『Z1BR』に改名した『H1Z1』、約半年で運営元を再変更。主要スタッフの解雇に『PUBG』のPlayerUnknown氏も反応


NantG Mobileは4月6日、Steamで配信されている基本プレイ無料のバトルロイヤルゲーム『Z1 Battle Royale』(旧名:H1Z1)の開発・運営権をDaybreak Game Company(以下、Daybreak)に戻すことを発表した。「Daybreakは、同作のサーバー稼働およびゲームのメンテナンスを継続することに合意しました」と表現されていることから、コンテンツの追加といった大幅なテコ入れは期待できないかもしれない。

もともとDaybreakが開発を始めたPC版『H1Z1』は、NantWorksとDaybreakの合弁事業として2018年9月、NantG Mobileが開発・運営を引き継ぐことになった。その後は、同作が人気を集めた2016年後期~2017年早期の仕様に戻す方針で舵が切られ、2019年3月、『Z1 Battle Royale』(以下、Z1BR)に改名するとともに、ゲームの仕様を本作初期のものに戻す大型アップデートを配信した(関連記事)。

※2019年3月の大型アップデート紹介トレイラー

3月に大型アップデートが配信されたときには、それまで低迷気味だった同時接続プレイヤー数が再び1万人を超える賑わいを見せた。しかしながら、プレイヤー数はすぐに平均4000人台にまで戻っている(SteamCharts)。長期的な成功をおさめるには不十分。今後も黄金時代のアーケードライクなプレイ感覚を取り戻すため、変更が加えられていく予定であったが、開発を引き継いでから約半年で、再度仕切り直すことになった。

NantG Mobileは、そのスタジオ名どおりモバイルゲーム開発を主軸としており、モバイル版『H1Z1』の開発も担当している。PC版『Z1BR』の不調を受け、今後はモバイルゲーム開発にリソースを集中すると方針を変更。組織再編を行ったと伝えている。なおNantG Mobileの動向を巡っては先日4月4日、複数のスタッフがスタジオから退職したことを報告しており、レイオフの実施が噂されていた(Massively Overpowered)。長らく本作のリードゲームデザイナーを務めていたAdam Clegg氏もそのうちのひとりだ。

Clegg氏はのちに長文の声明も出している。まずは『H1Z1』の原点でありながらも2018年にサービス終了を迎えたサバイバルモード(『H1Z1: Just Survive』/『Just Survive』)のファンに対する謝罪から始まり、これまで本作をサポートしてくれたバトルロイヤルモードのコミュニティ、プロジェクト関係者、そして開発初期にコンサルティングを担当していたPlayerUnknownことBrendan Greene氏に対する感謝の言葉を綴っている。この声明を受けてGreene氏も、当時はひとりのMod制作者に過ぎなかった彼にチャンスを与えてくれたH1チームに対し、感謝の言葉を返している。

なおClegg氏は、本作のプレイヤーから猛反発を受けた戦闘システムのオーバーホールについても言及。Clegg氏自身は反対していたが、当時は中国展開に失敗し、『PUBG』というライバルが台頭し始めてきた時期であったこともあり、上層部は決断に迫られていたと説明。とはいえ誤った判断であったことに変わりはなく、本来であればバグ修正やレイテンシーの改善、ゲームエンジンの改良など、プレイヤーが愛したゲームを育てることに力を入れるべきであったと反省。そして同プロジェクトから学んだ教訓として、「登山中に誰を蹴落としていくのか、慎重に考えなさい。下山時に誰とすれ違うのか分からないのだから」との言葉を残している。

同作は2015年1月にSteamでの早期アクセス販売が開始されてから、計3回の名称変更(H1Z1→H1Z1: King of the Kill→H1Z1→Z1 Battle Royale)、2回の開発元変更、売り切り型から基本プレイ無料へのビジネスモデル変更、e-Sportsプロリーグの発足と中断を経ており、その間に何度もプレイヤー数の増減を繰り返すことに。リブランディングを繰り返しながらも、粘り強く運営が継続されてきた。

なおNantGが開発を引き継いでいたのは、PC版『Z1 Battle Royale』のみ。PS4版『H1Z1: Battle Royale』の開発・運営は、2018年5月にオープンベータテストが開始されてから継続してDaybreakのもとに残っており、名称も『H1Z1: Battle Royale』のまま変わっていない。このたび両バージョンの運営権がDaybreakのもとに戻ることとなったが、PC版とコンソール版とで方向性が乖離している中、Daybreakは果たして次にどこへ向かうのだろうか。