Global Sites
Global Sites
Valve社員が「Steamにはゲーム宣伝用の“秘密のボタン”なんてない」と断言。開発者向けに、アルゴリズムの仕組みや地道な努力などいろいろアドバイス
Valveスタッフがユーザーの質問に答えるかたちで、Steamでの注目の集め方をアドバイスしている。

Steamにゲームをリリースするゲーム開発者にとって、Steamでの注目の集め方はぜひとも知っておきたい内容だろう。そんな「注目の集め方」について4月23日、Valveスタッフがユーザーの質問に答える動画を公開。Steamの仕組みについて詳しく語り、「Steam Nextフェス」の解説を中心に、Steamで効率よくゲームを売る方法について伝授した。GamesRadar+が報じ、話題となっている。
Steam Nextフェスとは今後配信される新作ゲームの体験版が一斉に配信される恒例イベントで、毎年2月、6月、10月の3回開催される。過去にNextフェスに参加していないタイトルだけという制約はあるものの、基本的にはどのゲームも参加することができ、新作ゲームを幅広く知ってもらう機会の場所として多くの開発者に活用されている。直近では2月24日から3月3日午前3時にかけて「2026年2月エディション」が開催された(関連記事)。Steam Nextフェスで注目された作品は数千件や数万件のウィッシュリスト登録を得ることもあるといい、宣伝予算の限られているインディーゲームにおいては貴重な露出の場となっている。
今回、Valveは同社で製品・UIデザイナーを務めるAlden Kroll氏、そして事業開発を務めるRia Hu氏がユーザーからの質問に応える形式の動画を公開。動画では、まずNextフェスで成果を上げるためのポイントについて語られた。そのうえで、 Nextフェスがどのような仕組みでユーザーにゲームをおすすめとして表示しているのかについて解説がされている。
ウィッシュリストでの「区別」はしていないけど、やはり露出には必要
Hu氏によると、Nextフェスが開始してから48時間は、同ページ上のコンテンツはすべてランダムで表示されるという。ウィッシュリストやプレイ履歴に基づいておすすめのゲームを表示するセクションも一部あるものの、それ以外はすべてランダムにタイトルが表示されるそうだ。そして開催から48時間が経過すると、Nextフェス期間中のユーザー行動に基づいて、アルゴリズムが表示を少しずつ並び替えていく。つまりウィッシュリスト登録件数や体験版のプレイ時間といった要素に関係なく、すべてのタイトルに平等にチャンスが与えられている状況といえる。

一方でHu氏は、Nextフェスに一切の広報活動をしないまま参加するのはリスクが高い行動だと釘を刺している。ここでNextフェスのおすすめアルゴリズムは、Steam全体で適応されているものと同様の仕組みとなっているとのこと。その仕組みとはおおまかに以下のようなものだという。たとえば、あるユーザーが特定の5作品をプレイし、それとは別の「ゲーム6」をウィッシュリストに加えたとする。特定の5作品を遊んでいる別プレイヤーがいた場合、Steamはそのプレイヤーに対して「ゲーム6」をおすすめする、という流れだ。
先述の通り、ウィッシュリスト登録件数はNextフェスへの参加資格やおすすめ表示に掲載される基準としては含まれていない。しかし、このおすすめアルゴリズムを鑑みると、ウィッシュリストの登録数によって、Steamユーザーにゲームがおすすめされる可能性は高まると考えられる。こうしたSteamそのものの仕組みも影響することもあり、Hu氏は広報活動の重要性を説いたのだろう。

