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新型Steamコントローラー開発者インタビュー。新型は「キーボード&マウス向け」「パッド向け」ゲーム含む“Steamのすべてのゲームに対応する純正コントローラー”を目指して開発
10年の時を経て、新型Steamコントローラーが発売される。なにが進化しているのか?どんな反省点があるのか。Valveの開発チームに話を訊いた。

Valveは4月28日、Steamコントローラーを正式発表した。発売日は5月5日で、国内向けにはKOMODOより展開予定だ。今回お披露目されたのは、新型のSteamコントローラーである。
Steamコントローラーは、旧型が2015年にValveが発売。当時としてはかなり珍しい形状であり、トラックパッドを備えたマウスに近い操作もできるコントローラーであった。一方で一般的なコントローラーとは異なる点で、馴染みやすさがなく独自の適応が必要であった。
そして10年の時を経て、新型Steamコントローラーが発売される。なにが進化しているのか?どんな反省点があるのか。Valveの開発チームに話を訊いた。掲載しているレビュー記事とあわせて確認いただければ幸いだ。

インタビュー回答者は以下のとおり。ひとまとめにして開発チームと記載させていただく:
※Valve社では肩書きは設けていないため、括弧内の表記はそれぞれが担当している業務内容を示している
● Steve Cardinali (ハードウェアエンジニア)
● Jeff Mucha (ハードウェアエンジニア)
● Jeremy Slocum(ヒューマンファクターエンジニア/心理学者)
● Lawrence Yang (デザイナー)
● Pierre-Loup Griffais (プログラマー)
――新しいSteamコントローラーを作ることになったきっかけを教えてください。
開発チーム:
旧型Steamコントローラーは、キーボード&マウス操作に特化したゲームであっても、適切な入力方式さえあればコントローラーで遊べるということを示すために設計されたものでした。私たちは、その目的は十分に達成できたと考えています。しかし、従来のゲームパッドに備わっている入力機能の一部が欠けていたため、コントローラー向けのゲームを優先した作りにはなっていませんでした。
そこで「Steam Deck」の開発においては、旧型Steamコントローラーの特長はそのままに、全機能を搭載したコントローラーを提供することを大きな目標にしていました。コントローラーでのプレイ推奨のゲームであれ、キーボード&マウス操作向けのゲームであれ、Steam上のあらゆるゲームを快適にプレイできるようにすることを目指したのです。
Steam Deckの成功によって、その両立を人間工学に基づいて快適に実現できることを証明することができました。同時に、多くのゲーマーがSteam Deckをドックに接続して、リビング用ゲーム機として利用している様子も見られるようになりました。しかし、ソファに座ってプレイする際には、Steam Deckが持つ独自の入力機能を備えていない別のコントローラーを手に取る必要があり、それが理想的な体験とは決して言えませんでした。Steam Deckの人間工学的な成功、そしてドック接続時のこうした制約を踏まえて、私たちは新しいSteamコントローラーを開発すべき時が来たと思い至ったのです。
――新しいSteamコントローラーを作るにあたって、もっとも重視したことはなんですか。
開発チーム:
私たちが開発にあたって掲げた主な目標は、以下の通りです(順不同)。
・Steam上のあらゆるゲームをプレイ可能にする、純正のコントローラーを提供すること。
・Steam Deckの入力方式との互換性を保持し、両デバイスを交互に使っても違和感がないようにすること。
・コントローラーとしての形状を最適化し、可能な限り人間工学に基づいた設計にすること。
・ドック接続でSteam Deckを使用するユーザーに向けた解決策を提供すること。
――旧型とくらべてスティックとD-Padが追加、スティック操作とD-Padも担っていたハプティックトラックパッドの下部への移動などの大きな変化があります。これは旧型Steamコントローラーでのフィードバックが反映された面もあるのでしょうか。
開発チーム:
その通りです。私たちは旧型Steamコントローラーから教訓を得て、次に作るデバイスは同様の入力機能を備えつつ、2本のジョイスティックやD-padなどの機能をすべて搭載したコントローラーであるべきだと考えました。
そしてSteam Deckにおいて大きな焦点となったのが、人間工学でした。これらすべての入力機能を、いかに大多数のゲーマーにとって使いやすい配置に収めるかということが課題になりました。その最適なレイアウトを決定するために、多くの試作と反復を重ねました。
新型Steamコントローラーでは、このSteam Deck開発で得られた知見を大いに活用することができました。主な課題は、Steam Deckで最適と判断した各パーツの位置関係を、コントローラーの形状に落とし込むことでした。そのため、またしても3Dプリントやプロトタイプ製作といった膨大な量の人間工学的検証や、社内外でのプレイテストをおこない、コントローラーの形に合った快適な操作感を実現できるように仕上げていきました。

