Nintendo Switch/PC(Steam)向けに、本日9月16日に発売された『メタリックチャイルド』。本作は、韓国に拠点のあるSTUDIO HGが手がけており、UIや主人公ロナのグラフィックも含め、スクリーンショットからは非常に洗練された印象を受ける。クレジットによれば、STUDIO HGはDaehoon Han氏による個人スタジオで、外部のスタッフの協力もありつつ、同氏がディレクター/プログラム/デザイン/アート/シナリオを担当。インディーらしい体制で作られてきたようだ。
スクリーンショットなどから、本作の外見が整っているのは明らかであるが、中身はどうなっているのだろうか。発売前にSteam版のキーを頂き、一足先に製品版をプレイしてきたので、ゲームプレイの内容や感想も交えて、本作の内容を紹介しよう。結論をいってしまうと、アクションやローグライトとしてのしっかりした基礎の上に、アンドロイドの少女ロナの可愛らしい表現や、テンポのいいアクションが載せられた、良作であった。
プロジェクト「メタリックチャイルド」
まずは物語について説明しよう。やや複雑な設定のため、少し説明が長くなるがご了承願いたい。舞台となるのは、2086年の世界。宇宙には、ライフストリーム号と呼ばれている宇宙ステーション兼研究所が作られ、さまざまな実験がおこなわれていた。A.I分野の第一人者アイリーン博士による、人間と同程度の思考/感情をもつアンドロイドの研究開発プロジェクト「メタリックチャイルド」も、船内の研究の一つ。同プロジェクトでは、不妊率が増加した世界において、子供のいない一般家庭に向けた高度なアンドロイドの普及を目標に、研究が進められてきた。
アイリーン博士は、多数のプロトタイプを経て、人間に近い思考と外見をもつ最初のメタリックチャイルド「ロナ」を完成させる。しかしロナには、思考の演算費用が高すぎるという欠点があり、結果的にプロジェクトは頓挫。開発方針の変更により、以降は戦闘用のメタリックチャイルドが製造されることとなった。
一方、アンドロイドの少女ロナは、人間たちから酷い扱いを受けつつも、アイリーン博士をママと慕い、ライフストリーム号での日々を過ごしてきた。しかし、ある日船内でアイリーン博士による反乱が発生。博士の命令に従ったメタリックチャイルドたちが人間を襲い、制御権を奪われたライフストリーム号は地球へ墜落しようとしている。ロナは、ライフストリーム号の落下を止めようと行動するが、結果的に自立コントロールシステムが故障し、一人では動けなくなってしまう。そこで、偶然地球から通信が繋がったプレイヤーが、自立コントロールに代わってロナを遠隔操作することになる。
基本的なゲーム構成
ロナは、ライフストリーム号の落下を止めるためにコアジェムが必要だという。コアジェムとは、メタリックチャイルドがもつ新しいエネルギー源。ただしコアジェムは、ロナの開発後に発明されたため、ロナには搭載されておらず、メタリックチャイルドたちを倒して手に入れる必要がある。原点にして非戦闘型のロナと、巨大な戦闘用のメタリックチャイルドたち。同じメタリックチャイルドでありながら、異なる両者の戦いが繰り広げられる。
本作では、拠点であるコア実験室から移動する際に、どのメタリックチャイルドへ挑むのかを踏まえてステージを選択する。攻略順は自由であり、挑戦するメタリックチャイルドによって、ステージ内の様子や仕掛け、登場する敵ロボットが変化。倒したメタリックチャイルドからは強力なMCスキルも獲得できる。なおMCスキルは、ゲージを消費して発動できる必殺技のようなもの。敵を凍らせたり、プレイヤーがスコープを覗いて機関砲で砲撃したりなど、倒したメタリックチャイルドと関連するMCスキルが用意されている。
ステージ内はフロア単位で構成されており、フロア内にはいくつもの小さな部屋が存在している。ロナが部屋に足を踏み入れると、敵であるロボットたちが出現し、すべてのロボットを倒すと戦闘終了。戦いと探索を繰り返し、4フロア目のネストにいるメタリックチャイルドを倒すと、ステージクリアだ。
