チーターの“キーボード・マウス操作のクセ”から「本人そのもののBAN」を目指す技術研究。「別アカ復帰」を逃がさない

キーボードやマウスの“入力の癖”から、アカウントが同一人物のものかを特定する手法を考案した人物が現れた。

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さまざまなゲームで問題となっているチート行為。不正をおこなったユーザーにはBANなどの措置が講じられるものの、別のアカウントでプレイを再開するケースもあり、ゲームから完全に排除することは難しいのが現状だ。そうしたなかで、キーボードやマウスの“入力の癖”から、アカウントが同一人物のものかを特定する手法を考案した人物が現れた。海外メディアDexertoが報じている。

発表したのは、ノルウェー科学技術大学の学生であるとされるRedditユーザーのMagga_氏(以下、Magga氏)だ。同氏は修士論文としてこの研究に取り組んだという。実際の論文は公開されていないものの、Redditのスレッドでは本人が研究の概要を紹介している。

Magga氏はアカウントにBANが適用されても、その背後にいるユーザー自身をBANすることはできないことを問題視している。これまでにもIPアドレスやハードウェアID、メールアドレス、電話番号によるBANなど、ユーザーを追跡するアプローチはとられてきたものの、そのどれもが回避や悪用がおこなわれてしまうと指摘。そこで同氏は、生体認証のアプローチに着目することにしたようだ。

同氏によれば、電信技師がモールス信号を打つリズムから互いを識別できることは、1897年にすでに報告されていたという。研究ではこの考え方をPCのキーボードとマウスに応用。特にスピードや精度が重要となる『Counter-Strike 2』では、数千回と操作を繰り返す中で、動作が筋肉記憶として刻まれるようで、プレイヤーが意識的に変えるのは難しいと述べている。

具体的な手順としては、まずゲーム内で記録されているリプレイデータを用いて、マウスとキーボードの信号を抽出。これを、ユーザーのプレイスタイルを表した「プレイヤーフィンガープリント(player fingerprint)」と呼ばれるデータ形式に変換する。そして異なる試合から得られたフィンガープリント同士を比較することで、類似度に関するスコアが得られ、これにより各プレイヤーが同一人物であるかを判定することができるという。なおこのフィンガープリントは、マップや設定などが変わっても安定しているそうで、実際に数か月間離れたマッチや、マウス感度を変更したような場合でも、同じプレイヤーを識別することができたとのこと。

研究でおこなわれた実験では、マウス入力のフィンガープリントを用いた場合には常に正しいプレイヤーを特定でき、キーボード入力から得られたフィンガープリントでは98%の確率だったという。さらに、これら2つのデータ群の相関はわずか0.11だったという。これはすなわち、片方のフィンガープリントが別人と偶然似ることはあっても、両方が一致するケースは珍しいということ。これら2つが組み合わさることで、より精度の高い判定がおこなえるというわけだ。

Image Credit: Magga_ on Reddit

そしてMagga氏は論文執筆のかたわら、『Counter-Strike 2』のリプレイを自動でダウンロードし、フィンガープリントを生成して既存のアカウントと比較するシステムを構築した。一方、同作にはおよそ300万人の月間アクティブプレイヤーが存在するため、各ユーザーにつき最低1試合のリプレイデータをチェックするだけでも、数十億回の比較をおこなう必要があり、膨大なコストが発生するとしている。最適化を経た結果、現在では「NVIDIA A100」GPUのリソースのうち、メモリ20GB分のインスタンス1つで、毎時間生成される数千ものリプレイを処理できるほど高速になったそうだ。

ただし研究に用いられたデータは少なく、実際に『Counter-Strike 2』の全ユーザーを対象に処理した場合の精度は未知数であるとしている。Magga氏は、この手法をアカウント特定における最初の指標として扱うことを推奨しており、検出された関連アカウントをリストに入れ、アンチチートで綿密に監視したりといった運用を想定しているとのこと。

またMagga氏は、アンチチートに生体認証を導入するこうしたアプローチについては、慎重になるべきだとの見解も示している。同氏が論文執筆にあたって、ノルウェーの大学研究のための倫理・データ保護サービスに相談したという。前述したプレイヤーフィンガープリントは、ゲームエンジンが入力を変換した結果から得られるものであるため、生体認証データにはあたらないと判断されたそうだ。一方で、データの保存と同意については、生体認証データと同様に配慮が必要であるという意見で一致したとのこと。『Counter-Strike 2』のゲームによってもともと取得されていたリプレイデータをもとにしているとはいえ、そうした倫理的な懸念も生じるのだろう。

そのほか、同氏自身の最近のリプレイデータと2017年の試合のリプレイの間で、同一人物であると識別することに成功したといい、何年経っても同じ人物を特定し続けられる可能性も示唆されている。同氏は、子供のときに一度おこなったチート行為によって永久にゲームから締め出されるべきではないとの見解を示しており、一定期間が過ぎたら失効するような仕組みを設けるべきだと考えているそうだ。ただし、これらの線引きは重要な問題ではありつつ、それはポリシーによって決めることであり、手法の技術的な限界ではないとの考えを示した。

なおMagga氏は過去にRedditユーザーからリプレイを募り、そこから得られたデータを研究に役立てたとのこと。論文が無事完成し、A評価を獲得することができたとしてコミュニティに感謝を伝えている。

さまざまな課題は残りつつも、現時点では高い精度を発揮することが見込まれるMagga氏のシステム。既存のアンチチートや報告システムと組み合わせて導入されることで、従来では排除しきれなかった、同一人物による繰り返しのチート利用を効果的に防げるようになるのかもしれない。Magga氏による研究の今後の発展にも期待したい。

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Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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