『Fate/Grand Order』フェスは、学園祭という名の“モラトリアム”だった。フェスから推察する「運営が伝えたかったこと」

テーマは「学園祭」 ただ浮かれているだけのようにも見えるが、参加してみると運営の切実な意図も感じた。『FGO』はこのフェスで何をプレイヤーに伝えたかったのだろうか。

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今年も8月1~2日に開催された「Fate/Grand Order Fes. 2026 カルデア学園祭 ~11th Anniversary~」(以下「FGOフェス」)。『Fate/Grand Order』(以下、『FGO』)は昨年末にソーシャルゲームとしては異例のグランドフィナーレを迎えたことから、その余韻を意識したイベントになるのではないかとイベント参加前は想像していた。

だが実際は、『FGO』が変わらずに元気に続いていることを内外に証明するような、アクティブなフェスだった。テーマは「学園祭」! ただ浮かれているだけのようにも見えるが、参加してみると運営の切実な意図も感じた。『FGO』はこのフェスで何をプレイヤーに伝えたかったのだろうか。最終日の8月2日に現地を取材した様子をお届けする。

「学園祭あるある」を絶妙に再現、カルデア学園の実在感

展示やアトラクションなど内容が目白押しだった「FGOフェス」。全体として、ちゃんと「学園祭の出し物」の雰囲気があったことが印象的だ。『FGO』のパワーがあればさらにクオリティの高いものが作れただろうが、あえて手作り感や学校らしさを強調していたように思う。高校や大学の学園祭を思い出し、ほんとうにカルデア学園が存在しているように思えて没入感があった。

「英霊喫茶かるであ」では、教室の中で学校の机と椅子に座って飲み物やクッキーが味わえる。このこじんまりとしたシチュエーションだけで懐かしい。6人のサーヴァントがトークでもてなしてくれる。だがややドタバタしていて、不慣れさが微笑ましい。テノチティトランが書類を出してサインを求めてきたり、パーヴァン・シーは呪い入りのケチャップをかけようとするなど、接客方針はこの上なく自由だ。カルデア学園の校風が伺える。飲み物を提供したら、全員で「おいしくなあれ」の呪文、もとい魔術もちゃんとかけてくれた。

退店前にはカードのプレゼントもあり、最後までサービス精神旺盛だった。サーヴァントたちがお客さん(マスター)が喜ぶよう色々考えてくれたのだろうと、準備の様子にまで想像が及ぶ。メニューがクッキーとドリンクだけなのは、調理が必要なものだと衛生管理が煩雑になるためだろう。このあたりも学園祭の喫茶店らしい、リアルさを感じた。

会場を歩いていて、装飾が一番目立っていたのは運動部エリアだ。運動部の気合が頼もしいのは学園祭あるあるだろう。体育祭ではないのに紅白に分かれているようだ。集客数などを競っているのだろうか?

部活といえば、『Fate/stay night』主人公の衛宮士郎が入部していたことでおなじみの弓道部。ここでは「敵のハートを射抜け! ~アムールちゃんの的当てゲーム~ 」が行われていた。弓道部にあらわれたエネミーを3人で協力して撃破するアトラクションだ。学園祭風に言うと弓道体験だ。弓を撃つ経験はなかなかできないため、ここぞとばかりにプレイした。エネミーは『FGO』で見たことのあるモンスターたちだ。筆者にはアーチャー適性がなかったようだが、チームの2人が上手かったおかげでA判定だった。カレンも宝具を撃ち、手伝ってくれた。「何故学園祭にエネミーが?」というツッコミは置いておいて、やはりサーヴァントと協力して敵を倒す体験は楽しくて嬉しい。こんなに楽しいのであれば、弓道部に入部してしまいそうだ。

ゲーム内イベント連動(!?)で、フェスがさらに楽しい!

今回はゲーム内でも「FGOフェス」イベントが開催されており、それが特に嬉しかった。マップは現地と同じもので、現地の出し物に沿ったクエストをプレイできる。

例えば先ほど述べた弓道部は、クエストだと敵エネミーとしてアムール〔カレン〕 が3体出てくる。マスターから体験料をぼったくろうとしてるようだ。もしくは無理矢理解釈すると、カレン3体が現実のフェスでプレイしている人たちであり、ゲームをプレイしているこちらがエネミーなのかも? などよりゲームらしいお祭りノリが多く、現地とは異なる体験ができる。また「喫茶カルデア」は高難易度クエストで、クリアにかなり骨を折った。現地と比べると飴と鞭すぎて、わけがわからず笑ってしまった。