ロナは基本的なアクションとして、ガントレット/ハンマー/ソード&シールドの3種類の装備に対応した通常攻撃と、武器固有のスキル、全装備共通かつ強力な掴みと投げが使用できる。さらに、ソード&シールドでは敵の攻撃を防ぐガード、ハンマーおよびガントレットではローリングが回避行動として用意されている。通常攻撃以外の行動で消費し、通常攻撃で回復するバッテリー(スタミナ相当のもの)にも気を配りつつ、これらのアクションを使って、ロナをロボットと戦わせていく。
扱いやすいアクションと、テンポのよい戦闘
ロナは、基本的に直感的で扱いやすいキャラクターだ。武器ごとの回避行動で、ほとんどのアクションがキャンセル可能。通常攻撃も、各武器のイメージに添った素直な性能になっていることが、扱いやすさに繋がっている。また、1部屋ごとに出現する敵の数は少なく、1回あたりの戦闘時間は短い。ゲーム全体としては、素直なアクションを下地にした、テンポのよい戦闘が印象的だった。
一方、例外的に投げは少し癖のある行動だ。本作の投げは、一口に敵を掴んで投げるといっても、敵を壁にぶつけてダウンさせたり、炎などにぶつけて一撃で倒したり、敵を弾避けの盾にしつつ敵同士をぶつけたりなど、状況にあわせて応用可能。単純に使っても攻撃力が高く、強い行動として設計されている。ただし投げのモーション中には、例外的に回避行動によるキャンセルが効かない。前述のとおり、敵を遠距離攻撃の盾にできるため、乱戦でも使用可能ではあるが、投げボタンに複数のアクションが割り振られていることもあり、強力な分リスクも付きまとう。またバッテリー消費なしで敵の攻撃を防ぐジャストガードや、連続でスキルを発動するチェインスキル、戦闘中の行動に応じたランクといった、プレイヤースキルの活きる要素も導入されている。アクションに関しては、応用の余地がある土台の上で、テンポの良い戦闘が展開されるといったところだろうか。
喜怒哀楽のコアシステム
ボスとして待ち構えている戦闘用メタリックチャイルドは、いずれも強力である。専用のアクションやパターンが用意されているだけに限らず、巨大メタリックチャイルド「ギガンティック」との戦いでは視点が2Dアクション風になるほか、ステージ全体がSTG風になることもある。非戦闘型のロナが相手をするには、ちょっと分が悪いかもしれない。しかしロナには、多彩な強化システムが用意されている。中でも特徴的なのは、2つのコアシステムだろう。
1つ目のコア「ミニコア」は、ゲームサイクルに彩りを加える、時限つきの強化要素だ。設定的には、ほかのメタリックチャイルドと異なり、コアジェムの搭載されていないロナが、ロボットのコアを奪って活用するシステムである。ミニコアには攻撃力を上げる、クリティカル率がアップする、バッテリーが消費しなくなる、大型の敵も投げられるようになるなど、基礎的なものから強力なものまでさまざまな効果が込められている。強力なミニコアを装着している間は戦いを有利に進められるわけだ。ミニコアの装着数は最大3つまで。正常なミニコアを3つ装備している際には、コアコネクトシステムも発動し、ステータスアップ効果も得られる。ただし、元がロボットたちの動力であるため、ミニコアには稼働時間の制限がある。とはいえ、ミニコアの制限時間が経過するのは戦闘中だけ。強化を活かして上手く立ち回れば、コアコネクトシステムの維持も可能であるなど、ゲームプレイの変化に一役買っている。
一方で、ミニコアの中には、バグ/ウイルスコアと呼ばれる厄介なコアも存在する。バグ/ウイルスコアは、基本的なミニコアの獲得手段である、敵からコアを得た際などにランダムで出現。単純な攻撃力低下や被ダメージ増加から、画面内にスパムが出現するものやカメラの解像度が下がる効果、ロナの見た目がボクセル風に変わるウイルスまで、多彩なマイナス効果が用意されている。ユニークなバグ/ウイルスについては、画面こそ大惨事であるが、ちょっとぐらい画面が見づらくなっても実害は小さい。ロナの設定を活かした演出であり、変化したロナの姿や見づらい画面には一見の価値があるかもだ。ただし、中にはダメージを受けると追加でバグコアがインストールされてしまうコアもあり、バグ/ウイルスコアで装着枠が埋まってしまうと、さすがに辛いかもしれない。
