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『コーヒートーク トーキョー』で味わう“里帰り感と都会の孤独感”のブレンド。ひと夏の夜の東京でふれる、あたたかな時間
『コーヒートーク トーキョー』では東京の夜風と新しい出会いに触れることになった。

東京の摩天楼、ネオン街の一角にあの『コーヒートーク』がやってきた。『コーヒートーク トーキョー』はToge Productionsが手がける人気ビジュアルノベル『コーヒートーク』と『コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ』のスピンオフにあたるシリーズ最新作だ。5月21日にChorus Worldwide Gamesからリリースされた本作の舞台は、「眠らない街」東京。人間、妖怪、神や精霊の末裔たちが共生するこの街で、至福の一杯とともに新たな物語が紡がれる。
過去シリーズもプレイ済みの筆者としては、なじみ深いシアトルの地から故郷の東京へと里帰りするような気持ちで発売日を迎えた。高層ビルが空を切り取り、人々が小さな画面を見つめながらすれ違う。そんな東京に懐かしさを覚えながら、全15夜にわたる本作をエンディングまでプレイした。東京の夜風と新しい出会いに触れた筆者の感想を、大きなネタバレを避けながらここに書き記したい。
※本稿はChorus Worldwide Gamesから提供を受けたNintendo Switch 2版レビューコードをもとに執筆

東京という新たな舞台、一新されたキャラクター
過去シリーズのシアトルから新たに東京へと舞台を移した本作では、時代の変化と革新の波にもまれた街で、懸命に生きる人々の新しい物語が描かれている。今回、物語の案内人であるバリスタにはなんとキュートな助手がいる。つらい経験により義肢で生活をすることになった心優しい人物、ヴィンだ。東京のネオン街を彷彿とさせるサイバーパンクなビジュアルは、温もりのあるピクセルアートによって表現されており、本作の世界観ともマッチしている。
ほかにも会社を退職したばかりであるカッパのケンジや、水龍のミュージシャンであるジュン、カフェ向かいのレストランを営む雪女のユキなど日本にまつわる個性的なキャラクターも登場する。キャラクターデザインや話し方は現代風にアップデートされながらも、まるで日本昔話のような面々だ。本作の音楽を担当する“AJ”ことアンドリュー・ジェレミー氏の新譜にも、和を感じるサウンドやシティポップが取り入れられており、都会と伝統的な文化が融合した空間が演出されている。

作中ではお盆の時期を迎えており、幽霊の少女アヤメも登場する本作では、生者と死者のつながりというテーマにもスポットが当たっている。記憶を無くした死後の世界で、未練を残したまま成仏できない彼女はよく周りを突っぱねてしまうが、同時に大きな孤独を抱えている。一緒にレストランを経営していたパートナーを亡くしたユキも、冷静に見えるが深い喪失感から抜け出せないままだ。面と向き合うには勇気がいる「死」というテーマに、日本の死生観や文化が織り込まれていることで、筆者はより身近にキャラクターの物語を感じることができた。
新ドリンクシステムによって広がるレシピと物語
季節は東京の暑い夏。癒しのひとときを求めカフェを訪れるお客さんに、プレイヤーであるバリスタがドリンクを提供することで会話は進んでいく。過去シリーズと同様、カウンター越しに耳を傾けながら、悩みや想いを抱える人々の物語にそっと寄り添うのだ。本作では新ドリンクシステムにより、ドリンクの温度をホットとアイスから選択できるようになった。穏やかに一息つきたいお客さんにはホットを、少し頭を冷やしたいお客さんにはアイスのドリンクを提供することで、相手の感情の変化を感じられる。ドリンクレシピには日本でお馴染みのほうじ茶が登場。冷やしほうじ茶、チャヒート(ほうじ茶とミントを使用したモヒート風の一杯)、冷やし飴など日本の夏を感じられるラインナップが追加されている。なお幽霊でも匂いは感じられるそうで、幽霊の少女アヤメをドリンクで笑顔にすることも可能だ。

