レトロアニメ協力プレイアクション『オービタルズ Orbitals』開発者インタビュー。『It Takes Two』などにも携わった開発者らが「日本」で作るゲーム、絵づくりの執念

レトロアニメ風のSFをテーマにした2人協力型アドベンチャーゲーム『オービタルズ Orbitals』の開発陣に話を訊いた。

オービタルズ Orbitals』は、Shapefarmが開発し、Kepler Interactiveがパブリッシュを行うNintendo Switch 2専用タイトルだ。本作はレトロアニメ風のSFをテーマにした2人協力型アドベンチャーゲームで、80~90年代のアニメを思わせるキャラクターデザインやカットシーンが特徴的だ。プレイヤーは探検家のマキとオムラを操作し、宇宙嵐に脅かされたステーションを救うために冒険を繰り広げていく。

今回は、東京に拠点を置くShapefarm本社にて、『オービタルズ Orbitals』に関するインタビューを実施。二部制でゲームディレクターJakob Lundgren氏・クリエイティブディレクターのMarcos Ramos氏および、オペレーションマネージャーMegumi Varmedal氏・アシスタントアートディレクターJohannes Varmedal氏の計4名に話を訊いた。


『オービタルズ Orbitals』における2人協力プレイの差別化

左からMarcos Ramos氏、Jakob Lundgren氏

――『オービタルズOrbitals』の2人協力型アドベンチャーというコンセプトは、どのような経緯で生まれたのでしょうか。開発のきっかけについても教えてください。

Jakob Lundgren(以下、Jakob)氏:
もともと企画の初期段階では、1人または2人で遊べるゲームを想定していましたが、その条件で「面白くてユニークな体験をどう成立させるか」を考えるうちに、次第に行き詰まってしまったんです。そこで発想を転換して最初から2人いないと成立しないゲームに振り切ったほうが、自分たちの目指す体験を明確に実現できるのではないかと考えました。もうひとつ大きな要素として、社内でさまざまなゲームを開発・プレイする中で、誰かと一緒に遊ぶことで自然とコミュニケーションや笑いが生まれるという実感を起点に、コンセプトを広げていったことが本作の基礎になっています。

――Jakob氏は『A Way Out』『It Takes Two』『スプリット・フィクション』に関わっていたと言われていましたが、過去の経験はどのように活かされていますか?

Jakob氏:
『A Way Out』を手がけた経験がありますが、自分にとって初めて2人協力プレイを中心に据えた作品でもありました。当時はそもそも2人専用タイトル自体がほとんど存在していなかったため、「どのように作れば成立するのか」という点から模索していたんです。『オービタルズ Orbitals』のコンセプトにも繋がる制作過程で非対称的なゲームプレイや、同時にパズルを解いていくような仕組みが生まれました。

――過去に手がけたタイトルと『オービタルズOrbitals』で差別化した部分とは?

Jakob氏:
私が過去に手がけた2人協力型タイトルと『オービタルズ Orbitals』の違いは、まずアートワークのディレクションが大きく異なるため、プレイ時に感じられる空気感は明確に別物だと感じると思います。さらにゲームデザインにおける差別化として大きいのが、プレイヤーとキャラクターの関係性です。『It Takes Two』などでは、どのキャラクターがどの役割を担うかが事前に定められていますが、『オービタルズ Orbitals』ではどのアイテムを使うかをプレイヤー自身が選択する設計になっています。

例えば今回のデモでも体験できますが、ビームキャノンとウォーターランチャーのように性質の異なる武器が用意されており、プレイ中に「苦手だ」と感じた場合には武器を相方に任せ、自分は別の役割を担うといった柔軟な切り替えが可能です。従来の協力プレイでは、苦手な場面でキャラクターごとコントローラーを相手に渡す場面も見られましたが、本作は相方と武器を持ち替えることで好きなキャラクターを使い続けられます。

――途中でキャラクターを変更すると没入感も変わるため、嬉しい仕様ですね。プレイヤーとキャラクターの関係性というお話がありましたが、実際に操作する主人公のマキとオムラについて教えてください。

