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『レインボーシックス シージ』公式キャスターが「なんでシージって10年も続いてるの?」ウラ側語る。人気FPSに成り上がったのは、“タイミング”もありそう
誕生から10年が経過した『レインボーシックス シージ』の歴史を公式キャスターが語る。

eスポーツキャスターの山野智三です。自己紹介がてら書いた前回の記事を読んでいただいた方、ありがとうございます。まだの方はそちらもあわせてぜひ(第1回記事)。
さて、2回目となる今回は、やはり私の人生を大きく変えてくれた『レインボーシックス シージ』(以下、R6S)について書かせていただきたい。
2015年12月の発売から10年以上が経っている『R6S』。開発元のUbisoft(以下、UBI)によれば、丸10年が経った2025年12月時点で、累計プレイヤー数が1億人を突破したという。特にFPSプレイヤーの皆さんであれば、「1度は名前を聞いたことがある」という程度にまでは認知されているのではないだろうか。
ただ、その歴史を改めて振り返ってみると、かなりの紆余曲折があり、数々の奇跡的な出来事があったからこそ、10年続いたといえるかもしれない。今回は、『R6S』が誕生して、ヒットするまでの経緯を追いかけてみたい。1回で語るには長すぎたため、今回は前編としてお届けする。
ネット文化の成長と共に広がった『R6S』
実は、偉そうに『R6S』のことをこうして書いているが、私自身はリリースタイミングから『R6S』をプレイしていたわけではない。私が始めたのは2017年2月。オペレーターのMiraとJackalが実装された「オペレーション ベルベットシェル」からである。

『R6S』を手に取ったきっかけはなんだったかというと、当時発売されていたUBIの別のタイトルに『R6S』の期間限定のフリープレイのチラシが入っていたからである。当時は「タダなら触ってみるか」という軽い気持ちで手に取ったが、まさか10年の付き合いになるとは……。
しかし、比較的ゲームをプレイする私でも、当時は『R6S』という存在を知らなかった。実は、それには理由がある。
今でこそ多くのユーザーが知るタイトルではあるが、開発自体はひっそりとスタートした。UBIスタッフのインタビューによれば、『R6S』の開発スタッフはたった25名でスタートしたそうだ(Rock Paper Shotgun)。このような小規模なプロジェクトだと、何が起こるかというと、タイトルをあまり宣伝できない。プロモーション費用は開発規模に比例する。これは、ゲーム会社に勤務していた私の経験からも言える。そのため、2015年のリリースのタイミングでは、TV CMなどの大掛かりな宣伝はできなかったのではないだろうか。
実際、私もTVで『R6S』のCMを見たことはないし、ゲームショップの店頭でも大きなポスターやポップを見たことはなかった。そうなると、ソフトのパッケージの中に入っていた『R6S』のチラシを目にすることがなければ、自分の人生は大きく変わっていたんだなと感じる。
では、どこで『R6S』はユーザーに認知され、広まっていくことになったのか?以下のグラフをみていただきたい。

このグラフは2015年のリリースから今日まで、Steamでのアクティブユーザー数を表したものだ(SteamPlayerCount)。本作の場合、リリースしてすぐは緩やかな立ち上がりとなっており、遅咲きのタイトルと言える。最初に10万人の壁を超えて大きくプレイヤー数を伸ばすのは、発売から2年以上を経た2018年初頭だが、この原因はなんだろうか。
実はこのタイミングで、YouTuber、ストリーマーといった人たちが台頭してくるのである。
現在、私が観る動画サービスは、7割がYouTube、2割がTwitch、残りの1割が映像サブスクというところだが、この習慣がついたのは2017年頃であると記憶している。そして、当時からほとんどゲーム動画か、ゲーム配信ばかりを観ていた。
実際、2010年代後半といえば、2016年5月に『オーバーウォッチ』がリリースされ、2017年3月には『PUBG』、2019年2月に『Apex Legends』が続くなど、人気FPSタイトルが次々と登場。それらのゲーム実況・動画文化が盛り上がりを見せていった時期だ。この流れの中に『R6S』も乗ることができたわけである。
ただ、単に『R6S』がそうした時代に上手くハマったというだけではないと私は考えている。『R6S』が人気を獲得したのは、「配信や動画と相性が良いゲームシステム」を持っていたからだといえる。
例えば、現在は登録者118万人を超える人気YouTuberのしょうじ氏。私のような初期からの『R6S』プレイヤーなら必ず1度はお世話になった方である。
しょうじ氏のR6Sの動画はとにかく笑える。奇想天外なオペレーターの使い方や、ありえない位置にガジェットを仕掛けることによって、カオスな状況を生み出し、笑いを取る。一方で、しょうじ氏本人も予測していない状況が生まれ、ドッキリ番組を見ているかのようなハラハラ・ドキドキ感が伝わってくる。こういったストリーマーにとっても「おいしい」状況を生み出せるゲームシステムを、『R6S』は持ち合わせていた。
こういった背景から国内外問わず、配信や動画で『R6S』のコンテンツが一気に増え、UBI自身がプロモーションを行わなくても、認知が拡大していったと考えられる。
eスポーツの成功とスター誕生
もう一つの要素は、想定していなかったeスポーツの成功である。今でこそ、『R6S』はeスポーツとセットで語られることが多いが、当初は「とりあえず、やってみるか」程度だったと思う。これは、当時の運営を批判したいわけではなく、eスポーツが開発会社にとって、まだ「そういう程度のもの」でしかなかったからだ。
『R6S』のプロリーグは2016年3月に発足しているが、同年4月に行われた決勝大会の参加チームはたった4チーム。しかもプラットフォームはXboxのみで、地域もヨーロッパと北米のみ。

