM募集とのお話ですが、改めてPMとはどのような職業なのかをご説明ください。

松井氏:
ゲーム開発は大規模になればなるほど、情報の流通が鍵になってくると思っています。流通というのは、簡単にいうと“人と人のコミュニケーションが多発して、それを整理する”ことになります。PMが機能すれば、今誰が何をやっているのかを整理整頓して流れをよくすることができるし、責任の所在がどこにあるかを明確にしていくことができます。

また、作業の方向性をPMが把握しハンドル出来る環境にすることで、進捗を追っていくことがより具体的にできますし、作業の見える化につながります。一見簡単そうなんですけれども、ここが一番難しくて、実際に『BLUE PROTOCOL』でも、100%うまくやったとは言い切れないところでもあるので、ここは反省し振り返りを行いながら軌道修正していく必要があります。

今言ったようなことをPM側で解消に導く手立てがないと、プロジェクトが向かうべき方向が定まらず、先に進めることが困難になるので、やはりそこはPMががむしゃらに泥臭く、どうにか検討して調整することが必要なのかなと。それが機能しないと、スケジュールの遅延やコミュニケーションミスに直結するケースが多いので、PMの仕事はそういうところにアンテナをはって、すぐにキャッチアップし、交通整理する必要があると感じております。

あとは大規模だからこそ、責任の所在がわからなくなったときに、我々PM班の存在価値が問われると思っています。他からすると、なんでPMが動かないんだという事になり、問題も解決せず前進もしないので、常に動き続けることが重要だと感じています。

薄葉氏:
一番オーソドックスなのは、スケジュール立てて、ちゃんと進んでいるか、あるいは遅れているかなど、常にスケジュールを管理する仕事です。ただしうちのプロジェクトにおいては、そのベースを当然やりつつ、大規模であるからこそのチームとチームを繋ぐ仕事がすごく多いです。そのため、「PMは何をやってる人なの」と聞かれると、私はだいたい「いろんな人の話を聞いてる人」と説明しています。進行を見つつ、なにか困っていることありませんか、と聞いてみたり、これは大丈夫ですか、と情報を拾いに行ってみたり。プロジェクトによっては予算を見なさいとか、どこに重きをおくか違いはあると思いますが、うちのプロジェクトは人と人を繋ぐ仕事が多いですね。


──『BLUE PROTOCOL』開発においてのPM業務の具体的な1日の流れを教えてください。

薄葉氏:
今の『BLUE PROTOCOL』チームにおけるPM業務のオーソドックスな一日の流れとは、大体最初は朝会から始まります。PM同士の朝会もあれば、各自担当している班の朝会もあります。計画が順調に進行しているかを確認したり、作業のボトルネックになっている部分がないかヒアリングし、日中はその解消のために打ち合わせをしたり。そういう感じが多いですね。

『BLUE PROTOCOL』は、本当に作っているセクション・人員が多いんです。インゲームやアウトゲームはもちろん関係するセクションも含めて、それぞれちゃんと繋がっていないと当然一個のものができないので、隣の班の進行を確認して「日付通りにボールが来るか聞いてきます」みたいに日々駆けずり回っている形です。ですので、実際はほとんどが、後でご紹介する「Hansoft」という進捗管理ツールとにらめっこしているか、会議に出ているかのどちらかですね。ほかにも細かな業務はあって、蓋を開くと「それPMの仕事かな?」みたいなのも結構あるのですが(笑)

松井氏:
私の業務は、薄葉からの宿題が多いです(笑)薄葉が現場間を見渡して、こことここで火が出てますよと報告があがります。火が出てますと言われてもわからないよと(笑)要は完全に問題が放置されているとか、課題が宙づりになっている状態なんですよね。放っておいたら大変な事になるのはわかっているので、そういうとき一歩踏み込んでとにかく話を聞いて、今後の構想練るなら練って、じゃあこっちの方向に進みたいといくつか案をもって上司に相談し、最終的にプロデューサーにも報告し、ネクストアクションを決めるのが、最近は多いです。よくこういった問題解決では0か1かの話をしますけど、PMでも火消しをするときは0から1にしなきゃいけないときは多いですね。

薄葉氏:
単純に進行が遅れている、遅れていないは現場PMメンバーと解決に向けて動きます。課題や問題の原因の把握、分析、解決方法などを他のリーダー陣と相談しながら進めています。私からみて、決定がなされていないものや問題が完全に空中に止まっていそうなものなど、誰もボールを持っていない気がするという懸念が出たときは、松井さんと協議して、松井さんからプロデューサーとディレクターに相談していただいたりします。