――そのほか、旧型Steamコントローラーからの「反省」などが活かされた部分はありますか。
開発チーム:
まだ言及していない要素として、「SteamコントローラーPuck」の存在があります。旧型Steamコントローラーにもワイヤレスレシーバーが同梱されていましたが、実際にそれを使用していたユーザーはごくわずかでした。
今回のSteamコントローラーでは、より多くのユーザーに高速かつ安定したワイヤレスでのゲームプレイを楽しんでもらえるよう、使いやすいワイヤレスレシーバーの開発にかなりの時間を費やしました。その結果として開発されたのがSteamコントローラーPuckであり、安定した無線接続を実現するとともに、Steamコントローラーを素早く充電できる便利な機能も備えています。
――逆に、旧Steamコントローラーの美点として、新型でも大切にしている部分はありますか。
開発チーム:
キーボード&マウス操作向けのゲームをプレイするための代替手段を提供することは、私たちが特に重視している部分です。そのため、トラックパッドやジャイロセンサー、グリップボタンといった機能はしっかりと引き継ぐようにしました。これらの操作に慣れれば、従来のジョイスティックのみのデバイスと比べ、パフォーマンスを劇的に向上させることができるでしょう。
――旧型のSteamコントローラーの方が、(固めの調整だったグリップパドルや大きなハプティックトラックパッドなど)やや手が大きめで握力が強いユーザー向けだった印象があります。新型の使いやすさはSteamユーザー層の拡大も視野に入れての設計でしょうか。
開発チーム:
もちろんそうです。繰り返しになりますが、新型Steamコントローラー開発への道のりは、2015年の旧型SteamコントローラーからSteam Deckを経て、今作へと至るものです。使いやすさに関する工夫の多くは、まずSteam Deckで取り入れられ、それが今回のSteamコントローラーへと引き継がれているのが分かると思います。
――参考にしている、またはライバルと見ている他社パッドの設計や機能はありますか。
開発チーム:
ある意味で、私たちは“巨人の肩の上”に立っています。つまり、ビデオゲームのコントローラーとは何たるかを切り拓き、多くの試行錯誤を重ねてその土台作りをしてくれた、ゲーム界の先駆者たちの存在があるのです。彼らが誰であるかは、皆が知っていることでしょう。私たちは彼らの大ファンであり、その功績に深く感謝しています。というのも、すべてのコントローラー開発者にとっての基盤を作り、その上にさらなる発展を築き上げていくことを可能にしてくれたからです。
とはいえ、私たちが自社製品の機能を考案する際には、「他社が何をしているか」よりも、ユーザーとの意見交換やコミュニティの声に基づき、「どうすれば最善のサポートを提供できるか」という点を重視しています。
――カニ、あるいはクモの顔のようなこのフォルムとインプット配置には、どのように行き着いたのでしょうか。
開発チーム:
SteamコントローラーとSteam Deckとで入力の互換性や親しみやすさを保つということが主な目標の1つであったため、本機の配置はSteam Deckの入力方式を、より小型で立体的な形状にそのまま落とし込んだものになっています。ただ、コントローラーを構えたときの角度は、Steam Deckに比べて急になっています。
最上の快適さと人間工学を実現するため、最終的なデザインではトラックパッドを一段低く配置し、エッジによって持ち手と操作部分を明確に分けました。その結果、トラックパッドは親指の自然な動きに合うように、斜めに配置されています。またSteam/QAMボタンは、ゲームプレイ中にも指が届きやすいよう中央に位置させました。これらの機能とジョイスティックが共存することで、強く特徴的なアイデンティティが生まれています。

――ハプティックトラックパッドは操作性はもとより、ハプティックフィードバックも素晴らしい出来です。このような繊細な触感はどのように実現されているのでしょうか。
開発チーム:
トラックパッドのハプティクスは、レーザーによる精密測定に基づいて、このコントローラーのために特別に作られた800種類以上の信号から選び抜かれたものになっています。各トラックパッドは、高品質かつ設計意図に適った体験をユーザーに確実にお届けするため、小型3軸加速度計に基づく独自のテストシステムによって、一つひとつ品質検査を受けています。
私たちは2012年からハプティクスの実装について試作と改良を続けてきました。当時、それは触覚的なフィードバックを提供する斬新な手法でしたが、現在では業界標準になりつつあることを嬉しく思っています。

