ONE OK ROCKのベースのRyotaに『フォートナイト』内で開発した、まだ多くの人に見つかっていない才能が輝ける最高の場所についての話を訊いた

ONE OK ROCKのRyota氏が『フォートナイト』内に音楽・アート・遊びを盛り込んだ島プロジェクト・「Melty Island(メルティアイランド) 99 Bot Royale」。Ryota氏と開発者に話を訊いた。

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Alche株式会社およびONE OK ROCKのRyotaは7月23日、『フォートナイト』内で「Melty Island(メルティアイランド) 99 Bot Royale」をリリースした。「Melty Island 99 Bot Royale」(以下、Melty Island)は『フォートナイト』内における島プロジェクトだ。

「Melty Island」では、Ryota氏が主宰し、Alcheが開発を担当。音楽・アート・遊びを盛り込んだコンテンツだ。Unreal Editor for Fortnite(UEFN)にて開発された。プレイヤーは、アーティストのオリジナルキャラクターと世界観の中を歩き、複数の書き下ろし楽曲を浴び、探索し、隠された物語を掘り起こしていく。

「Melty Island」の制作をリードしたのは、ONE OK ROCKのベースのRyota氏だ。これまでバンド活動で一緒に仕事をしてきたクリエイターが集まり、『フォートナイト』上の島にさまざまなコンテンツを制作。筆者も実際にさわったが、アートやサウンドが楽しく、カルチャー的な要素が満載の島になっている。Alcheはこれまで「逃走中 CREATED IN FORTNITE」や「KizunaAI」の『フォートナイト』コンテンツを作ってきた実績もあり、RyotaチームのアイデアをAlcheが的確に実装へと落とし込んでいる。

そもそもRyota氏はなぜこうした島を作り出したのか?Ryota氏およびAlche代表の川大揮氏、そしてEpic Games Japan代表の河崎高之氏に話を訊いた。

――自己紹介をお願いします。

Ryota氏:
ONE OK ROCKのベース担当Ryotaです。よろしくお願いします。


Alche株式会社代表の川大揮(以下、川)氏:
Alcheの川です。Alcheでは、Melty Island内のクリエイティブ・実装面を担当しています。


「Melty Island」のコンセプトとは

――『フォートナイト』との出会いはどのようなものでしたか。

Ryota氏:
僕が『フォートナイト』を始めたのは去年くらいからで、かなり遅めのスタートでした。だから今でもまだまだ疎い方なんです。僕自身は写真やアート、音楽が好きで、ゲームに関しては自分ではそこまでプレイする方ではありませんでした。

周囲の友人にはゲーマーが多く、みんな本当に詳しいので、自分でやるよりも彼らから話を聞くことが多かったです。そうやって少しずつみんなから学んでいくなかで、今では『フォートナイト』を毎日のように遊んでいます。


――なるほど。今まさにハマっていると。普段はどのように『フォートナイト』を遊んでいるんでしょうか。

Ryota氏:
普段は一人プレイで、海外の友達とデュオで遊ぶこともありますがまだ3人で組んだことはないです。だから、多分僕は『フォートナイト』の一番楽しい遊び方をまだわかってないと思うんですよね。今の状態でもめちゃくちゃ楽しんでますけど。

――ソロメインなんですね。そんなRyotaさんが島を作り始めたわけですが……今回の島はどのようなコンセプトで作っていますか。

Ryota氏:
『フォートナイト』を始めた頃は、すぐやられてしまっていたので、「このままじゃ楽しめない」と思い、練習場で何度も練習を重ねました。

でも、『フォートナイト』にある練習場は、どれも僕にはしっくりきませんでした。「もっと自分の好きな空間で練習できたらいいのに」と思いながらも、実際のマッチを楽しむために毎日ログインして練習を続けていました。

そんなある日、「本気の音楽とアートで彩られた、自分だけの練習用の島を作れたらどうだろう」とひらめいたんです。自分が心から好きになれる空間なら、ずっとプレイし続けられるし、ファンの人たちにも何か伝えられるかもしれない。そう思ってEpic Games Japanの河崎さんに相談したところ、「練習場だったら実現できるかもしれない」と言っていただきました。