──なるほど、薄葉さんの言う“火が出ている”というのは、進行的にほっとけないケースというニュアンスなのですね。

薄葉氏:
そうです。それが多いと思います。

松井氏:
私としては、ディレクターとプロデューサーに持っていくというのは、それなりのことなんで、まずは自分の限界まで踏みとどまりたいですね。それでも、ダメな場合は上司にしっかりと相談し、ネクストアクションを考えるようにしています。


──ありがとうございます。現在バンダイナムコスタジオではPM業務においてどのようなツールや環境を使用されていますか。

薄葉氏:
環境やツールは正直プロジェクトによって異なります。手法に合わせて、適切なものをそのチームメンバーで選ぶケースが基本的に多いと思います。『BLUE PROTOCOL』においてはウォーターフォールでやりましょうと決まったので、線表とよばれるガントが引きやすい「Hansoft」をメインに使用しています。

チーム内のもうちょっと細かい取り回しなどは、別にチケット駆動型といわれるJiraやBTS(バグトラッキングシステム)を採用していますし、海外のお取引先ではJiraやRedmineを使われているところもあり、会社さんによって結構違う状態です。

──状況やセクションに応じていろいろ変えながら運用されていると。

薄葉氏:
そうです。基本的には進行の取り回しにこだわりがあるのであって、開発に適していればツールにこだわりはないので、あくまでその使い方にこだわるような感じになっています。

──ツールが複数あると情報の抜けや渋滞が懸念されるところですが、そこはどのように対応されているのでしょうか。

薄葉氏:
うちのプロジェクトでは、どのツールを利用しても最後はHansoftで情報を管理したいとお願いしています。ただ、Hansoftと別ツールで2重管理になるコストをかけてでも、別ツールの方が適している場合は、別ツールの利用自体は制限していません。そこはタスクの管理する粒度、細かさでコントロールすればよく、Hansoftに情報が統合されていれば問題ないと考えています。

松井氏:
まさにそこはPMの一番の役割だと思います。現場でやりやすいようにやっていいというのはPM側から言っているんだから、最終的な情報をHansoftに持ってくる仕組みとやり方は我々が考えて責任を持つ。そこが崩れると、上にある全体ロードマップとかも崩れていくので、そこだけは死守しようと。

──現場がやりやすさ重視で進められるように、情報の制御はPM側がコントロールする感じなのですね。ありがとうございます。昨今はコロナ化の影響などもありゲーム開発業界でもリモートワークへの移行が進んでいますが、現在PMチームとしてはどのような働き方が多いですか。

薄葉氏:
プロジェクトとしては週1回の出社をお願いしています。ただ、作業環境や担当範囲により異なります。

──おふたりはリーダークラスのレイヤーですので、出社が多めだったりするのでしょうか。

松井氏:
私は週の2日出社しています。

──松井さんでも週2出社なんですね。リーダーレイヤーの方が週2と考えると、リモート率高い印象です。

薄葉氏:
職種によって異なります。QAメンバーとかは毎日出社しています。逆に家にも作業環境があり、在宅の方が効率的な場合は在宅の比率が高いメンバーもいます。

スムーズな開発のために重要となる “三角形”。PMが果たすべき役割とは


──こちらの資料を見て私は驚いたのですが、バンダイナムコスタジオにおいてはプロデューサー、ディレクター、プロジェクトマネージャーが三角形になっており、三つの柱となっています。PMはプロデューサー、ディレクターと同じレベルのレイヤーとして据えられているのに驚きました。地位が高いということですよね。こうしたPMのポジションは、古くからバンダイナムコスタジオに根付いているものなのでしょうか。

松井氏:
いえ、バンダイナムコスタジオにおけるPMの役割が定義されたのは、実際にはここ3~4年ぐらいで、PM職が組織として新設され、プロデューサー、ディレクター、プロジェクトマネージャー三位一体になって役割を明確にして動いていこうとなった認識です。この図に書いてある通り、QCD(Quality、Cost、Delivery)は基本的にはプロデューサーが判断する。品質の責任はディレクターが持ち、コストと納期の責任はPMが持つ関係性にあります。

バンダイナムコスタジオは大規模なプロジェクトが多いので、大規模開発していく上では、こういう構成でちゃんと役割が設定されていないと、動きづらいところがあります。責任の所在が明確にならないだとか、分からないうちにどこかで進行が止まっているだとか。今でもディレクターが兼務して品質管理やPM業務をやっているところが多いと思うんですけど、メンバーが100人を超えてくると、なかなか兼任でやれるものでもない。そうなると、こういう役割分担にシフトしていくのは自然な流れだと感じています。会社としてPMという仕事が認知されただけでも、すごく嬉しいです。

