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『Fate/Grand Order』(以下、FGO)の開発運営を担うラセングル。もともとはディライトワークスという名の会社であったが、今年2月にアニプレックス傘下となり心機一転再スタートを切った。組織・体制も新たにし、『FGO』だけでなくさまざまな挑戦に取り組んでいるという。またスタッフについても大規模に募集しているそうだ。

株式会社ラセングルリクルートサイト


面白いのは、ラセングルがリモートワークを強く推奨している会社だという点だ。今どきリモートワークに注力している会社こそ珍しくないが、人気運営型タイトルを抱える中規模の会社ながら、リモートワークに熱心というのはやや珍しい。さらに同社の93%(派遣社員や業務委託含む)がリモートワークだというのだ。なぜここまでリモートワークを推奨しているのか。キーマンとなるラセングルの山根氏に話を訊いた。

なお、本インタビューは新型コロナウイルス感染症への対策を実施した上でおこなっている。

――今日はよろしくお願いいたします。まずは自己紹介をお願いします。

経営管理室 ジェネラルマネージャーの山根真です。経理や予算、総務に広報など幅広い領域で仕事をしています。もともとはエンタメ業界出身で、ゲーム業界や遊技機業界で予算管理やIRなどの業務を行っていました。社長室付きという経歴で仕事をしていたこともあって、バックオフィスに関連する仕事全般を19年ほど続けている形になります。余談ながら、大学院時代はマーケティング分野で大規模な広告の定量分析などを行っておりました。その意味では、経営・経済の領域からはブレずに仕事をしています。


――まずはラセングルの組織規模ですが、社員数は何名ほどになるのでしょうか。

社員数は全体で270名強になります。今年2月の事業承継の時点では250名程度で、そこからは20名ほど増えている状況ですね。自社開発を中心に行う関係から、内訳としては8割近くが開発メンバーとなります。2022年下半期はさらに採用を強化する方針で、『FGO』などのタイトル開発に携わるメンバーを広く募集したい考えです。

――リクルートサイトにも年齢や男女比率などの情報が見やすく開示されており、この点も非常に積極的だと感じました。

ありがとうございます。企業にとっても入社される方にとっても、就職において互いのミスマッチは不幸の原因になります。我々としては出来る限りの内部情報を開示して、当社の状況をしっかり理解していただいた上で入社していただきたいと思っています。転職を検討されている方だけでなく、そのご家族に対しても安心していただけるような環境であることを伝えたい、という思想もあります。

“コロナ以前”からリモートワークを検討していた理由

――早速、今回の主題となる「リモートワーク」についてお伺いします。まずは、現在のリモートワーク状況について教えてください。

私たちは「Home Style(ホームスタイル)」と呼んでいますが、在宅で業務を行う社員は85%程度になります。派遣社員や業務委託の方を含めると、93%ほどがHome Styleでの業務になります。対面での打ち合わせが必要な場合や広報・マーケティングなどで集まる機会などはオフラインのケースもありますが、基本的にはフルリモートの形式となります。北は山形、南は福岡まで、10名ほどのメンバーが関東圏外で業務を行っています。

――現在はほとんどのケースでリモートワークが実現していると。多くの企業は新型コロナウイルスによる緊急事態宣言をきっかけにリモートワークが始まりましたが、ラセングルの場合はどういった経緯でリモートワークを取り入れたのでしょうか。

リモートワークの必要性についてコロナ以前より議論していました。「東京にこだわって働く必要って本当にあるんだっけ?」というのが最初の論点だったんですね。優秀な人材は場所を問わず、東京以外にも、それこそ海外にだって数多くいるはずです。そういった方々と一緒にゲーム創りに取り組むことこそが本当のクリエイティブだと考えていましたし、そもそも『FGO』は北米市場など海外でも広く遊んでいただいていることから、開発拠点を東京だけに限定する必要はないのではないかと。

こうした議論が繰り返されていた中で、やはり直接的なきっかけは緊急事態宣言でした。発令以降はほぼ全ての社員がリモートワークで勤務するようになりました。

――当初から構想として存在したHome Styleに、時代的にも切り替えざるを得ないタイミングが訪れたということでしょうか。ただ、その後は多くの企業が出社型に戻っていますね。