2015年段階では、『Counter-Strike』や『League of Legends』といったゲームのプロリーグは既に存在していたが、それ以外のタイトルでのeスポーツの取り組みは成功しているとはいえない状況だった。そのため運営団体、当時の『R6S』でいうとESL(Electronic Sports League)がやりたいと手を上げ、開発会社が許諾を出せば、後は運営団体にお任せというスタイルが主流だった。『R6S』も例に漏れず、当初はUBIもESLにお任せというスタンスにみえた。
ところが、ここでも『R6S』が再び相性の良さをみせる。FPSタイトルでありながら銃撃戦だけではなく、爆発で壁や床が壊れる派手さが多くの視聴者の目を引いた。また、プロが次々と繰り出す作戦により、『R6S』の奥深さが一気に浸透。一般プレイヤーが「真似してみたい」と思う土壌ができ、プレイする刺激を与えたことは間違いない。そして、eスポーツシーンにおいて、カリスマを持ったプロ選手が次々と現れる。
海外であれば、G2 EsportsやPenta Esportsで活躍したPengu選手もそのひとり。
2016年のリーグ発足時からプロ選手をスタートされた彼は、『R6S』において最も優勝が難しいとされる大会「Six Invitational」を2018年、2019年と連覇してみせた。FPS能力の高さだけではなく、『R6S』らしい相手を読む能力が抜群で、絶望的な状況下で彼が見せた数々のクラッチ(最後の1人でありながら、複数人を倒すビッグプレイ)は今も伝説とされている。
ただ、スターの誕生は海外だけではなかった。国内においても、『R6S』からスターが誕生していく。まずは、けんき氏を中心にしたプロチーム「父ノ背中」の登場である。

けんき氏も今でこそYouTube登録者55万人を超える人気YouTuberではあるが、『R6S』リリース当初はプロゲーマーとして国内大会のタイトルを独占していた。また、プロゲーマーの新しい形を定義したパイオニアでもある。
父ノ背中が活動を開始した2016年においては、プロチームといっても安定して給料を選手に払えているチームは少なかった。そのため、昼間は仕事に従事し、夜はプロとしての活動を行うといった選手が多かった。たしか、けんき氏も当時は会社員だったと思う。
そんな中でも、けんき氏は積極的にライブ配信、動画公開を行っていた。今もけんき氏や父ノ背中が『R6S』ファンに愛されているのは、プロ活動だけではなく、そういったストリーマー活動も積極的に行っていたからだと思っている。彼らの存在が間違いなく日本国内の『R6S』人気を押し上げていった。
そして、国内のeスポーツ人気を確固たるものにすることになるのが、野良連合所属のプロ選手Wokkaの登場である。

現在はWokka氏も現役を引退し、CrazyRaccoonに所属してストリーマー活動を行っているが、2018年から2019年にかけて、『R6S』の世界大会で大活躍をみせていた。実際、2018年の「Esports Awards」において、彼はその年、世界で最も活躍したeスポーツ選手第3位として表彰されている。これは、『R6S』だけの話ではない。全てのeスポーツタイトルにおいて、活躍した選手としての評価である。この点だけをとっても彼の活躍の凄さが分かると思うし、実際今も海外のファンに彼は人気である。
そんなWokka氏の活躍がピークを迎えたのが、2019年の「Six Invitational」。彼を中心とした野良連合は日本、そしてアジア勢初の世界ベスト4まで躍進した。私もこの大会は現地で実況を担当したが、あの興奮を生涯忘れることはないだろう。