さらに、ゲームではマップにミニキャラが隠れており、それを探すミッションがあった。そのミニキャラたちが、現地の同じ場所にもいたのだ! これは公式からアナウンスがあったわけではない、気づいた人だけが嬉しくなる仕掛けだ。筆者はスタンプラリーのような気持ちで、熱を入れて探し回ってしまった。だが19個中10個しか見つけられておらず、とても悔しい。一方でマップにいないミニキャラも会場にはいたため、完全一致ではないのかもしれない。とにかくマップが一致していれば探したくもなるため、その期待に応えてくれている。この遊び心が粋だと感じたのだ。

これもFateらしさ? 高難易度本格謎解き

学園祭らしい懐かしさとは裏腹に、謎解きゲーム「エルメロイⅡ世とアレキサンダーの学園7不思議からの脱出」はクオリティが高かった。謎解きキットは入場時に配られ、LINEで進める親切設計。表紙には「リアル脱出ゲーム」を企画運営する企業「SCRAP」の文字があり、この時点で期待できる。孔明(ウェイバー/エルメロイⅡ世)とアレキサンダー(イスカンダル)にガイドされながら、会場にあるパネルや、歴史の知識なども活用しながらの謎解きだ。謎が本格的でしっかり難しく、「Fateファンならこのくらいの方が燃えるだろう」という運営からの信頼が伺えた。

たいていこういったコラボの謎解きは回答が出たらその時点で終わってしまうが、「何故学園で七不思議が発生したのか」まで解決してくれた。Fateらしくて嬉しい。そして、その理由にも「学園」という設定は大きく関わっている。まさか謎解きでエモさを感じることがあるとは思わなかった。三田誠先生などのシナリオ監修が入っているようで、本格的な『FGO』のシナリオで満足感はとても高かった。

「終わりの後の祭」の先に

最後にステージで行われた「『Fate/Grand Order』カルデア放送局 11周年SP」では、周年キャンペーン情報が多数発表される中、「昨年のフェスはグランドフィナーレを控えていて、来年はどうなるんだろうと思っていた」といった旨が出演者の複数人から語られた。そう、繰り返しになるが『FGO』は昨年末に「グランドフィナーレ」を迎えている。作中では主人公たちは世界を救い、晴れて日常を取り戻したのだ。つまり学園風に言い換えると、ある意味では卒業しているはず。だが現在は主人公たちが日常に戻る少し前の時間に強制的に戻された、実質第3部と言える「アフタータイム」が配信されている。『FGO』は終わらず、まだ世界の危機が続いているのだ。

そんな中で今回「FGOフェス」は開催されている。テーマである「学園祭」は、卒業の少し前にある楽しいイベントだ。この後には受験があり、そして卒業していく。つまり学園祭は、モラトリアムの象徴なのだ。『FGO』プレイヤーたちも本来は昨年末で『FGO』から卒業し、お別れだったはず。だが、今年も学園祭の「FGOフェス」を心ゆくまで楽しんだ。主人公と同様に、少し前の時間に戻されたような錯覚に陥る。そして、この一瞬の祭の楽しさを原動力に、受験、すなわち本当に卒業するための戦いである「アフタータイム」を戦っていくのだ……。などと、帰り道にフェスが終わった切なさを感じながら考えていた。

本当にカルデアで学園祭が行われているようなリアルな実在感。ゲームとアプリを比べながら会場を歩く施策。『FGO』らしいシナリオの体験。そして、会場にあった謎のオブジェクトが、フェス閉幕後に追加された「後夜祭ボーナスクエスト」のエネミーにいたことなど。

こうしたゲームと現実のフェスの相互関係が、現在のメインストーリーの状況と学園祭というテーマと相まって、運営からのメッセージのように感じた。「アプリを起動しよう」「まだ卒業できていない」「戦いは続いている」と。たしかに筆者も友人から「FGOってもう完結したんでしょ?」と言われたことがある。だが、そんなことはないのだと、フェスの盛り上がりを通じて発信しようとしているのではないだろうか。

そして、ストーリーの途中でアプリを開かなくなってしまったプレイヤーへ、グランドフィナーレをきっかけに始めたプレイヤーへ、もちろんプレイし続けているプレイヤーへ、全ての『FGO』のマスターたちへの激励も込められている。現在「メインクエストクリア応援キャンペーン」が開催されており、これから最新章まで追いつく意味があると示唆している。グランドフィナーレは「終わり」ではない。『FGO』を始めるなら/再開するなら今である。またあの終幕の感動を味わうために、進み続けるのだ。これからもまだまだ『FGO』は続いていくのだという意思表示とも取れるフェスだった。

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