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ほんわか管理社会ゲーム『D-topia』は暗黒ディストピアと思いきや、明るくて癒される。と思ったら不穏、でもまた癒しで感情が迷子になった先行プレイ感想
本作を先行プレイしているうちに、まず目に入ってきたのは、その整えられた生活環境だ。気づけば「うらやましい」と感じている自分がいた。

「ディストピア」と聞いて、どんな光景が浮かぶだろうか。多様性が根こそぎ排除され、息苦しいほど統制された社会か。あるいは、些細な行動すら自分で選べず、見えない監視に縛られた世界か。それとも、感情の抜け落ちた笑みを浮かべながら、均質な街をただ漂う人々の姿だろうか。いずれにせよ、ディストピアはひと目で違和感や嫌悪感を覚えるような世界として描かれることも多い印象だ。
そして『D-topia』の舞台はA.I.に完全管理された施設型居住区、その名も「D-topia」だ。この施設は、“最大多数の最大幸福”という功利主義のもと設計された、いわば理想社会を目指すユートピア計画の産物だ。A.I.がすべてを定めるこの世界で、プレイヤーは施設整備士(ファシリテーター)として、住民たちの抱える問題や施設の不具合に対処していくことになる。

……と、ここまで聞くと『D-topia』の舞台もまた典型的なディストピアのように思われるかもしれない。しかし本作を先行プレイしているうちに、まず目に入ってきたのは、その整えられた生活環境だ。衣食住は過不足なく用意され、就労は午前中で終わる。日常には穏やかな空気が流れ、不自由さは一切感じない。そうした環境に触れているうちに、気づけば「うらやましい」と感じている自分がいた。少なくとも、これまでの露悪的なディストピア像とはかけ離れていたからだ。
本稿では、そんな『D-topia』のデモ版の内容を、先行プレイで見えた範囲からお届けする。なお別記事では、4月16日に開催されたメディア向けプレビューイベントで公開された『D-topia』の内容にくわえ、開発元であるMarumittu Gamesへのメールインタビューも取り上げている。あわせて参照すれば、本作の全体像がよりつかめるはずだ。

『D-topia』は、パブリッシャーのAnnapurna Interactiveおよび、デベロッパーのMarumittu Gamesが手がけるパズルアドベンチャーだ。対応プラットフォームはPC (Steam/Epic Gamesストア/Microsoft Store)/Nintendo Switch/Nintendo Switch 2/PS5/ Xbox Series X|Sで、7月14日配信予定。ゲーム内は日本語表示に対応予定だ。
新たな生活は“柔らかいベッド”からはじまる

先述したとおり、本作の舞台設定は「A.I.に完全管理された居住区」「最大多数の最大幸福」「ユートピア計画の産物」と、不穏極まりない。ところがどうだろう。プレイ開始直後に目にしたD-topiaの内部は、想像していたものとは少し様子が違っていた。白や青を基調とした空間は開放感に満ちており、丸みを帯びたロボットたちからは、攻撃的な印象は一切受けない。入居したばかりと思われる家族も、その環境を素直に喜んでいるように見え、少なくともディストピアでは定番の“洗脳”や“同調圧力”といった違和感は覚えなかった。
一方で、完全に安心できるかというとそうでもない。ゲーム開始時に、A.I.らしき存在によって住人登録がおこなわれ、その流れで職業は施設整備士に割り当てられていた。また会話の中で「最適化システム」や「マザープラントでの遺伝子解析の結果」など不穏なワードが飛び交っており、どこか引っかかるものも事実だ。

再び気を引き締めたところで場面は変わり、主人公は自室のベッドで一夜を過ごしていた。牢獄のような狭い空間に、地面と同じくらい硬そうなベッドが敷かれている……のではなく、寝心地のよさそうなベッドの傍らで、主人公は盛大な寝ぐせとあくびとともに目を覚ますのだ。さらに広い部屋には大型のディスプレイとPCが備えられ、10人以上がゆったり座れそうなソファの前には朝食が並んでいた。