――今回、無線・有線接続機能と充電機能がSteamコントローラーPuckに一本化されました。どのようにこの設計が選ばれましたか。
開発チーム:
念のため明確にしておくと、SteamコントローラーPuckはWi-Fiやイーサネットのインターフェースを備えているわけではありません。初期のプロトタイプの制約により、当初はBluetoothのみで無線接続のプレイテストをおこないましたが、その結果は非常にばらつきのあるものでした。個人のPCや無線環境は大きく異なっており、Bluetoothだけでは私たちが求める安定したワイヤレス体験を提供することができなかったのです。その上、Bluetoothは接続するデバイスが増えるにつれて遅延が大きくなるという問題を抱えていました。
SteamコントローラーPuckは、こうした問題を解決するために開発された2.4GHzの独自プロトコルによるワイヤレスレシーバーであり、高速かつ安定した接続を実現します。また、箱から出してすぐに使えるという利点もあり、これは私たちが特に重視した点でもあります。
これに加えて、従来の多くの2.4GHzレシーバーは、PCの背面に直接挿すと、周辺のUSB機器からの干渉を受けやすいという課題もありました。そのため、レシーバーをコンピュータ本体から離す必要があることも認識していました。
SteamコントローラーPuckをマグネット式充電スタンドにするという発想は、これらの問題をユーザーにとって快適なかたちで解決するための、数多くの議論やブレインストーミングの中から生まれたものです。いくつかの簡易的な試作を経て、優れたユーザー体験につながる可能性を見出し、この方向性で開発を進めることを決意しました。
――まだベータ段階でありながら、Steamコントローラーを使ってさまざまなゲームがほぼそのままスムーズかつ快適に遊べることに驚きました。この点についても、工夫がありますか。
開発チーム:
箱から出してすぐに簡単に使えるようにすることは、開発チームとして非常に重視してきたことです。Steam コントローラー Puckのおかげで、大きな手間をかけずにコントローラーをワイヤレスで使用できるというのは大きな利点です。
さらに、Steamではこれまで10年以上にわたって、あらゆるコントローラーに対応し、それらを使いやすくするための努力が積み重ねられてきました。私たちも当然、その恩恵を受けています。
Steamの入力とレイアウト設定は、コントローラーをシームレスに使えるようにするための重要な要素の1つです。Steamにはコントローラーやゲームの種類に応じた多数のレイアウトが用意されており、開発者が最適だと考える体験を提供できるよう、それらをカスタマイズするためのツールも備わっています。さらに、開発者とプレイヤー双方のコミュニティがSteam Deckでのゲームプレイの快適化に寄与してくれたことで、Steam Deckと入力の互換性があるSteamコントローラーも同様に、スムーズな操作体験を実現できています。
――新型Steamコントローラーを作るにあたって、もっとも開発上・企画上で苦労した部分はどこでしょうか。
開発チーム:
最大の課題は、人間工学に基づいた設計を実現することでした。開発に着手して最初の1年は、その点だけに注力したほどです。どうすればあらゆる手のサイズにしっくり馴染む形にできるのか、という問いに向き合い続けました。本機には多くの入力機能が搭載されていますが、それらを人の手で扱える範囲に収める必要があったのです。当時、チームのスローガンになっていたのは、「ミリ単位が重要だ(millimeters matter)」という言葉でした。
――Steamコントローラーの一番好きな部分はどこですか。また、旧型と比べて個人的にどう思いますか。
開発チーム:
開発チームとして、このSteamコントローラーのことを誇りに思っています。デバイスそのものはもちろん、旧型Steamコントローラーが私たちにもたらしてくれた、これまでの開発の道のりについても同様です。旧型コントローラーが、Steam Deckのみならず、本機につながる土台を築いてくれたのです。
チームメンバーによって、思い入れのある部分はそれぞれ異なります。メンバーからの声をいくつかご紹介します。
「私はSteamコントローラーPuckに特別な愛着があります。磁石を使って長く試作を続けてきたので、最終的な仕上がりには本当に満足しています」―Steve Cardinali(ハードウェアエンジニア)
「SteamコントローラーPuckがテーブルから持ち上がってコントローラー本体にカチッとくっつき、充電が始まるときの感触と音がとても気に入っています。再び使うときも、片手で簡単に外してすぐ手に取れるので、手間がほとんどかからない点も良いですね」―Jeff Mucha(ハードウェアエンジニア)
「私にとってはカスタマイズ性ですね。特定のゲームの入力を、自分が最もプレイしやすいように調整できるのは、それ自体が1つのゲームのようでもあります。人間工学に基づいた快適なデザインの中に、これだけの力が秘められているのです」―Jerremy Slocum(ヒューマンファクターエンジニア/心理学者)
「私はグリップボタンが気に入っています。使わないときには邪魔にならず、使いたいときにはしっかりそこにある、という絶妙な配置なんです」―Camerin Hahn(ハードウェアエンジニア)
「ボタンのレイアウトが好きですね。すべてが、自分の手にとってあるべき場所にあると感じられます」―Rich Karstens (ハードウェアエンジニア)
「視覚的なバランスを保ち、Steam Deckとの親和性を維持しながら、これほど多くの入力機能を快適なサイズに収められたことです」―Benoit Collette (インダストリアルデザイナー)
――ありがとうございました。
新型Steamコントローラーは、日本国内向けにはKOMODOより発売予定だ。
[翻訳協力:Niki Jinnnouchi]
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