──3~4年前からということは、『BLUE PROTOCOL』の開発途中にこのような組織形態になったと思うのですが、それによる変化はありましたか。

松井氏:
『BLUE PROTOCOL』は、以前から既にこの役割において動いていたところがあるので、プロジェクトとして大きく変わったことはないです。ただ、バンダイナムコスタジオも1000人以上従業員がいる会社でプロジェクトも複数あるので、PM間の横の連携、手法などの共有を大切にしようという動きが生まれたのは大きいことだと思います。

──松井さんはバンダイナムコスタジオに勤めて長いと思うのですが、近年開発の進め方というか、開発チームにおいてPMが重要になってきているのは感じていますか。

松井氏:
それは感じます。昔に比べると、“そういう役割”だっていうことが認知されてからはずいぶん変わりました。昔はやっぱりPM=雑用と思われがちで、開発業務以外でもなんでもやっていました。大規模開発が増えたという事も大きな理由になりますが、開発業務以外に時間を割くのは効率が悪いという事もあり、役割自体が明確に変化してきているのは感じます。

──なぜ社内でPMが重要視されるようになったとお考えですか。

薄葉氏:
私の認識としては、やはりプロジェクトでのスケジュールの遅れがしばしば発生していたことがあるのではないかと思います。スケジュールが遅れることによって開発期間が長くなり、よりコストがかかるのは、会社として課題としていた部分ではないかと。なのでPMの役割をコストと納期の責任者としてしっかり立てて、きちんとコントロールしていくというのは、経緯のひとつにあるかと思います。『BLUE PROTOCOL』もそういう流れによって開発の軌道に乗ったプロジェクトなので、クリエイティブ側のチームもPMチームとうまく一緒にやれているのかなと。

──ありがとうございます。今回頂いた資料でもうひとつ面白いのは、PM内でも全体管理、プロセス管理、進行管理が細かに分けられていていることです。役職が細分化されている意図と、各職のおおまかな業務を教えていただけますか。


薄葉氏:
弊社は大規模開発が多いとお話させていただいているんですけど、やはりPMひとりが把握して消化できる問題の数は限られてしまうので、現場のクリエイター、作業者さんに寄り添っているメンバー、これが主に各班でセクション内進捗管理を行うPMとしています。班内だけでなく、チームとチームを繋げないといけないケースについて対処するのが、私が見ているセクション管理の部分です。国内に限らず海外に影響が出ないかも含めて私の方で見ています。そこからさらに、私の手にあまる問題について対応するために、全体管理として松井さんがいる感じです。

ディレクターやプロデューサーだけがゴールではない。“ずっとPMで“という働き方

──PMとして『BLUE PROTOCOL』に関わる魅力を教えてください。

薄葉氏:
大きいプロジェクトである、ということは魅力のひとつになると思います。私の経歴でも、こんなに大きいプロジェクトをやったことはなかったので、ただただ楽しいところはあります。長期開発していますけど、まだまだ課題があり、問題が発生し、それらに対して一生懸命解決法を考えて実行するのが楽しいです。お客様にご支援いただいている限りは続くサービスなので、ずっとトライし続けられるところがいっぱいあるのは魅力かなと思います。

──PMの経験値的にもたまるものは大きいですか。

薄葉氏:
そうです。問題になる根っこの部分は大体どのプロジェクトでも一緒だと思います。一方で、プロジェクトが大きいがゆえに、問題の掛け算のパターンがすごく多い。例えばですが、タスク管理だけでなく、情報の伝え方1つでも関わっている人が多いので、同じ文章でも受け取り方が全然違う方がいる。そういうケースも踏まえて、どうやって発信した方がいいか考えていく。どう情報を丁寧に正確に伝えるのか手法、手段を考えるのが大変ですが楽しいです。

──松井さんはベテランですけど、そんなベテラン的にも『BLUE PROTOCOL』に関わることで学ぶものは多いですか。

松井氏:
自分がこれまで培ってきたもの、例えばQA時代に養ったQA的な目線であるとか、昔のPM管理手法で今でも部分的に使えるものがあるとか、これまでの知見がすべてここで使えるおもしろさはあります。もちろん面倒くさいと思うこともありますけどね(笑)


──(笑)『BLUE PROTOCOL』は規模も大きいですし、求められるスキルもいろいろあると思うのですが、PMとして活躍するためにどのような資質が求められると感じますか。

薄葉氏:
先ほどの話にもありますが、今まで深めてきた知見で使えるものは幅広くあるので、スキルについてはそれほど重要ではありません。どちらかといえば、正解かはわからないけれど、とりあえず走り回れるというキャラクター性の方が素質としては重要です。自ら問題を拾い上げて、解決のために奔走する姿勢、これは『BLUEPROTOCOL』に限らずPMとして必要なのかなと思います。

