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『Apex Legends』を用いて「ゲームの上手さ測定法」を編み出す研究がおこなわれる。“自称”じゃなく、プレイが語る実力分析
ゲーム内の行動を直接分析することで、ゲームの熟練度を測る研究が発表され注目を集めている。

ゲームのプレイの上手さは人それぞれ異なるが、それを客観的に測定することは難しい。一方で、ゲーム内の行動を直接分析することで、ゲームの熟練度を測る研究が発表され注目を集めている。
米国・ネバダ大学ラスベガス校のSam A. Leif氏らは、4月17日に研究論文「Differentiating video game expertise using the Model of Domain Learning」を公開した。その中では今回の研究の背景として、ゲームにおける「Expertise(熟練度)」については元来、長年プレイ時間やプレイ歴といった自己申告に基づいて測定されてきたことが説明されている。研究者らはそうした自己申告よりも、ゲームのデジタル空間内での行動こそがプレイヤーの熟練度を正確に反映していると考え、「Behavioral Observation Matrix-Proxemics(BOM-Proxemics)」と呼ばれるより客観的かつ信頼性の高い行動ベースの測定方法を先行研究をもとに考案した。
本研究で用いるゲームタイトルについては、熟練度を階層化できるゲーム内要素が備わっていること、透明性の高いランクシステムがゲーム内に存在すること、そしてMetacriticにおいて高い評価を得ていることという3つの条件で選定。最終的にバトルロイヤルFPSである『Apex Legends(エーペックスレジェンズ)』が採用された。

『Apex Legends』でプレイヤーは、時間経過で縮小するリングによるプレッシャーの中で、リングの動きを予測しながら、有利なポジションの確保や物資集めをおこなうことになる。交戦時には3次元空間の中で味方や敵の位置を把握し続けなければならず、GUIを開いての物資整理などもそうした情報の把握を難しくする。いくつかのタスクが絡んだ複雑な意志決定が要求されるゲームであり、本研究に最適と判断されたようだ。また『Apex Legends』はTwitchをはじめとするストリーミングプラットフォームでもっとも配信が盛んなバトルロイヤルゲームだといい、利用できるサンプルが多いことも選定の一因となったとのこと。
研究対象となったのは、Twitchで無作為に選ばれた、102名の『Apex Legends』プレイヤーによるプレイ映像の録画だ。まず、プレイヤーのゲーム内のランクに基づき、初心者・中級者・上級者の3つの熟練度グループに均等に分類。次に、あらかじめリストアップしたゲーム内の16個の行動について、BORIS(Behavioral Observation Research Interactive Software)と呼ばれるツールを用いて、10秒間隔のインターバルで最大1回ずつ採点する「コーディング」を実施した。たとえば、シールド回復を始めた際、回復アクションを完了できれば+1点を、回復アクションが中断されれば-1点を記録。またユーザーが関連する情報を認識した際に、チームにボイスチャットで共有すれば+1点を、共有しなければ-1点を記録といった具合だ。

こうした採点の結果、BOM-Proxemicsを用いて算出された総合スコアと、ゲーム内ランクの間には有意な正の相関(ρ=0.712)が確認されたとのこと。ゲーム内のランクを上昇させるために必要となるような熟練度を、ゲーム内の行動を観察することで読み解ける可能性が明らかとなった。なお、観察者間での一致度を表す「級内相関係数」は0.997となっているほか、内部整合性を表す「クロンバックのα係数」は0.850を示している。測定ツールとしての信頼性や妥当性も提示されている。
ところで、ゲームをプレイする際の16個の行動を4つに大別したもののうち、「空間的ポジショニング(Spatial positioning)」「空間的適応(Spatial Appropriation)」「空間的相互作用(Spatial Interactivity)」の3つのカテゴリでは今回の研究において有意な予測因子となった一方で、設定メニューへのアクセスやボイスチャットでのコミュニケーションや、ピンでの情報共有などを含む「空間的認識(Spatial Realization)」のカテゴリには有意性が見られなかったという。これについては、ランクマッチをプレイする全員がすでに基本的な操作やシステムを認識している状態で、いわゆる「天井効果」が発生していたとの考察がなされている。

今後の展望としては、まず調査項目や調査手法の改善が語られている。たとえば、今回の研究ではその場で3秒以上立ち止まる行為を-1点として評価しており、初心者と防御的な戦術をとるプレイヤーを区別できていないなどの問題もあるという。また、今回はストリーマーのプレイ映像が調査対象となったため、ユーザーに見られているという意識が行動に影響を及ぼしている可能性があるとのこと。研究者らは今回用いた評価手法を、『Apex Legends』だけでなく他のゲームにも使えるか検証し、ゲーム開発者やプロのeスポーツチームと提携しての実用化も視野にいれているそうだ。そして、将来的にはVRやデジタル学習環境といった、複雑な空間的タスクが求められるあらゆるデジタルシステムに応用できる可能性を示唆している。
これまで客観的な調査手法に欠けていた「ゲームの熟練度」という指標において、ゲーム内の行動に直接点数をつけるという手法を用いて解決を目指したという点で興味深い研究といえそうだ。ところで、以前にはゲームで培われる能力が現実の運転に関わるスキルに応用できる可能性を示す研究も登場していた(関連記事)。今回の研究のように、ゲームの熟練度をより明確な指標で分析できるようになれば、ゲーム以外の能力との関連性についてもさらに詳細に明らかとなっていくかもしれない。
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