河崎高之(以下、河崎)氏:
まずその前段階として、Ryotaさんはいつかゲームを作りたいということを熱く語られていたんです。でも、どうしたら人々に思いが届くようなゲームを作れるかなというところで具体的なことが固まらず止まっていたんですよね。そこで、『フォートナイト』だったら簡単に作れて世界中で遊んでもらえるからいいんじゃないかという流れになりました。最終的に練習場に行き着いたんです。

Ryota氏:
いろいろな案はあったもののどれも僕としてはしっくり来なくて。でも練習場でついに「これだ!」と感じたんです。

――「自分だけの練習場」というのは、良い響きですね。

Ryota氏:

音楽やアートの世界観にまでこだわった練習場は、ほかにはなかなかないと思っています。そして、この島にはもうひとつ、僕なりの大切なテーマがあります。それは、一緒に島を作っているチームメンバーたちを、もっと多くの人に知ってもらうきっかけを作ることです。

彼らとは、このプロジェクトが始まる前から、ずっといろいろなことを一緒にやってきました。僕は近くで彼らの才能を見てきたからこそ、いつかその魅力を世界中の人に届けたい、彼らが輝ける場所を作りたいと、ずっと思っていたんです。


クリエイティブ集団が作る練習場

――島プロジェクトメンバーはどのような人たちで構成されているのでしょうか。

Ryota氏:
たとえば、島の音楽をすべて担当しているシュウヤくん(Shuya Yamamoto)は、僕より10歳も年下なんですけど、ここ数年ずっと彼からベースを教わっています。

これまで世界中でたくさんの素晴らしいベーシストを見てきましたが、一番衝撃を受けたのが彼のプレイでした。そこで「曲も作ってみたら?」と提案したところ、最初に聴かせてもらった一曲目から本当に素晴らしくて。「これだけの才能があるのに、まだ多くの人に知られていないのはもったいない」と感じ、どうすればもっと彼の音楽を多くの人に届けられるのかを、ずっと考えていました。

Ryota氏:
だから、このゲームを作ると決めたとき、音楽はすべて彼に任せようと思ってオファーしました。今回のために本当にたくさんの楽曲を書き下ろしてくれて、ゲームの世界観を音楽で見事に表現してくれています。彼はまだ20代ですし、これからさらに素晴らしい音楽家になっていくと思っています。だからぜひ、このゲームをきっかけにシュウヤくんの音楽にも注目して、応援してもらえたら嬉しいです。

――ほかのメンバーについても教えてください。

Ryota氏:
アート・デザインを担当しているのは、スウェーデン人のアーティスト、エミル(Emil Öhlund)です。

彼とは4年ほど前、古着屋で偶然彼のアートを見つけたのが出会いでした。一目見た瞬間に「この人はすごい」と衝撃を受けて、すぐに連絡を取ったんです。

その後、僕自身がスウェーデンにある彼のスタジオまで会いに行き、「ぜひ一緒に仕事をしてほしい」とお願いしました。その頃は、まだゲームを作るなんて考えていなくて、まずはONE OK ROCKのジャケットやアートワークをお願いすることになりました。

初めてスタジオを訪れたときに驚いたのが、置いてあるDVDがホラー映画ばかりだったことなんです(笑)。本人も「ホラーしか観ないよ」と言っていて。でも、そんな彼が描く作品はすごく可愛い。ただ、よく見るとどこか少し不気味さもあって、そのギャップがすごく魅力的なんです。そこが、ほかのアーティストにはない彼ならではの世界観だと思っています。

もうひとり、ONE OK ROCKのステージ衣装やアルバムのアートディレクションを_手がけてくれている、じゅんじー(Junji Kumahara・STUDIO KONBINI クリエイティブディレクター)がいます。彼はまだそこまで広く知られてはいないんですけど、僕自身、これまでファッションやアートについて本当に多くのことを教わってきました。

彼にはゲーム内のコンテンツというより、このゲームを宣伝するためのアニメーション映像のようなものを作ってもらっています。じゅんじーはコンセプトや世界観を作るのが本当に得意なんです。エミルのデザインについても、「こうしたらもっと良くなるんじゃないか」とアドバイスをくれて、その一言でエミルの魅力が最大限に引き出されるんですよね。