バグコアは、ミニコア同様戦闘中の時間経過で解除されるものの、ウイルスコアについてはステージ中永続なため、インストールしてしまった場合にはランダムで出現するコアチャージャーを待つことになる。とはいえ、バグ/ウイルスコアをインストールしてしまっても悪いことばかりではない。マイナス効果と同時に、スーパーコアシステムで利用するバグデータが獲得できるからだ。
最低保証付きスーパーコア
スーパーコアシステムは、ステージ中永続的に発動するパッシブ効果が得られる、いわゆるレリックやパークなどに相当するものだ。コアエッセンスの獲得などにより、コアエネルギーが一定量溜まるとコアレベルが上昇。最大10レベル分まで、ランダムに提示された中から、1レベルごとに1つのスーパーコアがインストールできる。
スーパーコアの能力には、ミニコアで得られる能力と似たようなものから、一度だけ致死ダメージを回避するラストチャンスや、攻撃力を上昇させ防御力を捨てるオーバードライブモードなど、特殊なものも用意されている。ドローンの攻撃力をロナの攻撃力に乗せる効果や、ジャストガードやローリングを強化する能力もあり、ほかの要素との組み合わせによるコンボも構築可能だ。
また本作のスーパーコアシステムには、一定条件下でレアリティを保証するシステムがある。レアリティの保証システムは、ランクBの能力を選んだ際、次のレベルでは直上に必ずランクAの能力が出現。さらに、保証によって出現したランクAの能力を選ぶと、次のレベルでは必ずランクSが出現するという仕組みだ。スーパーコアは、各コアレベルごとに4つの選択肢から候補を選ぶが、保証システムを使ってBレベルから順に選ぶと、Sレベルが3回は確実に選択できる。Sレベルの能力だからといって、必ずしも有効とは限らないものの、ランクの保証システムによって、選択の幅が広がっているのは間違いないだろう。
ステージ内外の強化要素
ロナの使用する装備には3つの武器種に加えて、レアリティ/オプション/武器スキルといった違いがある。この内、武器スキルは装備の名称ごとに違うスキルが設定されている。同じソード&シールドであっても、バトルソードの武器スキルには連撃を放つスキルが備わっているが、トリックスターには周囲にダメージを与えるエネルギーボールの生成、カリバーンには遠距離攻撃スキルなど、名称ごとに決まったスキルが設定されているわけだ。
また武器には、投げ中の無敵化やクリティカル率アップなど、ランダムで最大1種類のオプションが付属。レアリティによって、武器の通常/スキル攻撃力など、武器の基礎の性能が少し上昇する。武器スキルには、爆弾をばらまくスキルや、ドローンを召喚する効果もあり、中には構成の軸になれるものもある。とはいえ、レアリティやオプションも軽視はできないため、2つの装備枠に何を持っておくか悩ましい。仮に良質な装備を揃えても、ウイルスコアのせいで武器が切り替え不能になり、台無しになることもあるので、気楽に選んでもいいかもしれない。なお武器の取得時には、武器の名称のボイスSEも再生される。
ステージ中には、ディスクを消費して使用するショップや施設も設置されている。ディスクは、部屋での戦闘を終えた際などに獲得。自動販売機からランダムな装備を購入したり、装備のレアリティをアップさせたり、ボックスを開けたりなど、ディスクを消費して強化や回復などをおこなうわけだ。ディスクの消費先として特徴的なのは、中型のロボットやバイクといった搭乗物だろう。ロボットなどを起動すると、バッテリー兼HPとして機能するゲージが表示される。ゲージが尽きるまでの間ロナ自身のHPは消費せず、操作中の機体専用のアクションを使って一方的に敵を蹂躙可能だ。戦闘中以外はゲージが消費されないため、そのままの状態でボスのいるネストへも乗り込める。機体の稼働時間中にメタリックチャイルドを倒せはしないものの、アクションが変化し、短時間緊迫したゲームプレイから解き放ってくれる。
また、コアエッセンスを生成する施設も存在する。ローグライトにおいて、特殊効果を発揮し続けるパークは最重要といっても過言ではない。しかしながら、本作のスーパーコアには10レベルまでの上限があり、十分にフロアを探索していればメタリックチャイルド戦までには上限に到達する。コアエッセンスにリソースを消費しなくともいいという点では、コアレベルの上限によってディスクの選択肢も広がっているわけだ。