たっぷりのバターがのったトーストに目玉焼き、サラダ、コーヒー、フルーツがのったヨーグルトまで用意されている。どうやら自室である「ホーム」では一日三食が提供されるという。しかもこのクオリティだ。さらにホームにはバスルームやアイランド型キッチンも備えられており、生活に必要なものは一通りそろっているように感じられた。極めつけは労働時間で、D-topiaでの就労は午前中で完結するという。
ここまで来ると、当初抱いていた警戒感も次第に薄れていく。A.I.によって最適化された生活環境は、現時点では不自由さより快適さが勝っている印象だ。気づけばこの世界はディストピアではなく、むしろ理想郷に近いのではないか。早くもそんな考えが首をもたげていた。
ピカピカの仕事着に身を包む前に、もう少し部屋を見て回ることにする。浮足立った筆者の目に入ったのは、一日の献立表だった。朝食はさきほどのトーストプレートとコーヒー。これが毎日用意されるのだから、正直うらやましい限りである。

幸福に満ちた「D-topia内部」

主人公をちょっと妬ましく思いながら部屋から出ると、先日主人公が与えられた住人ID、No.046の部屋以外にも同様の居住スペースがいくつも並んでいることが分かる。どうやらこのフロア自体が一種の集合居住区として設計されているようだ。またこの際、メニューを開いたことで、主人公の名前が「シロー」であることにくわえ、年齢は18歳、性別は「M」、ランクは「1」といった情報も確認できた。年齢や性別はともかく、ランクとは一体……。些細な表記ではあるが、どこか引っかかるものがある。

やがて仕事の時間が告げられ、職場である「ファクトリー」へ向かうことに。その道中、自動販売機を見つけた。あとで分かったことだが、本作の世界では「Uポイント」なるポイントが通貨の代わりとして機能しているらしい。働くことで得られるUポイントは、衣服やゲームといった商品の購入、さらには他者への贈り物にも使用できるようだ。
せっかくなので、初期Uポイントでポテトチップスとネコ缶、快速ドリンクなるアイテムを購入してみた。結論から言うと、これらを実際に使用する場面まではプレイできなかったが、おそらくネコにプレゼントしたり、食事として消費したりするのだろう。
そのまま歩を進めていると、新情報がいくつか入手できた。どうやらD-topia内には、大人が働くファクトリーだけでなく、子どもが学ぶ「スクール」と呼ばれる施設も存在するようだ。さらにD-topiaのような居住区はひとつではなく、F-topiaといった同様のエリアが複数存在しているらしい。いずれも「ユートピア計画」のもと構築されているが、その中でも完成度が高いのが、このD-topiaだという。
施設整備士の仕事は「パズル」

先へ進んでいくと、ついに職場であるファクトリーに到着。施設整備士としての最初の仕事が始まった。仕事といっても、内容はカジュアルなパズルゲームだ。本作にはこのように、アドベンチャーパートとパズルパートが存在するのである。今回の業務では同じ数字のくぼみにタイルを移動させるシンプルな問題をいくつか解いて終了となった。ただ難易度は次第に上がっていき、スイッチ上にタイルを置くことで障害物が取り除かれたり、「加算テープ」を通過することで数字が上昇したりと、多彩なギミックが展開されていく。
なおパズルはスキップもできるが、もらえるポイントは業務終了時のスコアによって変動するため、Uポイントを稼ぎたい場合は真摯に取り組んだほうがよさそうだ。こうして午前の作業を終え、この日の業務は終了。以降は自由にD-topia内を探索できるという。こんな短時間の作業でお金を貰えて、さらに午後は丸々自由時間にできるとは最高の環境だ。本気でD-topiaに移住したくなってきた。D-topia万歳。

