ゲームの“成功法則が見えない”問題、ゲーム業界関係者によって次々指摘される。“過去の名作”とも戦わなければならない時代に、降り注ぐ苦難

先日開催されたNordic Game 2026にて、ゲームの“成功パターン”がより見えにくくなっているとの見解が示され、特にインディーゲーム業界における厳しさが浮き彫りとなった。

北欧最大のゲーム業界カンファレンスNordic Game 2026が、5月26日から29日にスウェーデンのマルメにて開催された。会場は多くの開発者やパブリッシャーで賑わう一方、講演では「従来の成功モデルはもはや機能しない」などといった厳しい見解も相次いだ。現代のゲームが過去の人気タイトルやSNSなどともプレイヤーの時間を奪い合っている状況について、海外メディアのGamesIndustry.bizが報じている

Nordic Gameは毎年春に開催される、欧州でも指折りの規模のゲーム業界人向けイベントだ。優れた北欧のゲームを称えるNordic Game Awardsの授賞式も行われ、今年は『ARC Raiders』が受賞している。Nordic GameはGDC(Game Developers Conference)やCEDEC、GAME FUTURE SUMMITなどのようにゲーム開発者や投資家に向けたイベントとしての側面が強く、Nordic Game 2026でも、ゲーム市場や投資環境をテーマとした講演が数多く行われた。

何がヒットするか分からないゲーム市場

今回のイベントの中で、Adam Orth氏は、「発売週だけではない、長期的なデザイン(Designing for Lifetime, Not Launch Week)」と題したパネルディスカッションを行った。同氏はインディーゲームのパブリッシングを中心に手がけるMidwest GamesのCEOで、自らもゲーム開発者として活動している。

同氏は講演にて、ゲームの開発手法について「従来の手法は機能せず、根本的に破綻している」と発言。さらにパブリッシングの方法についても、ゲームを市場へ届けるための定石はもはや存在しないと語った。近年は、開発資金から販売までを一括で担う従来型だけでなく、マーケティングや移植など特定業務のみを請け負う「モジュラー型パブリッシング」も広がっているという。手法の多様化は細かなニーズへの対応ができる反面、ゲーム開発における業界情勢が不安定であることも示しているわけだろう。

また旧来のゲーム業界では、発売初週の売上や評価が重視される傾向もあった。しかしオンラインアップデートや継続的なコンテンツ追加が一般化した現在では、発売から数か月、あるいは数年後に配信やSNSを通じて注目を集める作品も珍しくない(関連記事)。こうした市場環境においては、長期的な運営や継続的な取り組みが今後ますます重要になっていくのかもしれない。なぜなら、現代のゲームは発売直後の新作だけでなく、過去の人気作ともプレイヤーの時間を奪い合う状況にあるためだ。

ゲーム業界専門の分析会社NewzooのアナリストEmmanuel Rosier氏は、「2026年業界展望」の講演の中で、今のユーザーは過去の高品質なゲームタイトルをより安価にプレイできると指摘。前世代の名作が依然として競争力を持つ背景には、ゲーム体験を大きく変えるほどの技術的進歩が以前より明確ではなくなっているという傾向があると同氏は分析した。Rosier氏は例としてPS4からPS5への進化を挙げた。ストレージがHDDからSSDに変わったことによるロード時間の高速化は認めつつも、16K解像度や240fpsといった飛躍的な性能向上が実現されたわけではないとした。新たなプラットフォームが必要となるほどの技術的進歩はまだ見られず、「業界はゲーム向けの新たな技術アイデアを思いつけずにいる」と指摘している。

Rosier氏の指摘は現代のゲームと過去の名作を購入時点で比べた場合、手強い競合相手になるという話だが、既にゲームを所持しているプレイヤーについても同様のことが言える(関連記事)。このユーザーの可処分時間を巡る競争は、もはやゲーム業界だけのものではない。YouTubeやTikTok、X、InstagramといったSNSはもちろん、NetflixやHuluなどの動画配信サービスもユーザーの時間獲得を目指して競争を繰り広げており、ゲームはそうした娯楽とも時間を奪い合うことになるわけだ。

