『フォートナイト』ユーザー制作コンテンツを「UEFN」で作り儲ける人続々。それ向けの採用をする国内企業も続出

 

フォートナイト』内でコンテンツを作るクリエイティブモードが、急速な発展を見せている。本作に向けては、コンテンツ制作ツール「Unreal Editor for Fortnite」(以下、UEFN)が配信され、ユーザー制作コンテンツによる収益規模も拡大中。“『フォートナイト』内ゲーム”を作れる人材が、企業から求められているのだ。


『フォートナイト』には、プレイヤーたちがクリエイターとなり、「島」と呼ばれる独自のカスタムコンテンツを開発・共有できる機能がある。今年3月には「UEFN」が配信され、Unreal Engineの本格的な機能や開発ワークフローを利用して『フォートナイト』カスタムコンテンツを開発できるようになった。

UEFNの配信後、その開発自由度を活かしたさまざまなゲーム内ゲーム(島)が『フォートナイト』内で登場。アクションRPGやパズルを盛り込んだ脱出ADVなどが開発され、国内デベロッパーのヒストリアが『フォートナイト』内ゲーム作品の制作に乗り出すなどの動きもあった(関連記事)。また、Epic Games側はプレイヤーに人気の島を作ったクリエイターへは、収益を配当。UEFN配信前からそうした仕組みはあったものの、『フォートナイト』内のコンテンツ作りでクリエイターが売上を立てられる仕組みの整備を引き続き続けている。

そんな『フォートナイト』内ゲームクリエイターがいま、人材としても求められているようだ。前述のヒストリアの代表である佐々木瞬氏は7月7日、自身のTwitterアカウント上で「UEFNクリエイター」の求人募集ツイートを投稿した。つまり、『フォートナイト』内でUEFNを活用しコンテンツを作ることに特化した人材を求めているわけだ。応募条件としては2種類あり、「Unreal Engineでの開発経験」もしくは「『フォートナイト』のプレイ経験」を問う内容となっている。いずれの場合でも、UEFNの使用経験は必要となるそうだ。

ヒストリアがこうした求人を出したのは、新たに「UEFNの開発チーム」を立ち上げるためだという。佐々木氏自身も「まさか、フォートナイトクリエイティブで求人を出すことになるとは」と語っており、『フォートナイト』内コンテンツ開発にフォーカスしたチーム立ち上げや求人はかなり異例といえるだろう。

*『MIMIZU』、「どこまで本格ボスバトルを作れるか」をテーマとして開発されたという


ヒストリアは今年6月にも、同社UEFNタイトル第2弾となる『MIMIZU』を公開している。同社がこうして継続して作品展開し、今回新たにチームを立ち上げるということは「『フォートナイト』内ゲーム開発」が軌道に乗っている、あるいは可能性のある面白い事業と捉えられていると考えてよいだろう。『フォートナイト』内コンテンツ開発でクリエイターたちが受け取る収益が大規模化していることは、Epic Gamesからも明かされている。

Epic Gamesが今年5月末(日本時間)に発表した内容によると、「クリエイターエコノミー2.0」と呼ばれるクリエイターへの収益整備の取り組みによって、収益配当額が大幅に上昇しているという。同年3月には多くのクリエイターにとって収益が上昇し、エンゲージメント配当を通じての収益が従来と比較して平均5.2倍になったという。4月にも配当方式の調整がおこなわれ、前月比にして1.45倍以上の支払額が増加したとされた。

さらに、4月分のクリエイター配当額をもとに年間の収益を概算すると、上図のような分布になるという。年間10万ドル(約1400万円)を受け取るクリエイターだけでも、220人になる計算。さらにトップクラスのクリエイターに目を向ければ、年間100万ドル(約1億4000万円)を受け取る者が43人。さらに上を見れば、5人のクリエイターが1000万ドル(約14億円)の配当を受け取ることになるという。会社の事業として遜色ない配当規模となっているわけだ。こうした収益規模の増大も、企業参入の一因だろう。

そうした流れを受けてか、ほかにも『フォートナイト』内クリエイターへの企業によるアプローチの例は増えてきている。たとえば、GameWithも『フォートナイト』およびUEFNでのマップ制作担当者募集として求人を実施。株式会社NEIGHBORと人気クリエイターの山吹いろ氏が専属契約を交わすなどの動きもあった。また、新たに『フォートナイト』に特化したUEFNによるメタバース空間制作サービスを立ち上げた、株式会社playknotの例もある。『フォートナイト』クリエイティブモードを巡っては、ゲーム開発に限らない業態で事業が展開されている。その分UEFN経験人材の需要も高まっていくことだろう。

なお、UEFNは無料で利用可能となっている。『フォートナイト』のエコシステムを借りつつ、ゲーム体験を開発・共有できるわけだ。また、普段から『フォートナイト』に触れている層のユーザーなどにとって、気軽に手を出しやすい開発環境でもあるだろう。ゲーム作りのキャリアを踏み出す第一歩として、「UEFN開発者」が有力となる時代も来るかもしれない。

「Unreal Editor For Fortnite」はPC(Epic Gamesストア)向けに、現在配信中だ。