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「ゲームを殺すな」運動がカリフォルニア州で進展。「サポート終了後に遊べなくなるなら返金義務付け」の法案が送付され、州議会で審議へ
カリフォルニア州の歳出委員会は5月14日、法案AB 1921「Protect Our Games Act(ゲーム保護法案)」を本会議へと送付することを決定した。

カリフォルニア州の歳出委員会は5月14日、法案AB 1921「Protect Our Games Act(ゲーム保護法案)」を本会議へと送付することを決定した。同法案はビデオゲームの保護団体「Stop Killing Games(ゲームを殺すな)」が支持している点から注目を集めていた。Rock Paper Shotgunなどが報じている。
カリフォルニア州本会議で審議が予定される「AB 1921」は、デジタルゲーム事業者にゲームの保護を義務付ける法案だ。法案では、事業者に対しゲームの公式サポートが終了したあともゲームがプレイ可能な環境を維持することを求め、それが不可能な場合はプレイヤーに返金することを義務付けている。

法案は具体的には、まずデジタルゲーム事業者に対し、サービス終了する場合は60日前までに購入者へ通告することを義務付けている。そのうえで、代替バージョンの提供か、あるいはパッチまたはアップデートを通じて、事業者のサービスとは独立して購入者が引き続きゲームをプレイできるようにすることを要求。それが実現できない場合は返金することを義務付ける。さらに、サービス終了して通常の利用ができなくなった作品の、事業者による販売や貸与の継続を禁じている。法案の対象となるのは2027年1月1日以降に発売されるゲーム。ただし、購読期間中のみアクセスが許可されるサブスクリプション型のゲームや、無料で頒布されるゲーム、もともとサーバーに接続せずともオフラインで永続的に遊べるゲームは法案の対象外だという。(California Legislative Information)。
同法案は「Stop Killing Games」(以下、SKG)が支持している点からも注目を集めていた。法案はカリフォルニア州議会議員のChris Ward氏によって提出され、起草にはSKGが関わったとされている(Rock Paper Shotgun)。
SKGはゲームがオンラインサービスを終了したあとも、購入者が自由にゲームをプレイできるよう企業に義務化を求める市民団体だ。オンライン専用のレースゲーム『ザ クルー』がサービス終了しプレイ不可能となったことを契機に、YouTuberのRoss Scott氏が立ち上げた(関連記事)。同団体はオフラインの代替手段なしにサービスを終了させてはならないことを明文化するよう求めている。
SKGは現在活動の幅を世界中へと広げており、EUでの法案化を目指し「European Citizens Initiative(ECI)」に基づく署名運動を2024年に開始した。1年間に渡る署名活動では必要数を上回る約145万件の署名を集め、今後は欧州委員会で法制化に向けた検討が進められる見通しだ(関連記事)。

こうしたSKGの運動を反映した法案「AB 1921」が5月14日、カリフォルニア州の歳出委員会において賛成11票・反対2票で可決され、本会議へと送付することが決定された。ただし、これは法案そのものの成立を意味するわけではなく、これから州議会で本格的な審議が始まることとなる。まず州下院で議員80人から過半数の支持を得る必要があり、可決した場合は州上院へと法案が送付される。上院でも可決されればカリフォルニア州知事のもとへ法案が送られ、署名による成立、あるいは拒否権の行使が判断される。
このように法案成立にはまだ多くのハードルが待ち構えているが、この結果を受けてSKGは喜びの声明を発表している(Reddit)。SKGは「大成功(huge success)」と表現したうえで、歳出委員会の通過を祝福した。同運動の欧州担当ゼネラルディレクターであるMoritz Katzner氏は、もし委員会を通過できなければ運動が後退し、EU側での取り組みが頓挫する可能性もあったと語り、今回の成果は大きな節目となると喜びを示した。
一方、米国のゲーム業界団体Entertainment Software Association(ESA)は同法案への反対の意向を表明している。ESAが提出した書簡のなかで、「AB 1921」には根本的な問題があると主張。 同法案は「購入者がデジタルゲームを所有している」という誤った前提に基づいているとして、カリフォルニア州議会議員に対して反対票を投じるよう求めている(GamesRadar+)。

ESAは、現代のデジタルゲームは購入者の所有物ではなくライセンス供与されているものだと説明。そのうえで、近年のゲームはオンラインサーバーを基盤に運営されており、セキュリティやアンチチートツール、アップデートなどもサーバーに依存していることを指摘した。こうした事情から、現代のソフトウェア製品は購入者が無期限に利用できるわけではないとの見解を示している。
さらにESAは、「AB 1921」が最新のゲーム体験の実現を妨げる可能性があると指摘。こうした法案の存在は、プレイヤーが望むオンライン要素の縮小につながりかねないとしたうえで、最終的にはゲームタイトル数の減少を招き、開発コストの引き上げとイノベーションの損失を招くだけだと主張している。
このように「AB 1921」を巡っては、 業界団体と市民団体が真っ向から対立する構図となっている。同法案はアメリカ・カリフォルニア州で展開されているものだが、ヨーロッパにおいてもEUのゲーム系ロビー団体Video Games Europe(VGE)がSKGの主張に反論するなど、世界中で同様の議論がみられる(関連記事)。
今回、ゲーム保護法案がカリフォルニア州の本会議へと進む段階に入り、今後さらに本格的な議論が展開される見通しだ。カリフォルニア州は約4000万人の人口を抱えているだけでなく、Electronic ArtsやActivision Blizzardといった大手ゲーム企業の本拠地としても知られている。仮に同法案がカリフォルニア州で成立すれば波及的にその影響が広がる可能性もある。前述したEUでの議論も現在進行中であり、ゲームのサービス終了をめぐる動向は今後も注目されるところだ。
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