当初“バグだらけで大失敗”だった犬ぞり北極サバイバル『Arctico』開発者、「12年アプデし続け売上42万本まで伸びた」と喜ぶ。迷走ゲームを育て続けて、大化け

2014年に早期アクセス配信され、2022年に正式リリースされた北極犬ぞりサバイバル『Arctico』は、今や売上が42万本に達しているという。

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海外掲示板のRedditにて、「42万本以上を売り上げた自作ゲーム『Arctico』の開発振り返り(420k+ units later a post mortem of my game Arctico.)」というスレッドが注目を集めている。このスレッドでは、2022年に正式リリースされたゲーム『Arctico』の開発後記(ポストモーテム)が綴られている。同作の開発者のひとりであるClaudio氏自身が開発の経緯や売上の推移などをつまびらかに共有しており、開発の初期段階では明確なビジョンがなかった点や、フィードバックを受けて方針転換を決定したことなどが語られている。

本スレッドは、ゲーム開発エンジンであるUnityについて質問や議論をするコミュニティ「r/Unity3D」に投稿されたものだ。ゲーム開発者であるClaudio氏が、自身のゲームである『Arctico』について開発の振り返りを行っている。


好評だった要素は素朴な質問から生まれた

ニカラグアの開発者Claudio氏は12年前の2014年、当時18歳でゲーム開発に着手。後に『Arctico』と名前を変えることになるゲーム、『Eternal Winter』を作り始めた。当時は『World of Warcraft』の拡張コンテンツである『Wrath of the Lich King』に夢中だったそうで、『Eternal Winter』でもそうした美しい氷の世界や、孤独に探索し生き残るサバイバル要素などを表現したかったそうだ。

『Eternal Winter』は2014年11月から早期アクセスを開始し、当時から“犬ぞりサバイバルゲーム”として登場していたが、この犬ぞりの要素は開発初期段階では想定されていなかったという。きっかけとなったのは、Claudio氏が弟から「犬ぞりには乗れないのか?」と質問されたことだった。Claudio氏は同作の制作に当たって、何かしらの独自性が必要だと認識していたといい、この「犬ぞり」要素はまさしく求めていたものだったと語っている。そうして早期アクセスを迎えた『Eternal Winter』は、同氏いわく「バグだらけで何がしたいのかわからないゲーム(it was an absolutely buggy and confusing mess of a game)」だったと振り返っている。

しかし幸いにも、Steamにおけるユーザーレビューはまずますの水準をキープしていたという。これは、犬ぞりを始めとする“犬とのふれあい要素”をユーザーが高く評価してくれたためだと語っている。そうした賛否両論のあるレビュー内容を見るにつれ、Claudio氏は「本当に作りたいゲーム」が何か分からないまま早期アクセスに踏み切ったことを悟ったという。

それでも『Eternal Winter』のアップデートを続ける同氏はある時、カヤックを追加。テストプレイ中に乗り込み、水面に反射する雪と遠くの山々を見やると、作りたいゲームのビジョンがありありと浮かび上がったという。そうして同作は、当初の「大自然に抗うサバイバーのゲーム」としての要素を大幅に抑え、心穏やかで色彩豊かな環境を調査・探索するアドベンチャーゲームとして再出発。タイトルもこの時点で『Arctico』に変更された。

その後は目的となるビジョンを実現するため膨大な量のアセットの製作が必要となった折に、のちに共同開発者となるAntonio氏と知り合い、同氏が3Dアセットの大部分を手がけてくれたことでゲームプレイの開発に集中できたそうだ。好評だった犬とのふれあい要素も拡充。Steamレビューも好転していったという。また、その頃のフィードバックとして協力プレイの実装を求める声が多かったため、Claudio氏はこれに応えることを決断。Photonと呼ばれるUnity用のネットワーク基盤パッケージを導入し、6か月以上をかけてようやくプレイ可能な状態まで漕ぎ着けたと語っている。同氏はこれが最も困難な作業だったとし、シングルプレイ用の『Arctico』をマルチプレイに対応させるため、ゲーム構造を根本から作り直したと説明。満足のいく状態になるまで数年を要したとしている。