強化要素としては、前述した一時的な強化だけでなく、恒久的なものもある。カスタムではチップの消費と引き換えに、対応したMCスキルの強化など、効果付きの外見変更パーツが購入できる。購入したカスタムパーツは、同時に1種類だけ装備可能。そこまで派手なものではないものの、ユニークな衣装や可愛らしい装い、コラボ要素なども用意されている。
アップグレードでは、チップの消費と引き換えに、最大HP/バッテリー容量/MCスキルのゲージ効率/HP回復時の追加回復/レア武器出現率の5種類を底上げできる。いずれも一回のアップグレードで上昇する効果量は少なく、ゲームプレイを激変させるものではない。とはいえ地味であっても、最大HPの上昇などは確実に生存に関わる部分であるため、強化によってクリアが近づいてくるはずだ。
遊びやすさと難しさのバランス
また本作の難易度には易しい順に、ストーリー/イージー/ノーマル/ハードの4段階の難易度がある。ストーリーモードにおいては、敵の弱体化やサポートが導入されるほか、無敵モードの使用も可能。ロナの可愛らしさに惹かれて購入しても、最後までストーリーを辿れるようになっている。一方、筆者はノーマルモードで終始プレイしていたが、気を抜けばやられる緊張感はありつつも、ローグライトとしてはプレイしやすい難易度になっていた。また、さらなる挑戦を求めるプレイヤー向けにはハードモードのほか、本編と関わらない難易度高めのモードとして、チャレンジステージへ挑むバーチャルミッションと、強力なロボットがWAVE形式で押し寄せるターミナル・クリードも用意されている。
長くゲームプレイの要素に触れてきたが、もちろん主人公のロナも可愛らしく描かれている。本作には、日本語/韓国語のボイスが導入されており、ロナの日本語ボイスは声優の大空直美さんが担当。メインストーリーはフルボイスで展開されるほか、ゲームプレイ中にも攻撃/被弾時を含めてよく喋る印象があった。
放置時にカメラに向かって手を振ってくれる演出以外にも、ゲーム起動時には起動ログ風のメッセージと共にロナが登場。ほかにもステージ開始時には登場演出もおこなわれる。声も含めて、可愛らしいばかりでなく、戦う少女のかっこよさもあわせもった、感情豊かなアンドロイド少女として表現されていたように思う。また、出番は限られているものの、各メタリックチャイルドにも個性と共に音声が用意されており、キャラクターの表現には力が入れられていた。
質実剛健なアクションゲーム
ローグライトコアアクションと称されている本作『メタリックチャイルド』。本稿を執筆するにあたって、筆者は本編の最後までプレイしたが、文中でも触れてきたとおり、アクションやローグライトとしての土台はしっかり作られていた。参考までに、クリアまでの所要時間は15時間程度。プレイ中には、運に恵まれず無事死亡することもあれば、雑プレイであっけなく終わりを迎える回や、ウイルスコアで画面の情報量が大幅に減る現象にも見舞われた。そうした死もありつつ、本作のゲームプレイには、戦闘のテンポの良さやアンドロイド少女ロナのキャラクターとしての可愛らしさなどが盛り付けられていたように思う。
小規模な開発チームの作品としては、万人向けに要素が洗練されている印象もある。一方で、TRIGGER制作によるPVや装備取得時のボイス、ロボットものの王道設定なども踏まえると、本作には制作陣の趣味が多数反映されているのもまた間違いない。ある意味インディーらしさと、万人向けのプレイしやすさをあわせもった作品であるわけだ。またSteamでの体験版配信時には、キーアサインができないというバグも報告されていたが、すでにアップデートで修正済み。対応の早さを踏まえると、今後のアップデートにも大いに期待がもてそうだ。
『メタリックチャイルド』は、Nintendo Switch/PC(Steam)向けに配信中だ。価格は、Steam版が税込2980円、Nintendo Switch向けの通常版が税込3980円。Nintendo Switch向けには、設定資料集やサウンドトラックも付属した、1000セット限定の特装版も税込1万円で販売中。また、PlayStation 4/PlayStation 5版も、2022年に発売予定となっている。