“死ねない幽霊”たちが暮らす町で、少女たちの寂しさと友情と暴力を描くビジュアルノベル『ghostpia シーズンワン』をもう遊んだか

『ghostpia シーズンワン』は、一見したかわいらしさとは裏腹に、その奥に孤独、暴力、生きることへの疑問といった、根源的な悩みが潜んでいる。

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Steamでは日々数多くのゲームがリリースされている一方で、個人や少人数チームによる国産タイトルには大作の話題に隠れながらも、独創的なアイデアや強いこだわりを持つ作品が少なくない。本連載「見逃してない? 国産Steamタイトル発掘録」では、同人・インディーゲームを中心に、国産Steamタイトルを毎回1本ずつピックアップして魅力を伝えていきたい。

可愛らしい絵柄の裏にある、寂しさと暴力

連載第5回となる本稿では、創作ユニット「超水道」が手がけるビジュアルノベル『ghostpia シーズンワン』を紹介。本作はブラウザ・スマートフォン向け『ghostpia』をベースに、テキストの改稿や立ち絵・カットインのリファイン、アニメーション演出の強化などを施したブラッシュアップ版として、2023年3月にNintendo Switch版、同年8月にSteam版が発売された作品だ。

『ghostpia シーズンワン』は、幽霊と呼ばれる1024人の不死身の人間たちが暮らす、雪に閉ざされた終着駅の町が舞台だ。主人公の小夜子は町でたったひとりの異邦人として暮らし、いつか故郷へ帰ることを夢見ている。そんな閉ざされた町に来るはずのなかった新たな幽霊・ヨルが現れたことで、止まっていた日常が少しずつ動き始めていく。

最大の特徴は絵本のような温かみのあるグラフィックと、画面を走るグリッチやノイズを組み合わせた独特の表現だ。超水道自身が「デンシ・グラフィックノベル」と呼ぶように、欧米のグラフィックノベルの表現を取り入れたビジュアルと、アニメーション演出を組み合わせることで、一般的なビジュアルノベルとは異なる質感を生み出している。

一方で、可愛らしい見た目から想像する物語はかなり物騒だ。幽霊たちは死ぬことができないため、銃で撃たれようが車が爆発しようが生き続けてしまう。その設定から生まれるスラップスティックな暴力表現や悪趣味なユーモアは、本作ならではの魅力だろう。だが実際にプレイして強く印象に残るのは、刺激的な描写だけではない。小夜子やヨルをはじめとする少女たちが抱えているのは、居場所がなくどこにも行けないこと、自分が何者なのかわからないこと、誰かと一緒にいたいのにうまく関係を築けないことなど、誰しもが身近に感じられる孤独や寂しさだ。

現実世界であれば時間の経過や環境の変化、あるいは人間関係の断絶によって過去の傷から離れることもできるだろう。だが『ghostpia』では幽霊たちは死ぬことも、町から出ることも叶わず終わりのない日常を繰り返す。本作がユニークなのは「死ねない」という不条理な設定をギミックだけではなく、「どのように生きるのか」という問いを浮かび上がらせる装置として機能させている点だ。終わりが訪れないからこそ、彼女たちは誤魔化しようのない自身の孤独と向き合い続けることになる。

そのため本作に登場する少女たちの可愛らしさは、単なるキャラクターデザイン上の魅力ではない。刹那的な会話や悪ふざけ、暴力的なやり取りの奥には、「誰かと一緒にいたい」「自分の居場所がほしい」という切実さがあるのだ。そうした感情を支えているのが、キャラクターの口パクや瞬きといった細かなアニメーション、画面を覆うグリッチやノイズ、BGMや効果音、シーンそのものを巻き戻したり早送りしたりすることが可能な独自のシステムにまでおよぶ徹底した演出設計だ。

グリッチやノイズも単なる装飾ではなく、VHSやブラウン管を思わせるざらついた質感は、作品全体にどこか古びた手触りを与えており、雪に閉ざされた町で同じ時間を生き続ける少女たちの停滞した日常とも重なる。不安定に揺らぐ画面自体が、小夜子たちの揺れ動く精神性を映し出しているようにも見えるのだ。物語・キャラクター・グラフィック・音楽・UI・ボイスといった要素を個別に目立たせるのではなく、ひとつの「読む体験」のために結びつけた設計も、本作がゲームという媒体にシナリオを載せるだけではなく、ゲームならではの演出を通じて「物語を読む」体験を形作ろうとしていることがうかがえる。

『ghostpia シーズンワン』は、可愛らしい少女たちの友情を描いた作品でありながら、その奥には孤独や暴力、生きることへの疑問といった根源的な悩みが潜んでいる。だからこそ物語を読み終えたあとに残るのは、「面白かった」という感想だけではない。寂しさや愛おしさ、少しばかりの不穏さが入り混じった言葉にしにくい感情だ。なお、本作は二部作の前編にあたり、続編『ghostpia シーズンツー』が現在開発中。また超水道の新作縦書きビジュアルノベル『またね、と言わないままでいて』も、2026年内リリース予定だ。

『ghostpia シーズンワン』はPC(Steam)およびNintendo Switch向けに発売中。

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Yuuki Inoue
Yuuki Inoue

RPGとADVが好きなフリーのゲームライター。同人ノベルゲームは昔から追っているのでそこそこ詳しい。面白ければジャンル問わずなんでもプレイするのが信条。

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