大型アプデ継続の効果はやっぱり大きかった

そして早期アクセスから6年が経過した2020年、同作はようやく“本格的なゲーム”としての形をなしたとClaudio氏は語っている。さらに2年後の2022年2月に『Arctico』は正式リリースを迎える。その時点でのウィッシュリスト登録数は約3万件。同作は早期アクセス期間中の8年間で5万7000本を売り上げており、正式リリースの1年目では2万6000本の売上だったという。2年目では5万本、Steamの「日替わりスペシャル」に抜擢された3年目には8万3000本を販売し、4年目には15万4000本の売上となった。5年目現在では5万7000本となり、ウィッシュリスト登録数は9万件に達しているそうだ。報告された売上本数を合計すると42万7000本に到達していることがうかがえる。

同氏は正式リリース後の『Arctico』の売上について、継続的に大型アップデートを配信していたことが要因として大きいと語っている。バグ修正はもちろん、コンテンツの追加や多言語対応、さらにマルチプレイを含む既存システムの大規模改修なども行っており、長期にわたるゲームの改善が同作を認知し、プレイするきっかけになっているのではないかと指摘。Claudio氏はリリース後も開発を続けることについて、「心の底から、本当に価値のあることだと思う」と語っている。

今回のスレッドでは、Claudio氏によるゲーム開発の振り返りが事細かに共有されている。開発における方針転換や目標となるビジョンの策定経緯など、さまざまに興味深いエピソードが語られているが、その中でも注目したいのは、正式リリース後の継続的なアップデートによって、数年後の販売数が初年度のそれを圧倒的に上回っている点だ。これまでも継続的なアップデートやDLCのリリースなどによって販売数が上向いたり、評価が好転したりした例は多々報告されている(関連記事1関連記事2関連記事3)。

一方で早期アクセス期間に関しては、半年前後が理想であり、それ以上になると正式リリース後の新規プレイヤー数は減少傾向になるとする調査レポートも存在する(関連記事)。本作『Arctico』においても、正式リリース1年目ではむしろ最少の売上を記録している。プレイヤー数の盛り上がりと売上とでは単純な比較はできないものの、同作の成功要因はやはり継続的なアップデートによってユーザーの関心を喚起し続けた点や、それによってレビュー評価が好転したことが大きいのかもしれない。

Steamのユーザーレビューが好転すれば売り上げにも影響を与えるという関係性は過去にも指摘されており(関連記事)、現在では発売直後の売上や盛り上がりは、必ずしもそのゲームの行く末を明示しないとも言える。とはいえ、対人FPSゲームなどのマルチプレイに重点を置いたゲームでは、発売から3日目までの盛り上がりがその後の長期的な成功を左右するという報告もあり(関連記事)、そうしたジャンルでは未だ初動の勢いは重視され得るのだろう。

ちなみに、本作が『Eternal Winter』として早期アクセスを開始したのは2014年であり、その時点でのレビューはゲームの品質と比べて“まずまず”の水準だったと述懐されているが、こうした評価は現在ではやや厳しく見られる可能性がある点は留意されたい。というのも、ゲーム人口の増加や、各所のレビュー・スコアサイトの隆盛により、ユーザーの評価が過去数年と比べて辛口になる傾向が見られるという調査結果や報告書が存在するためだ(関連記事)。『Arctico』においても、Steamの「日替わりスペシャル」に選ばれた2025年には急激にレビュー数が増加し、それに伴って不評レビューも増えている。

また昨今では、早期アクセス配信直後の作品の品質についても同様に“辛口評価が寄せられやすくなった”といった業界人意見も見られ、まずはあえて早期アクセス配信を避け、小規模なクローズドテストなどを通して作品を改善していく方針をとる開発者も見受けられる。『Arctico』においては、長期的なアップデートで作品を改善しながら結果として販売本数を大きく伸ばした。一方で早期アクセスを通じて作品を長期的に育てていく手法が販売戦略としてどれほど有効かは、時代と共に変化しているかもしれない。

『Arctico』はPC(Steam)向けに配信中だ。なお現在は9月6日までのスペシャルプロモーションとして、90%オフとなる120円で購入可能となっている。

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Kei Kano
Kei Kano

キャラクリが出来て没入感のあるゲームが好きです。ゆっくり歩いて世界観を味わったり、自分なりに脳内設定を組み上げたりして遊んでます。

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