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ゲームの選択肢では「“悪いことをする”と没入感が高まる可能性」が、『デトロイト ビカム ヒューマン』などを用いた研究で示される。罪悪感は没入へのスパイスか
選択肢が存在するゲームでは、プレイヤーが自らの意思で“非道徳的な選択”をおこなったときに、もっとも没入感が高くなる可能性があるという。

プレイヤーの選択によって物語の展開が変化するゲームが存在する。そうしたゲームで得られる没入感は、プレイヤーが自らの意思で“非道徳的な選択”をおこなったときに、もっとも高くなる可能性があるという。
陝西師範大学のYilin Li氏および香港浸会大学のYuen Kuang Jun氏は、論文「Why are immoral choices more immersive? The effect of moral decision-making on narrative immersion via moral emotions and the moderating role of autonomy — Evidence from Chinese gamers」を発表した。同論文は心理学誌「Acta Psychologica」に掲載され、9月22日にオンライン公開された(ScienceDirect)。
研究者らによれば、ゲームにおける選択の道徳性が物語の没入感にどのように影響するかについて、さまざまな先行研究がおこなわれてきた一方で、それらの結果は互いに一致していないという。そこで今回の研究では、プレイヤーが自分でその選択をおこなえたか、またその選択によってどのような感情が生じたかなどの条件も考慮した調査をおこなうことにした。
分析の対象となったのは、中国で募集された18歳から39歳のゲーマー320人。男性が174名、女性が146名で、ゲームプレイ時間は平均して週6時間程度であったという。そして実験には、『Detroit: Become Human(デトロイト ビカム ヒューマン)』と『BioShock(バイオショック)』の2タイトルの映像が用いられた。

『デトロイト ビカム ヒューマン』では、警部補であるハンクと捜査アンドロイドのコナーが、アンドロイドを発明したカムスキーの邸宅を訪れるパートを使用。ここでコナーはカムスキーから、事件に関する情報を得るために助手のアンドロイドであるクロエを撃てるかテストされ、ジレンマに揺さぶられることになる。ここでは、クロエを撃つことを「道徳性の低い選択肢」、撃たないことを「道徳性の高い選択肢」としている。
そして『バイオショック』では、海底都市ラプチャーに不時着した主人公ジャックが、そこに囚われたリトルシスターたちを「救出」するか「収穫」するか選ぶシーンが使用された。なお本作ではリトルシスターと出会うたびにこの選択が発生する。彼女たちは、キャラクターの強化などに使用する遺伝子操作物質「ADAM」を体内に有しており、犠牲にすることでより多くのADAMを得ることができる。こちらでは、リトルシスターを救出することを「道徳性の高い選択肢」、収穫することを「道徳性の低い選択肢」としている。

研究者らは参加者を2つのグループに分けた。グループAの参加者は、2つの選択肢から5秒以内に選ぶように指示され、その後選択肢に対応する結末を視聴。そしてグループBの参加者は、選択肢が提示されつつも、システムによってランダムで選択された選択肢の結末を視聴した。そして選択が決定した後、すべての参加者は続きの映像を見る前に、「罪悪感」「羞恥心」「誇り」の感情に関する質問に回答。その後、選択の結果を示す映像を視聴した後には、物語への「没入感」に関する質問に答えた。各質問はいずれも5段階で評価する形式となっていた。
実験の結果、自分で選択したグループAでは、道徳的な選択をした参加者の物語への没入感は平均3.43点、非道徳的な選択をした参加者は平均3.83点となった。一方、自分で選択できなかったグループBでは、キャラクターが道徳的な行動をとる展開を見た参加者が平均3.14点、非道徳的な行動をとる展開を見た参加者が平均2.39点となり、点数が逆転した。

さらに、選択の内容が「罪悪感」「羞恥心」「誇り」のいずれを通じて没入感を上下させているのかを、「parallel mediation model(並列媒介モデル)」を用いて分析。これによると、罪悪感と誇りを経由した関係は有意だった一方で、羞恥心を経由した有意な関係は確認されなかったとのこと。また、参加者の一週間のゲームのプレイ時間を考慮しても、結果は変わらなかったそうだ。
研究者らは実験結果から、選択の道徳性と物語の没入感の関係は、キャラクターの行動をプレイヤーが自ら選べたかによって変化すると結論付けている。特に自分の意思で選択できる状況下では、プレイヤーがその選択を自分の意思によるものと捉え、結果への責任をより強く感じやすいと考察。そうした状況で非道徳的な選択がとられると、罪悪感や緊張感を伴う道徳的な葛藤が生じ、それらの感情が状況への注意を高め、より深く考えさせることで、プレイヤーの没入感を強めている可能性があるという。

今後の展望としては、異なる文化圏や年齢層など、より幅広いゲーマーを実験の対象とすることが掲げられている。また、今回はゲーム全編ではなく短い場面を用いた実験となったため、作品を通してプレイしたり、長時間プレイした場合にも同じ傾向が見られるか調べる必要があるとしている。
とはいえ、今回の結果を踏まえて、非道徳的な選択をとったほうが高い没入感を得られる可能性がある、ということを意識しながら遊んでしまうと、プレイ時にはいくらかメタ的な思考が入り込んでしまいそうである。自らのゲーム体験を形成する上で、今回の実験結果を手がかりの一つにしてみるのはよいかもしれない。
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