ベテランゲーム開発者が「ゲーム開発会議には“素人”も出席すべき」との持論を披露。素人に伝わらないこだわりは、プレイヤーにも伝わらないかも
元BioWare開発者のMark Darrah氏は、自身の動画にて、ゲーム開発の会議では、デザインなどに詳しくない“素人”も参加させるべきという見解を示した。

4月15日、BioWareにて過去エグゼクティブプロデューサーを務めていたMark Darrah氏がYouTubeに動画を投稿。動画内ではゲーム開発に“おバカ(idiot)”、つまり専門的知識のない人を加えた方が良いと、自身の経験も交えて語っている。
Mark Darrah氏はかつてBioWareにてプログラマーやディレクター、プロデューサーなどを務めたゲーム開発者だ。1997年から2021年まで同社に在籍し、プログラマーとしては『バルダーズ・ゲート』シリーズ、『ジェイド エンパイア 〜翡翠の帝国〜』の制作に参加。ディレクター/プロデューサーとしては『ドラゴンエイジ』シリーズや『Anthem』といった数々の作品に携わってきた業界のベテランだ。
Darrah氏はBioWare退社後、自身のYouTubeチャンネルを立ち上げた。現在はゲーム業界に興味のある人向けのアドバイスや、自身が関わったタイトルの制作エピソードなどを語っている。過去には紆余曲折あった『Anthem』の開発にあたって起きた問題などを赤裸々に語り、話題となった(関連記事)。

そんなDarrah氏は4月15日、「Have an Idiot at the Table(テーブルにおバカを座らせろ)」と題して動画を投稿した。タイトルの意図としては、ゲーム開発において、そのゲームのデザインや方向性について議論する際は、デザインやオーディオなどを専門としない、いわゆる“素人”を参加させるのが良いとするものだ。
Darrah氏は自身のキャリアを、長らく「non-expert(非専門家)」として過ごしたと振り返っている。同氏はプログラマーとしては専門家ながら、デザイナーとして研鑽を積んでいなければ、音楽の訓練などを受けたわけでもないという。そのため、同氏がディレクター/プロデューサーとしてゲームのデザインや方向性についての議論に参加するときには、必然的に“素人側”としての参加となったようだ。
こうした“素人”の参加の重要性を語る理由についてDarrah氏は、専門家のみ参加すると議論がだんだん「内向き」になっていく危険性があるとの見解を示した。同氏が語るところでは、専門家のみの話となると、細部の話ができるがゆえに、システムがより複雑で、装飾過多になりがちなのだという。そのため必要なのは「よくわからないのですが」と切り込んだり、「これをどうプレイヤーに見せるつもりですか」と率直に質問できたりする人物とのこと。
アートについても同様に、アーティストにとっては明白な事項でも、門外漢には伝わらない可能性があり、そこを尋ねる人物が必要となる、というわけだ。素人目線の言葉が、ある意味で「プレイヤー目線」に一番近い意見になるという見解だろう。
一方で、Darrah氏はそんな“素人”が口を出し過ぎることへの警鐘も鳴らしている。そうした立場の人物は、気に入った点は明確に伝えるべきとしつつも、議論に参加する他の人と同程度のフィードバックを提供する能力はないとして、普段は沈黙に徹するのがよいとコメントしている。“素人”が口を出したがってしまう現象について、Darrah氏は典型的な経営幹部の問題だと述べている。積極的な議論への関与を目的とすると、思ってもいないフィードバックを送ることになり、チームはその“素人”の過剰な関与を恐れはじめるという。本来有効な議論に割かれていたはずの時間が、そうした的を射ない意見の対応に費やされてしまうということだろう。
ゲームの完成像を明確にするためには、時には専門外の視点である“素人”のフィードバックも必要だとしつつも、過度な関与は控えるべきとするDarrah氏の主張は興味深い。「Have an Idiot at the Table」とやや挑戦的な見出しで語られた動画の中では、Darrah氏の15年ほどにわたる経験の中で培われた、ゲーム制作における“立ち回り”が明かされたかたちだ。
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