ゲーム開発者目線で見る、PS5 Proの恩恵。PS5 Proにて『バイオハザード レクイエム』が“PSSR進化版に第一弾対応”した背景を、カプコンとSIEに訊く

『バイオハザード レクイエム』のグラフィック面の進化、および進化版PSSRに関するトピックを中心にメールインタビューを実施した。

カプコンが2026年2月27日に発売した『バイオハザード レクイエム』。『バイオハザード』シリーズ30周年の節目に登場した最新作であり、さらなる進化を遂げたグラフィック面でも高い評価を受けている作品だ。また同作はPS5 Proの超解像技術「PlayStationスペクトルスーパーレゾリューション(PSSR)」の進化版、いわゆるPSSR2にひと足早く対応したタイトルであったことも記憶に新しい(関連記事)。

今回はカプコンおよびソニー・インタラクティブエンタテインメントに向け、『バイオハザード レクイエム』のグラフィック面の進化、および進化版PSSRに関するトピックを中心にメールインタビューを実施した。回答者は以下となる:

カプコン 基盤技術研究開発部 基盤開発支援室 室長
伊集院 勝氏

SIE シニアプリンシパルプロダクトマネジャー/商品企画
青木 俊雅氏


サラサラの髪、そして肌の進化

──『バイオハザード レクイエム』では「ヘアストランド」による品質向上もあり、グレースとレオンの髪のサラサラ感が一段と増していて印象的です。『プラグマタ』でもディアナの髪の毛が開発中に大きくクオリティアップしたそうですが、社内の他の開発中タイトルとノウハウを共有して高めあったような経緯はあるのでしょうか。

伊集院 勝氏(以下、伊集院氏):
初めに公開された『プラグマタ』のトレイラーなどではポリゴンをベースにした手法でしたが、どうしても細いポリゴンで作った線はMSAAやTAAを使ってもきれいにつながった感じにはならない見た目になります。

そんな中で『バイオハザード RE:4』にて髪の毛の品質改善が行われました。しかし『バイオハザード RE:4』では、開発期間などの関係で髪の毛の分解能は事前に決められた数を使っていたため、パフォーマンスを改善するためには滑らかさを犠牲にする必要がありました。

『バイオハザード レクイエム』『プラグマタ』では、スクリーンに投影した髪の毛の長さから分割を自動で行うことで、距離が近い場合は滑らかな曲線になります。

この自動機能により、髪の毛の計算量を減らしても見た目が維持できるため性能が改善しています。見た目の品質もよりリッチな質感を表現できるように、髪の毛の反射モデルの改善などもされています。さらに髪の毛のシミュレーションは、『バイオハザード RE:4』のものから完全に書き換えたことにより、アーティストがコントロールしやすい機能として実装をし直されています。

これはエンジンチームとゲームタイトルの開発を行うテクニカルアーティスト(TA)とのコラボレーションにより達成しています。これらの機能はエンジンの一部の機能で、他のタイトルでも今後利用されていくと考えています。

──髪の毛だけでなく、人間およびクリーチャーの肌の質感の向上(サブサーフェイス・スキャッタリング)について、『バイオハザード レクイエム』ではグレースの若々しい肌とレオンの刻み込まれた皺のギャップがよく表れています。どのような技術の進歩やアートの変化があったのかを詳しく聞きたいです。

伊集院氏:
人間の肌や髪の毛もそうですが、『バイオハザード レクイエム』では眼や歯などのキャラクター全般のレンダリング機能が大きく改善しています。

サブサーフェイスの表現や、ポリゴン密度を改善するためのVisibilityBufferの導入などにより高いフレームレートと省メモリ化を実現しています。またテクスチャのストリーミングも面積に応じたものなどを導入しています。

──カプコンさんから見て、PS5 Proのどのような点がハードウェアとして印象的ですか?

伊集院氏:
PS5 Proでは、進化版PSSRによる機械学習(ML)ベースの超解像度がもっとも品質に寄与しています。また、ベース機能の性能改善や、レイトレーシング機能の強化により、従来よりも少ないコストで表現力を強化できています。

さらに、CPUに関してもBoostモードが入っていることで、CPUによる頭打ちのケースでもより高いフレームレートを維持することが可能になりました。

──ありがとうございました。


PSSR進化版の第一弾タイトル『バイオハザード レクイエム』

──つづいてソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)さんに質問です。あらためて、PS5 ProとPSSRのリリース時に開発者やユーザーからどういった反響があったのかを教えてください。そこからのフィードバックをもとに、どういった方針でPSSRをアップデートすることにしたのかも知りたいです。

