任天堂、人気YouTuberの動画4本を公開差し止め。Nintendo Switchの「Homebrew」紹介を著作権侵害で取り締まるも投稿者は反発

 

人気YouTuber「Modern Vintage Gamer(以下、MVG氏)」が、任天堂からの著作権違反の訴えにより、これまでに公開した動画のうち4本の映像の公開停止処分を受けたと発表した。MVG氏は今月9日に、昨年10月に公開したNintendo Switchを題材とした動画において、5秒ほど映った『スーパーマリオ64』の著作権を侵害したとして同動画の公開停止処分を受けたと報告。また12日には、さらにNintendo Switchに関連した3本の動画が、それぞれ公開停止処分を受けたとしている。合計で4本の動画が公開差し止めとなった。

MVG氏は、チャンネル登録者17万を超える人気配信者。コンテンツ内容はというと、ゲームコンソールについての紹介および考察だ。新旧さまざまなゲームコンソールを取り上げ、その裏にあったストーリーや仕組みを紹介したり、必要とあらばそれらを分解して内部構造を説明する。また氏は、ゲームハードの改造についても取り扱っていた。特に人気があったのは、Nintendo SwitchのHomebrewについてである。Homebrewは、「ゲームハードなどにおける、ユーザーが独自に作成したプログラムやソフトウェア」だとされている。Nintendo Switchにおいては、カスタムしたHomebrewを土台とし、さまざまなアプリなどが導入されている。いわば、改造のベースとなるもの。Nintendo SwitchでのHomebrewの機能や手順を紹介する動画4本が、公開停止処分を受けたという流れだ。
【UPDATE 2019/4/15 23:10】
Homebrewの用語説明を修正しました。

MVG氏の動画よりキャプチャー

公開停止の理由は、いずれもゲームタイトルの著作権侵害。Nintendo SwitchのHomebrew上で動かしたエミュレーターのスクリーンショットやゲームプレイをあげていたことが、理由ではないかとMVG氏は推測している。ただし、著作権侵害としてあげられた『スプラトゥーン2』や『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』は動画内で使っていないなど反論。また動画内で導入をガイドしているゲームは、すべて自身が購入したものであるとも反発する。そして、任天堂はHomebrewが存在することを隠したがっていると考察。検閲しているのではないか、フェアユースを理解していないのではないかと批判している。また自身の動画以外の、Nintendo SwitchのHomebrew系の動画は、今後同様の処分を受けるだろうと警告した。

またその後MVG氏は、公開停止について異議を申し立てたが通らず。任天堂について、もっと納得できる説明をしてほしいとしながらも、この件について深追いするつもりはないとも説明。Nintendo SwitchのHomebrew系の動画についても、YouTubeでは今後取り扱わないと宣言。過去の動画については動画共有サイトBitChuteで投稿し、最新のNintendo SwitchのHomebrew情報については別の場所から得てほしいとしている。氏は、任天堂の返信の時間を見るに、申し立て主はアメリカではなく日本の任天堂だろうと推測している。

著作権侵害という理由でフェアユースを無視し、自分の動画の公開停止要請を申し立てるのは理不尽である。それがMVG氏の言い分だ。一方で任天堂は昨年11月に「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」を公開し、動画などでの使用を許可/不許可するコンテンツの線引きをおこなっている。ガイドラインでは、違法または不適切な投稿や公序良俗に反する投稿を禁止すると定めており、それらに該当するもののひとつとして「チート、クラッキング、不正アクセス、技術的制限手段の回避、不正な改造またはこれらを可能にする物、ツールもしくはサービス」をあげている。

Homebrewの導入は、改造およびそれらを可能にするツールにあたり、またチートやクラッキングのフックとなるソフトウェアでもある。そうしたことを踏まえると、MVG氏の動画は昨年末公開したガイドラインに抵触している。動画内で使用していない(と氏は主張する)『スプラトゥーン2』や『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』の著作権侵害を理由にすることの正当性はともかく、Homebrew動画の公開停止を要請するのは、ガイドラインにのっとった行為であるだろう。

なおHomebrew問題は、Wii UやWiiなどこれまでのゲームハードでも取り沙汰されてきた

任天堂は昨年秋頃からエミュレーター向けのROMを配るサイトや(関連記事)、ハードウェアの改造・販売業者を訴えてきた(関連記事)。Homebrewについては、単に研究目的で好奇心を持つユーザーもいれば、そこからオンラインプレイのチートやデータマインに利用しようとするユーザーも存在する。一連の動画が取り締まられていくのは、避けられない流れなのかもしれない。