Google、アプリ開発者が支払うGoogle Playストア手数料を、年間収益100万ドルまでは半額の15%に引き下げへ。7月1日から実施

 

Googleは3月17日、Google Playにてアプリを配信しているすべてのデベロッパーを対象に、年間収益の合計が100万米ドルに達するまでの部分は、Google Playのサービス手数料を15%に引き下げると発表した。今年7月1日から実施する。

Google Playを利用するデベロッパーは、配信したアプリ内でのデジタル商品の販売による収益の30%を手数料としてGoogleに支払っているが、収益100万ドルまでの部分に関しては手数料が半額に引き下げられたかたちだ。これは毎年適用されるとのことで、仮に100万ドルを超え30%を支払う部分が発生しても、年をまたげばふたたび収益をカウントし直して100万ドルまでは15%となる模様である。


今回の変更についてGoogleは、デベロッパーがアプリを立ち上げて軌道に乗せるためのサポートの一環であるとコメント。デベロッパーは手数料が安くなった分、エンジニアやマーケターを採用したり、サーバーのキャパシティ拡大など、ビジネスの成長にとって重要なフェーズに投資できるだろうとした。

同様の施策については、Appleも「App Store Small Business Program」として昨年発表しており、今年1月1日から実施。こちらも年間収益100万米ドルに達するまでは、手数料を30%から15%に引き下げる内容となっている。ただし、同プログラムでは参加規定として、App Storeに新規に参入するデベロッパー、あるいはApp Storeでの2020年の全アプリの収益合計が100万ドル以内だったデベロッパーと定めており、既存の大手デベロッパーは除外されている(関連記事)。

一方のGoogleは、成長段階のデベロッパーのサポートを掲げつつ、より多くの収益を得ているデベロッパーからの意見も反映させたとのことで、ビジネスの大小にかかわらず全デベロッパーを手数料引き下げの対象にしている。同社は発表の中で「すべてのデベロッパーの成功をサポートする」「公平なアプローチ」であると強調した。


30%のストア手数料は業界標準となっている面があるが、一連のGoogleやAppleの施策のように、最近になって条件付きながら手数料を引き下げる動きが出てきている。きっかけのひとつと考えられるのは、Epic Gamesによる両社への訴訟だろう。Epic Gamesは、30%の手数料がかかるアプリ内決済手段をデベロッパーに強制していることなどについて独占禁止法違反や反競争的行為を主張し、特にApp Store外でのアプリ配信を認めないAppleに対しては各国で訴訟を展開。裁判に関してはまだ大きな結論を見ていないが、欧州委員会などが調査に乗り出す動きへと繋がっている。

今回のGoogleの発表についてEpic GamesのCEO Tim Sweeney氏は、GoogleとAppleがほぼ足並みを揃えた施策を打ち出したことは、業界にとって恐ろしいことだと述べる。また、大部分のデベロッパーは手数料15%の恩恵を受けることになるが、Googleが得る収益の大部分は30%の手数料を支払うデベロッパーからのものであると指摘。これはAppleの「App Store Small Business Program」が発表された当時にも述べており、争いを避けるための利己的な戦術だと断じている。手数料を部分的に引き下げることで満足させ、「もっと下げられるはず」と異を唱える者を減らすための施策だというわけだ。

調査会社Sensor Towerは3月17日、新たな手数料ポリシーが仮に2020年に適用されていた場合、Googleは収益の5%を、Appleは2.7%を失っていたとする試算を発表。“大部分の”デベロッパーの手数料を半額にしても両社の収益にはさほど大きな影響はなく、Tim Sweeney氏の指摘を裏付ける格好となっている。

とはいえ、小規模デベロッパーにとってはストア手数料が半額になることは大きな助けになるだろう。Sweeney氏も批判を続けているものの、少なくともひとつステージを進んだとも述べており、一定の評価はしているようだ。Googleの新たなストア手数料ポリシーは、今年7月1日から実施される。詳細に関しては、今後数か月をかけて共有されるとのこと。