意気揚々と探索を進めていると、一人の青年とぶつかってしまう。青年はすぐに立ち去っていったが、メモリチップを落としていった。なお、本作ではアイテムや各キャラクターの情報をメニューからいつでも確認できる。年齢、MやFで分けられた性別、得意分野といったプロフィールにくわえ、親密度を示すハートマークが用意されていた。その後青年にメモリチップを返したことで、彼の名前が「イービー」であることが判明し、親密度も一段階上昇した。こうした住民とのかかわりや選択を通じて、彼らの未来に干渉できるのが本作の特徴だ。
「ブロックサイド」には“しゃべるネズミ”がいる
イービーの件に相次いで、すぐそばのショップでトラブルが発生した。客の「トッド」によれば、アイテムを販売するショップトロイドが突然動かなくなったという。施設整備士である主人公にとって、こうした住民の悩みや不具合の対処も仕事の一部だ。原因を探るため、主人公は視覚システムを介して「ブロックサイド」へと踏み込むことになる。

ブロックサイドとは、各所に設置された視覚システムを介してアクセスできる、D-topiaのいわば“裏の領域”だ。というのも、普段住民たちが目にしている世界はシステムによって最適化された視覚情報に過ぎず、本来の姿は覆い隠されているという。施設整備士に限り、その補正を解除し、ブロックサイドを見ることができるのだ。

早速ブロックサイドにアクセスしてみると、そこに広がっていたのは、先ほどまでの整った街並みとは似ても似つかない、どこか陰鬱な光景だった。暗い寒色で統一され、空気も重たく感じる。そして何より奇妙なのは、ネズミが存在し当たり前のように言葉を発していることだった。どうやらこの領域では、ネズミがしゃべるのが当たり前だという。このネズミは本作のコレクション要素に該当するようだ。
しゃべるネズミと天井から響く機械音に不気味さを覚えつつ、ショップトロイドへアクセスすると、先ほどの業務同様パズルがスタートした。ただ難易度は大幅に上昇しており、加算テープや障害物など、複数のギミックを同時に処理しなければならない。頭を悩ませながらなんとかクリアすると、ショップトロイドは正常に動作を再開した。

元の世界へ戻ると、トッド含めその場にいた客から感謝の言葉を受ける。今回の業務を通じて、D-topiaでは普段目に見えない部分があること、そして小さな不具合でも住民の日常を脅かすことが分かった。とはいえ、温かな食事に、親切な住民とトロイド、そしてなにより、多少の努力で充実した生活を送ることができる理想の環境であることには変わりない。また施設整備士という仕事はこの世界において欠かせない役割のようで、働きがいもありそうだ。一生ここに暮らしたい。そんな考えが頭をよぎった、そのときだった。
場面は突如暗転し、真っ暗な空間にパトロールトロイドの無機質な音声が響き渡る。住民が規律違反をおこなった可能性があるため、これより調査を実施するという。指示を出したのは「The A.I.」なる存在。そして、その調査対象がNo.046、すなわち主人公であることが告げられたところで、デモ版は終了した。

“最大多数の最大幸福”の先に待つのはユートピアか、それとも
以上が、今回先行プレイで確認できたデモ版の内容だ。約30分の内容ながら、D-topiaが醸し出す違和感の片鱗に触れることができた。白を基調としたやわらかなビジュアルや、ゆとりのある生活環境で住民たちがほんわかと暮らしている裏にある、目に見えないだけのブロックサイドの存在。

今回のデモ版で確認できたのはあくまでも導入部分であり、住民との選択がもたらす変化や、「The A.I.」の目的といった本作の核心には踏み込めていない。プレイする限りのD-topiaには不穏さを補って余りある“暮らしたくなる”魅力にあふれていたが、ここからどのようにして見えないものが暴かれていくのか。製品版が楽しみになる体験であった。
『D-topia』はPC (Steam/Epic Gamesストア/Microsoft Store)/Nintendo Switch/Nintendo Switch 2/PS5/ Xbox Series X|S向けに、7月14日配信予定。ゲーム内は日本語表示に対応予定だ。
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