MMORPG『ロストアーク』開発チームに向けた「駅ナカ広告」が注目集める。韓国にて、プレイヤー有志寄付による感謝のメッセージ

 
Image Credit : jae-shin

韓国にてMMORPG『ロストアーク』をプレイするユーザーたちが、ある“粋な計らい”を実行したようだ。開発元Smilegateに対し、感謝の気持ちを示す「広告」が出されたのである。

『ロストアーク』は、韓国のスタジオSmilegateが開発を手がけるMMORPGだ。大いなる力「アーク」を求めて悪魔たちが侵攻するなか、世界の命運を賭けて戦う冒険者たちの物語を描いている。韓国では2019年にサービスが開始し、2021年8月には同時接続プレイヤー数が24万人を突破。続く2022年1月には26万人を達成し、アップデートのたびに人口を伸ばしている。

そんななか海外掲示板Redditにて、ある『ロストアーク』プレイヤーが写真を投稿した。写し出されているのは、韓国国内の地下鉄駅である板橋駅の構内だ。同駅周辺にはゲーム会社が数多く拠点を置いており、『ロストアーク』開発元Smilegateのお膝元でもある。そんな駅に掲げられた広告は、一見すると『ロストアーク』の販促のようにも見える。しかし、広告主はSmilegateではない。実はこちらの広告は、『ロストアーク』プレイヤー有志によるクラウドファンディングで掲出されている広告なのだ。
 

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気になる内容はというと、いずれも『ロストアーク』開発チームへの感謝の言葉が綴られている。「忘れられないゲームを作ってくれてありがとう、みんなと共有できる思い出を作ってくれてありがとう」「私たちは『ロストアーク』を楽しんでいるし、これからも楽しみ続けます」という風に、『ロストアーク』を制作するスタッフに向けた温かい言葉が並んでいるのだ。板橋駅を通勤に使うSmilegate社員のなかには、この広告を目の当たりにした『ロストアーク』開発チームのメンバーもいたことだろう。

投稿者のjae-shin氏によれば、本広告の掲出料は100%、『ロストアーク』プレイヤーのクラウドファンディングを通じた出資により賄われているという。必要な資金は、キャンペーンを開始してからわずか3日以内に集まったそうだ。さらに広告のドラフトについても、プレイヤーのなかから有志での協力者により作成。最終的な決定稿については、1万1013人の投票により決定されたとのことだ。また計画によれば、1月28日には『ロストアーク』開発者600名に対し「贈り物」を届ける予定だという。詳細は不明ながら、現実またはゲーム内で何らかのギフトが送り届けられるのかもしれない。
 

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ユーザーが開発者に対して感謝の気持ちを示した類例としては、『ノーマンズスカイ』での一件が挙げられる(関連記事)。同作は2017年に発売したものの、価格の高さとそれに見合うコンテンツが存在しないとして批判を受けることに。そこで開発元のHello Gamesは改めてゲームを見直し無料の大型アップデートを敢行。数年にわたるゲーム内要素の拡充を図り、徐々にプレイヤーからの支持を取り戻していった。そして2019年には、ファンの呼びかけによりクラウドファンディングが実施。Hello Gamesオフィスの近隣に感謝の言葉を記した看板を設置し、スタジオのスタッフに心のこもったメッセージを届けていた。
 

 
また、国内でも独自のスタイルで開発者に祝福を届ける例が存在する。病床にあった『ファイナルファンタジーXIV』のサウンドディレクター祖堅正慶氏のガン寛解が伝えられた際、あるプレイヤーは高知競馬にて個人協賛競走を実施(関連記事)。個人としてスポンサー料金を支払い、「祖堅さん帰還記念特別」レースが開催された。YouTubeでの配信を通じて多くの光の戦士が観戦に興じたほか、祖堅氏自身も馬券を購入するなど、ファンの思いがしっかり届けられる一幕となった。
 

 
今回の『ロストアーク』広告は、継続的にプレイヤーとコミュニケーションしながら情熱をもって開発を続けるチームに対し、感謝の気持ちを込めて企画が実施されたという。運営型ゲームとしては、こうしたかたちでユーザーと開発側の絆が芽生えるのは一種の理想的なかたちといえるだろう。今年2月には、北米・ヨーロッパでも『ロストアーク』のサービスが開始される。今後も丁寧な運営でユーザーとの関係を築いていくことに期待したい。そして、日本ではゲームオン運営のもとサービスを展開中だ。