『レインボーシックス シージ』公式キャスターが今だから語れる“シージの負の歴史”。バランス破綻ぎみな「ラスト20秒問題」や『シージX』の苦戦など、当時の不安全部ぶっちゃける

eスポーツキャスター山野智三が、『レインボーシックス シージ』の波瀾万丈な歴史を振り返る。

2025年6月。タクティカルシューター『レインボーシックス シージ』(以下、R6S)は『レインボーシックス シージ エックス』(以下、シージX)という名を冠して、生まれ変わることになった。

グラフィックが一新され、「デュアルフロント」という全く新しいゲームモードが追加。基本プレイ無料で配信されることも発表された。一足先にアトランタで開催された『シージX』のお披露目には私も参加させていただいた。

この満面の笑顔を見ていただきたい。いかに、新しく始まる『R6S』の歴史に胸を躍らせていたか、を。

しかし、『シージX』によって再びプレイヤーが増えたといえば、そうはならなかった。改めてSteamのアクティブユーザー数の推移を確認したい。

2025年6月のアクティブユーザー数は15万人ほど。20万人という最高記録を更新することはなかった。『シージX』で基本プレイ無料になったにもかかわらずだ。そして、このことが既存ユーザーの不満を爆発させることに繋がっていく。

『R6S』コミュニティに一本のポストが投じられた。

発信したのは、Spoit。スウェーデン出身の現役プロ選手で、現在はShopify Rebellionに所属している。

その圧倒的なエイム精度と反応速度から、多くのプロやファンが「史上最高クラスのスキルを持つプレイヤー」と評する人物だ。同時に大きな影響力を持つTwitchストリーマーでもある。

彼が2025年9月にXに投じた『R6S』への不満投稿。「#SaveSiege」と名付けられた文書があっという間に『R6S』コミュニティに広がっていく。

その内容は多岐にわたる。チートへの対策強化(24時間体制の監視設置など)。ACOG(倍率)スコープの全オペレーター適用。ナーフ(弱体化)を中心としたバランス調整から路線転換など。さらには「ピック率やWin率のグラフだけを根拠にした調整はやめてほしい」という、開発の意思決定プロセスへの直接的な異議申し立てまで含まれていた。

この投稿に対し、北米・欧州を代表するトップストリーマーやプロ選手たちが次々と賛同。瞬く間にコミュニティ全体に波及し、大きなうねりとなっていった。実際、世界大会中の選手インタビューにおいても「#SaveSiege」に言及する選手が相次いだ。

華々しく10年を飾る『シージX』は、多くのファンの期待を下回るものになり、不満が爆発することになる。そう、「不満」が爆発したのだ。『シージX』の登場によって、多くのことが解決されるとファンは期待していた。ところが、そうはならなかった。10年という月日によって、積もり積もった不満がここで爆発したのである。

では、『シージX』にいたる10年間で何があったのか。少し時間を遡りたい。

なお『RS6』黎明期からの流れについては前半記事で語っているので、まだお読みになっていない方はぜひチェックしてみてほしい(該当記事)。

薄氷の上のゲームバランス

『R6S』のSteamのアクティブユーザー数をみると、2020年3月にピークの約20万人に到達している。同年2月に行われた世界大会「Six Invitational 2020」も大盛況で、ピーク時の同時視聴者数は30万3155人。平均視聴数は、およそ11万1000人を記録している。

ところが、この頃コミュニティではゲームバランスに対する不満が高まっていた。それが、「ラスト20秒問題」だ。

読者のみなさんの中には『R6S』について詳しくない方もいると思うので、ここで本作の基本となるゲームモード「爆弾」のルールを簡単に説明しておこう。爆弾では攻撃側と防衛側のオペレーター5名ずつに分かれてラウンドを開始。防衛側は建物に配置された爆弾を守りきるために、壁を補強したり、罠やカメラといったガジェットを設置したりして防衛網を敷く。一方攻撃側はドローンなども駆使しながら建物に潜入し、爆弾を時間内に無力化することを目指す。