こういったeスポーツの盛り上がりを受けて、大会出場チームも大幅に拡大していく。4チームで始まった世界大会は2019年の「Six Invitational」の段階で16チームに増えた。賞金総額も2018年の50万ドル(約8000万円)から、2019年には200万ドル(約3億2000万円)へと大幅に増加することになる。
このようにUBIの中では実験的タイトルだった『R6S』が、動画・ストリーム文化の潮流に乗り、eスポーツの成熟とそれを支えるスター選手の誕生により、人気を獲得していくことになったのである。
絶頂期で迎えた「オペレーション キメラ」の功罪
ここまで『R6S』を取り巻く環境を中心にお伝えしたが、ゲーム自体の魅力も語らないわけにはいかない。元々実装されているゲームシステムに素晴らしい点が多かったがゆえに、ストリーマーにハマったし、eスポーツも盛り上がったことは間違いない。
ヘッドショット1発で相手が倒れる快感。様々なガジェットで壁や床が壊れるダイナミックな演出。ラウンド毎のオペレーター選択によって相手の裏をかく心理戦。10年経った今もそういった長所が色褪せることはないと感じる。それら確固たるゲームシステムの魅力があったからこそ、『R6S』は10年も続いていることは明言しておきたい。
そして、それを可能にしているのが、3ヶ月毎に行われるアップデートである。R6Sはリリース以来、3ヶ月毎のアップデートを続けている。一部、プレイ環境改善のためのアップデート「オペレーション ヘルス」というタイミングもあったが、基本的には毎シーズンキャラクターやガジェットが追加されたり、マップが追加されたりしている。
2018年3月にピークを迎えた理由には、外部環境だけではなく、このアップデートがうまくいった点も挙げられる。この時のアップデートは「オペレーション キメラ」。LionとFinkaという攻撃オペレーターが同時に2名追加されたことでも話題を集めたが、それ以上に注目の的となったのは、期間限定の追加コンテンツ「アウトブレイク」だった。

4週間にわたり展開されたこの期間限定モードは、『R6S』初のCo-opイベント。いわゆる「ゾンビモード」と思ってもらえばいいだろう。これまで、PvPモードしかなかった『R6S』にPvEモードが搭載されたということで多くの注目を集め、かなりの人が『R6S』を手に取るきっかけとなった。ちなみに、この「アウトブレイク」モードは、後に『レインボーシックス エクストラクション』として別タイトルとして展開されることになる。

この「アウトブレイク」の効果で、『R6S』は更なるヒットを見せるかに思われた。しかし、ここからアクティブプレイヤー数は横ばいを始める。
それまでハイペースで新しいオペレーターを実装し続けたことで、ある程度アイデアが尽き、オペレーターの追加による新しい刺激を与えられなくなってきていたと私は考えている。そして、新鮮味がないと既存プレイヤーは離れてしまい、新規プレイヤーにも魅力的に映りづらい。
そうした開発陣の苦悩が、この「オペレーション キメラ」から始まっていたように思える。わかりやすい要素が、先程紹介した新オペレーターLionだ。
現在も使用可能なLionだが、実は実装当初は全く異なる能力を持っていた。それが、こちら。

見てのとおり、アビリティを起動すると壁越しに敵が全て見えるという能力を当初持っていた。「公式がウォールハックを実装した」と言われるほどの強力な能力のため、eスポーツの試合では使用禁止されるという曰く付きのオペレーターとなった。
そして、2019年4月にアップデートがおこなわれ、敵味方全員にカウントダウンを通知した後、一定時間内に移動している敵の位置情報を攻撃側チーム全員にピンで共有するという能力に変更された。
これまでにアップデートで何人かのオペレーターが能力をリワークされている。ただ、それらほとんどが、使用頻度が低く、現在の環境と能力がマッチしていないため、強化のために調整されたものが多い。後にも先にも、強すぎることが理由で、登場から1年ほどでリワークされたオペレーターはLionしかいない。

ただ、今思えば、この「Lion事件」は始まりに過ぎなかったかもしれない。『R6S』が10年も続いたのは絶妙なバランス調整も1つの理由であると思う。そこには開発スタッフのたゆまぬ努力があることは間違いないが、バランスを重視したあまり、徐々にプレイヤーのニーズと乖離していくことになっていくのである。
そして、『レインボーシックス シージ X』と名を変え、華々しく迎えた10年目にプレイヤーたちの不満が爆発し、「Save Siege」という運動が巻き起こることになるのである。次回はこの続きから話していこうと思う。興味のある方はぜひ後編もチェックしていただければ幸いだ。
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