Perfect World Gamesは4月29日に『NTE: Neverness to Everness』をリリース予定だ。本作はPC/PS5/iOS/Android向けに配信予定の、基本プレイ無料・超自然都市オープンワールドRPG。プレイヤーは骨董品屋エイボンに所属する“異象ハンター”として大都市を巡り、戦闘だけでなく調査や謎解きもこなしながら異象を収容・解決していくことになる。

正式リリースを目前に控え、弊誌はPC版『NTE』を先行プレイする機会を得た。本作の舞台となる「ヘテロシティ」は、異象(アノマリー)が潜み、多彩なアクティビティが詰め込まれた騒がしい街だ。ただ、その本質は派手な出来事だけでは語りきれない。

そこで今回から連載形式で、『NTE』の気になるポイントをひとつずつ掘り下げていく。全10回の初回となる今回は、本作のもうひとつの主役ともいえるヘテロシティそのものに注目。主要エリアの街並みや隠れた名物スポットを巡りながら、本作が備える多種多様な探索要素……ではなく、あえてゲームプレイに直接は影響しないがやけにこだわりを感じる、“愛すべきムダ”とも言うべき作り込みを見ていきたい。


生活の温度がにじむ旧市街「橋間地」

最初に紹介したいのは「橋間地(はしまち)」。長い歴史を持つ旧市街でありながら、物価の安さや暮らしやすさでも知られ、「住みたい街ランキング1位」に選ばれているエリアだ。主人公が身を置く骨董品屋エイボンも、この街に店を構えている。

橋間地を歩いてまず感じるのは、整いすぎていない心地よさだ。エイボンを出てすぐ目に入る、道端に積まれた段ボールやビールケース、所狭しと貼られたポスターやステッカーといった雑多な街並み。建物の壁にはツタが絡まり、裏路地にはグラフィティが大きく描かれている。旧市街らしい落ち着きに、若者文化や少し荒っぽい生活感が自然に混ざり合い、この街ならではの空気を形作っている。

そうした雰囲気を支えているのが、立体的に入り組んだ街の構造や、飲食店やレコードショップといった大量の店だ。店では回復アイテムや家具、BGMといったアイテムを購入可能で、Unreal Engine 5による高品質なライティングも相まって、橋間地にはたしかな生活の温度が宿っている。

そんな橋間地でぜひ立ち寄ってほしいのが、コインランドリー「V.i.B」だ。まずは下の画像を見てほしい。

カラフルな内装にデカデカと貼られたポスター、注意書きのステッカーまで、このエリアらしい雑然とした空気がそのまま詰め込まれている。ただこの店、「使えない」のだ。主人公が実際に洗濯をすることはできず、入れるだけの場所である。なぜ入れるだけの店をここまで作り込むのか。お約束のドアが開かない店ではいけないのか。本作にはこうした「入れるけれど用はない店」も一定数存在しており、それが街の厚みにつながっている。全てが自分のために作られているわけではない。そうした現実世界と同じ余白が、ヘテロシティに大都市らしさをもたらしている。


見覚えのある風景が並ぶ観光地「ミゲル区」

続いて紹介するのは「ミゲル区」。ヘテロシティ最大の自然エリアを擁し、ランドマークタワーや湖、商店街までそろった巨大な観光地だ。派手でわかりやすい魅力を持つ場所だが、このエリアで注目したいのは、むしろ随所に潜む“既視感”である。

たとえば西側の一角には、どこかで見たことのあるような電気街が広がっている。ゲームセンターやガチャガチャ専門店が並び、クレーンゲームやガチャガチャも実際に遊べる。街を歩くNPCも、漫画談議に花を咲かせる集団やメイド服姿の女性など、その場の空気に合わせた顔ぶれが揃う。建物だけでなく、人の見た目や会話まで含めてその地域らしさが作られているのが印象的だ。

それ以外にもヘテロシティには、真っ赤で四角いポストや、ブロック塀に埋め込まれた透かしブロック、電柱に巻かれた黒と黄色の衝突防止カバーなど、妙になじみ深いオブジェクトが点在している。本作はいつでも一人称視点に切り替えられるが、主観視点で街を歩くと、こうした見覚えのある小物の存在感がいっそう際立つ。テクスチャやライティングとは違う「親近感」というベクトルで、街への没入感を高めている。

そして、本作の“愛すべきムダ”として外せないのが、バスの存在だ。マップには表示されておらず、特にこれといった説明もないが、各地のバス停に座るとバスが到着し、そのまま乗り込める。バスはヘテロシティを広く周回しており、停留所ではきちんと停車。地域ごとにデザインが異なるうえ、車やバイクにはない、バスの横側と景色を眺める“バス専用視点”まで用意されているなど、妙なところまで手が込んでいる。

