ゲーム開発者が“怪しいパブリッシャー”に注意喚起。「完成度高い」と褒めてきたのにSteamキーは未使用、有料移植サービスまで吹っ掛けられたとして

とある開発者は、悪意のあるパブリッシャーによって「迷惑」を被ったとしてその内容を伝え、注意を呼びかけている。

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海外掲示板Redditのゲーム開発者向けコミュニティ「r/gamedev」にて、とある開発者の報告が注目を集めている。悪意のあるパブリッシャーによって「迷惑」を被ったとしてその内容を伝え、注意を呼びかけている。

発端となるポストを投稿したBeyondAffinity氏は、SurvivalTaktixの名義で活動する個人開発者だ。ダイスを軸にしたデッキ構築型ローグライト『Seferia Matrix』を現在開発中であり、11月10日にSteamで発売予定としている。

そんなBeyondAffinity氏のもとに、パブリッシャー企業のRedDeer.Games(以下、RedDeer)から、Switch向けのパブリッシングを打診するEメールが届いたという。オファー内容は、前払い金ゼロ、移植・品質保証・認証費用は同社が負担し、ニンテンドーeショップの収益から約1万ドル(約158万円)を回収後、残りは51対49でデベロッパー有利の分配になる契約だったそうだ。電話ののち書面で内容がまとめられ、BeyondAffinity氏は非常に魅力的なオファーに感じたという。

契約の前段階として、まずBeyondAffinity氏はRedDeerに対し、秘密保持契約(NDA)締結のための詳細な情報、技術面のアンケート、そしてパブリッシャーがゲームをテストするためのSteamキーを5つ送信したという。Steamキーの送付から2時間後、RedDeerから「キーは移植および評価チームに渡され、ビルドのテストが開始される」という連絡が送られてきたそうだ。

『Seferia Matrix』

そしてそれから3日後、RedDeerから、同社のシニアゲームプロデューサーが「包括的なレビュー」をおこなったとする連絡が送られ、技術リーダーたちは「プロジェクトの完成度の高さと最適化ぶりに感銘を受けていた」と纏められていたそうだ。ただし、その称賛の内容は、BeyondAffinity氏が以前送ったアンケートの説明とまったく同じだったという。

そして、同メールではRedDeerが以前提案していたパブリッシング契約は撤回され、代わりに固定料金で移植サービスを提供することが提案されていたという。その理由として、すでに同社のラインナップがいっぱいでジャンルのバランスも取れているからと伝えられたそうだ。BeyondAffinity氏はどうすればパブリッシングの判断が変わるのか尋ねたところ、RedDeerは発売後の売上目標を示し、一定の実績を達成すれば協議を再開すると回答したという。

この交渉に落胆したBeyondAffinity氏は、RedDeerに送付したSteamキーをすべて無効化することに決めたという。Steamキーについては、開発者はSteamworksの「Steamキーの禁止または無効化」ツールから発行したSteamキーを自在に無効化することができる。そのツールで同氏がSteamキーを無効化したところ、興味深いことが判明したそうだ。送付した5つのSteamキーのうち、有効化されたキーが1つもなかったのだという。したがってプレイテストやビルドテストもおこなわれていないとみられ、「包括的なレビュー」や技術者の称賛とは一体何だったのかと同氏は疑問を投げかけている。

BeyondAffinity氏は、こうした対応をおこなったRedDeerへの直接的な評価は避けたものの、「BANリストには入れた」とのこと。なお、同氏は交渉時の段階から、設計ドキュメントは秘密保持契約の対象とし、ソースコードへのアクセスも正式な契約後に限定していたため、機密情報が漏れることはなかったそうだ。「実害」ではなく「迷惑」で済んだ理由はそこにあると同氏は語っている。

BeyondAffinity氏は、届いたEメールは洗練されており、条件ももっともらしく、どの段階においても一般的なパブリッシング交渉のように感じられたと語る。そのため、もし同じようなやりとりが他の開発者の身にも起きたら、受け渡したSteamキーのアクティベーション履歴を照合して、本当にゲームを分析したうえでの評価なのか検証することを同氏は勧めている。また同氏は、依頼していないパブリッシング契約を持ちかけ、すぐに有料サービスの見積もりにつなげるのはよくある販売パターンだといい、そのサービス料が適切かどうかは、インディーゲーム向けの移植スタジオの見積もりと比較して決めることを推奨している。

なお、今回注目を集めたRedDeerは、主にSwitch向けにパブリッシング業務をおこなうポーランドのパブリッシャーだが、その販売手法を巡っては批判の声も寄せられてきた。ニンテンドーeショップにおける露出をねらってか、同社の作品では収録されるDLCの組み合わせを変えてバンドルを量産するケースが散見された。2023年発売の『Hentai Girls』では「究極版」や「スペシャル版」「決定版」「伝説版」「ディレクターズカット」「ゲーム・オブ・ザ・イヤー エディション」「すごいエディション」「壮大エディション」「すばらしいエディション」などが展開されていた(関連記事)。

同作はその後、バンドル版は「完全版+」のみを残しその他は自主的に配信停止したものの、こうした手法は任天堂内でも問題視されたのか、Nintendo Switch 2のニンテンドーeショップにおいては、2025年7月にバンドル販売に関するガイドラインを更新し、最初の1年間でセットにできるバンドルは最大5種類までとなる規定が加えられた(関連記事)。RedDeerはそうしたお騒がせパブリッシャーという一面も見受けられていたわけだ。今回のRedDeerの対応についても、Redditユーザーからは批判の声が寄せられている。また、当初のパブリッシング契約の「51対49」という分配についても、「すでに完成しているゲームに対して取りすぎだ」と批判するコメントもみられた。

今回の報告はあくまで開発者側の視点で状況が語られているため、実際にRedDeer側が悪意を持って接触してきたのかは不明ではあるものの、パブリッシャーとデベロッパーの間でトラブルが生じることは珍しくはない(関連記事)。一度パブリッシャーと契約を交わしてしまうと、後からその条件を変更するのは基本的に難しい。設計ドキュメントやソースコードを契約で守秘していたBeyondAffinity氏のように、パブリッシャーとの契約には、署名時はもちろん、署名前から慎重を期した対応が重要といえるだろう。

『Seferia Matrix』はPC(Steam)向けに11月10日に発売予定だ。ゲーム内の日本語表記にも対応予定で、現在デモ版も用意されている。

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Kousetsu Taguchi
Kousetsu Taguchi

レトロゲームショップに入ると真っ先にセガサターンのコーナーを確認するタイプです。

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