では話を戻そう。当時の『R6S』の競技シーン、そしてランクマッチにおいて、攻撃側のチームが、ラウンド開始からの約2分間をほぼ「ガジェット処理」に費やし、実際にサイトへの突入を試みるのがタイマーの残り20秒を切ってから、というパターンが固定化されてしまったのだ。つまり、守備にあまりにも偏ったゲームバランスになってしまっていたのである。

理由は、防衛側のオペレーターが持つ罠ガジェットが増えすぎた結果、攻撃側は「まず全ての罠を処理しなければ安全に動けない」という状況に追い込まれていたからだ。その典型的な例が、2019年9月のアップデート「オペレーション エンバーライズ」で実装されたGoyoだ。

リリース当初、Goyoのアビリティは「ボルカンシールド」。

防衛オペレーターが所持している展開型シールドの裏に爆発物が設置されており、爆発物を壊すと一定時間、炎が辺りに広がり、ダメージを与えるというものだった。

そして、このボルカンシールドを攻撃側が処理する方法が2020年の段階では少なく、「ガチガチに守られると攻略できない」という戦術が大半を占めるようになってしまった。これにより、ゲームはダイナミックさを失い、プレイヤーが離れていく1つのきっかけとなっていく。

当然ながら、この問題は開発チームも把握していた。2020年のPCGamerのインタビューで、当時のリードゲームデザイナーのJean-Baptiste Halle氏が「ラスト20秒問題」に言及している。ただ、その中で「問題を把握してから、解決策をゲームに実装できるまでには、少し時間的なラグがある」と話しており、実際この問題を解決するために登場したオペレーター・Floresは、2021年3月に実装された。

Floresのアビリティは、遠隔操作できる爆発物搭載のドローン「RCE-Ratero」を使い、防衛側の罠ガジェットを安全な位置から処理できるというものだった。これにより防衛側の罠ガジェットは圧倒的に壊しやすくなったが、「ラスト20秒問題」の把握から実装までに約1年を費やしている。

また、前述したGoyoに関しては、登場から約2年半後の2022年3月にアビリティが見直されることになった。ただこうしたプレイヤーの不満と解決策の実装のタイミングがズレたことで、プレイヤーの離脱と、熱心なファンの不満が徐々に溜まることになっていったと考えられる。

そして、こうした不満はさらに募っていくことになる。

「ナーフ」という名の処方箋が、プレイヤーの熱を奪う

10年もの長い間、ゲームバランスを取り続けるというのは本当に難しいことだと思う。大前提として、『R6S』のゲームバランスを素晴らしく、開発陣の努力は尋常ではない点は先に言っておきたい。

『R6S』ではオペレーター数が77人にのぼり、リリース時に実装されたAshやSmokeが今も活躍している。ただし、それらオペレーターが当初どおりのまま今日にいたっているわけではない。細かな修正が何度も行われている。しかし、この点に関してもプレイヤーの不満を集めることになった。

理由は、オペレーターのバランス調整の基本姿勢がナーフ、つまり弱体化にあったためである。また、そのナーフも「本質的な解決」をするのではなく、「とりあえず、使わせないようにしよう」というものが多かった。

具体的に、リリース当初から実装されている初期メンのJägerで説明したい。

実は、このJägerも前述した「ラスト20秒問題」に大きく関わっていた。Jägerの固有アビリティ「アクティブディフェンスシステム(ADS)」は攻撃側のフラグなどの投擲物を無効化することができる。これにより、防衛側の罠を壊すことが限りなく難しくなっていた。

かつ、Jägerはスピードの値が3と走る速度が速く、ACOG(倍率サイト)も保持していた。そして、何よりメイン武器の416-Cが扱いやすく、初心者にもおすすめの武器とされていた。

こういった能力から、拠点を「ADS」で守らせ、本人は遊撃に出るといった使い勝手がよいことから、ほぼ必須ピックといえる立場を確立していた。実際、2021年4月の公式記事をみると、ピック率が95%と記載されている。それほど、Jägerは「使い得」なオペレーターだったのだ。

