もしも『SEKIRO』にアシストモードがあったら。難易度に関する議論が再熱する中、高難度アクションゲームの開発者が提案

高難度のアクションゲームが発売されるたびに、イージーモードの必要性を説いたり、アクセシビリティの向上を求める議論が過熱する傾向がある。以前には2017年に発売された『Cuphead』について、同作の高難度なゲームデザインは排他的ではないかとの議論が海外メディアやコミュニティ内で交わされた(関連記事)。そして今年3月には、フロム・ソフトウェアの新作『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』(以下、SEKIRO) が発売されたことを機に、そうした難易度やアクセシビリティに関する議論が各所で活発に交わされるようになった。

 

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難易度とアクセシビリティの議論は別

ForbesVentureBeatIGNKotakuなど各種メディアがそれぞれオピニオン記事を掲載しており、とくにForbesの記事については、プレイヤーを尊重するためにも『SEKIRO』にはイージーモードが無くてはならないと強く主張したことで賛否を呼んだ。そのほか、イージーモードという難易度だけの問題ではなく、ボタンのマッピング変更や視覚聴覚効果のオプションといった、アクセシビリティの向上という側面から議論にアプローチする業界関係者・団体もいる。

アクセシビリティ向上のため啓発活動を続けるAbleGamersのCEO Steve Spohn氏にいたっては、各種メディアやインフルエンサーが毎度、ゲームの難易度に関する議論と、アクセシビリティに関する議論を混合して持論を述べる現状にいら立ちを隠せず、それらは別の議題であると改めて主張。その上で氏が唱えているのは、イージーモードではなく、ゲームを遊んで経験を積むだけでは埋め合わせることのできない状況に置かれた人々のためのオプションを充実させることである。

 

もしも『SEKIRO』にアシストモードがあったら

そんな中、『Celeste』のクリエイターとして知られるMatt Makes GamesのMatt Thorson氏が議論に参加し、「もしも『SEKIRO』に、『Celeste』のようなアシストモードがあったら」というお題で、いくつかのアイデアを出している。具体的には、交戦時の戦闘速度変更(50~100%)、回生回数変更(+1もしくは無限)、隠密行動時の透明化、無限体幹、そして無敵化(回復アイテム使用中のみ、もしくは常に無敵)がリストアップされている。

Thorson氏の見解では、そうしたオプションの中でも、無限体幹や無敵化といった極端な変更ではなく、戦闘速度を少しだけ低速化したり、『Celeste』の実例でいえばエアダッシュ回数を1回だけ増やしたりといった、段階的な調整を許容するオプションが大事だと語っている。こうしたオプションにより、ゲームを極端に簡単にするのではなく、プレイヤーにあわせた難易度のチューニングがしやすくなる。

また高難度が売りのゲームにおいてアシストモードを実装する際の留意事項としては、まずゲームのメインメニューでのみ、かつセーブファイル単位でアシストモードのオン・オフ設定ができるように設計することが述べられている。アシストモードを使用していないプレイヤーには、プレイ中、その選択肢を見せないようにするためだ。続いて、アシストモードをオンにする前に、具体的に何ができるのかしっかりと説明すること。さらに一度オンにしたあとは、プレイ中いつでも各種オプションを変更できるようにすることが重要だと説明している。

 

「開発者の意図」よりも「遊び方の自由」を優先

『Celeste』は高難度な2Dアクションゲームとして知られながらも、アクションゲームが苦手なプレイヤーでも楽しめるよう、柔軟なアシストモードを実装している。ゲームにおけるアクセシビリティ向上を目的とした「Game accessibility guidelines」にも事例として掲載されているほどだ。『Celeste』におけるアシストモードとは、ゲームの速度やエアダッシュ回数といったゲームプレイにかかわる数値を調節したり、無限スタミナや無敵オプションのオン/オフを自由に切り替えられるというものである。

