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ロシアのホラーゲーム開発者、“政府の表現規制が厳しすぎる”と悲鳴。そもそも「ホラー」がだめっぽい
そのジャンル・メカニクス・世界観のゲームは、現在の法律のもとではロシアでリリースできないと説明されたのだそうだ。

ロシアでは近年、オンラインゲームへのアクセス制限や、ゲームにも影響しうる表現規制の強化が問題視されている。そうしたなかで、開発したホラー要素のあるゲームが、現在の法律ではリリースできないと政府関係者によって告げられたという開発者の投稿が、海外掲示板Redditにて話題となっている。
RedditユーザーのNo_Metal2622氏(以下 No Metal氏)は、サイコロジカルホラーゲーム『The Lost File』を手がける開発者だ。同作でプレイヤーは連続殺人事件を捜査するジャーナリストとして、廃墟と化した精神病院など、地図には存在しない土地を訪れる。それぞれの場所には固有の「生存ルール」が存在し、それに従って生き残ることが目的となる。ルールは説明されないため、周囲の環境から読み解く必要がある。なお本作ではWebカメラやマイクを通して、プレイヤーの動きや視線、声がゲーム内のキャラクターにも反映される。モンスターたちはそうした情報を手がかりに、プレイヤーの癖を学習しながら追い詰めてくるそうだ。

開発者を悩ませる“暗黙の規制”
同氏は大学院の修士課程で、修了制作として『The Lost File』に取り組んでいたという。しかし担当教授からは、このジャンルは大学の評判が損なわれる可能性があるため、審査では不合格にするとの反応が返ってきたそうだ。ただ、同氏は誰かに不可能だと言われると逆にやってやろうという気持ちが湧くそうで、妥協点を探れなければ辞めると大学側に告げたという。その後メンターの助けもあり、最終的には同氏のホラーゲームを書類上では「detective quest(探偵クエスト)」と表現することで、ゲームの内容を変えることなく無事に認められたそうだ。
しかし、その後も同氏のゲームに対する風当たりは強かったようだ。国のスタートアップ委員会にて同氏は、プロジェクトを5分間でプレゼンするビデオ会議に参加。ほかの学生らが発表後にフィードバックや賞賛を受けるなか、同氏が自身のプレゼンテーションを終えると、その場は静まりかえったという。画面に映る十数人の審査関係者たちは、何を質問するべきか困惑している様子だったとのこと。そのためNo Metal氏は当時、自分のマイクが壊れたのか、それとも何かが非常におかしいのかと考えていたそうだ。
その後、ある女性がミュートを解除して自己紹介をしたという。彼女は政府側でクリエイティブ産業を担当している弁護士だといい、何が認められ、何が認められないのかを決定する立場にあると自己紹介したとのこと。そして彼女はまずNo Metal氏に対して、ロシアの法律を勉強したことがあるか、そしてそのゲームがロシアの法律に違反していないと確信できるかと質問。続けて、作品に流血・殺人・ホラーの要素が含まれているかと尋ねたそうだ。つまり、そうした表現を含む本作は、法的な問題があると示したわけだろう。
そうしたロシアでの表現規制を示唆する弁護士の発言を受けて、No Metal氏は反論。流血や骸骨の表現を隠すなど、ロシア向けの検閲を施したローカライズ版を作れば国内でも販売が可能だと説明した。しかし弁護士からは、そのジャンル・メカニクス・世界観のゲームは、現在の法律のもとではロシアでリリースできないと説明されたのだそうだ。

