「パブリッシャーにゲームを奪われた」開発者、権利を取り戻したと報告。“契約条件こっそり変更・無給開発・実質取り分ゼロ”の横暴に決着

Three Dots Gamesの創設者兼リード開発者であるArtem Perevoz氏は7月21日、パブリッシャーとのトラブルについて、和解に至ったことを報告した。

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Three Dots Gamesの創設者兼リード開発者であるArtem Perevoz氏は7月21日、Redditの「r/gamedev」コミュニティに投稿。同スタジオが手がけたゲームを巡るパブリッシャーとのトラブルについて、和解に至ったことを報告した。

Perevoz氏は昨年、ハンドルネームのtridotsist名義で、「悪いパブリッシャーが私たちのデビュー作を盗んだ」とする投稿をおこなっていた。同スタジオはSFパズルゲーム『THE MULLER-POWELL PRINCIPLE』を約7年かけて開発し、パブリッシャーのTake Aim Gamesと悲願だったパブリッシング契約を結んだという。当初の案では、パブリッシャー側に70%の利益分配をおこない、出資が回収されたのちに開発スタジオ側の取り分を増やす可能性があるという条件のもと、チームの全員や外部の委託スタッフへの報酬、その他の経費も含め、開発資金はすべてパブリッシャーが提供することになっていたという。

ただしPerevoz氏の主張によると、パブリッシャーは、契約書にサインする直前に条件をこっそりと変更し、チームへの報酬やマーケティング費用、手数料などを含めたすべての投資額を全額返済しないと、取り分の30%を受け取れないという内容に変えていたとのこと。また当初しないと告げていた続編の開発権についての条項も追加されていたそうだ。こうした事態に対して懸念を表明するも、パブリッシャーは作品の成功を信じていないのかと同氏を非難し、同意しなければ契約は破談になるとほのめかしたという。

そして、開発中にもさまざまなトラブルが発生。報酬の支払いの遅れは頻発し、なかには一銭も受け取れていないメンバーもいたそうだ。また、開発メンバーをパブリッシャー側の人員と半強制的に入れ替えさせるようなケースもあり、開発は大幅に遅延。そして当初予定していた日にリリースするのは不可能だとパブリッシャーに報告すると、支払いを停止し、作品を奪って自分たちで完成させ、収益はすべて取り上げると脅迫してきたとのこと。

また発売直前には、当初のリリース日を守れなかったことが契約違反にあたるとして、開発スタジオ側の取り分が25%へと減らされたという。本作は当初2023年7月から発売時期が延期されていたものの、10月になって初めて、契約書に記載されているリリース日が7月のままであることを理由に契約違反として法的措置をとるとほのめかされたとPerevoz氏は主張している。

そして発売1か月前に報酬の支払いは停止されることに。メンバーは貯金を崩して生活し、発売後もPRやコミュニティ管理業務を強いられたとのこと。さらには、無給の状態でDLCの制作を依頼してきたという。ただしパブリッシャー側はこのとき音信不通になり、連絡が取れない状態が続いたそうだ。1か月後にようやく連絡がとれたかと思うと、パブリッシャー側はDLCの計画に同意していなかったとして、DLCの中止を一方的に宣告。開発スタジオの誰も報酬を受け取れないことを告げ、再び姿を消したそうだ。

その後もいきなり連絡を寄こして、ローカライズを用意したのですぐに組み込むよう提案をしてきたりと、一方的な関係は続いたという。ただし、報酬を何か月間も受けとっていないうえに、DLCも最終的にキャンセルされ、売上も非常に悪いことから、取り分を受け取れる見込みがないとして開発スタジオはローカライズの組み込みを拒否。そして幾度か提案を交わしたあと、最終的に同スタジオは、ゲームを無期限で無償サポートする見返りとして、コンソール版のセルフパブリッシングまたは別のパブリッシャーを探す権利の譲渡を求めたという。しかし、パブリッシャーはこれに激怒し、ソースコードを渡してゲーム開発を引き継がせることを要求。開発スタジオ側はこれも退け、契約解除通知書を送ると、また沈黙が続いたそうだ。その後Perevoz氏は投稿を更新し、パブリッシャーに対して法的対応をとる可能性を伝えていた。

そして投稿から約1年が経過した2026年7月21日、Perevoz氏は事の顛末について投稿した。同氏によれば、その後法的な争いを続けてきたといい、弁護士のおかげで最終的に和解が成立したとのこと。取り決めとしては、Steamページの管理権を含むすべての権利が開発スタジオ側に譲渡され、収益分配については投資額が回収できるまでは開発スタジオ側が30%、回収後は70%を受け取ることに。また、続編を制作する権利を含むゲームの知的財産権はすべて開発スタジオに帰属するそうだ。つまり、契約締結前にパブリッシャーが提示していたという提案に近い条件になったわけだろう。ゲームの収益をようやく得ることができるようになり、また世界観を同じくする他の作品の制作も自由におこなえるようになった状況に、Perevoz氏は感謝と喜びを伝えている。ただ新たな収益分配についてはこれまでに販売された分ではなく今後販売される売上に適用されるそうで、同氏は「完璧な結果ではないかもしれない」とも伝えている。

なお同様の事例は過去にも多数報告されており、たとえば『ドキモンクエスト』などを手がけるヤナ氏は、パブリッシャーによる開発資金の支払いの先延ばしや、不当な条件の提示があったことなどを“恐怖体験”として報告していた(関連記事)。また過去にはパブリッシャーと音信不通になり支払いを受け取れなくなっていた別の開発スタジオが、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)に基づく著作権侵害の申し立てをおこなうことで、Steamページの所有権を自社のもとに移すことに成功したという事例も報告されている(関連記事)。

今回の事例を含め、開発者からパブリッシャーとのトラブルが報告される事例はしばしばみられる。開発者側の視点で状況が語られている点には留意したいが、今回のように法的手段を通じて和解が成立し、開発者がゲームの権利を取り戻す事例もあるようだ。特に経験の乏しい開発スタジオと、パブリッシャーとの間では、契約や資金面における力関係に差が生じることもあり、なかには開発者側が不利な状況に追い込まれるケースもあるとみられる。あくまで当事者間の問題ではあるものの、ゲーム開発者コミュニティでは問題のあるパブリッシャーに関する注意喚起がなされることも珍しくはない。今回の報告もそうした“苦い経験談”としてコミュニティ内で注目を浴びているようだ。

『THE MULLER-POWELL PRINCIPLE』はPC(Steam)向けに販売中。今後は発売以来最大のアップデートが予定されているそうで、新要素の追加やさまざまな不具合の修正、ゲームプレイの改善がおこなわれる見込みだ。

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Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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