『火山の娘』完全版先行プレイ感想。フルボイス化と演出強化没入感マシマシ、快適さ向上実感の新要素満載

“完全版”を称してリリースされる『火山の娘』は、新規プレイヤーだけでなく、既存プレイヤーにとっても遊びごたえのあるタイトルへと磨き上げられている。

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父親として愛娘の成長を見守る『火山の娘』は、近年稀に見るほどの高い評価を受けた育成シミュレーションゲームだ。2023年にPCで発売された本作は販売本数60万本を突破しており、一躍人気のインディーゲームとして地位を確立した。Steamのユーザーレビューでは、記事執筆時点で「圧倒的に好評」のステータスを獲得しており、その評価も極めて高い。

そんな『火山の娘』だが、オリジナル版にさまざまな追加要素を搭載した完全版の開発が進められている。Steamでオリジナル版を所有しているユーザー向けに完全版の内容が無料アップデートで10月頃に配信されるほか、7月30日にはPS5/Nintendo Switch/iOS/Androidに向け本作の新規リリースも予定されている。弊誌はAndroid向け『火山の娘』体験版を先行してプレイする機会に恵まれた。本稿では、約2時間の試遊を通じて得たプレイフィールをお伝えしたい。完全版はオリジナル版の開発元であるEgg Hatcherの協力のもと、サイバーエージェントゲーム・エンタメ事業部のColorful Paletteがパブリッシャーを担当している。

純真無垢な娘の言動に魂が浄化される育成シム

『火山の娘』の舞台は、人間と魔物の間で火種が燻っている「火山国」だ。国には穏やかでほのぼのとした雰囲気が広がりながらも、人間と魔物による対決の機運が高まっている。そうした情勢のなかでプレイヤーは子をもつ父となり、母を亡くした一人娘を育てていく。端的にいえば、『火山の娘』は娘の成長と火山国の未来を見届ける育成シミュレーションゲームだ。

ストーリーが進行するにつれてできることが増えていくのが、『火山の娘』の大きな特徴だ。幼少期は父と娘の交流が主だが、やがて娘の交流範囲が広がっていく。学校に入って友人ができたと聞けば父親としてうれしいと思う一方で、異性の友人と出かけるという話しを聞けば父親としては心配になってしまう。娘の自主性を尊重したいと思う反面、娘を誰かにほんの少しだけ取られてしまったようで嫌な気持ちになることもある。愛娘を立派な大人に導くという目標がありながらも、父親もまた完璧な人間ではない。そうしたジレンマを父が抱えていることを知らずか、基本的に娘は純真無垢な態度で父親として接してくれるのがうれしい。

プレイヤーは、娘が立派な大人になるためにさまざまなことを行う。たとえば、授業を行って娘の体力や知力などのステータスを向上させたり、娘と一緒に遊ぶことで娘から父への愛情が深まったりするといった形だ。娘の育成は月ごとのターン制で進行し、プレイヤーが娘を育成できるのは、成人を迎えるまでの42ターン。ターンが進むごとに作中の時間が進み、幼年期の5歳から成人になるまでの娘を導いていく。

今回の体験版では序盤の6ターンをプレイすることができた。5歳の娘にとって出会うものすべてが新鮮であり、目を輝かせながら物事に取り組んでくれる。授業で朝の体操をすれば体力が向上するし、授業で挨拶に取り組めば知力や感受性が向上する。愛娘にどのような授業を行っていくかで伸びる能力が変わっていくので、父親の教育方針が反映されやすいシステムといえるだろう。極端なことをいえば、体力をひたすらあげてやんちゃな娘を目指すのもいいし、知力を上げて賢い娘を目指すのもいい。本作は50種類以上のエンディングが存在するため、自分の育てた娘が将来どのような職業に就くのかが楽しみになってくる。

娘が将来立派な職業に就いてほしいと願う反面、愛くるしい彼女と過ごすとそんなことはどうでもよくなってくることもある。各ターンの授業では父と娘のやり取りが描写され、それが本当に尊いものだからだ。たとえば、「挨拶」の授業では父が娘に「私はあなたのパパです」と教えたら、「わたしはあなたのぱぱです」と復唱してくれる。何気ないやり取りだが、とりあえず父の言い方を真似しようとする娘からの信頼が伝わってくる。