レシピには新たなフルーツやアイスクリームなどのトッピングも増え、作れるドリンクの幅が大きく広がった。マンゴーやライチなどのフルーツやアイスクリームは、狐耳の少女エリカにも大好評で、お好みの一杯を提供できると実に愛らしい反応を見せてくれる。お客さんによっては「甘くてスパイスの効いたもの」など、ふんわりとした要望もあるので、「甘み」や「スパイス感」といった味覚のメーターを確かめながら、試行錯誤を繰り返してみよう。レシピの発見に迷ったら、後述するSNS「トモダチルVer.2.0」のハッシュタグ機能から何かヒントを得られるかも知れない。
また、ラテなどのドリンクを提供する上で欠かせないのがラテアートだ。過去シリーズでもラテアートは体験できたが、ミルクの注ぎ方やエッチングのセンスなど、本格的な技術が試されるこの機能は、意外と奥が深く難しい。そこで新しく登場したのがステンシル機能だ。鳥居や猫などの絵柄を選んでボタンを押すと、簡単に美しいアートがプリントされる。もちろんミルクやエッチングを使用したラテアートも同時に楽しめるので、アートが得意なプレイヤーは趣向を凝らした作品に仕上げることもできる。なお現在X(旧Twitter)ではラテアート作品を投稿するハッシュタグ「#コーヒートークラテアート」企画も開催されている。ステンシルを希望するお客さんやお気に入りのキャラクターに想いを届けたいときにぜひ体験してほしい。

SNSは心の鏡、言葉を交わすことは心の扉を開くこと
SNSといえば、本作では過去シリーズにも登場したSNS「トモダチル」がアップデートされ、「トモダチルVer.2.0」として新しくハッシュタグ機能が実装。投稿に記載されたハッシュタグをタップすると、タグを辿ってメインキャラクター以外の発信も確認することができる。SNSでの意外な一面や、厳しい世間の声、娘を悼むアカウントなどから、キャラクターがどのように悩み、共感を求め、あるいは距離を置きたいかが伝わってくる。ドリンクを通しても見えない秘められた心情は、時にSNSという名の心の鏡に映っている。

そうして作中でのSNSトモダチルが存在感を増したことで、カウンター越しにバリスタと話をしたり、隣り合うお客さんと会話を弾ませる時間が特別な意味を持つことをさらに際立たせている。しかし実際に顔を見て話すことで、つい感情的になってしまうこともある。特にカッパ族のケンジと水龍のジュンの出会いは最悪だ。ふたりの種族には、都市の開発によって無くなった川をめぐる確執があり、ケンジは出会い頭に感情をむき出しにしてしまう。
一見、関係の修復が困難に思えるふたりだが、ドリンクを通してつながったカフェ仲間との交流や、正直に心の内を話す機会を持つことで、新たな関係性を構築していく。壊れてしまった関係も、誠実に向き合い、誰かの助言を聞き入れることで少しずつ歩み寄ることができる。このカウンター席ならではの距離の近さも、相手の心情にすっと寄り添うことができる、特別な魔法の場所なのかもしれない。現代的な都市での暮らしが強調された本作でも、カフェのあり方はシアトルと変わらない。

変化が求められる東京で、人生の岐路に立ち、模索し、あがく姿に共感する
再開発される都市、薄れゆく文化や伝統、自動化された仕事のなかで、キャラクターたちは、それぞれの悩みや想いを抱えて揺れている。シアトルの舞台でもテーマとなった「自分らしく生きる」ことはどういうことなのか。シアトルでは種族間の対立や格差、寿命の違いなど社会的な問題に向き合うことも少なくなかった。本作の東京では、再開発における種族の確執や専業主夫に対する親族の偏見が多少みられるものの、種族そのものに対する差別や格差はほぼないに等しい。東京の摩天楼にあるカフェで、多種多様な人々がフラットに交流する姿は、まるで新宿の歌舞伎町を思わせるような自然さである。