Jakob氏:
マキとオムラは幼少期から同じ居住区で育った幼馴染という設定で、お互いを子どもの頃から知っており、身内にしか通じないジョークを共有するような関係です。作中でも親密さが伝わるやり取りを随所に盛り込んでいますが、狙いとしてはプレイヤーの関係性をキャラクターに投影する意図があり、互いを理解しているプレイヤー同士が一緒に楽しむ状況を想定し、その延長線上に2人の関係を位置づけています。性格はマキが外交的で感情豊かで直感的に行動するタイプの一方、オムラは内向的で落ち着きがあり仲裁役的な立ち位置で、対照的な対比によって、関係性にバランスを持たせています。

――2人の性格は対照的なのですね。武器を持ち替えられるとのことですが、それ以外でキャラクターごとの性能差はありますか。

Jakob氏:
2人とも主人公であり同じくらい重要な存在として位置づけており、どちらか一方がメインプレイヤーでもう一方が相棒のサブプレイヤーという関係にしないために、キャラクター性能は平坦であえて差をつけていません。あくまでどの武器を使うかによって状況を解決していく設計にすることで、キャラクターの違いではなく、ゲームプレイ自体に集中してもらうことを大切にしています。

――Nintendo Switch 2専用タイトルの理由と、どのような機能を活かしているか教えてください。

Jakob氏:
Nintendo Switch 2でリリースしたいと考えた理由については、「おすそわけ通信」という仕組みが『オービタルズ Orbitals』にもっとも適していると判断した点が大きいです。ローカル環境であれば1本のソフトで2人が一緒に遊べますし、オンラインプレイにおいてもゲームチャットに参加すればおすそわけができます。プレイヤーそれぞれがソフトを購入しなければならない状況は避けたいと考えていたので、おすそわけ通信の考え方は本作のコンセプトと相性が良いと感じています。そのうえでハードとしての普及状況や、プレイヤー同士のつながりが広がりやすい点を踏まえてNintendo Switch 2を選びました。


レトロアニメスタイルのグラフィックへのこだわり

――それでは次はMarcosさんから、グラフィック面におけるこだわりを教えてください。 レトロアニメの温かみやフィルム感を再現するために、どのような工夫をされましたか。

Marcos Ramos(以下、Marcos)氏:
まずコンセプトとして、80〜90年代に見られるアニメの制作手法を、ゲームでも再現したいと考えました。セルで描かれるキャラクター部分と背景は、本来まったく別のレイヤーで制作されるもので、本作でもそれぞれ独立したプロダクションとして扱っています。チーム構成や制作工程・表現の考え方も分けて考えており、セル側では線や形の作り込み、色の再現やカラーバランスに強くこだわっています。一方で背景はペイントの質感やブラシストロークをどう表現するかに重点を置き、ゲームエンジン上でも演出できるように技術面から作り込んでいます。

さらにこの2つを組み合わせる工程が重要で、アニメ同様に背景の上にセルを重ねることで生まれる“レイヤーの違いによる影”をあえて表現に取り入れ、画面に説得力を持たせました。アニメーションについても動くオブジェクトは24fps、背景などは12fpsといった形でフレームレートに差を設け、最終的な画作りではフィルムグレインやハレーションといった要素も加えて当時のアニメの質感を再現しています。

――影響を受けたアニメや作品について教えてください。

Marcos氏:
チーム全体としてさまざまなアニメから影響を受けていますが、中核部分のストーリーラインは『ドラゴンボール』の影響が大きいです。各地を巡りながら人や生物と出会い、楽しい場面とシリアスな展開が交錯していくような、“魔訶不思議アドベンチャー”な冒険譚を意識しています。アートスタイルについては、キャラクター表現の面で『美少女戦士セーラームーン』や『らんま1/2』の描き方を参考にしていますし、作品全体の雰囲気や空間表現という意味では『カウボーイビバップ』の影響が大きいです。落ち着いた心地よい音楽とともに宇宙を旅するような感覚は、『オービタルズ Orbitals』にも通じる部分だと思います。

――最後に読者へメッセージをお願いいたします。

Jakob氏:
楽しみにしていただければと思いますし、実際にプレイして楽しんでいただけたら嬉しいです。

Marcos氏:
『オービタルズ Orbitals』は自分が幼少期から親しんできた日本のゲームやアニメへのラブレターであり、オマージュの意味合いも込めて制作しています。そうした文化を生み出してきた日本の方々への感謝を込めるとともに、少しでも影響を与えられるような作品になればと思っています。