『Celeste』

Thorson氏が『Celeste』にアシストモードを入れようと思うに至ったきっかけとしては、先述した『Cuphead』における議論が挙げられている。同じく高難度な2Dアクションゲームとして知られる『Cuphead』では、その独特のアートスタイルを堪能したいものの、難しすぎて遊べないため、イージーモードを追加して欲しいとの意見が寄せられていた。『Cuphead』には、敵の行動パターンを簡易化する「シンプルモード」が存在するが、それでもなお、一部のプレイヤーには難しすぎた。

そうした議論を目の当たりにしたThorson氏は、自身の作品をよりアクセシブルにするためにはどうすればよいのか考えた末、アシストモードの実装に至ったという(Waypoint)。『Celeste』は『Cuphead』と同様、高難度であること自体がゲーム体験の根幹を占めており、ゲーム内でも、初回プレイ時にはアシストモードを使わないよう推奨するメッセージが表示される。Waypointの取材に対しても、「ゲームデザイナーという観点からすると、アシストモードの実装はゲームのバランスを崩してしまいます。私は『Celeste』の難易度調整に長い時間を費やしましたし、そうしてできあがったデザインは、私にとってとても尊いものです」と語っている。

だがその一方で、「ゲームを楽しんでもらうためにも、プレイヤーに遊び方を委ねたい。そのためには、ときとして手放さなければいけないこともあるのです」とも答えている。プレイヤーによってゲームに求めることや、ゲームを始めるときのプレイヤースキルは異なる。そうした人たち皆が本作を楽しめるよう、アシストモードが用意された。「開発者の意図」と「遊び方の自由」を天秤にかけた上での、ひとつの結論であった。

 

『ゴッド・オブ・ウォー』ディレクターも議論に参加

Thorson氏自身、フロム・ソフトウェアの作品が好きであり、それらの作品について、瞑想にふけるように心安らぐプレイ体験だとコメント。『SEKIRO』は個人的にフロム・ソフトウェア作品の中でもっとも好きな作品かもしれないとも語っている。高難度であることが、作り手の意図と密接に関わってくるアクションゲーム。そうした作品を好み、遊び手としても作り手としても苦労した経験があり、その上でアシストモードを実装するとの判断を下したThorson氏ゆえに説得力のある提案といえるだろう。

なお『SEKIRO』のディレクターである宮崎英高氏は、GameSpotのインタビューに応じた際に、同作に難易度の選択肢がない理由について、全てのプレイヤーに達成感を与え、同じ水準の議論に参加し、同じ水準の喜びを感じてもらうためだと説明している。フロム・ソフトウェアとしては、難易度の選択肢があると、遊び手それぞれのゲーム体験に相違が生じ、プレイヤーベースが分散してしまう。そうした点を常に考慮して、ゲームをデザインしているという。ここでは、アクセシビリティではなく難易度という観点から語られている。

『Celeste』のThorson氏が提示したアイデアには、ほかのゲーム開発者も反応を示しており、VlambeerのRami Ismail氏は、「アシストモードの必要性そのものを語るのではなく、どのようにすれば実現できるのかを提示したことは、『SEKIRO』の難易度にまつわる議論展開において非常に有意義な貢献である」と述べている。

最終的にアシストモードならびに各種アクセシビリティ設定をゲームに取り入れるかどうかは、作り手の自由。「0か100か」の議論に終始するのではなく、どのような選択肢があるのかを示すというのは、建設的な提案だ。ちなみにIsmail氏も、『SEKIRO』は「フロムライク」なゲームの中で一番のお気に入りとのことだ。

アクセシビリティオプションの存在が、作り手のビジョンを乱すことはない。そうした見解を示す開発者としては、新生『ゴッド・オブ・ウォー』のディレクターCory Barlog氏が挙げられる。Barlog氏は、アクセシビリティとゲームのビジョンとで矛盾が生じたことはないと述べるだけでなく、大多数の、ひとりでも多くの人々に楽しんでもらうためには必要不可欠な要素であるとも答えている。

何度も繰り返されてきた議論ではあるが、「イージーモード」の有無に終始するのではなく、アクセシビリティ向上を目的とした難易度調整オプションの可能性へと議論がシフトし、その上でどのような選択肢が考え得るのか、「具体的な手法」について、よりオープンに意見が交わされるようになってきたというのは、業界におけるひとつの変化を感じさせるものだろう。

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