ゲーミング・ブラウザ「Opera GX」リリース。CPUやGPUのリソース消費に制限を加える

 

Operaは、新たなPC向けブラウザ「Opera GX」を発表し、アーリーアクセス版の提供を開始した。ゲーマー向けにカスタマイズされた世界初のゲーミング・ブラウザだとしている。

 

特徴

Opera GXの最大の特徴は、ブラウザが消費するCPUやRAMのリソースに制限をかけることができる点だ。ライバルとなるGoogle Chromeブラウザはリソース消費が激しいことで知られている。Opera GXはゲームプレイを妨げることなく使用できるブラウザをコンセプトにしている。

近年、ゲーム配信やチャット、攻略動画をみながらのプレイなど、ゲームプレイ中にブラウザを使用する場面は増えている。Opera GXはそういった用途にも最適化を目指しているようだ。一例として、標準でTwitchが組み込まれており、さまざまな通知を受け取ることができる。ほかにも、ゲーマーにとって使いやすい工夫が凝らされているので、ご紹介したい。

 

GX Control

Opera GXのCPUやRAMを制御するUIは、GX Controlというタブにまとめられている。内部は、RAMリミッターとCPUリミッターという2つの機能にわかれている。

CPUリミッターは、Opera GXが使用可能なCPU使用量に制限を加える機能だ。オンオフを切り替えるスイッチがあり、最大使用量は25%、50%、75%、100%から選択可能。RAMリミッターは、Opera GXが使用可能なRAM容量に制限を加える機能だ。メモリ制限はそれぞれ最大4GB、8GB、12GB、16GBとなっている。

 

実際の動作

CPUリミッターはともかく、RAMリミッターは簡単に実験ができそうだったため、制限を加えた際のブラウザの挙動がどのようなものになるのか試してみた。

実験はYouTubeの4K動画を大量に開いて再生するというかたちで行った。20個ほどタブを開いたところで、ようやくメモリ使用量が4GBを超えるようになった。5GBを充分に超えたことを確認して、RAMリミッターを4GBでオンにしてみた。結果は予想外だった。5GBを優に超えているにもかかわらず、メモリ消費は上がり続けたのだ。いくつかのタブでは動画再生が停止していたものの、ブラウザの機能というより、4K動画の同時大量再生にネットの帯域が不足して停止したようだった。

RAMリミッターにはもうひとつ、ハードリミットというスイッチがあり、「メモリ制限を超えることはありません」と説明されている。試しにハードリミットをオンにしたところ、今度はみるみるメモリ使用量が下がり1GB以下まで急降下。同時にすべての動画が再生を停止。それどころか検索すらできないなど、ブラウザとしてまったく機能しなくなってしまった。

画面は暗転し、まったく使えない状態に

次に、事前にRAMリミッターをオンにした状態で大量のタブを開いてみたが、やはり5GBを超えても制限がかかる様子はなかった。RAMリミッター、ハードリミットともにオンにした状態で同じテストを行ったところ、今度はメモリ使用量は3.5GB前後で安定。タブに開いた動画のうち、半分ほどが再生を停止した状態を維持するようになった。先程はもっと多くの動画が再生できていたため、ネットの帯域不足ではなく、ブラウザが視聴していないタブの動作を停止したと推測される。

5GBを超えてしまっている

「なぜRAMリミッターがうまく機能しなかったのか?」あるいは「ハードリミットはなぜ存在するのか?」という疑問が浮かぶだろう。この点について、Operaは「ブラウザは選択されたメモリ割り当て以下に留まろうとするものの、決められたメモリ量よりも体験を優先します。たとえば、ストリームを継続したりクラウドベースのファイルをアクティブにしたりできる場合は、メモリ使用量が設定された制限をわずかに超えてしまいます」としている。

将来的なクラウド・ゲーミングを視野に入れた場合、ブラウザがストリーミングを中断することはゲームにとって致命傷になる。RAMリミッターは、そういった際の冗長性をもたせた仕様になっているといえるだろう。今回の実験をYouTube動画で行ったのは、クラウドゲームを4Kでプレイすることを想定してのものだった。そういう意味では、動画再生を中断しない仕様は、むしろ優秀といえる。動画やクラウドゲームの機能を使わないケースではハードリミットを使い、確実に想定内のメモリ使用量に留めることが可能というわけだ。

問題なく4GBにおさまっている

 

クラウド・ゲーム・ランチャー、あるいはゲーミング・ポータル

Opera GXにはGX CORNERというポータル機能が備わっている。一見するとOperaのスピードダイヤルに似ているが、表示されているのはウェブサイトではなくゲームのパッケージだ。

大きく分けて、セール中のゲームと新着ゲームのカテゴリに分かれている。パッケージには「50%オフ」といったセール中を示す表記や、対応プラットフォームが表示される。パッケージをクリックすると、Bethesda.netやIGDB.comを通じて、それぞれのゲームの販売ページに行くことができる。

一見してわかるとおり、GX CORNERはSteamやEA Origin、Microsoft Storeといったゲームストア・プラットフォームに似ている。将来的には、乱立するゲームストアをひとつに統合する、GOG Galaxyのようなゲーム・ランチャーとして機能することを目指しているのかもしれない。 またGX CORNERではゲームの新作やセール情報だけでなく、最新のゲーム関連ニュースも一覧表示される。そのほかOpera GXの機能として、広告ブロッカーや無料のブラウザーVPNも搭載済みだ。

クラウドゲームサービスStadiaという切り札があるChromeブラウザに対して、Opera GXがゲーマーにどのようなサービスを提供できるかは、いまのところ未知数だ。しかし、ゲーマーがさまざまなサービスを横断的に一覧できるゲーミング・ポータルを必要としているのは明らかで、Opera GXにはそうなり得るポテンシャルがあるように見える。まだアーリーアクセス版に過ぎないが、今後の展開に期待したい。