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「よそのゲーム開発で危険信号だと感じる部分はどこ?」という、ゲームの開発でありがちな失敗の傾向を聞くスレッドが注目を集めている。

海外掲示板のRedditにて、「よそのゲーム開発で危険信号だと感じる部分はどこ?」という、ゲームの開発でありがちな失敗の傾向を聞くスレッドが注目を集めている。挙げられている内容は、ゲーム開発における心構えから、作ったゲームのマーケティング・広報についての話題まで幅広い。スレッドでは主に、インディーや小規模なゲームの開発者達による、“こうなるとよくない”といった反面教師的な教訓の共有が行われている格好だ。
議論の発端となったのは、海外掲示板Redditのゲーム開発者向けコミュニティ「r/gamedev」にて、ユーザーのwarte_氏が作ったスレッドだ。同氏は「技術的な話は抜きにして」と前置きしつつ、「これはまずい(oh no)」と感じるゲーム開発者の振る舞いや姿勢・態度について意見を求めた。例として、「ゲームが良いなら、マーケティングは必要ない」や、「アイデアはあるから、プログラムを書ける人がいればいい」といった言動や、同ジャンルのゲームを過剰に敵視する姿勢などを挙げ、こうした「危険信号(red flags)」が他にあれば教えて欲しいとしている。
スレッドには本稿執筆時点で400件以上のコメントが付くなど、さまざまな意見が交わされた。その中で、特に注目を集めていたものの一つが、「アイデアを盗まれるかもしれない」と過度に警戒する姿勢だ。自らの発想が盗用されることを恐れるあまりゲームを他人に見せないのは、ゲーム開発において不利に成り得るという視点だろう。テストプレイの機会や、それに伴うフィードバックからの新たな知見と既存路線の修正は、開発において欠かすことのできない要素であるといえる。
もっとも、ゲーム開発者に限らず多くの人が一度は「誰も思いついていないアイデア」を思いついたと感じたことがあるだろう。しかし実際には「過去に誰かが考えていたこと」である場合がほとんどで、「革新的なアイデア」とされるものも、それまでの歴史や発想の積み重ねの結果であることも多い。自分で発見したアイデアの希少性を過大評価してしまうことには、デメリットも存在するわけだ。

しかしながら、最近では開発中のゲームについては進捗などを公開しづらくなった特殊な事情もあるようだ。『Papers, Please』などを手がけたLucas Pope氏はポッドキャストにて、取り組んでいる最中のものについては、AIに模倣される危険性から気軽に話さない方がよいと感じていると語っている(関連記事)。同氏は、自身が作っているものについて気楽に話せるような状況になってほしいとしつつも、現状では生成AIが進捗を“吸い上げたり”、(生成AIを用いる)誰かに模倣されたりする可能性があると指摘。AI技術の急速な発展により、少々状況が変わったようにと感じるとコメントしている。アイデアを守りつつ、それを開示して開発に活かせるような環境も求められている。
スレッド内では、「自己完結型の開発姿勢」と言える傾向についても、避けた方がいいとする意見が支持を集めている。これはプレイヤーからのフィードバックを軽視し、単に「ゲームを理解できていないだけ」と切り捨てるような態度を指すようだ。ゲームプレイにおいて、これくらいはできて当たり前だろうという先入観に囚われることや、使う側のことを考えずにシステムを複雑化させていくことなどが例となるのだろう。
同様の意見は過去にも見られる。多数のゲーム開発者が過去にインタビューなどで言及している。過去BioWareにてエグゼクティブプロデューサーを務め、『Anthem』や『ドラゴンエイジ』、『バルダーズ・ゲート』シリーズなどに携わってきたMark Darrah氏は今年4月、動画を公開(関連記事)。複雑で、仔細に渡り根詰めがちな専門家のゲーム開発会議には「分からない側」の素人も加えた方がよいと語っていた。同氏は、素人が口出しし過ぎることは危険で、普段は沈黙に徹すべきだとしつつも、「プレイヤーにどう見せるのか」といった課題には率直に意見を述べるべきだと指摘していた。

また弊誌では今年3月、3Dアクションゲーム『炎姫』の開発チームCrimson Duskと『ニーア オートマタ』の開発コアメンバーであるヨコオタロウ氏、および田浦貴久氏とのインタビューを実施(関連記事)。その中でヨコオタロウ氏はゲーム開発における過去の“失敗経験”として、自身には分かることでも、いざ人に遊んでもらうと分かってもらえないことが多発し、失敗を繰り返しているうちに学んでいったとコメントしていた。社内での会議やテストにせよ、プレイテストにせよ、開発者以外の目線を取り入れることの重要さは、繰り返し論じられてきたトピックといえる。
スレッドではまた、「無謀な計画(Impossible scope)」を避けるべきという意見も多くの注目を集めた。これは、自らの理想とするゲームを目指すあまり、現在の技術力や開発体制を超える規模のプロジェクトに着手したり、開発途中で次々と新たな要素を追加したりして、開発範囲が際限なく膨らんでしまう状況を指している。例としては、ゲームの世界設定や資料の作成に長い時間を費やしながら、それらを実際のゲームへどのように落とし込むのかという視点が欠けているというケースが挙げられていた。プレイヤーの目に触れにくい部分へ必要以上の労力を割くことは、プロジェクト全体の進行を圧迫しかねないとの指摘もみられる。
こうした意見も、過去に別の開発者が述べていたことはある。『HELLDIVERS 2』のクリエイティブディレクターで、Arrowhead Game StudiosのCCO(最高クリエイティブ責任者)を務めるJohan Pilestedt氏は、海外メディアのGame Developerに、協力プレイ対応の見下ろし型アクションRPG『Magicka』の事後分析記事(Postmortem)を寄稿している。この『Magicka』は、同スタジオ設立のきっかけともなったゲームで、Pilestedt氏らが学生時代に着想し、開発がスタート。2011年のリリース以降、好評を博している作品だ。
同氏は記事の中で、当初設定した見通しが甘すぎたことを吐露。結果として同作を完成させるまでには、当初見込みの約7倍の労力が必要になったという。幾度となく計画の修正を余儀なくされ、結局は重要でない部分に過剰な労力を費やしたり、着手する優先順位を違えたりしたそうだ。Pilestedt氏の例や、スレッドでの事例などを踏まえると、まずは完成させることを第一に考え、そこから開発の規模感に応じてスケールアップさせていくのも選択肢の一つとなり得るのだろう。

スレッドではこのほか、「良いゲームさえ作れば自然に売れる」という意見や、「市場にマッチしていればゲームの内容は二の次でいい」といった極端な見方も同様に問題視されていた。ゲームそのものの品質とマーケティング・広報戦略、どちらか一方だけを突き詰めるのではなく、両者をバランスよく考えることが重要だという指摘だ。同様の議論はソーシャルメディアのX上でも過去、活発に共有されている。
ゲーム開発において、意識しないと陥りがちな落とし穴。過去にも“身をもって学んだ教訓”として開発者が知見を共有してきたが、そうした経験則が改めてゲーム開発系のコミュニティにも根付いていることが垣間見える。あえて失敗談を開発者たちが発信することで、そこから他の開発者たちが学び、自らのゲーム開発に活かすことができるという循環も生まれているのだろう。
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