サバイバルホラー『ソング オブ ホラー』試遊レポート。一度捕まったキャラは戻ってこない、背筋がぞくぞくする恐怖体験

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『ソング オブ ホラー』は、スペイン・マドリードを拠点に活動するProtocol Gamesによって開発されたホラーアドベンチャーだ。固定カメラ視点で探索するクラシカルなゲーム画面の中、高度なAIによってプレイヤーの動きに対応してくる「それ」と呼ばれる未知の存在から逃げつつ謎を明かしていく。これまで海外向けに販売されていた本作だが、8月26日にDMM GAMESから待望の日本語版が発売される。

本稿では、DMM GAMESより「ソング オブ ホラー シ遊会」と銘打たれた、非常にユニークな試遊会に招待頂いたので、その模様をレポートする。なお、本試遊会は厳重な感染症対策のもとでおこなわれた。消毒や検温はもちろん、メディアごとの入れ替え制によるソーシャルディスタンスの確保が徹底されていた。


一般的なゲームの試遊会は、オフィスの会議室などでおこなわれることが多い。だが、今回おこなわれた “シ遊会”は、地下に設けられた撮影スタジオのような場所が会場となっており、試遊会場というよりは犯罪組織のアジトのような雰囲気を持っていた。こんな試遊会もあるのかと思いつつ、ゲーム概要や操作に関する説明を受け、「ではどうぞ」と通されたのは、古ぼけた救急車だった。誤字ではない。救急車を模したバンの内部に試遊スペースが設けられていたのだ。「いってらっしゃい~」とにこやかにバックドアが閉められ、真っ暗な状態で『ソング オブ ホラー』と向き合うこととなった。筆者がホラーゲームをプレイする際は部屋の電気を付けて誰かと通話することを心がけているというのは置いておこう。



細部の見えない恐怖

本作の物語は、ある歴史小説家が家族ごと行方不明となり、彼を探しに行った者も戻ってこず、彼らの行方を追うという状況から開始する。今回の試遊で触れた「エピソード1」では、行方不明となった歴史小説家セバスチャン・P・ハッシャーの邸宅の探索が主な目的となる。

エピソードごとに複数のプレイアブルキャラクターが定められており、自由に選んで開始することができる。キャラクターによって持ち物や能力値などが変わってくるようだ。筆者の選択した「エティエンヌ・バートランド」はライターを光源として、暗いハッシャー邸を探索することになるが、オイルが切れかかっているのか、何度かヤスリを押し付けないと着火しない。操作に慣れない間は誤って消してしまうことが何度もあり、その度に真っ暗な画面からそこはかとない不安を感じた。


ライターを付けていないとまともに探索できないほどの暗さの中では、細部が見えにくい。全体を把握させない画面づくりは、見えない空間のすべてを恐怖の対象に置き換える。歩くたびに軋む床や、恐ろしさを助長する音楽は、頼りないライターの光に浮かぶ邸宅の様子が全体の一部分でしかないことを明確に知らせてくる。ヘッドホンを付けて真っ暗闇の中でプレイしていると、否が応でも手汗が滲んでくる。

「かもしれない」アイテムたち

ハッシャー邸をしばらく歩いていると、インタラクトできるオブジェクトに溢れていることに驚かされる。手紙や写真立てといったオーソドックスなものはもちろんだが、果物のオブジェやレコード、書物といった、入り組んだハッシャー邸に所狭しと並べられた数多のものを調べることができる。試遊前の説明で、物語を進める大まかなルートを教えてもらえていなければ、約30分の試遊時間内にまったくゲームが進まないなんてこともありえるほど、濃密なデザインになっていた。


アイテムの一部は拾うことができる。それらを組み合わせて状況を打開する謎解き要素も用意されている。試遊の中では、キッチンで拾った油を使って錆びついた引き出しを開け、マスターキーを手に入れるという仕掛けがあった。それ以外にもマッチ箱や指輪といった、明らかにどこかで使えそうなものも拾うことができた。また、手紙や張り紙も、知っておくと後で良いことがありそうな内容が書かれている。「何か役に立つかもしれないな」と思いながら探索していく感覚は楽しい。