なおNo Metal氏はそれでも食い下がり、反例として、ロシアで開発されVK Playなどで配信されている歴史アドベンチャーゲーム『Смута(スムータ)』を挙げたという。同作はロシアの政府系組織「Internet Development Institute(IRI/ИРИ)」の支援を受ける作品ながらも、作中には殺人をおこなうシーンなども登場する。同氏はこの点を指摘したものの、弁護士は「That’s different(それは違う)」と突っぱね、自分の作品と同じホラージャンルの中で調査すべきだと主張したとのこと。
そこでNo Metal氏は、ロシアで販売されている暴力的な表現のあるゲームを思い出そうとしたものの、ロシア人の開発者が海外の販売元を経由して展開した作品はあれど、ロシアで正式に審査・検閲を経たような“ロシア発”の作品を思い浮かべることはできなかったという。一連のやり取りを経て同氏は、ロシアではそうしたゲーム開発が“自主規制”されていたのではないかと実感したそうだ。
ロシアが求めるゲーム表現
なお同氏は、6月末にロシアでおこなわれたゲーム開発者会議にも出席。時期や説明から、これは6月26日にモスクワで開催された「КРИ 2026」を指すとみられる。同イベントは2003年から2013年まで毎年開催されており、2026年に13年ぶりの復活となった。当日には1350名以上が来場、ロシア製のゲームが約50本出展された(Российская газета)。
そこでは国家支援に関するパネルディスカッションがおこなわれ、5人の講演者が登壇。その中には、IRIの代表者とされる人物の姿もあったそうだ。その人物は、ロシアのユーザーをターゲットにしたゲームを作り、IRIに資金援助を申請するよう呼びかけていたとのこと。
実際にIRIが公開しているゲーム開発コンテストの要綱では、「国益と社会的価値の保護」や「現代の英雄たち、そして誇りに思うべき理由」「多民族性:多様性の中の統一」など計7つのテーマが掲げられている。各テーマの中では、「祖国への愛」や「特別軍事作戦参加者に対する誇り」といったキーワードを確認可能。ロシアの伝統的価値観を色濃く含むことが応募作品に求められていることもわかる。
ただNo Metal氏はこうした制限の中で心理ホラーを作れるわけがないとの反応を示している。先述した『Смута』のようにロシアの伝統的価値観を推進する作品でなければ、少なくともIRIの支援を受けにくいのだろう。開発資金に余裕がなく政府系組織の支援に頼らざるを得ない場合、開発するゲームの題材や表現の方向性が実質的に狭められる可能性もうかがえる。

ところで、ロシアではゲームプラットフォーム「Roblox」へのアクセスが2025年末よりロシア当局によってブロックされていた。ロシア政府はこの理由として、テロの正当化や違法行為への呼びかけ、LGBT関連の宣伝などが大量に掲載されていたことを理由としていた。ロシア国内で利用者からは反発も生じたが、その後Roblox公式が、年齢に応じたアクセス制限を含む対策を講じ、ロシアの法律を遵守する方針を示したことも受けて、2026年6月に制限が解除された。
このように、ロシアではLGBTに関する表現のほか、薬物使用の推奨、過激主義活動の正当化・宣伝などの情報については、たとえ成人向けであっても規制の対象とされてきた。一方で、殺人やホラーの表現については、年齢区分を設けたり、子供への流通制限をおこなったりする必要はあれど、全面的に禁じるような明確なロシアの法律があるわけではない。
そのため今回のNo Metal氏の経験談が事実であれば、教育機関や政府関係組織が問題となっている表現について直接釘を刺したり、開発者に対して先回りして自主規制を迫ったといった状況があることが伺える。線引きが不明瞭なこともあり、開発者の委縮等を招き、自由な表現が阻害されることも懸念される。
そうした環境下では、ロシアでの活動を断念する開発者も存在する。たとえば『INDIKA』の開発元であるOdd Meterは同作を通して、ロシアでは刑事訴追される可能性のあるテーマを扱っていたとしたうえで、2022年に発生したロシアによるウクライナ侵攻を機に事態は複雑化したと説明。16名のチーム全体がロシアを離れ、カザフスタンへと拠点を移したことが報告されていた。世界情勢が不安定化する中で、ロシア国内でのゲーム開発事情がどのように変化していくのかは注目される。
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