STUDIO MASSKETとの連携で得たもの

左からMegumi Varmedal氏、Johannes Varmedal氏

――まずShapefarmは東京の会社ですが、日本に拠点を置いて良かった点を教えてください。

Megumi Varmedal(以下、Megumi)氏:
日本で制作していて良かった点としては、80〜90年代のアニメ表現を参考にしていることもあり、資料にアクセスしやすい環境にあることが大きいですね。アニメ関連の展示や美術館も多く、参考になるアートブックなども手軽に入手できるため、制作の助けになっています。またチーム全体が日本を好んで集まっており、例えば何気ない街並みでも「以前見たアニメに出てきた場所に似ている」といった発見があるなど、日常の体験も作品づくりに繋がっています。

――『オービタルズOrbitals』はKepler Interactiveがパブリッシャーですが、パブリッシャーからの支援や協力体制についても訊きたいです。

Megumi氏:
これまでShapefarmには広報やマーケティングのチームがなかったため、そうしたノウハウや進め方についてパブリッシャーから学べている点は大きいと感じています。私自身も、オペレーションマネージャーとしてプロデューサー的な役割を担い、最初から最後までゲーム開発に関わるのは今回が初めてですが、その中でKepler Interactiveさんの存在は大きく、いなければ広報面は成り立たなかったかもしれません。日頃から分からないことがあれば相談し、アドバイスをもらいながら進めており、密に連携しています。

Johannes Varmedal(以下、Johannes)氏:
Kepler Interactiveさんとのクリエイティブ面に関する協力については、自分たちで意思決定できる範囲が広いことも大きな魅力です。基本的にShapefarmに裁量が委ねられており、クリエイティビティを尊重していただいている点は、とてもありがたいと感じています。

――これまで受託案件の開発を行われてきましたが、今回オリジナルタイトルを作る上で意識したことや、受託との違いについては?

Johannes氏:
Shapefarmでは会社設立から『オービタルズ Orbitals』の開発が始まるまでは、様々なゲームスタジオに対し下請け・協力スタジオとして主にアートやグラフィック制作を受託してきました。今回の大きな違いは自社でチームを立ち上げた点で、プログラマーやVFXアーティスト、デザイナーを含めた体制を構築してゲーム開発を進めています。

――『オービタルズOrbitals』では、アニメ制作会社「STUDIO MASSKET」さんが手描きのカットシーンを制作されたと聞きましたが、協力に至った経緯について教えてください。

Megumi氏:
複数のアニメ制作会社にお声がけする中で、手描き表現を強みとされている点や、自分たちが実現したい方向性と合致していたことから、STUDIO MASSKETさんにお願いすることになりました。プロジェクト開始前に『オービタルズ Orbitals』のコンセプトをお伝えしたうえで、レバーを回す短いアニメーションを制作していただいたのですが、仕上がりが非常に魅力的で「ぜひお願いしたい」と感じたのが決め手です。また日本のアニメ制作会社とご一緒するのは今回が初めてでしたが、制作面だけでなく業界のノウハウについても丁寧に教えていただきました。

――実際に「STUDIO MASSKET」さんとの制作を通じて印象的だった点はありますか。

Megumi氏:
特に印象に残っているのは、絵コンテ制作のプロセスですね。Shapefarm側でストーリーをまとめ、その内容をもとに絵コンテ制作を依頼していましたが、担当してくださったのが80〜90年代から活躍されているレジェンドアニメーターの方でした。また「当時のアニメを目指すなら爆発シーンはこうしたほうがいい」など、自分たちでは気づけなかった具体的な演出提案もいただき、作品に反映していきました。

その方はすべて手描きで制作されるスタイルで、デジタルを使わない制作方法も新鮮でした。コンセプトアートの共有もメールではなく、すべてプリントアウトしたものを郵送する形で進めており、合計で200枚以上のやり取りを行いましたね。連絡も主に電話で行い、「このシーンのこの角度の素材が欲しい」といった要望に応じて、ゲーム内でスクリーンショットを撮影し送付する、といったやり取りを日常的に行っていました。

――カットシーンの制作会社とゲーム本編の開発チームが分かれている中で、双方の表現をなじませるうえで苦労された点について教えてください。

Johannes氏:
背景制作においては、カットシーンで使う場面を制作の初期段階で確定させなければならず、一度決めた背景はゲーム内で後から動かせないため、早い段階で固定して変更が出ないように管理するのが難しかったです。