純真無垢で素直な娘の言動に接していると、父であるプレイヤーの心が浄化されていくようだ。将来の道はまだ定まっていないが、彼女が幸せな人生を全うしてくれればそれでいいと父は思う。父親として未熟ではありながらも、娘が幸せになれるように精一杯の手助けをしていきたい。そうした気構えにさせてくれる子育ては、親もひとりの人間として成長させてくれるものだと感じた。とにかく、本作は娘のちょっとした言動や素振りにリアリティにあふれている。本作はゲームではあるものの、娘の幸せを願うプレイヤーが愛情を注ぎ込めるものになっている。

フルボイス化で没入感が増し、快適性アップも抜かりなし

娘は行動力を消費することでさまざまなアクティビティを行うことが可能だ。自宅で積み木をすれば知力が向上するし、湖で船に乗れば体力を上げることができる。レストランに行けば、娘と食事をして行動力を一定程度回復させることも可能。限られた行動力をどのように使って娘のステータスを伸ばしていくかが、育成シミュレーションとしての肝といえるだろう。

ステータスアップのためにさまざまなことを試みる一方で、街の住人たちとの交流も本作の大きな見どころとなっている。自宅から外に出れば娘はさまざまなキャラクターと交流することが可能で、ゲームの進行に応じて関わる人物が増えていく。体験版は序盤の6か月だったため、出会う人物は少なかった。それでも、新たな人と娘が出会う度に彼女の世界が確実に広がっていくようで父親としてはうれしかった。

街の人気者であるリリアのレストランに娘を連れて行って一緒に食事をするのは親子の大きな楽しみのひとつであったし、吟遊詩人のデリックのおとぎ話に興味津々な娘の瞳を見ると彼女の知的好奇心が育っていくのがわかる。なぜか湖で眠りこけていた女性が目を覚ました瞬間に、娘が「ものすごくかわいい」と褒めてくれた。その意見にまったくの同感だと思うのは、父が親バカになってしまったからなのだろうか。

オリジナル版と完全版を比較してもっとも大きな変化だと思ったのは、演出がより豪華になっていることだ。誤解のないようにあらかじめいっておくと、オリジナル版の段階で『火山の娘』はかなり作り込まれたゲームだった。イベントシーンのスチル画像は膨大な量があるし、BGMはどれも上質で娘のキャラクターボイスに人気声優の中原麻衣氏を起用していた。

完全版では『火山の娘』のストーリーや世界観を表現したアニメーションのオープニングムービーが追加されたほか、日本語の新規フルボイスが収録されている。本作はキャラクター同士の会話はかなりのボリュームがあるため、フルボイスになったことでゲームへの没入感が増している。体験版の範囲では主要キャラクターがほとんど登場しなかったが、NPCもフルボイスだったのには驚いた。さらに、丁寧な再翻訳を行ったことでキャラクター同士の会話やストーリーの理解もしやすくなっている。ストーリーが進めば主要キャラクターと特別な交流ができるようになるため、フルボイスで堪能できる製品版が待ち遠しい。

今回試遊したのはスマートフォン版だが、UIの最適化もなされていた。かなり細かい話になるが、オリジナル版では話しかける相手の目の前まで行かなければ会話することができなかったが、完全版では離れた距離からでも会話できるようになったのがありがたい。とりわけ、スマートフォン版はタッチ操作で話しかけたい人物をタップするだけで会話することが可能だ。毎ターンにさまざまな場所にいってさまざまな人と交流するのが本作の醍醐味のひとつであるため、細かいながらも快適性が向上しているのは称賛されるべき点だ。

祝祭を祝うイベントでは日常では見られない娘の姿も

体験版は、娘の5歳における最後のターンとなる「小鳥の日」までプレイすることができた。小鳥の日は火山国で恒例のお祭りのようなものだ。親からプレゼントをもらえたり、算数競技が開催されたりするため、子供たちはこの日を楽しみにしている。娘を決して甘やかしたいわけではないのだが、彼女の日頃の頑張りに報いるために私はプレゼントを3つも贈ってしまった。娘はとても喜んでくれたので良しとしよう。