そうですね。その後、緊急事態宣言解除のタイミングで多くのゲーム会社が再び出社での業務にシフトしたものと思います。確かに、管理やセキュリティ、コミュニケーションなど、リモートワークで顕在化してきた様々な課題を踏まえると、その判断は間違ってはいないと思います。しかし、10年後20年後に、世界中のクリエイターがクリエイティビティを最大限に発揮して、ラセングルを中心に笑顔でゲーム創りをしている姿を想像してみたときに、果たしてそれが正しいのか。従来の働き方に戻すことなく、あえてチャレンジし続けるべきではないのか。また、目の前のところでは、私たちは「社員の不安と会社のダメージ、どちらが大きいんだろう?」という軸でも判断をしていて、この時はできる限り社員のことを考えた選択をしました。そこで、まずは「原則」Home Styleとし、感染状況を踏まえながら徐々に自由度を増やしていきました。いまでは基本的に社員の意志に任せていますが、先ほどお話しした通り、多くの社員がHome Styleを選択しています。

日本中、世界中のクリエイターと共に面白いゲーム創りにこだわっていきたいという想いを実現するために、今のリモートワークの成功体験をさらに積み重ねていきたい、という判断です。

リアル出社に近いコミュニケーションを目指して導入された「oVice」

――私自身もゲーム業界で仕事をする身として、プロジェクトの進行度によって「リモートができる部分、できない部分」があるような肌感覚があります。仕様が決まったあとの工程、例えばアセット制作などの実作業は問題ない印象もありますが、企画立ち上げの時のパッションのようなものはリモートで伝えることが難しいのではないでしょうか。

コミュニケーションは課題になりやすいですね。私たちとしても、社内で日々繰り広げられていた会話、雑談などから着想を得た「自由な発想のものづくり」、この熱量が失われることが会社としての一番のリスクだと考えていました。このため、新しいコンテンツをゼロから生み出す場合、必要に応じて対面での話し合いの場を設けることも可能です。オフィス内にはブレストのためのミーティングスペースも用意していますし、一定期間出社を希望する方用のフリーアドレスエリアも拡充させました。

とはいえ、コロナ関係なく会社の方針として「場所を問わない」というコンセプトがあったため、ここを解決するのは「出社とのハイブリット化」ではなくツールの力だと考えていました。当初からTeamやGoogle Chatなどいろいろなツールを検討しましたが、現在はoViceを使ったバーチャルオフィスを活用することで出社時の感覚と近いワークスタイルを確立しています。

――例えば「週に数回出社する」といった取り決めを行うのではなく、常時オフィスにいるような状況をバーチャル空間に構築する方針を取ったということですね。いつ頃からこの運用を続けているのでしょうか。

「自由にコミュニケーションが取れる場所をもう一度取り戻そう」という想いで2020年10月に導入しました。導入の翌年には全社員にiPadを配布しています。iPadは何に使ってもらっても良いので、最低限oViceだけは入れておこうというルールにしています。

今は社員全員が毎日ログインした上で業務を行っています。ログインがない場合は忘れているのか仕様上のエラーなのかメンタル面なのか、勤怠承認者が確認をしています。10時の始業後はチームごとに朝会を行い、以降は部門ごとに独自に運用をしています。


――実際のところ、皆さん全員が「これは出社に近いな」と感じておられるのでしょうか。

少なくとも私はかなり出社に近い感覚だと考えています。ただ、苦労しているところもありますね。oViceには会話が聞こえるサークルが表示されており、その中にいると周囲の音声が聞こえる仕組みになっています。実際のオフィスでは周りの声が聞こえるのは当然のことですが、ツール越しだとうるさいと感じる人もいるようです。また、ツール上で話すことへの抵抗がある場合もあります。私たちとしては、iPadの配布によってツール自体への敷居を下げ、oVice内で催し物をすることで「その中で会話をする」という部分への抵抗をなくすといった工夫を行っています。

――Home Styleでもプロジェクトが遅滞なく進んでいるのは素晴らしいですね。ただ、業務自体は問題なくても、社内風土やカルチャーの体感・継承などは課題があるのではないでしょうか。

社内文化や会社が向いているベクトルを全体に伝えることには段階があって、まずはGMや各部門リーダーなどの中間層に浸透させることが第一です。この認識合わせや文化継承はリモートではなく対面で、たとえば合宿の形式を取って行っています。そこからは部門ごとに、彼らなりの方法で伝えてもらいます。GMも、全社員が一同に集う月初会などの機会で都度しっかりと方向を示していきます。社内文化の継承をシステム的に担保するのは難しいですが、可能な限り社員同士、経営層とのコミュニケーションの機会を増やすことで解決しようとしています。

――それでいうと、一般社員はともかくマネージャー層のワークライフバランスというのは……?