また、極端な話、私達PMがどんなに頑張っても、どれだけ徹夜をしても物はできない、作っていただかなきゃ開発は進行しないので、そういう意味だと独りよがりではいけない。チームメンバーが作業しやすいような進行や環境、その他もろもろを一緒に考えて、作っていくことが、結果プロジェクトの全体利益に繋がっていくのかなと思います。
一見すると雑用に思えることも、開発進行が止まるぐらいならと拾っていくぐらいの気持ちが良いのかなと思います。

松井氏:
やっぱり問題を自分事にできる人、指示を待つのではなく提案ベースでまずは動いてみる、そういう考えの人に是非参加してほしいと思っています。

薄葉氏:
役割分担や自分の線引きの中でお仕事することも当然大事だとは思います。ただ課題や問題が重かったり、大きかったりすればするほど、最初の線があいまいで、むしろ自分で線を引かなきゃいけない部分はありますので、自分から一歩踏み出せるかが大事です。

──そういったマインドを持っていれば、他業界の方でもやっていけるでしょうか。

薄葉氏:
ゲーム開発を経験されていない方でも、モノ作り関係のスケジュールや何かしらの進行スケジュールを組む仕事をされていた方であれば、ある程度のベースの考え方は一緒かなと思います。作業順や優先度など、その組み方をした何かしらの理由を軸に計画を立てられているはずなので。例えば、その軸のところをゲーム業界向けに変換してもえればOKという感覚です。

とはいえクリエイターさんと話をしたりすると、使われる言葉にゲーム開発の専門用語があります。例えば機能Aの開発と機能Bの開発が被っていて、どっちを優先するのが効率的かみたいなケースはある程度専門的な知識がないとスケジュールを組めないので、専門用語や知識を学ぶガッツのある方の方がいいと思います。

PMにはエンジニアやビジュアルアーティストを経験しているメンバーとかもいますので、ゲーム業界内の他職種からの転向も歓迎です。現在のプロジェクトの状況を鑑みると、エンジニア寄りの人が欲しいですね。


──最後に、『BLUE PROTOCOL』のPMとして働くことで、得られるもの、スキル/キャリア面であったり、待遇面であったり、いろいろあると思うのですが、おふたりが魅力を感じている部分はどこですか。

松井氏:
『BLUE PROTOCOL』は6月14日にVer1.00をリリースして、運営フェーズに入っているのですが、それと平行して開発フェーズ(アップデート作業含む)も盛り沢山です。運営に入りつつ、開発も継続する、その両輪をうまくこなし乗り越えていく過程でスキルとして得られるものはいっぱいあると思うんです。というのと、既存IPの開発と違い、新規IPであることは、ある程度自由がききますし、大変な局面もあると思いますが、いかようにでもなる面白さはPMとしても感じとれると思います。また『BLUE PROTOCOL』のPMにおいての話かもしれませんが、マネジメントとしても、スコープ、スケジュール、コミュニケーション、リスク、ステークホルダーとの折衝等々、上げればきりがないですが、これを満遍なくこなしてほしいというよりは、どこか一点だけでも飛びぬけて高いものをもっている方が、ご自身の動き方と持ち味により、活躍できる場面が十分にあると考えています。

──規模も大きいですし、『BLUE PROTOCOL』で鍛えられればそうそうのことでは動じないPMになりそうですね。

松井氏:
確かにそれはあるかも。

薄葉氏:
『BLUE PROTOCOL』に限らず、バンダイナムコスタジオとしてのことで言いますと、先ほどの組織図にもあるように、開発を支える一つの柱としてPMがあるというのはキャリアの面で本当に大きい意味を持つ可能性があると思っています。

PMはキャリアを積んだ最後のゴールがどこになるかが、割と会社によって違ったりするんです。ステップアップするにはプロデューサーかディレクターを目指すしかなく、PMは続けられないという組織もあると思います。バンダイナムコスタジオにおいては、会社がPMという役割を認識して重要視してくれているので、プロジェクトで日々PM業務をし続けながら、PMとしての高みを目指し続けますと言えるようになったのは大きいと思いました。


松井氏:
そうだね。プロジェクトマネジメントコースとして、コースがちゃんと用意されているからね。もちろんそこからプロデューサーを目指すこともできるし、組織全体を横軸で見るようなスタジオプロジェクトマネージャーみたいな役割もあります。PMとしてずっとプロジェクトに属していたい人はそうすることもできるので、PM職に愛着のある人にとってはすごくいい環境だと思います。

──ありがとうございました。

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©2019 Bandai Namco Online Inc. ©2019 Bandai Namco Studios Inc.

[執筆・編集: Junichi Matsui]
[聞き手・編集: Ayuo Kawase]

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