『Dead by Daylight』2019年夏に専用サーバーを導入へ。5年以上にわたる運営計画を見据え、ネットワーク環境に大規模な投資

 

日本時間12月7日、米国ロサンゼルスで開かれたThe Game Awards 2018で、『Dead by Daylight』ディレクターのMathieu Cote氏が登壇し、同作の今後について2つの発表を行った。

順番が前後するが、2つ目の発表から記述する。2つめの発表は、先日からSteam版においてベータテストが行われている新コンテンツ「Darkness Among Us」のローンチトレーラー公開だ。新殺人鬼「The Legion」、新生存者「Jeff Johansen」、新マップ「Mount Ormond Resort」を収録する第10チャプターDLCとなる。以前発表された3年目開発ロードマップでは12月中に実装予定となっており、ベータテストにおいても大きな不具合は発見されていないようなので、予定が大きく変更される可能性は低いだろう。

※ The Game Awards会場で公開されたトレーラー。生存者2人が雪山を逃げるが、実は…。

そして1つ目の発表は、『Dead by Daylight』のサービスを今後5年間以上継続させることを目指すということと、2019年夏、ゲームの通信方式に専用サーバー(Dedicated Servers)を導入するという2点だ。これらについて、詳しく見ていこう。

 

コミュニティの宿願だった専用サーバー

現在の『Dead by Daylight』は、ピア・ツー・ピア(以下、P2P)形式の通信技術を採用している。これはプレイヤーが使用する端末同士が接続してゲームを処理する形式であり、インターネットプロバイダ等のインフラは考慮しないものとすると、通信内容がそれぞれのゲーム機以外を経由することはなくプレイヤー間で直接通信が行われる。一方、今回導入が予告された専用サーバーは、各プレイヤーがゲームサーバーに接続し、ゲームの処理はサーバー側で行われる形式だ。全てのプレイヤーはサーバーに接続することになる。

これらを『Dead by Daylight』の現状と照らし合わせて考えてみよう。『Dead by Daylight』では、殺人鬼を選んだプレイヤーがホストとなり、プレイヤーが集まるロビーを作成する。そこに生存者4人が接続し、全員が準備完了するとゲームが始まる。ホストである殺人鬼プレイヤーの端末がゲームの処理をするため、通信環境などが悪い殺人鬼とのマッチでは、生存者の環境がどれだけ良くても全員がラグを感じてしまうという大きな問題があった。専用サーバーでは殺人鬼・生存者両プレイヤーともにサーバーに接続するため、他者の環境により必要以上に自分のプレイ環境が悪化することはない。開発スタジオであるBehaviour Interactiveの発表でも、専用サーバーの導入で、より良い体験と安全な環境、カスタマイズの選択肢を提供できるとしている。

 

実装の困難さと方針転換

専用サーバーの導入は2016年の発売当時からコミュニティからの要望が非常に多く、常に話題となっていた。では、なぜ2018年の今まで実装されなかったのだろうか。この問いに対し、Behaviour Interactiveの回答はこうだ。

「これは複雑なことなのです。例えばキッチンを完全に改修することを想像してください。しかし、その最中に親戚をサンクスギビング(アメリカでもっとも有名な祝日)の夕食会に招待せざるを得なくなったようなものなのです!」

オンライン対戦ゲームにおいてネットワーク通信は根幹をなすものであり、ゲームのサービスを続けている間の改修には莫大な労力がかかる。特に定期的に新コンテンツを作り続けなければいけない状況の中での変更は容易ではない。以前生放送で質問を受けたときも、「現実的ではない」「(開発時に専用サーバーを設置しないという)選択をしなければいけなかった」などの回答を繰り返していた。

過去の生放送で、視聴者から「もし何でもひとつ願い事が叶うとしたら、ゲーム内の何を変えますか?」という質問に対し、「専用サーバーを持ちたい」と回答していたDave Richard氏。

小規模にローンチした本作が、維持費の負担やサーバー管理者を常設する必要がある専用サーバーを持つことを前提として開発を始めるのは予算的に不可能だった。また一度サービスインしたものを途中で切り替えることが更に困難であるというのは、妥当な説明だろう。一方で、今回の発表で今までの方針を180度翻したことは、プレイヤーの環境改善に対する真剣度が伺える。そして、5年後までプレイ人口を維持することへの意気込みと、それに伴う金銭的な投資にコミットしたとも言えるだろう。

 

コミュニティの反応

この大きな発表に対し、コミュニティの反応は大きく2つに分かれた。ひとつは長年の希望だった専用サーバーの設置を喜ぶもの。もうひとつは「専用サーバーが全てを解決するものではない」といった冷静な意見だ。確かに今回の発表には「専用サーバーに移行してより良い環境を提供する」という表明しか含まれておらず、具体的にどのような施策を行うか、地域によってはラグに直結するデータセンターの場所などは未発表のまま。今後、コミュニティに対し具体的な施策を提示し、適切にコミュニケーションを取っていくことで、疑問点を解消していくことが求められるだろう。

※マッチ中に殺人鬼が退出や切断した場合、専用サーバーではどのような処理が可能か?という質問に対し、即時にゲートを開けて生存者を全員逃がす、プレイ内容に応じて適切な報酬を与える、などさまざまな選択肢を提示したDave Richard氏。

 

小規模なスタートから大ヒット、更に成長を続けるゲームの今後は

2016年のリリース以降プレイヤー数が拡大を続け、日本語対応・PS4ダウンロード・パッケージ版発売と、ここ日本でも成長を続けてきた『Dead by Daylight』。ロングランを続ける他のオンラインゲームと肩を並べるには、新コンテンツを提供し続けることと、プレイ体験をより良いものに改善し続け、プレイヤーの興味を引き続けることが重要だ。専用サーバーが導入されれば、技術的・資金的に困難とされていた大きな壁を超えることになる。しかし今後、コミュニティの要望に応え続けること、そしてプレイヤー目線で環境を改善し続けていくことができるかが最も重要な点であり、それが2023年まで、あるいはそれ以降もサービスを続けていくことができるかを占う、分岐点となるだろう。