エミル自身もじゅんじーをすごく信頼していて、「じゅんじーはどう思う?」「じゅんじーならどうする?」と自分から相談するんです。そういうやり取りを経て、作品がさらに良いものになっていくんですよ。

ONE OK ROCKのアートワークでも、コンセプトを考えたり、エミルに「こういう絵を描こう」とディレクションをしたりするのはじゅんじーの役目です。僕自身もよく彼に相談するんですが、じゅんじーの「こうしたほうがいい」という一言で、作品がぐっと良くなることが本当に多いんです。だから、このプロジェクトでも彼にはいつも通り、そういう重要な役割を担ってもらっています。

――じゅんじーさんはディレクターみたいなポジションなんですね。

Ryota氏:
じゅんじーは本業では原宿でヴィンテージショップをやっているんですけど、僕は彼のセンスをもっと多くの人に知ってほしいという思いがずっとあったんです。だから7年くらい前から、「僕の衣装をやってほしい」とお願いしていたんです。でも、そのたびに「そういうのはやらないから」と断られて(笑)。それでも諦めきれなくて、毎年のように「お願いだからやってよ!」って言い続けていました。

それが3年くらい前に、ようやく「これだけ長い付き合いだから、Ryotaのならやるよ」と引き受けてくれたんです。それ以来、ドームツアーをはじめ、僕のステージ衣装を担当してくれるようになりました。気づけば今では、メンバー4人全員の衣装をじゅんじーが担当してくれています。

――結果的に統一感が出て良いですね。

Ryota氏:
そうなんです。そこから僕らのビジュアル面の方向性がはっきり決まっていったんです。ONE OK ROCKの世界へ向けた見え方はこういう方が良い、みたいなのを彼が作り上げてくれて。そういうコンセプトを組み立てたり、見せ方を決めるのがうまいんですよね。

シュウヤ、エミル、じゅんじー、彼らはどこでなら輝けるだろう、どうしたらそういう場所を作れるんだろうと、ここ数年ずっと考えていたんです。3人ともONE OK ROCKに携わってはいるんですけど、それだけで終わらせるにはもったいない!という思いがずっとあって。もっといろいろな人に彼らの才能を届けたいという思いが去年あたりから僕の中で強くなってきたんです。

ゲームとは関係ないことを考えてみたりもしました。たとえば、彼らのための個別のエキシビションを作るのはどうかとか。でも、僕の中でそれは何かちょっと違うなと感じて。そうこうして、あるゲームに詳しい友人と話しているなかで「ゲームだったら、全員の良さを全部引き出すことができる!」と気づいたんです。彼が「『フォートナイト』ならエンジンがあるから、それを使ってRyotaがゲームを作ったらいいんじゃない?」と言ってくれて。

僕は最初、彼が何を言っているのか全然わからなかったんですけど(笑)でも『フォートナイト』っていうタイトルは聞いたことがあったから、自分でプレイしてみて島を見ているうちに、「これってクリエイターが、エンジンを使って自分の伝えたいことや世界観をゲームにして表現しているんだ!作れるんだ!」とわかってきた。

それまでは、ゲームってそんなに気軽に作れるものだとは思っていなかったんです。ゲームは大企業が何年もかけて作るもの、というイメージがあったので。でも、『フォートナイト』を通して、「今は誰でもゲームを作れる時代なんだ」と知りました。その瞬間に、「ここにはものすごい可能性がある」と感じたんです。ここなら、シュウヤの音楽も、エミルのデザインも、じゅんじーのセンスも、全部ひとつの作品として表現できる。そう思いました。

その頃には僕自身、『フォートナイト』にすっかりハマっていて(笑)。「こんなツールがあるならゲームを作れるじゃん!」「これは最強だ、めちゃくちゃゲームを作りたい!」という気持ちがどんどん大きくなっていって、そこで河崎さんを紹介してもらいました。

――そこで具体的に何をしたいか話しはじめた、と。

Ryota氏:
河崎さんが、『フォートナイト』では何ができるかを細かく教えてくれました。そこでレーシングゲームなどのいろいろな案が出てきたんですけど、なんか違うなということで一旦持ち帰って家で改めてゲームをプレイしながら考えたんですよね。練習場でプレイしながら「3人にとって一番良いのはなんだろう?」と考えていたら「あ、練習場だ」と。