謎に包まれた「それ」

そしていよいよ「それ」と呼ばれる謎の存在と相対することとなる。「それ」が隣の部屋にいるかどうかを調べるために、ドアの前では聞き耳を立てることができる。ドアに身体を寄せ、何かが蠢くような生理的嫌悪感を誘う音がしたら、恐らくその先には「それ」がいる。常に警戒しつつ探索をおこなう必要がある。明らかに「それ」がいないドアには聞き耳を立てるコマンドが表示されないようにもなっているので親切だ。

ドアに関わるアクションには、コントローラーの振動機能が効果的に使われていたのが印象的だ。ドアを開けるガチャリという音と共に重みを持って振動すると緊張感が走る。また、聞き耳を立てている間はキャラクターの脈打つ鼓動がヘッドホンとコントローラーを通じてダイレクトに伝わってくる感覚は、背筋がぞくぞくする。


さらに、ドアから侵入してこようとする「それ」を押さえ込むというイベントにも遭遇した。これはQTEのような操作が求められ、PS4コントローラーの○ボタンを連打してドアを押さえつつ、ドアが閉まりそうな段階でR2ボタンを押すというもの。ただの連打だけではなく、R2で閉めるという、キャラクターのアクションによってボタンを分けるQTEだ。これは、『HEAVY RAIN -心の軋むとき-』をはじめとするQuantic Dreamが手掛けるタイトルのQTEに近いような、プレイヤーがボタンを押す感覚とキャラクターが起こす行動に繋がりを感じるものであり、没入感を高めてくれる。

しばらく遊んでいると、筆者はうっかり聞き耳を立てずにドアを開けてしまい、操作していたエティエンヌは「それ」に飲み込まれるように死んでしまった。本作のキャッチコピー「見つかったら、終わり」という言葉の通り、本作は死んだキャラクターを再度使うことはできない。別のキャラクターを選択し、再びハッシャー邸に向かうことになる。次に選択したキャラクターで前回死んだ場所に行けば、エティエンヌを操作していた際に得たアイテムは取り戻せる。


次のキャラクターを選択していると、ヘッドホン越しにバシバシと試遊スペースである車両のドアを叩く音がする。ギョッとして振り向くと、起き上がった死体のような装いの2人が、こちらを威嚇するようにドアを叩いていた。


この救急車を模したバンは、「デリバリーお化け屋敷」を運営するホラーイベント制作会社「怖がらせ隊」のもので、これを利用したシ遊会だったわけだ。ビックリ系ホラーに弱い筆者の心臓のBPMは最高潮に達していた。DMM GAMESの担当者がニヤニヤしながらこちらを見ているのがニクイ。

冒頭で触れたように、本作はクラシカルな3Dホラーアドベンチャーをベースとしている。固定された視点で探索や謎解きをおこないつつ、迫りくる恐怖から生き残るゲームプレイは、『バイオハザード』や、『サイレントヒル』といった古くから親しまれてきたホラーゲームを彷彿とさせる。愛すべき古典的なゲームプレイを現代の美しいグラフィックとサウンドによる表現で彩ったのが、『ソング オブ ホラー』である。

今回の試遊では触れることができなかったが、複数のキャラクターによる多角的なストーリー体験や、高度なAIによる自分だけのプレイ体験は、リプレイ性とユニーク性という面でも注目したい。試遊内で見た限りでは、謎解きや世界観を紐解く鍵となるテキストの日本語は非常に綺麗で、ローカライズに関しては安心して良さそうだ。

ハッシャー邸から帰還した筆者もこの笑顔


ソング オブ ホラー』はPlayStation 4/Xbox One/PC(DMM GAME PLAYER)向けに、8月26日発売予定だ。今年も暑い夏になりそうだが、ホラーゲームでヒヤっとしてみては如何だろうか。

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