この状況は問題視されたようで、Jägerはナーフされた。この際にはJägerの固有アビリティである「ADS」だけではなく、ACOGを没収し、銃の反動を増加させ、弾数を削り、走る速度を低下させるなど、あらゆる角度からの調整となっていた。

これには私自身、実体験として弊害があった。当時、私は「おすすめオペレーターは誰か?」と聞かれたら、迷うことなくJägerと答えていた。Jägerによって、『R6S』を始めようとする人に、このゲームの魅力と使いやすさ両面を端的に伝えることができていたと思っている。しかし、防衛側の顔とも言えるオペレーターがいなくなり、ゲームの複雑性が増してしまったように感じる。

Jägerだけではなく、2020年以降、オペレーターのスピード調整や銃の反動調整というナーフによって、使用頻度の高いオペレーターを「使いにくくする調整」が明らかに増えた。

これも間違いなく、プレイヤー離れ、不満を募らせる結果になっていったと考える。

バフ(強化)路線に切替えたことで、飛躍はあるのか?

ここまでネガティブな『R6S』の歴史を伝える形となったが、現在はどうなったのか皆さんも気になっていることだろう。実は、コミュニティの不満を受けて開発陣はバフ(強化)路線に大きく方針転換を行っている。

ここ半年ほどは、多くのオペレーターにバフが適用された。例えば、Thorn。

Thornのアビリティ「レイザーブルームシェル」。範囲内に敵が侵入すると、高ダメージを与える刃を撒き散らすという地雷ガジェットだ。

この「レーザーブルームシェル」が2026年1月のアップデートで、所持数が3個から4個に増えた。何より起爆時間が2.9秒から1.3秒に短縮された。これにより、Thornは今までほとんど使用されなかったが、プロの試合でも頻繁に見るほどピックが増えた。

ただ、これでゲームバランスが崩れているわけではないし、プレイヤーもかなり好意的にバフ路線を捉えている。実際、バフ路線による効果は大きい。

改めて、Steamのアクティブユーザー数をみると、2024年の3月頃に大きくプレイヤーが増えている。この理由は、倍率サイトであるACOGが全ての攻撃オペレーターと、一部の防衛オペレーターに復活したことが大きく影響している。倍率サイトが戻ってくるだけで、以前と同じ約20万人のアクティブユーザーが戻ってきたという点に驚きだが、同時にナーフ路線にプレイヤーの熱が冷めてしまっていたこともうかがえる。

おそらく、このACOG復活の効果と、その後の『シージX』へのコミュニティの不満を受けて、Year10の後半からバフ路線に大きく舵を切ったと考えられる。

そして、バフ路線への転換は、もはや一時的な方針変更ではないと私は見ている。

もちろん、バフ路線にもリスクはある。強いものを強くすれば、新たな「強すぎる問題」が生まれる可能性もある。また、チート問題も、根本的な解決にはまだ遠く、依然として『R6S』が様々な問題を抱えていることは間違いない。ただ、その歩みは未来に着実に進んでいるようにも思える。

なお『シージX』の開発会社であるUbisoft社(以下、UBI)はテンセント社の出資のもと、Vantage Studiosを設立。現在、『R6S』『アサシン クリード』『ファークライ』といったシリーズは、同スタジオが開発を担当している。

『シージX』の開発体制にも変化が訪れたようだが、私としては新体制下でも順調な開発が進められているように感じる。直近の6月2日にYear11 Season2のアップデートが行われたが、ランクの根本的な見直しが実装されるなど、コミュニティの声をしっかり聞いた内容になっていると思う。

ただ、その歩みは始まったばかり。今のバフ路線が評価されるのは、また10年後かもしれない。でも、そうあって欲しいと思う。10年後も『R6S』について色々と語りたい。

2015年のリリースから10年。プレイヤーにとっては当然ながら良いことばかりではなかった。しかし、そういったことも含めて、今もこうしてプレイでき、「あーでもないこーでもない」と言えることが、本当に幸せなことだと、この記事を書いていて思った。

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Tomozoh Yamano
Tomozoh Yamano

ゲーム好きが転じて、eスポーツキャスターやってます。FPSだけではなく、なんでもプレイします

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