彼らと一緒に練習場を作ったら、僕が彼らのアートや音楽を楽しむことができて、しかもちゃんと練習をして自分がうまくなれる場所にできるなと思って。だから、これは本当に僕が僕のために作りたいゲームなんですよね。このプロジェクトに関しては、まず僕自身が心から作りたいものを作る、ということを大事にしています。ここは河崎さんにもはじめに言われたんです。そこのコンセプトだけはブレたらダメだよ、と。僕自身がこの先ずっと愛せる島を作ろうっていうコンセプト。そうしたら、この島は僕が好きなものしか詰まっていないものになるから。

僕の大好きなシュウヤくんの音楽と、一個一個エミルがデザインしてくれたものと。これから、配信していくための映像も作っていく予定なんですけど、好きなものが詰まっていて僕も楽しみです。僕が作りたい島を作れて良かったなと思っているところです。それに、これから『フォートナイト』を始める人がこの島で練習してもらえたら、ちゃんとうまくもなれると思います。

――Alcheさんはどのあたりをサポートしていますか。

川氏:
おもにゲーム内コンテンツのクリエイティブと実装部分ですね。エミルさんからコンセプトアートと「こういう場所や物を作りたい」というイメージをいただいて、それを空間に落とし込んでいきます。エミルさんのキャラクターはもとが2Dですがそれを3D化したりもしています。

――練習場として機能しないといけないので、レベルデザイン部分も頑張らないといけないわけですよね。

川氏:
そうですね。エミルさんのアートの世界観と、ゲームとしての面白さ、レベルデザインを両立する必要がありました。

――河崎さんがAlcheさんをご紹介されたのでしょうか。

河崎氏:
Ryotaさんとお話して開発をできるところを見つけないといけないということで、アート、音楽に対する適性や人柄なども考えてAlcheさんしかいないだろうと思いました。

――AlcheさんはRyotaさんのプロジェクトと聞いてびっくりされたのでは。

川氏:
びっくりしました(笑)それにめちゃくちゃ嬉しかったです。

Ryota氏:
大揮くんも、僕らやチームのみんなとすぐに打ち解けてくれて、本当に嬉しかったです。僕はもともと、「メンバー同士が仲良くないと、本当に良いものは作れない」と思っているんです。それはバンドも同じで、仲が良くなかったら、絶対に良い音楽は作れないと思っています。僕ら4人も本当に仲が良いんですよね。

今回、Alcheのみなさんと一緒にやることが決まったときも、「まずは仲良くならないと!」と思って、すぐにみんなを家に呼んで、お互いにコミュニケーションを取ってもらいました。そうしたら、みんな本当にすぐ打ち解けてくれて。

川氏:
みなさん本当に素敵な方なんです。お互いにリスペクトを持って接しているし、「こういうのが良いんじゃない?」というのも言ってくださるし、そうすると僕らももっともっと頑張ろうって思える。

そこが対等で、できたものを喜んでくれるのがチームのモチベーションに繋がっていて。「あの人が喜んでくれる!」と思うとそれがやる気になって、頼まれていないこともどんどんやっちゃおうって。Ryotaさんの仰っていた仲の良さというのも、そういうリスペクトみたいなもので、これはクリエイティブを作っていくうえですごく大切だと僕らも思っています。

Ryota氏:
ほんの数ヶ月前にエミルのアートがゲームに落とし込まれて今くらいのクオリティになって、みんなでプレイしてびっくりしたんです。こんなの作れるんだ!と。事前には、エミルのアートをゲームで完全に再現するのは難しいのかなと思っていたんです。レコーディングスタジオでみんなでプレイして、予想に反したハイクオリティに「あれ……?Alcheチーム、本気中の本気じゃない?」って(笑)それで僕らの方のテンションも上がって、今はそこからさらに良くなってきているところなんです。


「Melty Island」の歩き方

――この島にもいろいろなバリエーションがありますね。

Ryota氏:
そうですね。島によってデザインも変わっています。たとえばここはデザイナーエミルの世界観がよくわかる場所になっていると思います。僕以外の子たちの方がゲーマーなので、自分の好きなゲームの中で自分を表現したり、自分の好きなものを見られるということ自体に相当興奮していると思います(笑)