くわえて、現代ではリリースされるゲームの本数自体も膨大だ。経済誌Forbesは今年3月の記事で、2025年にリリースされたゲームが22万5000本に達すると報道。これはモバイルゲームなどを含む数字ではあるものの、PCゲーム市場に限っても競争は激しい。SteamDBによれば、Steamでは2025年だけで2万1459本のゲームが発売されており、単純計算で1日あたり約59本の新作が投入されている。業界全体で飽和気味となるなか、特にインディーゲームについては“いかに見つけてもらうか”が至上命題といえるだろう。

不透明な“未来”に資金は集まりにくい

Nordic Game 2026では、これら発見性の問題やプレイヤーの奪い合いの議論に加え、インディーゲームを取り巻く投資環境の変化についても語られた。投資会社Makers FundのWalter Paleari氏は、「PC・コンソール分野ではスタジオ買収が減っている」とコメント。

これはVC(ベンチャーキャピタル)にとって大きな課題となっている。VCは企業に出資して株式を取得し、その後の上場(IPO)や企業買収(M&A)によって利益を得ることを目指しているためだ。しかしゲーム業界では近年、スタジオ買収の件数が減少。インディーゲームスタジオに出資しても投資資金を回収するための「出口(Exit)」が見えにくくなっているという。Paleari氏は、収益性が高く大成功を収めるゲームであっても、スタジオを買収してくれる企業の買い手が現れなければ出口戦略が存在しないと述べた。

こうした投資環境の変化は、前述したゲーム市場の不確実性とも無関係ではないだろう。ヒットの法則が見えにくくなれば、スタジオの将来的な価値や成長性も予測しづらくなり、企業の買収判断にも影響を与えうる。もちろん買収市場の縮小には金利環境や企業戦略など複数の要因がある。ただ、積極的な買収戦略で知られたEmbracer Groupが近年、事業再編や分社化を進めていることからも、業界全体で買収に対する見方が変化しているといえる(関連記事)。さらにインディーゲームの開発・販売を手がけるFinjiのCEO、Rebekah Saltsman氏が、現在のインディー市場は過去よりも出資規模の基準が厳しくなっていると語っており、スタジオ規模の大小にかかわらず、影響が及んでいる様子もうかがえる(PC Gamer)。

それでもヒット作は生まれる

ここまで見てきたように、インディーゲーム市場を取り巻く環境は決して楽観できるものではない。しかし、その一方で予想外のヒット作も生まれている。インディーゲームでは、『Balatro』や『PEAK』といった大ヒット作が生まれているほか、直近ではチェスをモチーフとしたデッキ構築型ローグライクゲーム、『Gambonanza』のヒットは象徴的な例といえる(関連記事)。

『Gambonanza』については、低価格であることや短時間でも楽しめるゲームデザイン、配信やSNSとの相性の良さ、Steam Next Festでの露出などが成功要因として挙げられる。『Balatro』や『PEAK』も同様の理屈が適用できるだろう。しかし、そうした要素を備えていたからといって成功が「再現」できるわけではなく、単一の要因で成功の理由を説明することは難しい。現在では世界的なヒット作となった『Balatro』などの作品だが、発売前の段階で数百万本規模の販売を正確に予測できた関係者は決して多くなかっただろう(関連記事)。

こうしたヒット作は、一握りの大作だけが市場を支配している訳ではないことを示している。ゲーム業界専門の分析会社Newzooは今年、PC・コンソール市場におけるプレイ時間と収益の分析を公開(関連記事)。その中で、上位20作品以外が占めるプレイ時間と収益の割合がここ数年で拡大していると報告した。分析によると、上位の作品群の人気は未だ堅調なものの、それ以外の作品に費やされるプレイ時間や支出も増加傾向にあり、プレイヤーの関心がより多様なゲームへ向かう傾向がみられるという。

ゲームを遊んでもらえない、あるいはそれ以前に見つけてもらえないという発見性の問題に加え、開発資金の調達も難しくなっている。インディーゲームを取り巻く環境は、リリース後だけでなくリリース前の段階から依然として厳しい。しかし、『Gambonanza』や『Balatro』のような成功例が示すように、ヒットの法則が見えなくなっていることは、必ずしも新たな成功の可能性が失われたことを意味しない。むしろ、プレイヤーの興味が分散する現在の市場では、従来とは異なる形で注目を集める作品が生まれる余地も残されているのかもしれない。

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Kei Kano
Kei Kano

キャラクリが出来て没入感のあるゲームが好きです。ゆっくり歩いて世界観を味わったり、自分なりに脳内設定を組み上げたりして遊んでます。

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