Megumi氏:
コミュニケーション面では、STUDIO MASSKETさんのテクニカルアーティストと私たちがDiscordで頻繁にやり取りしていた点が大きかったと思います。アニメーションの処理方法やゲーム内での仕様について、アーティスト同士で直接し合うことで、認識のズレをスピーディーかつ綿密にすり合わせながら制作を進められました。


背景アートで80~90年代のアニメを表現

――Johannesさんは『オービタルズOrbitals』の背景アートを担当されていますが、ゲームとして80~90年代のアニメを表現する上で特にこだわった点を教えてください。

Johannes氏:
参考として当時のアニメや映画を数多く観て、80〜90年代の表現を勉強しました。中でも重視したのが背景アートの細かなディテールで、固定カメラでワンショットごとに背景が描き込まれているような、当時のアニメ特有の画づくりを意識しています。現在のアニメーションはデジタルでのコンポジットが主流ですが、当時はフィルムカメラによる撮影が行われており、独特のボケやハレーション、フィルムグレインといった質感がありました。そうした表現を再現するために、本作ではアンリアルエンジン上でポストプロセスとして組み合わせ、検証を重ねながら作り込んでいます。

――オービタルズOrbitals』では当時のアニメをそのまま再現するのではなく、プレイヤーが動かせる背景として落とし込んでいますが、アニメをゲームとして成立させるうえで苦労した点はありますか。

Johannes氏:
アートディレクションの方針としては、動いているオブジェクトはセルシェーディングで表現し、動いていない部分はペイントシェーダーで描画しています。背景は基本的に固定されていて、異なる手法で作り分けているので、ゲームとしては特徴的な表現になっていると思います。一方でゲーム内では三人称視点でカメラを自由に動かせるため、80〜90年代アニメの雰囲気を再現するために、背景内のアニメーションは12コマや6コマに制限するなど当時の制作手法を踏襲しました。

――実際にプレイしていると、あえて背景を動かさず固定している場面もあり、それがアニメらしい質感につながっているように感じました。

Johannes氏:
エリアごとにカメラの設定も変えており、固定カメラの場面もあれば横スクロールのように左から右へ移動する構成も存在するなど、シーンごとに最適な見せ方を選んでいます。

――シーンごとと言えば、さまざまなロケーションが用意されているとのことでしたが、そのアイデアはどのように生まれたのでしょうか。またアイデアを実際のエリアへ落とし込むうえで苦労したことはありますか。

Johannes氏:
ロケーションのアイデアについては、まずスペースアドベンチャーとしてのテーマごとにキーコンセプトアートを制作し、それをもとに広げていきました。さまざまなロケーションを表現したいという意図はありましたが、そのままエリアに落とし込むのは簡単ではありませんでした。チームには1人コンセプトアーティストがいましたが、すべてのエリアに対して十分な素材を用意できていたわけではなく、背景チームのアーティスト自身がコンセプトを考え、アイデアを共有しながら制作を進めていくこともありました。全体のベースになっているのはMarcosさんのストーリーで、コンセプトが存在しないエリアについては、その内容に沿って新たなロケーションを追加しています。

――Johannesさんが影響を受けた作品について教えてください。

Johannes氏:
個人的には『AKIRA』『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』『機動警察パトレイバー2 the Movie』『王立宇宙軍 オネアミスの翼』といった作品から大きな影響を受けています。ゲーム全体の雰囲気に関しては、スペースアドベンチャーとしてSF系のアニメがアートディレクションのベースになっていますが、80〜90年代のポップで可愛らしいアニメ要素をミックスすることで、Marcosさんによる『オービタルズ Orbitals』ならではのユニークなアートスタイルになっています。

――最後に読者へメッセージをお願いいたします。

Megumi氏:
可愛いキャラクターたちがたくさん登場するので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。

Johannes氏:
『オービタルズ Orbitals』は、2人で協力しながら進めていく作品なので、パートナーと一緒に楽しんでいただけると嬉しいです。

『オービタルズ Orbitals』は、Nintendo Switch 2向けに2026年に発売予定。

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Yuuki Inoue
Yuuki Inoue

RPGとADVが好きなフリーのゲームライター。同人ノベルゲームは昔から追っているのでそこそこ詳しい。面白ければジャンル問わずなんでもプレイするのが信条。

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