――それでいて練習実践の場にもできる、と。

Ryota氏:
めちゃくちゃ練習になると思いますね。いろいろな練習場に行ったことがあって、それぞれで少しずつ上達はしたと思うんですけど、その中でもこの島は相当練習になると思うし、その上でいろいろな要素を楽しめると思いますよ。エミルのデザインしたオリジナルのキャラクターとか。こういうちょっとカラフルで可愛い世界観もエミルのセンスによるものなんです。僕の家はもうエミルのアートだらけ。

それに、プレイしていて『フォートナイト』って音楽にもフォーカスされている作品だなと思ったんです。『フォートナイト』自体がオシャレなので、ファッションにもアンテナを張っているプレイヤーが多いんじゃないかと思います。だから、そういう人たちにもこの島を気に入ってもらえる要素はたくさん詰まっていると思います。

――アートやファッション、音楽などが好きなプレイヤーはこの島をどのように楽しむのがオススメですか。

Ryota氏:
この島自体がめちゃくちゃ広くて、練習をしても良いし探索・散策をしてもいいように作られています。ただ歩いているだけでも楽しめる空間になっていると思いますよ。たとえば、音楽は今回11曲作ってもらっていてどんどん切り替えることができるし、そのうち3曲はSennaRin、星熊南巫、Stand Atlanticといったアーティストの方々に歌ってもらっています。

そういうアーティストたちに、どんどん歌ってほしいなと思うんですよ。みんな事務所に入ったりして大変ななか、このプロジェクトのことを聞いて「ぜひ何かやらせてほしい!」とサポートしてくれてありがたかった。プレイヤーの方にも楽しんでほしいです。

動画挿入

――練習場としてはどのような仕掛けがありますか。

川氏:
この練習場では、実際の『フォートナイト』のバトロワで戦っているような体験ができる場所にしたいと思いました。そのためNPCや敵キャラの強さを高めに設定しています。

Ryota氏:
ホント、難しいですよ……!

――(笑)

Ryota氏:
僕の場合、練習場では結構倒せて「俺、うまくなったかも」と思うのに、実戦に行くとすぐにやられてしまうことが多かったんです。本当にうまくなるには、もうちょっと難しい練習場が必要だと思って。だから最初に大揮くんに「コンピューターの強さなんだけど、ホントに難しくして」って頼んだんです。本当にうまくなりたいから!って。

……そしたら、今ちょっと難しくなりすぎて(笑)

――(笑)

川氏:
ほかの練習場は既存のNPCをそのまま使っているマップが多いんですけど、この島ではそれをちょっとカスタマイズして、より実戦に近い配置や登場方法にしたり。何回も試行錯誤して実装を変えて、というかたちですね。

――NPCカスタマイズはどういう挙動の変化を入れていますか。

川氏:
より攻撃的に変えていますね。基本バトロワでは人間のプレイヤーは遠くから狙ってくることが多いので、NPCにも遠くから射撃をさせたりとか。プレイヤーが危機感をおぼえる状況を作り出すことが大切だと思っています。既存のNPCをそのまま使うと、割と近くまで寄ってきてようやく攻撃するような挙動をするんです。でも実戦前提だと、遠くから狙われている怖さとかが非常に重要だと思って、そのあたりをカスタマイズしていますね。

社内でたくさんテストプレイをして「こういうパターンができたらいいのではないか」という案を出しつつ、武器なども変更しています。遮蔽物の上から狙ってくるNPCもいたりと、遠くから撃ってくるNPCの登場する高さにもバリエーションを与えていますね。

――人間らしくちゃんと陰湿なことをしてくる、と。

川氏:
そうですね(笑)

Ryota氏:
前はもっといっぺんに集まってくる感じだったのが、今はまばらな感じになっていますね。

川氏:
はい、そこもNPCが増えすぎてしまうと囲まれてボコボコにされるような感じになってしまって、それはそれでバトロワと違うな、と思うので。出てくる頻度のバランス調整もしていますね。

Ryota氏:
NPCがいっぺんに10人くらいブワーっと出てくると、じっくり撃ち合いの練習をするのが難しいなと思ったんですよ。だからこの点だけは大揮くんに強めに訴えましたね。なるべく1対1で戦えるようにしてほしい、と。