娘と一緒に広場に出かけると、小鳥の日を祝う人々で賑わっていた。普段は見かけないような人も街に訪れており、大きな権威をもつ司教も来ている。火山の女神について語る司教を娘は真剣な眼差しで見つめており、ここでも娘の成長を感じることができた。これから娘がどのようなことに興味をもって、どのような道を選ぶのだろうか。ちょっとした会話でも娘の反応が丁寧に描写されるので、そこから娘の未来を想像するのがなんとも楽しい。娘が興味をもったことが彼女にいい影響を及ぼすように、父として精一杯がんばろうという気持ちにさせてくれる。

算数競技に娘が参加したがっていたので、親子で参加してみることにした。算数競技はミニゲームになっていて、プレイヤーの計算能力が試される。制限時間内に足し算や引き算を行い、正解数に応じて景品がもらえるものだ。娘にいいところを見せたいという思いに駆られ、父はがんばった。気がはやるあまり、間違えてしまった問題もあるのはご愛嬌だろう。

オリジナル版の算数競技はマウスを使って行うものだったが、スマートフォン向け完全版ではタッチ操作で直感的な回答が可能だった。スマートフォンの画面サイズによっては選択肢を押しにくいという問題はあるものの、直感的に操作しやすいというのは大きな改善点といえる。

新規プレイヤーも既存プレイヤーにも推奨の完全版

オリジナル版から完成度の高かった『火山の娘』だが、完全版はフルボイス化や再翻訳などでさらに仕上がっている。オリジナル版のいいところを残しつつ、本作の世界に浸ることのできるように改善されていることに好印象を抱いた。完全版でも父親として愛娘が成長していく姿を見守り、ときには支えていきたいところだ。

完全版から新規で『火山の娘』をプレイすることはもちろん、オリジナル版をクリアしたプレイヤーにとっても、完全版は再プレイする価値のあるものとなるだろう。2023年にリリースされて以降、高い人気を誇っていた『火山の娘』がさらにパワーアップして帰ってくる。

新コンテンツとして、愛娘と主張キャラクター2人のみで探索する追加ダンジョンが登場することが発表された。ダンジョンは「双影の路地」と呼ばれており、かなり静かな場所のようだ。サンプル画像では愛娘と「ゼイ」と呼ばれる男性キャラクターがダンジョンを探索しており、なにやらロマンスに発展しそうないい雰囲気も漂っている。試遊では体験することはできなかったものの、父親としては娘が心配になりつつもさらなる成長に期待することができそうだ。

双影の路地でのバトルシーンもスクリーンショットが公開されている。それによると、愛娘とゼイの2人は、ボスキャラクターの風格がある「白狼王」と呼ばれる存在と戦うことになるようだ。「忘却の森」で愛娘たちを見かけたという白狼王は一体どのような存在なのだろうか。少数精鋭で挑むあらたなダンジョン探索は愛娘の冒険心を刺激し、さらなる成長を促してくれるだろう。

火山の娘』はPC(Steam)/XBOX Series X|S向けには発売中で、Steam版については10月頃の無料アップデートで完全版の追加要素が順次公開される予定だ。XBOX Series X|Sについては現在のところ発表はない。また完全版は、2026年7月30日にPS5/Nintendo Switch/iOS/Android向けに発売予定。価格は1300 円(税込)を予定しているが、PS5版のみ価格が異なる。加えて、完全版『火山の娘』の無料体験版として、『⽕⼭の娘 Prologue』が7⽉16⽇よりPS5/Nintendo Switch/iOS/Android向けに配信中。体験版ではストーリー冒頭から序盤の「小⿃の⽇」までをプレイ可能だ。

※画像は全て開発中の画面となります
© Egg Hatcher / © Colorful Palette Inc. All rights reserved.

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Ryuichi Kataoka
Ryuichi Kataoka

「ドラゴンクエストIII」でゲームに魅了されました。それ以来ずっとRPGを好んでいますが、おもしろそうなタイトルはジャンルを問わずにプレイします。

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