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人気RPG『キングダムカム・デリバランス II』元ディレクターが「いまや開発者はみんなAIを使っている」と豪語。“批判が怖いので言わないだけ”との持論が、論争を呼ぶ
『キングダムカム・デリバランス II』のディレクターを務めたDaniel Vávra氏が、ゲーム分野における昨今の生成AIに対する風当たりの強さに言及し、波紋を広げているようだ。

『キングダムカム・デリバランス II』(以下、KCD2)のディレクターを務めたDaniel Vávra氏が、NVIDIAの「DLSS 5」を擁護したことで注目を集めている。あわせてゲーム分野における昨今の生成AIに対する風当たりの強さに言及し、「この1年間に接したさまざまな企業の開発者が全員AIを使っている」といった持論を述べ、波紋を広げているようだ。
Vávra氏は『キングダムカム』シリーズを手がけるWarhorse Studiosの共同設立者の1人だ。『キングダムカム』シリーズは中世ヨーロッパを舞台にしたオープンワールドアクションRPG。中世の世界を忠実に再現したハードコアなゲームスタイルや、没入感の高い物語が高く評価され、シリーズの累計売上本数は1600万本を超えている。Vávra氏は同シリーズでディレクターとリードライターを担当していたが、今年2月にシリーズの開発から離れたことが明らかとなった(CzechCrunch)。歯に衣着せぬ物言いでたびたび注目を集める人物でもある。
そんなVávra氏は8月31日、NVIDIAが提供する新レンダリング技術「DLSS 5」に独自の見解を示し注目を集めた。DLSS(Deep Learning Super Sampling)は、NVIDIAが手がけるレンダリング技術群だ。AIを活用してゲームのパフォーマンス向上を図り、いわゆる超解像技術のほか、フレーム生成などへと発展を遂げてきた。最新のDLSS 5では、パフォーマンスの向上だけではなく、ビジュアル品質そのものにも調整が加えられる。新たに導入された「3D-Guided Neural Rendering」は、AIを活用しライティングやマテリアルのディテールをリアルタイムに生成するという。9月4日に発売される『NBA 2K27』は、そんなDLSS 5が初めて採用されるゲームとなる(関連記事)。
一方、『NBA 2K27』では豪華版購入者向けの先行アクセスが実施されており、ゲームファイルには3D-Guided Neural Rendering用のライブラリとみられるファイルが同梱されている。そして一部ユーザーがこのファイルを用いて、本来DLSS 5に非対応のゲームに“無理やり”3D-Guided Neural Renderingを適用する事態となった。中には作品の元のアートスタイルから大きく離れて写実的に描画されている様子を“DLSS 5のオン・オフの比較”として紹介するような投稿もあり、DLSS 5を批判する声も上がっていた。
Vávra氏もこのライブラリを『KCD2』上で試したそうで、適用シーンと未使用のシーンを比較。ただ本作においてはアートスタイルに沿うような変化がみられ、その効果を称賛している。
Vávra氏の投稿した比較画像では、通常のレンダリングでは描画できなかったヘルメット下の影が、DLSS 5適用下では描画されているほか、シワや陰影などがよりリアルに描かれている。同氏はNeural Rendering技術を高く評価し、照明や影、肌の質感や髪の毛などのディテールがクオリティアップしていると主張している。一方で、今回の試行ではフレームレートが半減したという。Vávra氏はこれを「小さな」問題としつつ、それでも将来性は非常に大きいと評価している。
またVávra氏は、そもそも未使用時の画像は、ゲームエンジンの極めて限定的なライティングシステムによって、意図した表現が実現できていなかったと主張。オリジナルの画像は、ノーマルマップのレンダリングが“めちゃくちゃ”になってしまっているという。こうした表現は決して開発者が望んでいる「アート表現」などではないと主張し、DLSSによってオリジナルのアートスタイルが変貌すると危惧するユーザーに反論している。
実際、DLSS 5についてはNVIDIAも、従来は開発者がリアルタイムレンダリングにおける性能上の制約から削らざるを得なかったライティングやマテリアルのディテールを生成できるとアピールしている。またあくまでゲームエンジンが描画したフレームが土台として使用される仕組みであり、一部ユーザーが懸念を示しているような、生成AIが3Dモデルごと変化させてしまうような技術ではないことがうかがえる。
そして、Vávra氏は生成AIなどのAI技術を巡る批判についても言及。対して同氏曰く、現状では開発者の誰もがAIを使っているという。同氏が過去1年に話をした多くの会社の開発者は全員AIを活用しており、プログラマーはもはやAIなしでは何もできないと持論を展開。アニメーター、コンセプトアーティスト、3Dアーティスト、脚本家、デザイナーにも用いられているとしている。くわえて同氏は、自分の知る中で最も才能のある人たちはAIを一番活用しており、AIを恐れずにその可能性を見抜いているとの考えも伝えている。開発者たちは攻撃されるのを恐れてAIを使用していないと言っているだけだとして、実際は全員がAIを使用しているとの見解を述べた。こうした同氏の見解には強い反発の声も寄せられているが、Vávra氏は、今は引退しているからボイコットされるものは何もないと、強気の姿勢だ。同氏は、AI技術はゲームをずっと速く安く開発するのに役立つだろうと主張している。
なお先述したとおりVávra氏はすでに『キングダムカム』シリーズの開発から身を引いている。同氏の一連の発言が、これまでの同シリーズ開発で生成AIが使用されていたことや、今後使用されることを示すわけではない点には留意したい。
なお“開発者の誰もがAIを用いている”というVávra氏の主張とは裏腹に、2026年に公開されたゲーム業界の調査レポート「2026 STATE OF THE GAME INDUSTRY」では、生成AIがゲーム業界に悪影響をもたらしているとする回答が52%にのぼり、業界関係者から否定的な意見が急増していることが示されていた(関連記事)。生成AIについては学習データの権利関係をめぐる議論が絶えず、また各国で法整備が進められている最中にある。生成AIの導入による雇用面の懸念も生じており、ユーザーだけでなく業界での風当たりも強いようだ(関連記事)。
一方で「2026 STATE OF THE GAME INDUSTRY」では、業務で生成AIを使っているかどうかという質問に対しては、36%が使っていると回答。用途としては、「調査・アイデア出し」や「コードアシスタント」など、補助ツールとしての利用が多いものの、開発の現場にも生成AIの利用が広がっていることもうかがえる。Unreal EngineやUnityといった汎用ゲームエンジンには生成AIを活用した開発支援ツールも導入されており、Steamでは、今年1月からは開発作業の効率向上のために使用されるAIツールに関しては、情報開示や審査におけるアンケートでの報告が不要であることが明示された(関連記事)。
とはいえ、アートやサウンドなど、分野によっては生成AIの利用についての懸念が根強い側面はあるだろう。Vávra氏が述べる“実際には開発者全員が生成AIを使っている”という発言は、あくまで同氏個人の見解である点には留意したい。いずれにせよ今回同氏には、一部ユーザーがNeural Renderingを強引に適用して作ったさまざまなゲームの比較画像を発端とする批判が、DLSS 5に対して寄せられている状況に一石を投じる狙いもあったようだ。昨今では生成AIを用いる技術やサービスに対する風当たりの強さもうかがえ、今後各国での法整備も進む中でどのように業界やユーザーに受け入れられていくのか、動向が注視される。
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