――そこはプレイヤーならではの目線ですね。

Ryota氏:
この練習場を使ってちゃんと自分がうまくなれないといけないと思って。それに、僕の周囲の音楽関係の人たちの中には『フォートナイト』をまだやっていない人もいっぱいいると思うので、そういう人たちが楽しく練習してうまくなる空間にできたらいいなと思っています。これだったら楽しんでプレイしてくれそうな感じがするんですよね。

川氏:
『フォートナイト』のマップってそれぞれのエリアにちょっとずつ隠し要素があったりするんですけど、そういうのも取り入れていますね。「こんなところもあるんだ」という発見の体験をたくさんしてほしいと思っています。今回は音楽も特にこだわっていきたいところなので、たくさんの音楽を用意してそれぞれの楽曲を切り替えたり楽曲名を知ることのできる場所を設置したりしています。


Alcheが引き出したポテンシャル

――バンドのアート・デザインなどバンドメンバーが主体的に決めているんですね。

Ryota氏:
僕らは自分たちで決めたいタイプなので。最初からエミルたちをONE OK ROCKに絡めるつもりはなかったんですけど、メンバーがじゅんじーのセンスやエミルのデザインを好きと言ってくれたので、じゃあまずはバンドと彼らをコラボさせてみようというのが発端でした。

――バンドメンバー間で誰かが興味を持っているものには別の人も乗っかっていくことがありますか。

Ryota氏:
基本的にメンバーが興味を持っているものは互いに共有しあいますね。

――ONE OK ROCK、めっちゃ仲良しですね。

Ryota氏:
でもこの島に関してはまだ言えてないんですよ。言おう言おうと思っていたんだけどタイミングがなくて。先月長いツアーが終わったときに、作っているということだけは伝えようかと思ったんですけど、そこでもちょっとタイミングがなくて。ツアーが終わったら終わったで、バラバラになるのでまた言うタイミングを逃していて(笑)

川氏:
これを口だけで説明するのは難しいですし、「『フォートナイト』でゲーム作ってみた」とだけ言っても、ちょっと理解はされない気がしますね(笑)

Ryota氏:
こういうことができること自体を知る機会がない。とはいえ、このクオリティはAlcheだからこそだと思う。

作ったメンバーと「本当にAlcheで良かったね~」って話してました。

Alcheが一番、音楽やアートを理解してくれる開発チームだと思っているので。最初にこの部屋でお会いして、「僕らがこれまでに作ったゲームはこんな感じです」と見せてもらったときに、「あ、絶対ここだ!」と思ったんです。めちゃくちゃオシャレで音楽も良くて、この人たちに任せたら僕が作りたい世界観の島を作れると確信して、すぐに「お願いします」って言いました。

川氏:
そんなにすぐに決めていいんですか?と思いましたが(笑)

――Alcheさんは世界をまるごと作ることにこだわりがあるように感じますね。

川氏:
世界観というものが好きで、世界観があるものを人々に届けたいという思いが強いです。エミルさんにも独特の世界観があって、そこに良い楽曲も乗せられるチームなので、それをなんとか形にしたいと。もちろん仕事としてやってはいるのですが、僕がそもそもそういうことが好きでやっているので、そこの相性が良かったんじゃないかなと思います。

ゲームを作るときってあらかじめガチガチに仕様を決めてから始めていく会社が多いんじゃないかと思いますけど、Alcheではいろいろ話しながら作っていくスタイルです。

――普通の会社だと要件定義から始めましょう、となりそうです。

Ryota氏:
実際、最初の頃は全然まとまらなかったですもんね。

川氏:
河崎さんのサポートあってこそです。

Ryota氏:
作っているうちに「こういうこともできるんだ」という発見が出てきて、それにともなって変えたいところも増えていったので「それができるなら、こうしたい」と言いまくった時期がありました(笑)そのときも河崎さんがストッパーとして入ってくれた。「もうダメ」と。

――(笑)

Ryota氏:
Ryota、一回黙らないとダメだよ、ここで一旦進めないともうキリがなくなっちゃうから、と。それで一回黙りました(笑)今後、これがきっかけでいろんな方々から依頼される可能性ありますね。