東京のカフェに訪れる人々は、スランプに陥った人気ミュージシャン、退職後の身の振り方に悩むサラリーマン、学校になじめない帰国子女など、身近で共感できる不安や悩みを抱えている。キャラクターが今まさに直面している問題にフォーカスすることで、プレイヤーが自身を重ねられるような物語になっていると筆者は感じた。特に子供を持つ親にとっては身につまされるシーンもあるだろう。また、助手のヴィンが抱える義肢の不調や日々の体調の具合も、豊かな表情の変化から読み取ることができ、筆者は心配が絶えなかった。
とはいえ誰しも心を許した相手以外に、そんな弱みを見せたくないものだ。“我慢が美徳”ではないが、東京が舞台ということもあってか、本作ではキャラクター自身も知らず知らずのうちに弱みや痛みを心の奥に隠してしまっていた。
変わることのない、キャラクター同士の静かであたたかな介入
ただ、他人にとっては少しおせっかいかもしれないと思う助言も、このカフェでは相手を想う気持ちの証である大切なスパイスだ。本作のキャラクターたちは、相手の悩みや不安に敏感で、優しく話を聞くことにとても長けている。それはたとえば、子供が相手でも秘密は守るなど、お互いを尊重する姿勢がもたらすのであろう。生きている者に対しても、そうでない者に対しても同様である。
もちろん、抱えるものの大きさや孤独感で、相手を拒絶したり感情的になってしまうこともある。そういった場面では聞き手がその状況をありのまま受け入れることで、そっと相手に寄り添うことへつながっていく。次第にそんなキャラクターたちは、勇気を出して悩みを共有し、手を差し伸べ、助けを受け入れることで変化していく。この歩みこそが、自分らしく生きるということではないだろうか。シリーズを通して描かれてきたテーマではあるが、本作ではより日本らしく、身近で説得力のある「自分らしい生き方」が描かれていた。

そんな思いやりにあふれたキャラクター同士の会話に筆者はふと涙がこぼれてしまった。おそらく筆者自身もこのあたたかな場所で誰かに話を聞いてほしいのだ。過去シリーズにおいても、本作においても、このような安心と実感をともなった交流はまれであり、特に大人になってからはなかなか出会うことはできない。『コーヒートーク トーキョー』はせわしない東京で日々すれ違うしかない人々を結びつける夢の居場所なのかもしれない。
東京のカフェからシアトルに愛をこめて
それぞれの歩幅で前に進もうとしている人々が、カフェやドリンクを通して交流し、支えあう。『コーヒートーク』シリーズの「ドリンクを提供し、会話に耳をかたむける」といった流れはそのままに、ダイバーシティあふれる東京で展開された物語は、日本のイメージをもとにしたビジュアルの鮮烈さも相まって最新の東京を体感できるものだった。
また本作では、日本の伝統的な文化である「お盆」の時期を過ごすことになる。お盆の間、人々は故人を迎え入れ、再びあの世へと送り出す。そういった日本の死生観を物語のベースに感じた上で、キャラクターたちがそれぞれの喪失を受け入れながら、新たに踏み出していく、その過程とも重なりあっているように筆者は思えた。過去シリーズからの友情出演であるヘンドリーが、亡き妻を想いながら日本を旅していたように、シアトルのカフェからお盆の東京に里帰りをしている、そんな懐かしさと安心感を覚えたのである。同時にシアトルの面々の顔が思い浮かび、とてつもなく会いたくなったのも事実だ。

『コーヒートーク トーキョー』はシアトルでの思い出とともに、東京の懐かしさを感じられる、まさにスピンオフにふさわしい作品であった。『コーヒートーク』のクリエイターである亡きモハメド・ファーミ氏の想いも、本作へ大切に受け継がれているのだろう。キャラクターの表情や動きに関しては過去シリーズからさらに豊富になっているので、ぜひ注目してみてほしい。『コーヒートーク』シリーズが気になる人は、新たな舞台『コーヒートーク トーキョー』で、夜の東京とほのかに香るシアトルを感じながら、コーヒーを一杯入れてみてはどうだろうか。
『コーヒートーク トーキョー』は通常版、デラックスエディションともにPC(Steam)/PS5/Nintendo Switch/Nintendo Switch 2/Xboxで発売中。
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