率直に言って自分の車で移動したほうが速いが、のんびりと景色を眺めるにはぴったりだ。特にミゲル区の「鉄心9号通り」にある桜並木は美しく、バスの車窓から花びらが舞う景色を眺めているだけでも満足感がある。気づかないプレイヤーも多そうな、便利さやコンテンツとは別の豊かさにしっかりコストをかけている。その贅沢な無駄が、ヘテロシティをより本物らしく見せている。


時間と天候で表情が変わる、流行の最先端「ニューホランド」

最後に紹介するのは「ニューホランド」だ。高層ビルが立ち並ぶ新興ビジネス街で、ヘテロシティのなかでもっとも先進的かつセレブな空気をまとったエリアである。この場所の見どころは、時間帯と天候によって街の表情が大きく変わるところにある。

本作ではメニューから時間や天候を自由に変更できる。朝になればビルの隙間から差し込む光が街を照らし、夕方には現実の都市を思わせる色味が街全体を包む。高層ビル群やネオンサインの派手さももちろん目を引くが、印象的なのは、看板や点字ブロック、建物の配置まで含めて全体がかなり“それっぽく”作られていることだ。そのため、時間帯ごとのライティングの変化に説得力がある。思わず立ち止まって写真を撮りたくなるような感覚は、現実の街を歩いているときにかなり近い。

さらに作り込みを感じるのが天候の変化である。雨が降れば水たまりができ、晴れればそれがゆっくり乾いていく。キャラクターや周囲の環境もただ濡れるだけではなく、雨粒がぽつぽつとかかる感覚があり、NPCも傘を差したり、頭をかざして小走りしたりと細かく反応する。雪が降ればゴミ箱や花壇を含めたあらゆる物に雪が積もり、主人公だけでなくNPCが歩いた場所にも足跡が残る。エフェクトを重ねただけではなく、環境そのものが変化するからこそ、天候変化の没入感も増している。

そしてニューホランドにも、都市生活に直接必要とは言いがたい“余計な熱量”の込められたものがきちんと存在している。その代表例が、いま流行しているヒーローものの特撮だ。「心狩鉄騎」というヒーローが人気のようで、等身大パネルやフィギュアのガチャガチャが各地に置かれているほか、映画館では派手な演出を見せる映画も上映中。さらに街の中心部ではヒーローショーまで開催されており、俊敏で複雑に組み合うアクションを見ることができる。

こちらもゲームプレイに直接関わる要素ではないが、その場限りの飾りではなく、街のさまざまな場所で一貫性があるコンテンツになっている。街を練り歩いたからこそ気づく自発的な発見。基本プレイ無料の大型ゲームは増えてきたが、クエストなどの目標をこなしていくだけにとどまらないボリューム感は本作の大きな特長だ。現代風のハリボテではなく、人の暮らしと娯楽が息づく都市を目的もなく“散歩”することがコンテンツとして成立している。


日常と非日常が溶け合う街、ヘテロシティ

ヘテロシティには、海の上を走る電車や天にそびえる「アッパレタワー」、水族館のような海底トンネルといった、ひと目で記憶に残る景色が数多く存在する。ただ、本作の魅力はそうしたわかりやすい名所だけではない。路地に積まれた段ボールやグラフィティ、時間とともに移ろう街の色といった、何気ない風景の積み重ねも味わい深いものだ。またそうした没入感は、「使えないのに入れる店」や「速くもないのに乗れるバス」といった、一見無駄な生活要素の作り込みによって支えられている。アニメ調のキャラクターデザインにもかかわらず背景に妙な現実味があるのは、そのためだろう。

異象ハントやレースのような派手なアクティビティに没頭しながら、夕方の商店街で肉や野菜を買い、スクーターでゆっくり景色を眺めながら帰る。怪異と戦うアクションRPGでありながら、そんな生活らしい生活のひとコマもある。それが『NTE』の独自性だ。日常と非日常の両方が違和感なく溶け合っているからこそ、ヘテロシティは本作を象徴する舞台となっている。

今回取り上げたのは、そんなヘテロシティのほんの一部にすぎない。この街にはまだまだ気になる場所があり、掘り下げがいのある側面も多い。もしこの“観光ガイド”を読んで興味を持ったなら、次回以降の連載にも目を通しつつ、自分なりの歩き方を探してみてほしい。

NTE: Neverness to Everness』はPC/PS5/iOS/Android向けに4月29日配信予定。

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