また、「体験版はいつ公開すべきか?」という定番の問いに対してもKroll氏が見解を示している。 Nextフェスの開始直後やプレスプレビューの期間中などさまざまなタイミングが存在するとしたうえで、体験版はできるだけはやく公開したほうがいいとアドバイスを贈っている。早いタイミングでの公開で多くの人に遊んでもらうことが出来るほか、体験版の配信自体をイベントとして活用することも可能だとしている。くわえて、Nextフェスが始まれば膨大な量の体験版が公開され、競争が激化すると指摘。体験版の公開をフェス直前まで引き延ばすのは避けたほうがよいという考えを伝えた。
なお体験版の早期の公開については、ゲーム市場コンサルタントの間でも同様の指摘がなされていた。先日にはゲーム市場コンサルタントのChris Zukowski氏が、Nextフェスの直前ではなく数か月前から体験版を配信する方がより注目を集めると指摘し、話題となっていた(関連記事)。
ところで体験版には専用のストアページがあるものと、製品版のストアページに体験版をリンクする2種類のケースがあるが、Hu氏によると「どちらでもいい」とのこと。ただ個別のページで展開するとレビューを集められるため、ユーザーレビューを受け取る準備ができた時には、個別ページを用意すればよいかもしれないとの考えを示した。
“秘密のボタン”なんてものはない
質問はNextフェスにとどまらず、Steamにおけるゲーム販売全般にもわたっており、こちらにも回答が返された。「ゲームの注目を高めるために何が出来るか」という質問にKroll氏は、Steamのみならずネット上のさまざまな場所で、どうアプローチするか考えることが有益だと伝えた。同氏は、確かに人々はSteamでゲームを探したりするものの、ゲームを知る場はインターネット全域に広がっていると指摘。具体的には、トレイラーやスクリーンショットなどを活用し人々に関心を持ってもらい、認知度と期待度を高めることが重要なのだそうだ。

くわえてKroll氏は、ValveはSteamにて露出度などを操作する機能は実装しないよう細心の注意を払っており、“押せば認知度が上がる秘密のボタン”といったようなものはないと強調。実際、Steamのおすすめ表示は「ユーザーが気に入るようなゲームを引き合わせること」を最優先に設計されているそうで、広告枠など導入していないことが伝えられている(関連記事)。ゲームの知名度を上げるためには、あくまで開発者が努力するしかないということだろう。
そしてKroll氏は新人開発者への注意喚起として、“Steamでゲームをリリースすればそれで成功する”わけではないことを伝えている。同氏は実際にはゲームを成功に導くために、いかにゲームの情報を広めプレイヤーの興味を喚起するか、そのことについてもっと考えていく必要があると説明。そのため“面白そう”と思えることについて、考え続けることが大事なのだという。
たとえば、新たなトレイラーを制作したり、スクリーンショットを撮影したり、それらをどこで共有すれば人々の興味を引けるのかについて考察してみたりといった施策を考え続けるべきなのだという。また、ゲームの物語について語る際にも、ストーリーテリングを意識して、他タイトルとの差別化を図るべきだと説いている。

Kroll氏は、こうしてゲームについて開発者が考え続ける取り組みも、Nextフェスなどのイベントの参加直前ではなく、そのずっと前から意識しておくべきだと指摘した。同氏はその理由として、ゲームでなにか“クールなもの”を作り、共有すれば、ゲームファンが興味を持ってくれるからとしている。開発期間中にはそうした機会を探るべきだとして、「機会損失」に陥らないようにすべきと注意を促した。
このたびは開発者の疑問にValveスタッフがQ&A方式で回答し、Steamに関するさまざまな仕組みが明かされた。特にSteamの内情を知るValve社員によって、おすすめ表示のアルゴリズムや、体験版の最適な配信時期などが明かされた点は興味深い。一方で、Kroll氏が贈るアドバイスは「地道な努力」という、一貫してシンプルなものだ。ゲームの認知度を上げる“秘密のボタン”は存在しないと同氏がいうように、ゲームを多くの人々に届けるためには発売前の情報発信などでこつこつと努力を重ねていくしかないのだろう。膨大な量の新作が発売されるSteamにおいては、ゲームを“作る”だけではなく“売る”ことにも労力を要することがあらためてうかがえる。
この記事にはアフィリエイトリンクが含まれる場合があります。