これもしっかり保っていると思いますよ。リモートワークは労働時間が伸びる傾向にありますが、労働状況を可視化する仕組みを昨年末に導入しましたし、そもそも各GMの過重労働に対する意識も高かったこともあり、労務管理がしっかりしています。なにか問題があれば産業医もいるので、皆さん安心して働いている認識です。


――それを聞いて安心しました。もうひとつ、開発において重要なのがセキュリティ面です。この点についてはどういった対応を行っていますか?

VPNを用いた接続など一般的なセキュリティ対策は行っていますし、自宅にハードウェアを送る場合もセキュリティが万全な専用の運送業者にお願いしています。また、Home Styleで会社と同じ就業環境を構築してもらうため、リモートワーク手当も毎月支給しています。

特に『FGO』は情報の取り扱いがシビアなので、そもそもHome Styleになる以前から情報にアクセスできる社員は限られていました。オフィス内やoVice上のコミュニケーションにおいては「隣の席の会話が聞き漏れていて、お互いなんとなく認識が合っている」という状況も大切ですが、セキュリティとして万全を期すべき部分には一切手を抜いていません。

「ドキドキ」を生み出すための環境を作ることが使命

――先ほどから「ワークライフバランス」という言葉が良く出てきますが、そもそもワークライフバランスが優れていることとクリエイティブにはどういった関係があるのでしょうか。この部分を改めて言語化していただけますか?

ラセングルは「ドキドキを世界へ」という理念のもとで業務を行っています。ドキドキの解釈は多様ですが、世界中の皆さんに喜びや感動を届け、ポジティブな感情や幸せを感じていただけるコンテンツを作ろうという思想が根幹にあります。

たとえば、毎日残業をしてご飯も喉を通らない、そういった環境下で誰かを楽しませるのはなかなか大変なことだと思います。ドキドキを創出するマインドを持てるような生活を送ること自体を会社がサポートすることで、万全な状態でクリエイティブを発揮していただけるのではないかと考えています。この環境づくりこそが私の仕事です。

また、通勤時間の短縮などによって皆さんのインプットの時間も増えていると感じています。クリエイターとしての成長点はオフィスの中にだけ存在するのではなく、他のエンターテインメントに触れる時間や、あるいは家族との時間の中にもあるはずです。

――そういった「ドキドキ」を創出する環境そのものを作ることがバックオフィスの矜持のようにも感じられました。これまでお伺いした以外に、働きやすさに関連するアイデアはあるのでしょうか。

Home Styleの文脈では環境構築の手当のみが新たな福利厚生と言えますが、場所を問わず働けるようになった結果、関東圏に住んでいた方が地元に戻って就業できるようになったり、結婚や介護によって居住地が変わる方も問題なく働けたり、とにかく「これまでは辞めざるを得なかった」という状況に対応できるようになったのがメリットです。もちろん、東京にいても地方にいて給与は変わりません。ただし、いまだリアルでの対話が必要な部分がまだ残っているため、全社員がいまから地方へというのはもう少し先になりそうです。

産休や育休も取りやすいですし、子どもの送り迎えなどが必要な場合は勤務時間中も休憩ボタンを押してもらえれば、自分で時間を自由にコントロールできると思います。フレックス制度、有給休暇の取りやすさも含めて、出来ることは何でも取り入れる姿勢です。

ちなみに、Home Styleに関係ない部分で、従来から研修制度や補助制度などは充実しています。その他長期的な視点で安心して働きやすいような制度を今後導入予定です。社員のみなさんがより一層働きやすくなりそうなアイデアがあれば、まずはどんどん試してみるという風土があります。

――こうした環境でこそ発揮される優れたクリエイティブが、会社としての利益に繋がるわけですね。最後に、この記事を読んで求人に興味が湧いた方に向けたメッセージをいただければと思います。

私が取り組んできたのは、従来通りの熱量あるコミュニケーションを促進するための取り組みです。求めるのは成果ですから、そこへのアプローチにおいては多少ファジーな部分が残されていても良いだろうとも思っています。

一方で、成果メインになりすぎてしまっては帰属意識が欠損してしまいます。仕組みを取り入れただけでなく、その中で誰が何を発信するかまで含めて考えることが重要です。ラセングルという会社は、今まさに「ラセングルらしさとは?」を作る段階にあります。組織の立ち上げ時期に近い現状において、きっと自分の爪痕を残すことができる良い環境だと思いますので、ぜひご一緒に働けたらと思います。

株式会社ラセングルリクルートサイト




[聞き手・執筆・編集: Daiki Kamiyama]
[聞き手・編集: Ayuo Kawase]
[協力: Aya Furukawa]
[撮影: Maho Ikemi]

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