韓国にて『PUBG』を遊びまくっていたことが“兵役拒否の有罪判決”に繋がる。非暴力・反戦の信念があるか疑わしいため

 

韓国の最高裁判所である大法院は、兵役法違反の疑いで起訴されていた被告人に対して有罪判決を下した。被告人は非暴力・反戦の思想に基づく「良心的兵役拒否」を主張していたものの、主張は棄却されたという。韓国メディアThe Korea Heraldが報じている。


韓国では兵役法に基づき、18歳以上の身体および心理が健康な男性に対し、1年半から2年にわたる兵役が義務付けられている。The Korea Heraldの報道によると、今回の被告人は2018年11月に兵役法違反の疑いで起訴されていたという。一方、被告人は反暴力・反戦の思想に基づき、“良心的兵役拒否(conscientious objection)”を主張していたとされている。良心的兵役拒否とは、一般的に自身の良心上の判断を根拠にして兵役を拒否する思想や行為を指す(資料PDF)。ドイツでは兵役拒否権として法的に認められており、一定期間の社会福祉活動をおこなうことで兵役を拒否することができる。

韓国においてはかつて良心的兵役拒否が認められていなかったものの、現在では兵役法が改正。2020年からは良心的兵役拒否者に対する代替服役制が導入されている。代替服役制では刑務所などの矯正施設において、36か月間の業務に従事することになるとされる。なお現在韓国政府は兵役に対して“良心がない”とするような世間の懸念を考慮したとして、「양심적 병역거부(良心的兵役拒否)」ではなく「종교적 신앙 등에 따른 병역거부(宗教的信仰などによる兵役拒否)」という名称を用いている。

今回の被告人も良心的兵役拒否を主張していたようだが、大法院はこの訴えを棄却したという。報道によると大法院は、被告人が兵役拒否の根拠とする非暴力・反戦の思想に“行動が伴っていない”といった判断を下したようだ。裁判所はまず、被告人は非暴力・反戦・平和を掲げる非政府組織での活動などをおこなっていなかったと指摘。兵役拒否以前に、思想信条を広めたり実現したりするための活動をしていなかったとした。


また被告人が『PUBG: BATTLEGROUNDS』を頻繁にプレイしていたことを認めている点も、大法院の判断の一因となった模様だ。大法院の判決では、ビデオゲームは現実とは異なると前置き。一方で被告人が同作を楽しんでいたという事実から、兵役拒否の根拠となる暴力と戦争に反対するという信念が疑わしいと判断されたそうだ。結果として大法院は被告人の主張を退け、懲役1年半の実刑判決を下したとされている。

なお韓国の検察は代替服役制導入以前に開始されていた裁判に対して、良心的兵役拒否に基づく信念の信ぴょう性を把握するための判断指針を設定。さらにシューター系のゲームを日常的に遊んでいたかどうか、といった点も信ぴょう性の判断基準とされたことが報じられていた(ハフポスト)。今回の判決でも『PUBG: BATTLEGROUNDS』のプレイ歴が大法院の判断基準のひとつとされたようで、兵役逃れへの良心的兵役拒否の利用を防ぐためにさまざまな側面から厳しく判断がおこなわれているようだ。