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PlayStationの物理ディスク生産終了後には、“1兆円規模”中古ゲーム市場がいずれ消滅するとアナリストが警鐘。一方Ubisoftは「大きな混乱なし」と予測、割れる見立て
PlayStationで2028年1月以降に予定されている物理ディスク生産終了方針について、影響の見立ては業界内でも割れているようだ。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)は、PlayStationコンソール向けに発売される新作ゲームの物理ディスクについて、2028年1月に生産を終了すると発表している。この方針にはユーザーから多くの批判が寄せられているほか、複数の業界アナリストも中古ゲーム市場への深刻な影響を警告している。そうしたなか、Ubisoftは決算報告内で業界に大きな問題をもたらさないという予測を述べており、業界内でも意見は割れているようだ。
72億ドルの巨大市場が消える?
市場調査会社のDatainteloのレポートによると、全世界の中古ゲームソフト・ゲーム機・周辺機器等を含む二次流通市場の規模は2025年に72億ドル(約1兆1800億円)にも及んでいたそうだ。さらに現状から推定すると2034年にはその市場は138億ドル(約2兆2600億円)規模にまで達する予想だという。また米国では、2025年のビデオゲーム取引の38%以上が中古ゲーム関連だと伝えられている。可処分所得の低下や、AAAゲームの価格上昇などさまざまな要因から、中古ゲーム市場に根強い需要が生まれていると同社は分析している。

しかしこうした巨大な中古ゲーム市場について、複数のアナリストや業界コンサルタントがこの市場が消滅する危機にあると警告する。米国の投資調査会社MorningstarのKazunori Ito氏は、SIEの物理ディスク生産終了によって、ゲームの中古市場は縮小し、最終的には消滅するだろうと予測している。PlayStation向けゲームのディスク生産終了は、あくまで2028年1月以降に発売される新作タイトルを対象とする決定だ。そのため同月以前に発売される作品を含めて中古ゲーム市場はしばらくは存続するとみられるものの、2028年1月以降の新作ゲームが中古市場に流通しなくなれば、次第に縮小に向かっていくという見立てだろう。米放送局CNBCなどが伝えている。
またビデオゲーム業界コンサルタント会社F-Squaredの共同創設者であるMichael Futter氏は、小売ゲーム店の衰退を予想している。同氏は、中古でゲームが売買されることによって、消費者が新しいゲームを購入するための資金源にもなっていたと指摘。そうした“サイクル”が失われることで中古市場のみならず、実店舗を持つ小売店まで影響が及ぶと予想している。
ちなみにオランダの小売店におけるゲーム価格を追跡した独自調査では、対象となった16作品について過去4年間の小売店価格とPSストアでの価格の推移を比較したところ、PSストアよりもパッケージ版を店頭で購入するほうが安いタイミングが圧倒的に多かったとの結果が示されている(Eurogamer)。小売店では発売から時間が経つにつれて新品のパッケージ版でも実売価格が下がる傾向にある一方、PS Storeではセールになると一時的に価格は下がるものの、その後すぐに定価へと戻るためだ。
とはいえ、現状では限られた作品に留まるものの、ゲームによってはセール販売とは別に定価の引き下げがおこなわれる事例もある。将来デジタル販売のみになった際に定価引き下げをおこなわれるタイトルが増えれば、ユーザーにとって少なくとも価格面ではデメリットばかりにはならないかもしれない。
ゲーム業界からは異なる見方も
一方でUbisoftは7月24日、決算説明会の質疑応答にて、ディスク生産終了方針に関する質問に回答。消費者が中古ゲームを売却し、その資金で新たなゲームを購入するというサイクルが失われることで、同社も間接的に影響を受けるのではないかという問いに対して、PCゲーム市場ではデジタル化が市場の成長に寄与してきたとの考えを伝えた。また、デジタル専売化によってディスクドライブが必要なくなり、ハード価格が低下する可能性があるという利点にも言及。メリットとデメリット双方あるとしながらも、業界に大きな混乱をもたらすことはないだろうとの見解を示した。

なおSIEが2025年度通期決算で公表したデータによれば、同年のPS5/PS4向けゲームのデジタル販売比率は78%に達したという。年間約3ポイントのペースでデジタル販売の割合は上昇を続けており、2025年度第4四半期のパッケージ版の販売比率はわずか15%だった。デジタル購入へ移行する動きは着実に広がりつつある(関連記事)。SIEはディスク生産終了方針の発表時に、そうした消費者の傾向に適応する「自然な決定(a natural direction)」であると伝えていた。
実際、大手小売チェーンのGameStopもコレクターズアイテムの販売などにビジネスの軸足を移しているという。海外メディアBloombergの取材に対し、同社のCEOはたとえゲームが完全にデジタル販売されるようになっても問題にならないと伝えていた(Bloomberg Tech)。
デジタルでは補完できないもの
しかしそうした流れがありながらも、物理ディスクを求めるユーザーの声は依然として根強い。物理ディスクを支持する理由の一つとして、デジタル配信ではゲーム保存の観点に課題がある点が挙げられる。ダウンロード専売タイトルは、パブリッシャーやプラットフォーマーの判断で販売が終了すると、新たに購入する機会が永久に失われる可能性がある。

たとえば人気オープンワールドレースゲーム『Forza Horizon 4』で2024年にライセンス切れを理由に新規購入が終了されたほか(関連記事)、『Marvel’s Avengers』(関連記事)や『007 Legends』といった作品でも同様の理由で配信が終了している(Game*Spark)。他社のIPなどを利用した作品では、ライセンスの失効に伴ってダウンロード版の配信が停止となるケースは少なくない。 また開発会社の倒産などで権利が散逸するケースもあるだろう。こうした作品は物理ディスクを所持していれば引き続きプレイできるゲームもある一方で、ダウンロード専売であれば販売終了後に新たに入手する手段そのものが失われてしまう。
またデジタル版ゲームはアカウントと紐付けられているため、アカウントが停止されると購入済みタイトルを利用できなくなるリスクもある。ユーザーにとってもデジタル配信は利便性に優れている一方で、デジタルならではのリスクもあるわけだ。
他方、近年では中古ゲーム市場は単に安くゲームを購入できる場ではなくなってきている。スーパーファミコンやPS1といったレトロコンソール向け作品の一部がプレミア価格で取引されるなど、 歴史的・文化的な価値を持ったコレクションとして評価する動きが広がりつつある。ゲーム文化の深化とともに、ゲームの二次流通も発展を続けてきたわけだ。PlayStation向けゲームの物理ディスク生産終了は、そうした中古流通の歴史における大きな転換点となるのかもしれない。2028年以降のゲーム市場はどのような変化を遂げるのか、それとも変わらないのか。その行方は業界内でも意見が分かれているようだ。
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