川氏:
ゲームを作りたいと思ったときに、どこに頼めばいいかがわからない人も多いと思うんです。特に自分の世界観で作りたいって思っている人も結構いるだろうし、そのなかには諦めている人も多いんじゃないかな。

Ryota氏:
僕はたまたま河崎さんがそばにいたから「Ryotaが作りたい世界はAlcheがやってくれるよ」って言ってもらえたけれど、ほかの方が自分も作りたいと考えたときにどこに頼めばいいかわからなくなると思う。そんななか、「こういうものが作りたいならAlcheだよ」というイメージを確立できたら選ばれやすいですよね。


もう一つの夢

――Ryotaさんの、自分よりチームメンバーに輝いてほしいという思いが良いなと思いました。島も、自己表現の場というより、人に表現してもらう場、と。

Ryota氏:
僕よりもまわりの若い子たちが才能を発揮できる場所にしたいんですよね。お仕事のレコーディングとかももちろん楽しいんですよ。みんなすごいプレイヤーなんです。でもそういう場面には、各々が全部の力を出せる機会というのはなかなかないんですよね。だからこそ、この島プロジェクトに関しては、ドラマーならドラム、ギタリストならギターの今持てる全部を出して、好きなように楽しんでやってほしいんです。みんなが全力を出せる空間を作りたいんですよね。

――今回の島プロジェクトのほかにも、その志に根ざした「やりたいこと」の展望はありますか。

Ryota氏:
僕の夢は、エミルのアートにある世界観を現実世界でも表現することなんです。いつかどこか広い敷地を借りて、そこでエミルのエキシビションができたら良いなと思っています。今回『フォートナイト』で実現した世界観を現実の空間で楽しんでもらいたい。実は、今年の1月に表参道でエキシビションをやる予定を進行させていて、アートも60点くらい作ってもらっていたんですけど、やっぱり先にゲームを作ろうってことで12月に急遽全部止めました。ゲームのあとにリアルなエキシビションをやろう、と。それで彼ら自身が有名になってきたら、各々羽ばたいてくださいって感じで。

僕個人としては、バンドとして世界も見せてもらっていろいろな経験もさせてもらいましたから、本当に満たされているんです。バンドとしてこれからも目指すべきことはあるので、それに向かってただやっていくだけ。でも若くて、まだ埋もれている才能のある子たちがいっぱいいるので、その人たちが少しでも輝ける場所が本当に必要だなとここ数年思っていました。そういう場所のひとつとしてこの島を作れたのは良かったなと思っています。

――最後にひとことメッセージをお願いします。

川氏:
ゲームで培われてきた技術ってもっといろいろなことができるのに知られていない、もっと多くの人に伝わったら良いなと思うことがあるんです。『フォートナイト』の中でできることとできないことは当然ありますけど、ゲームという大きな枠組みではやれることはたくさんあると思うんです。世界中のみなさん、とくにこれまでゲームをやったことがない人たちが、こんなことができるんだとかこういう世界があるんだという発見をしてくれたら良いなと思っています。楽しみながら、その人の世界が広がるような体験を届けられたら嬉しいです。

Ryota氏:
僕が一生プレイしたいと思えるくらい、本気で「自分が作りたいものを作る」という軸だけは、絶対にブレさせちゃいけないと思っています。これから最終調整で細かい部分は変わっていくと思うんですけど、その中で少しでも「なんか違うな」と感じるものがあると、自分自身が遊ばなくなってしまう。それが一番ダメなんですよね。もちろん、これから遊んでくれる人たちのことも大事です。でも、まずはほかの誰も遊ばなくても、自分だけは絶対にプレイし続けたいと思える島を作らないといけない。それが結果的に、たくさんの人に「ずっと遊びたい」と思ってもらえる場所になったら嬉しいです。

――ありがとうございました。

■Alcheについて


Alcheは、ゲーム空間を舞台に、音楽ライブやイベントをはじめとするエンターテインメント体験を生み出す企業です。
世界中の人々が同じ場所に集い、一度きりの熱狂が生まれる最高の瞬間を、企画から、演出、開発、運営まで一貫して手がけています。
フォートナイトをはじめとするゲーム空間での興行を通じて、これまで会場に足を運べる人々に限られてきたその場に居合わせる体験を、世界中のどこからでも分かち合えるものにすることを目指しています。

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