青木 俊雅氏(以下、青木氏):
PS5はさまざまな新しいイノベーションを導入することで、大きな成功を収めることができたと考えています。超高速SSDやレイトレーシング、DualSense ワイヤレスコントローラーの機能、3Dオーディオなどがその代表例です。

SIEのポリシーとして常にさらなる革新に挑戦し続けることを掲げており、その一環として、PS5の発売直前からPS5 Proの開発計画に着手しました。

PS5 Proは、主に3つの重要な領域においてPS5から大幅な性能向上を実現しています。

  • まず、より大規模なGPUを搭載することで、全体的なパフォーマンスを向上させるとともに、ゲーム実行に割り当てるメモリも拡張しています。
  • 次に、レイトレーシング性能が強化されており、PS5と比べて2倍から3倍の速度でより多くの光線を処理できるようになりました。
  • さらに、AIによるアップスケーリング技術を採用しています。これは、機械学習専用のカスタムハードウェアと、「PlayStation Spectral Super Resolution」と呼ばれるAIライブラリによって実現されています。PSSRにより、描写のディテールが飛躍的に向上し、ゲームの実効解像度を大きく引き上げています。

PS5 Proによって提供される高品質な体験については、発売以来、ゲームクリエイターとユーザーの皆さまから非常にポジティブなフィードバックをいただいており、大変うれしく感じています。一方で、動的シーンにおける画質の安定性など、さらなる改善への期待の声も拝見していたため、それらを踏まえて進化版PSSRの開発に着手しました。特に、ゲームクリエイターの皆さまが意図したビジュアル表現を損なうことなく、より安定した画質を実現することを重視して、さらなる改善に取り組みました。

先ほど申し上げた通り、SIEでは常に新しい技術を取り入れ、さらなる革新に挑戦し続けることを重視しています。ですので、PS5 Proの発売後も歩みを止めることなくPSSRの進化に取り組むことは、私たちにとってごく自然な流れでした。

──今はYouTubeなどでPS5とPS5Proの比較、PSSRの新旧比較など、比較動画が盛んに作成されるようになりましたが、意識することはありますか?

青木氏:
比較動画などはもちろん拝見しており、いつもメディアやユーザーの皆さんがレビューを投稿してくださることがとても励みになっています。PSSRが実際のユーザー環境の中でどのように体験され、どのような反響があるのかを知るうえで、とても貴重な視点になっています。

──PSSRがハードウェアのリソースが変わらない状況で効率アップした仕組みについて教えてください。学習データの蓄積とアルゴリズムの改善でハードウェアもフレームレートも変わらず、あそこまで見た目が改善するのはすごいなと思います。

青木氏:
PSSRの画質向上は、同じ計算資源の中で、より良い結果を出せるように中身を磨き込んだことが大きいです。

最初のPSSRで得た知見を踏まえて、SIEとAMDの共同プロジェクトであるProject Amethystの中で、Neural Networkのモデル自体を刷新しました。あわせて、学習データの作り方や量、学習方法についても見直しを行い、より実際のゲーム画面で問題になりやすいケースに強くなるよう工夫しました。

──PSSRの進化版採用の第一弾が『バイオハザード レクイエム』になった経緯を教えてください。

青木氏:
『バイオハザード レクイエム』は多くのユーザーから特に期待の高かったタイトルなので、SIEとしても、発売時点で新しいPSSRでゲームをお楽しみいただきたいという想いがありました。カプコンさんにもご相談したところ賛同いただきましたので、進化版PSSRのリリース日を当初の予定より少し前倒しして、『バイオハザード レクイエム』のリリースに間に合わせることができました。
ょうか。

*従来版PSSR(上)と進化版PSSR(下)の比較(PlayStation.Blogより)

──SIEさんから見た、『バイオハザード レクイエム』におけるPS5 Proの性能を活かした表現で、特に印象に残ったシーンを教えてください

青木氏:
『バイオハザード レクイエム』の中でも特に印象に残っているのは、冒頭の市街地のシーンです。非常に情報量が多く、ライティングやオブジェクト、キャラクターが密に配置された環境の中で、進化版PSSRの効果がよく表れていると感じました。また、このシーンではキャラクターのアップも見ることができ、表情や髪の毛などの細かなディテールまで非常に精緻に描写されています。

こうした要素が組み合わさることで、全体として安定した高精細な映像体験が実現されており、新世代のビジュアル表現を象徴するシーンの一つだと思います。

──ありがとうございました。

バイオハザード レクイエム』は、PC(Steam)/PS5/Nintendo Switch 2/Xbox Series X|S向けに発売中。PS5 ProではPS5 Pro EnhancedおよびPSSRの進化版に対応している。

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