「E3が終了したのはNintendo Directのせいじゃない」と業界ジャーナリストが断言。コロナ前から始まっていた、E3の“死”

2023年に幕を閉じたゲームイベントE3(Electronic Entertainment Expo)。現地で参加し、その歴史を実際に目にしていたゲームジャーナリストのJason Schreier氏より、E3が終了した理由について、見解が語られた。

世界的なゲームイベントとしてかつて名を馳せたE3(Electronic Entertainment Expo)は、2021年のオンライン開催を最後として、2023年にその終了が告知された。一部ではE3終了の理由について、任天堂の不参加表明が原因とする向きもある。一方でゲームジャーナリストのJason Schreier氏は、それを否定しつつ自身のYouTubeチャンネルにて、E3というイベントの経緯、そしてE3終了についての自身の見解を示した。

E3は、家電見本市CESにて開催されていたイベントを前身とし、1995年からアメリカにて開催されていたゲームの祭典だ。当初は業界関係者向けの見本市だったものの、次第に一般消費者向けにも開放され、コンソール/PC向け問わず多くのゲームに関連する情報がお披露目される一大イベントとなっていた。同イベントは2020年および2022年には、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて中止。2021年には開催されたものの、オンラインのみでの実施となった。

E3終了についての“誤解”

そしてE3 2023については、当初オンラインとオフライン双方で実施予定であり、イベント・メディア運営企業ReedPop とのパートナーシップも明らかにされていた。一方で任天堂が不参加を表明したほか、マイクロソフトもショーフロアには出展しないことを告知。またソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)も参加しない見通しが報じられ、セガ、Ubisoftなども相次いで不参加を表明し、最終的にE3 2023は開催中止された。その後、E3そのものの終了も伝えられたかたちだ。なお現在は、ゲームジャーナリストのGeoff Keighley氏が主催する「Summer Game Fest」が、E3の後継イベントとしての地位を獲得している。

そんなE3に関して、海外メディアBloombergのジャーナリストJason Schreier氏は6月11日、自身のYouTubeチャンネルにて「The Real Reason E3 Died(E3が終わった本当の理由)」と題した動画を公開。Schreier氏はE3が終了した理由に「誤解がある」として、E3の性質や歴史に触れつつ、同氏自身もE3に長く関わった立場をもとに、見解を示している。なお同氏は2010年からゲーム業界のジャーナリストとして活動を開始し、Kotakuでの編集者を経て、現在はBloombergにて記者を担当。ゲーム業界内の労働問題などの報道において実績ある人物だ。

動画においてSchreier氏が「誤解」と表現したのは、“任天堂がE3終了の原因を作った”とする言説だ。任天堂は2011年に販売予定のゲームソフトについての情報を直接届ける「Nintendo Direct」の配信を開始。この開催理由については、当時の社長岩田聡氏が、Twitter(現X)などのSNSによって情報が歪んだ形で広まることがあるとして、適切な情報を直接提供する機会を設けるためと説明していた。

またコミュニティでは、かつてE3での発表前にはたびたびリーク情報が関係者より漏れることがあったため、「Nintendo Direct」はその“対策”とも目されていた。いずれにせよ、2023年のE3はすでに自前での発表の場があった任天堂が不参加を表明し、ほかの企業も続々と離脱したことで中止になったようにも見える。また昨今では各企業がオンラインショーケースを実施しており、そうした流れを作ったともいえる任天堂の存在で、E3が「終了」したと考える向きもあるのだろう。

「真のE3」は小売店に売り込むB2Bイベント

一方でSchreier氏はそうした憶測を「誤解」と断じている。そしてE3がもともとB2B、つまり企業が企業に向けたショーであったという性質に言及しつつ、「小売業者の衰退」が真のE3終了の原因であると語った。同氏は、2000年代はデジタルでの販売よりむしろ店舗での小売販売が支配的であったことに触れ、E3はゲームメーカーが小売業者に向けてゲームをアピールする場であったとの見解を示した。特にE3の開催される6月は、ホリデーシーズンに発売されるタイトルを取り扱うことが多く、小売業者にとっても、年末にかけての戦略を具体的に練る時期であったと言えるだろう。

2010年代に入ってからはストリーミング文化の発展により、一般消費者に向けたイベントという性質が強くなったものの、依然としてB2Bの側面は失われていなかったという。Schreier氏はこのB2Bの側面を「真のE3(the real E3)」と表現した。そのため任天堂がNintendo Directに新作発表の場を移した後も、E3は業界にとって大きな役割を担っていたとのこと。また同社はE3の参加企業のなかでも最大級の支援をおこなっており、ショーフロアにてもはやブースではなく“エリア”といえるほど巨大な出展をしていたと振り返っている。たとえば2016年のE3では、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』について、ボコブリンや落とし穴などが用意された豪華なセットが設けられていたという。Nintendo Directの発足後も、任天堂はむしろ積極的にE3に参加していたことがうかがえる。

E3に「とどめ」を刺した、ゲーム業界の小売業衰退

翻って、ゲーム業界では2010年代からデジタル販売への移行が段階的に進み始めていた。プラットフォームやメーカーによってまちまちではあるものの、今やデジタル販売は業界の売上の大半を占めるほど主流となっている。そのためSchreier氏はE3の真の役割であった、「小売業者に各ゲームメーカーがアピールするB2Bイベント」としての重要度が次第に薄れていったのだと述べている。

さらに現地で参加していたSchreier氏は、E3末期の閑散とした状況を、身をもって体感したと語った。たとえば会場の近所にあり、E3時期には満員だった料理屋が、2019年の同時期には半分も客がいなかったと証言。さらに任天堂ブースにも人がおらず、注目作『ホロウナイト: シルクソング』のデモですら待たずにプレイできるなど、会場の内外問わず、参加人員の減少が見てとれたそうだ。つまり、2020年のコロナ禍の前から、すでにE3が明らかに“終わり”に向かっている兆候が見受けられたという。コロナ禍はE3の終了を早めたものの、引き金ではなかったという考えのようだ。

このほかSchreier氏は、E3の終了についてブースの出展費用が高額であったことなども挙げているものの、やはり主要因としてはメーカーから小売業者への売り込みが必要なくなったことが決定打であったとの見解を述べている。終了についても、そうした業界の変化にうまく適応できなかった結果だという考えを述べ、動画を締めくくった。

ゲーム業界における一大イベントであったE3。終了にあたっては、先述した「Summer Game Fest」の登場や、Nintendo Directをはじめとする各社のオンラインショーケースイベントの増加が要因として推察されることもあった。一方で今回は、実際に現地に赴いてきた業界人の目線から、E3衰退の真の理由がゲームのデジタル販売の主流化にあったという見解が示された格好だ。小売店を介さずにゲームが購入されるようになるという業界構造の変化も、各社がユーザーに直接新作情報を届ける方針を強化していった背景にあるのかもしれない。

結果的に、かつてE3が開催されていた6月は現在でも年末商戦に向けた新作発表イベントが集まる時期といえる。今年も、先週から今週にかけては「State of Play」「Summer Game Fest」「XBOX Games Showcase」「Nintendo Direct」が相次いで放送され、多種多様な新作ゲームの情報が告知された。小売店向けのB2Bイベントとしての役割は薄れ、一般向けの発表イベントとしての性格が強まったとはいえ、大々的に新作が披露される文化自体は、E3の名残として業界に根付いているといえるだろう。

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Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

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